仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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戦うために

「そういえば新くんってスキルは持ってないの?」

 

「ひとつもないんですよ。俺も魔法使ってみたりしたいんですけど……」

 

静江とコンビを組んでからというもの、加賀美は大分この世界に慣れてきていた。

元の世界にトンチキな男がいたので適応が早かったのもあるが。

 

「異世界から来た人は強いスキルを持ってるはずなんだけど……今の加賀美くんだと、魔物と戦うのは危ないんじゃないかな?」

 

「そうなんですよね……今はベルトも無いし」

 

「ベルト?」

 

加賀美にとって戦う上では無くてはならないもの。

それが無いデメリットは静江にとっては想像もつかない。

しかし情けない話、今の加賀美の身体能力では巨大な魔物等と戦うのは厳しいのだ。

 

「じゃあ元の世界に変える方法と、そのベルトも探してみよっか」

 

「はい。それさえあれば、もっと力になれると思います」

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

……”アイツ”が飛んでくるかは祈るしかないけど。

そう思う加賀美だった。

しばらく仕事を続けながら稼ぎを貯めていると、ふと静江が聞いてきた。

 

「新くんはいつ頃国を出ていくか決めてる?」

 

「決めてないですけど、外に出るとなると戦うことになりますよね」

 

何もかもが未知数な魔物と。

 

「一応私が守りながら旅をすることはできるけど……」

 

この世界でこれ程心強い味方は中々いないのだが、加賀美の反応はよろしくなかった。

 

「イフリートって奴のことを考えると……」

 

「……うん」

 

静江の中には、イフリートという炎の精霊がいる。

その力は最上位精霊なだけあってとんでもない。

しかし2人は相容れない間柄で、静江はその力を使う度に、段々と力が抑えきれなくなっていた。

つまり、イフリートが暴走するのを制御できなくなりつつあるのだ。

 

「やっぱり、俺も戦えるようにならないと……」

 

実際元の世界に戻る方法を探すには世界を回るのが手っ取り早い。

しかしこの世界には魔物が溢れている。

静江程の実力ならば倒すこと自体は簡単でも、彼女にのみ戦わせ続けることはイフリート暴走のリスクや、加賀美の性格上許容できなかった。

であれば、加賀美の思うことは1つ。

 

「静江さん、俺に修行をつけてくれませんか?」

 

「え?修行って……」

 

「剣術だけでも学べたら、少しは戦えると思うんです」

 

いざという時、自分だけでなく静江も助けられるように。

 

「でも、スキルが無いっていうのは君の思う以上に危険なことなの。人間は魔物に不意をつかれでもしたら簡単に……」

 

静江の言うことは尤もだった。

強い人類は何かしら特別なものを持っている。

例えばスキル。

当然静江も、上級のスキルを所持している。

比べて加賀美は何も無い。

スキルも、魔物を倒せるような戦闘手段も。

 

「俺は死にませんよ」

 

加賀美の目は、真っ直ぐに静江を見ていた。

 

「これでも結構戦ってきてるんです」

 

これまでの加賀美の経歴を知らないながらも、静江は強く止める気にはなれなかった。

と言うより、止まらないことをこの数日で知ってしまっていた。

 

「……わかりました。新くんに剣を教えます」

 

「おぉ!」

 

「ただし!」

 

この時の静江の圧は加賀美にとって、誇れる先輩こと田所の圧と同じようなものだった。

思わず背筋が伸びる。

 

「魔物と戦う時は万全の状態で戦いに挑んで。回復薬も沢山用意して、死ぬような戦いは絶対しないこと」

 

「はい!」

 

「それと、生身で戦うのは絶対ダメ。ちゃんと装備を整える事。良い?」

 

「わかりました!」

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

それから加賀美の、仕事と修行という忙しい日々が始まった。

修行というのは静江と木刀を使って模擬戦をし、魔法も含めた彼女の攻撃を捌くことで生存能力を上げようというものだった。

攻めより守りに重きを置いたものとなっている。

この守りを問題なくこなせるようになった後、攻めを磨く。

その後クエスト等を受けたりして実戦に慣れていく、という段取りだった。

仕事に関しては何も変わらず単純作業なので問題なくこなせる。

対して修行は、中々に大変だった。

 

「(くっ、なんて動きだ……!)」

 

修行とは言うものの、かつて英雄と呼ばれたほどの手練である静江の剣さばきは、とても木刀1本で追いつけるものではなかった。

 

「(全然防げない……!)」

 

実力差はあまりにも明白。

加賀美はそれを痛感していた。

同時に、今の自分が容易に死んでしまうということも。

現に何度も木刀が当てられている。

腹や首に。

真剣ならば致命傷である。

 

「(でも、俺だって当ててやる!一撃くらいは!)」

 

「!」

 

気合いを込めた加賀美がここ1番の猪突猛進ぶりを見せると、静江は素早く足払いをして加賀美を地面に転がした。

 

「うわっ!」

 

顔を地面に打った加賀美は思わず痛みに悶える。

 

「いででで……!」

 

「コラッ!」

 

顔を両手でさする加賀美に向かって、怒った静江がズンズン歩いてきた。

 

「新くん、今当てられてもいいと思った?」

 

いつもの静江らしからぬ詰め寄り方に、加賀美は慌てる。

 

「そういうのが1番ダメだっていつも言ってるでしょ?」

 

静江の後ろには仁王像が。

加賀美は正座をして頭を下げていた。

 

「す、すみませんつい……」

 

「もう、これは新くんを守るための修行でもあるんだよ?」

 

「は、はい……」

 

「優先すべきことを間違えないで」

 

「はいっ!」

 

普段の柔らかい雰囲気から一転、静江は中々のスパルタ教育者だった。

と言うのも本来そういうタイプでは無いが、加賀美に関しては話が別だった。

本気で教育し終えたとしても、戦うには心許ないので手など抜けるはずもないのだ。

 

「じゃあ、再開するよ」

 

「よろしくお願いします!」

 

とはいえ静江自身、日々を過ごしていく中で、その根性で必死に食らいつく加賀美に驚く点もあった。

 

「新くん、二刀流になってからかなり動きが良くなったよ」

 

「そ、そうですか?」

 

「うん、慣れてる感じだった」

 

実際、かつて加賀美が戦っていた時、武器を使用する際は専ら双剣だった。

 

「この分だとすぐに戦えるようになりそうだね」

 

「はははっ、いつまでも静江さんに頼る訳にはいきませんからね!」

 

「ふふっ、頼もしいよ」

 

調子良く笑う加賀美を、静江は楽しそうに見る。

これが今の2人の日常だった。

 

 

 

 

 

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