仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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滾る闘志

ガタックゼクターとの一見があってからしばらく、加賀美と静江は大鬼族の里で過ごしていた。

大鬼族たちはさすが戦闘種族というだけはあり、中でも若の力はまだまだ発展途上ながら頭1つ抜けていた。

 

「お前の力はそんなものか!」

 

「く……!」

 

今、加賀美は大鬼族たちの鍛錬に参加する中で若と互いに1本の木刀での模擬戦をしているが、かなり危ない状況だった。

若の力押しによる剣技は中々のもので、今の加賀美にとっては相性の悪い戦いとなっていた。

 

「(な、なんて力だ……!)」

 

防戦一方の加賀美。

その一方で若は。

 

「(どうしたカガミ……!)」

 

かつて、静江に言われたことを思い出していた。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「シズ殿。今日こそは勝たせてもらうぞ」

 

加賀美が子供達と騒いでいる中で、若は度々静江から指導を受けていた。

しかし実際は指導というより、若と静江の真剣での戦いだった。

その戦績は言うまでもなく。

 

「くそ……まだ及ばないか……」

 

さすが英雄というだけはあり、静江の強さは圧巻だった。

イフリートの力は一切使わず、剣技だけで若を圧倒し続けている。

魔法やアーツを使えば戦いの流れも変わるだろうが、それは若の性格が許さなかった。

 

「でも、すごい速度で強くなってるよ。流石だね」

 

「そう言ってもらえて光栄だ。が、負けたままじゃ終われない。いつかその技も盗ませてもらうさ」

 

タフに起き上がりながら、若は目をギラつかせる。

その真っ直ぐな姿勢に、静江は微笑む。

 

「でもいいの?」

 

それはそれとして、ひとつ疑問があった。

 

「何がだ?」

 

「私と君じゃ戦い方が違うから……」

 

静江の言う通り、若と静江では剣の振るい方が違うのだ。

力の若と、技の静江。

対極とは言わないまでも、似通っているところは少ない。

直接的な成長には深く関わらないと思っていた。

しかし、若は前向きだった。

 

「それを言うなら爺もさ。色々な戦い方を知ることは、今の俺にとっては貴重な経験になる」

 

若は普段、爺から稽古をつけられている。

爺と静江は共に技の剣技だが、この2人もまた剣の振るい方が違う。

 

「得こそすれど、損などするはずもないさ」

 

自分とのスタイルの違いが若にとって、新しい強さを見つけるピースとして重要な役割を果たしていた。

 

「さぁ、もう1本だ!」

 

若の笑顔は、真っ直ぐに強さを求める者の笑みだった。

何度負けても折れない心は、その性格も相まって加賀美と似ている部分がある。

 

「気合十分だね」

 

そんな若を見て、静江も思わず気合いが入る。

 

「いつかアラタとも手合わせするつもりでいる。その時に負ける訳にはいかないからな」

 

若は、加賀美をライバル視しているようだった。

 

「新くんと?」

 

「あぁ。今の俺たちのように、模擬戦をするつもりでいる」

 

若の言う模擬戦というのは、互いに刀1本の真剣勝負である。

 

「多分だけど……君の方が強いんじゃないかな?」

 

「そうなのか?」

 

「うん……ただ───」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「隙ありだッ!」

 

「ぐあっ!」

 

若の渾身の一撃が加賀美の体を木刀ごと吹き飛ばす。

ここで爺が審判を下した。

 

「若の勝利じゃな。見事ですぞ」

 

「これくらい当然だ。だが……」

 

戦いを終えたというのに、若の闘志は消える気配が無い。

 

「これでアラタに勝ったと思うのは、早計だな」

 

その理由は、目の前で立ち上がる加賀美にあった。

 

「くそーっ、もう1本!」

 

倒したところで終わるはずもない。

その証拠に若は刀を握る力を一瞬たりとも緩めてはいなかった。

 

「ふ、そうこなくてはな!」

 

好戦的に笑い、加賀美と向き合う。

加賀美は自分の頬を叩いて気合いを入れ直す。

 

「お爺さん、もう1本刀ください」

 

「ほう、お主双剣を使うのか」

 

そして爺から刀を受け取り、慣れたように構える。

若は先程のように容易くはいかないと悟り、一層気合を入れる。

 

「ならば、俺も本領を発揮するとしよう」

 

そして今持っている木刀を捨て、より長いものを手に取る。

それを構えた時、若の雰囲気が変わるのを加賀美は肌で感じた。

 

「(シズ殿は言っていた……)」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「新くんは倒れてからが本番だから」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「(見せてみろ、アラタ!)」

 

互いに走り出し、至近距離で刀を振るう。

双方守りより攻めに重きを置いており、先に相手に一撃を叩き込もうとしていた。

 

「(さあ、どうなる……!?)」

 

