仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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熱い身体

朝、加賀美は珍しく静江より先に起きた。

と言うより、静江がいつも起きている時間に起きないのだ。

加賀美が顔を洗うやら歯を磨くやらしている間も、起きる気配は無い。

 

「腹減ったな……」

 

しかし加賀美とて人間。

朝食を食べたくなるのは必然なのだ。

なんだかんだ、静江の手料理の味が恋しくなっている。

彼女が起きるまで待つしかなかった。

 

「……そろそろドワルゴンに行かなきゃな」

 

そんなことを呟くと、部屋の扉が忙しなく開いた。

寝起きの静江がそこにはいた。

 

「新くんごめんね!すぐご飯作るから!」

 

今の静江には寝癖がついており、髪が少し跳ねていた。

加賀美は思わず笑った。

今まで自分より先に起きていた静江の無防備な姿が新鮮だったからだ。

 

「静江さん、髪跳ねてますよ」

 

「え?」

 

静江は自分の髪を触る。

目に見えていなくても触ればわかる、間抜けな跳ね方。

 

「〜っ!」

 

それがわかった途端、静江の顔はみるみる赤くなった。

 

「ちょ、ちょっと待ってて!」

 

慌てて洗面所へ駆け出し、騒がしい音を出しながら身支度を済ませる。

扉が開いた時にいたのは、いつも通りの静江だった。

未だに顔が赤いことを除けば。

 

「あははっ」

 

「もう、笑わないでよ……」

 

いい朝だな、と加賀美は思った。

そして慣れた手つきで料理を始める静江を見て、朝食が完成するのを椅子に座って楽しみに待つ。

 

「はい、どうぞ」

 

「おおっ、きたきた!いただきます!」

 

加賀美はすぐに手を合わせて朝食にがっつく。

以前までは食事時は毎回死神と睨み合いをしていたものだが、気づけば好きな味へと変わっていた。

 

「最近新くんよく食べるね」

 

気づけばとは言うものの妙なことに、少し前から静江の手料理の腕は格段に上がっていた。

と言うよりは、加賀美好みの味になっていた。

 

「なんか、急にめちゃくちゃ美味くなったっていうか……」

 

「急に?」

 

「あ、いつも美味しいんですけどね」

 

静江は変な話だと首を傾げる。

食材の質が変わった訳でもないのに、そこまで味が変わるだろうか。

 

「それっていつ頃から?」

 

不思議なこともあるものだと思いながら、スープを1口掬う。

 

「確か……この国に来て最初の朝飯だと思います」

 

「!」

 

加賀美にとっては驚愕の出来事だった。

何と、食後に腹痛が来なくなったのだ。

 

「その時の朝飯がすげぇ美味くて……なんて言うか好きな味だったんですよね」

 

そう言いながらまた1口食べる。

口から出る言葉は。

 

「うん、美味い!」

 

1度も手を止めることなく食べ終えた加賀美は、食器をシンクに置きに行く。

 

「……静江さん?」

 

その間、静江が全く話さなくなったことを変に思って彼女の方を見ると、思わぬ光景にぎょっとした。

静江がスープを1掬いしたまま、耳まで真っ赤にして固まっていたのだ。

 

「し、静江さん!?」

 

「あ、え!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「っだ、大丈夫!うん、大丈夫だよ!」

 

そして今まで聞いたことないような大声を出した。

あまりの珍しさに加賀美も少し困惑する。

 

「ご、ご飯食べ終わったら早くドワルゴンに行こ!うん!」

 

「食べ終わってないの静江さんですけど……」

 

「あ、ご、ごめんね!すぐ食べるね!」

 

その日は珍しく、慌ただしい朝だった。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

ブルムンド王国を出る際、2人は見送りに来てくれたフューズに別れを告げていた。

 

「それじゃあシズさん、またいつでも来てください」

 

「ええ、ありがとう」

 

先程までの慌てっぷりはどこへやら。

英雄らしい堂々とした振る舞いだった。

 

「それと……カガミ!」

 

「はい!」

 

いい返事を返した加賀美を見てフューズはニヤリと笑う。

そして背中を叩いてこう言った。

 

「頑張れよ!」

 

「!」

 

加賀美は改めてフューズに向かって頭を下げた。

フューズはそれを見て門の中へ入る。

2人は門が閉まり切るのを見て、振り返る。

 

「じゃあ、行こっか」

 

「はい!」

 

目的地はただ1つ。

武装国家ドワルゴンである。

そしてやるべき事は。

噂のベルトが本当に「あのベルト」なのか確かめることだった。

 