若はリーチを活かして刀を横に振るう。

加賀美が回避したとしてもすぐに攻撃に移れるよう、頭の中で次の一撃を考える。

それに対して。

 

「っ、そうきたか……!」

 

加賀美は避けるのではなく、片方の刀で若の一撃を受け止めた。

そして空いているもう片方で、若に一撃を与えようとする。

 

「(たしかにさっきとは動きが違うな……だが!)」

 

「!」

 

だが若の一撃は片手で防ぎ切れるものではなく、加賀美は吹き飛ばされまいと咄嗟に2本目の刀を防御に回した。

 

「ガラ空きだぞ!」

 

「うぐっ!!」

 

それを見逃す若ではなく、加賀美は鋭い蹴りを腹に食らって地面を転がった。

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

 

先程の蹴りが思った以上に強かったからか、加賀美は吐血した。

対して若は無傷。

 

「お前の得意は超近距離戦だろう。ここから俺の懐に入れるか?」

 

結果として距離を取られたので、若有利の戦況になってしまっている。

とはいえ加賀美の心は折れるはずもなく、一直線に勝利へ向かおうとしていた。

 

「(シズ殿はともかく、お前と俺とで身体能力の差が大きい……)」

 

加賀美の動きを見てからでも先に動ける身体能力を持つ若は、あくまで冷静に攻めを受ける準備を整える。

 

「(ならば!)」

 

刀を構え、カウンターを決められるように。

そう思った時、加賀美は刀を若の顔目掛けて思い切り投げ、すぐに走り出す。

 

「(見えていればこのくらい───)」

 

若はそれを大鬼族の身体能力で避ける。

同時に、加賀美が若の足に向けて刀を振るう。

 

「チッ!」

 

若はこれを飛び上がって避けた。

しかし、飛び上がったことで一瞬無防備になった隙に加賀美は割り込んだ。

 

「っ……!」

 

その拳が、若の鎧を叩き割るように刺さった。

 

「うおおおおっ!!」

 

加賀美が拳を振り抜くと、若は後方に吹き飛ばされ、地面を転がる。

しかしその中でスムーズに姿勢を立て直すことができたので、反撃の隙は与えずに済んでいた。

 

「っ、ゴボ……ッ!!」

 

とはいえダメージは大きく、膝を着いてしまう。

すぐに立ち直したものの、一瞬加賀美から目を離してしまった。

それ故に、すぐさま見つけようとしたが。

 

「(いや違う、感じるべきは───)」

 

優先順位を考え、若は思考を切り替える。

戦法は変わらずカウンター。

しかし探すのは。

 

「(攻撃の気配……奴の音だ!)」

 

そして次の攻撃に備え、目だけでなく肌で加賀美の気配を感じようとした時。

 

───ジャリ。

 

「───後ろかッ!」

 

そう聞こえた瞬間、若は体を勢いよく回転させて前後左右に対応するように刀を力いっぱいに振るった。

 

「うおおおおッ!!」

 

凄まじい風切音から、とてつもない剛力であることが伺える。

 

「(なんだ……!?)」

 

結果として若は攻撃を食らわなかったものの、2つの疑問を抱いていた。

1つ目は、目の前で地面に刺さっている加賀美の刀。

 

「(何故ここにあいつの武器がある……!?)」

 

先程背後から聞こえた音の正体。

それは加賀美が投げなかった方の刀が、地面に突き刺された音だった。

 

「(これであいつは丸腰になったはずだ……)」

 

本来ならば特に意味を成さないこの行動。

若が刀の投擲という想定外の攻撃を見せられた直後であること、加賀美の姿が見えていなかったことで先手を取ろうとしたからこそ効果があった。

そして2つ目。

 

「(なぜわざわざ武器を捨てた?あいつは……)」

 

一瞬、勝ちを諦めたのかとありえない答えを浮かべる。

しかしあくまで加賀美が勝ちに来ていることを前提として、先程の自身の攻撃を振り返った。

 

「(手応えがなかった……ということは───)」

 

若が先程剣を前後左右に対応できるよう振るったのは、音が囮だったとしても、姿が見えなかったとしても、少なくとも加賀美が近くにいると踏み、確実に攻撃を当てるためだった。

しかし振り切っても手応えがなく、刀は空を切っていたのだ。

若は考える。

加賀美の得意は近距離戦。

遠距離での戦法は武器を手放した今、存在しない。

しかし自分に勝つつもりでいる。

ということは必ず近くにいる。

つまり。

 

「ふんッ!!」

 

若は半ば反射に近い動きで刀を上に振るった。

すると刀は上空にいた加賀美の足と激しくぶつかり合った。

 

「く……!」

 

「(なんとか間に合ったか……しかし、そういうことだったのか)」

 