「結局新くんが探してるベルトってどんな物なの?」

 

道中、静江はそんなことを問うた。

 

「あぁ、えっと……」

 

どうするべきだろうかと、加賀美は迷った。

今まで静江には自分が戦っていた時のことを話していない。

しかし。

 

「話すと長くなるんですけど、いいですか?」

 

今こそ話すべきだろうと思った。

 

「もちろん。新くんのこと、もっと知りたいから」

 

「じゃあ───」

 

できるだけ細かいところは話さず、加賀美は元の世界で何をしていたかを話した。

簡単に言えばワーム、ネイティブ、ZECT、マスクドライダーシステムの事だった。

 

「……急に色んな情報が来たからびっくりしちゃった」

 

話している際、静江は終始驚いていた。

 

「ですよね……」

 

「でも、新くんは立派に戦ってたんだね。世界を救っちゃうなんで、勇者みたいだよ」

 

それを聞いて、加賀美は誇らしく思った。

 

「……あいつらがいてくれたお陰ですよ」

 

文字通り、命を懸けて戦ってくれた仲間たちを。

 

「……せっかく平和になったのに、急にこの世界に来ちゃったんだね」

 

静江は悲しそうに言った。

確かに以前の加賀美であれば、そう思ったかもしれない。

 

「でも、良かったと思ってます」

 

だが今は。

 

「俺はこの世界に来て、やるべき事を見つけました。それをやり遂げるまでは……例え帰る方法を見つけたとしても帰れませんよ」

 

「!」

 

いつもなら、それが何なのか聞いていただろう。

しかし今は知ってしまっていた。

加賀美が、何を目的にしているかを。

 

『静江さんが自分の気持ちを我慢せず───』

 

思い出すのは、あの日の事。

 

『大事な人とずっと過ごせるように』

 

段々と、顔が熱くなる。

その熱は耳まで伝播していた。

この時仮面を被っていて良かったと、心底思った。

 

「静江さん?」

 

名前を呼ばれる度に、心臓が跳ねる。

 

「なっ、何?」

 

「何かそわそわしてますけど……」

 

「えっ!?あ、じ、実はドワルゴンに行くのが楽しみだなー、なんて……」

 

「あ、そうなんですか?」

 

苦し紛れの言い訳を加賀美はすんなりと信じ込んだ。

 

「う、うん……」

 

静江は何とか凌げたことにホッとする。

そんな静江を他所に加賀美は。

 

「もう日が暮れそうですよ。今日はどこで野宿しますか?」

 

当然のように聞いた。

 

「えっ!?そ、そうだね……えっと……」

 

いつもなら的確に判断を下す静江が、何故かしどろもどろになっている。

加賀美は不思議に思った。

 

「?」

 

その一方で、静江はこう考えていた。

しまった。

今日中に着くはずもないのだから、野宿は確定しているではないか。

こんな状況で眠れるだろうか、と。

 

「こ、この辺なら過ごしやすいし、今日はここで寝ようか」

 

静江は明日早めに着くという目的も兼ねて、今の内から休むことにした。

 

「はい!」

 

加賀美は慣れた手つきでキャンプ道具を設置する。

1分もしない内にテントを張り終え、次は夕食というところ。

あくまでキャンプ飯なので、宿で作れる出来たての食事とはいかなかった。

 

「ドワルゴンについたら、早く静江さんの料理が食いたいです」

 

「っ!」

 

キャンプ飯を食べながら、加賀美はそう言う。

対して静江は、未だに仮面を外せなかった。

嬉しさと恥ずかしさで真っ赤に染まって、見せられる顔ではなくなっていたからだ。

 

「あ、新くんは先に寝てて。今日は私が締めとくから」

 

静江は徐に立ち上がり、加賀美に顔を向けないようにしながら言った。

 

「あ、本当ですか?ありがとうございます」

 

静江の言葉を聞いた加賀美はすぐ様テントに入る。

 

「じゃ、おやすみなさい」

 

「お、おやすみ」

 

そして、あっという間に眠りに落ちた。

加賀美が完全に眠ったことを確認し、仮面を外す。

そして。

 

「(はぁああ!危なかったぁああ!)」

 

両手で顔を覆いながら、心の中で特大のため息を吐いた。

 

「(新くんは何も変わってないのに!早く慣れないと私の方が変になっちゃうよぉ!)」

 

その日の夜は、ずっと悶々としていた。

 

 

 

 

 

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