加賀美は突き刺した刀を踏み台に飛び上がり、攻撃直後の若に飛び蹴りを仕掛けようとしたのだ。

しかしそれを察した若の動きにより有効打は与えられず、それどころか鍔迫り合いの末互いに弾き飛ばされてしまい、また離れることとなった。

 

「随分と奇天烈だったが……振り出しだな」

 

一悶着あったが、若の有利には変わりなかった。

 

「が、先程とは動きが違う……たしかに倒れてからが本番だな」

 

先程まで危なげなく勝利を収めていたと言うのに、今は1度の競り合いで互いに吐血するほどのダメージを与え合っている。

明らかに模擬戦の範疇を超えているが、加賀美と若は口から流れる血を拭って、さらに好戦的な笑みを浮かべた。

 

「さぁ、第2戦といこうか!」

 

2人の体が温まってきた頃。

 

「そこまでじゃ」

 

爺から静止が入った。

2人は闘志を秘めたまま爺に目を向ける。

 

「爺、何故止める!?」

 

「そうですよ!まだ───」

 

若も加賀美も決着を着けるまでは終われないと、納得していない様子だった。

しかし、爺も譲らぬ気だった。

 

「ここいらが限度じゃ。若よ、目的を忘れなさるな」

 

「……爺、俺は───」

 

爺の言葉は少ないながらも、若を止める効果を十分に持っていた。

 

「あと、さっきから視線が痛うございましての」

 

「視線?何のこと……」

 

瞬間、背後から何かしらの圧が。

それを感じた途端、若はびくつき始めた。

 

「っ!」

 

実際にどうなっているか見ていないというのに、本能的に不味いことを察したのだ。

ゆっくりと振り返ると、笑顔の姫がいた。

 

「お兄様、昼食の用意ができました。もちろん、一緒に食べてくださいますよね?」

 

「い、妹よ。俺は……」

 

「ね?」

 

色で表すならば、黒色の笑顔だった。

 

「わ、わかった。行こう……」

 

まるで兄に懐く妹のような微笑ましい発言だが、若の方が震えているというただ事ではない状況だった。

加賀美はそれを爺と共に見送る。

 

「ははは、若も姫様には弱いんですね」

 

先程までの荒々しい雰囲気はすっかり消え失せ、背中を小さくしながら姫に着いていく若。

それを見た加賀美が今度からかってやろうと思った時。

 

「お主も他人事ではなさそうじゃがのう」

 

爺はそう呟いた。

心当たりが浮かばない加賀美。

何の話か爺に聞こうとすると、若よろしく背後に恐ろしい圧を感じた。

 

「新くん?」

 

「!」

 

それは、突然現れた。

 

「ほう、気配を消すとは見事なものじゃ、シズ殿よ」

 

加賀美が慌てて振り返ると、目の前で姫のように笑顔でありながら威圧感を放つ静江がいた。

 

「し、静江さん……ど、どうも……」

 

加賀美は緊張しながら、普段とは別人のように腰を低くする。

静江はその変わり身の早さにくすりと笑った。

 

「ふふ、別に怒ってないよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

一縷の希望が芽生えた。

 

「うん。でも───」

 

加賀美がそう思った瞬間。

 

「後でお説教だからね」

 

結局落とされてしまった。

 

「あっ、はい……」

 

若も加賀美もあれだけ闘争心に溢れていたというのに、今はとぼとぼ歩いている。

昼食を食べ終わった後、2人は無茶をし過ぎたことを姫と静江の両名から叱られてしまっていた。

 

「いくらなんでも限度があります!血を吐いてまだ戦おうとするなんて……!」

 

「す、すまなかった。もう無茶はしないと約束する……」

 

「その言葉も何度も聞いています!なのに今回だって……っ!」

 

「う……」

 

「お兄様なんて……もう知りません!」

 

「おっ、おい泣くな!これからは限度を守る!だから……な?」

 

若は涙を浮かべて頬を膨らませる姫の機嫌を何とか取ろうとしていた。

一方加賀美はというと。

 

「お爺さんが止めなかったらどこまでやるつもりだったの?」

 

「し、静江さん……え、えっと……」

 

淡々と質問する静江に完全に押されていた。

加賀美は壁際に座っており、静江はその隣に座っているので逃げ場がなかった。

 

「模擬戦だからって、心配してないわけじゃないよ?」

 

「す、すみません……」

 

静江は頭を下げている加賀美の頬に手を当てて、目を合わせる。

 

「……今回は良いけど、もしまた次に新くんが血を吐いちゃうとか、大怪我するようなことがあったら私───」

 

その目はまるで、凍りついているかのように据わっていた。

 

「どうなっちゃうか分からないから」

 

それから加賀美は震え上がっていた。

他の大鬼族たちはそれを見て大笑いしていた。

そんな中で爺は呟くように、楽しそうに言った。

 

「若いのう」

 

 

 

 

 

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