TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します 作:Revak
シリウス一行はダンジョンの十一層を潜る。当然配信もしている。
灯りには魔道具の光をアストレアが使用している。
使っているのはディライトという魔道具だ。
これは使用すると使用者の近くをふわふわと浮き一定範囲を昼のように明るくする魔道具だ。消費魔力も少ない。
それを使って灯りとし、アストレアが探知魔法で敵を探りネクサスギアの地図作成アプリで地図を作りながら攻略していく。
「お、前方から大蜘蛛一体接近中」
「うし、やるか」
そう言うとカーラが先頭に立ち大地と陽斗が武器を構える。
大地はこのために剣を買った。流石に蜘蛛やムカデを素手で殴る勇気はなかったらしい。
前方から四メートルほどの大きな蜘蛛がやって来た。形としてはタランチュラに似ている。
カーラが蜘蛛の前足の攻撃を両手の盾で受け止める。
その間に大地と陽斗が左右に回り斧と剣で攻撃する。
この大蜘蛛は魔法で巨大化させられた昆虫だ。
魔法で生物を巨大化させるのはそう難しいことではないが、やる意味は特にない。
しいて言えば牛などの貴重な肉を持つ動植物を巨大化させ大量に採取するという使い方は出来るがただの蜘蛛を巨大化させても意味は特にない。
なのにこれだけいるのはダンジョンを作ったアオスが巨大蜘蛛とか定番だよな、と思い巨大化させたのだ。
ただ魔法による巨大化は遺伝しないので自動化した魔道具による自動巨大化設備がこのダンジョン内に設置されている。
巨大化しているとはいえ所詮は虫だ。
魔力操作で強化された上クリティカルが出やすい斧と単純に素のパワーも強い剣に斬られればすぐに死んだ。
そして体液が飛び、大地にかかった。
「うわ、ついたな」
きったねと大地は呟く。
「私が綺麗にするよ……クリーン」
そう言うとアストレアは浄化魔法を大地に当て、綺麗にする。
「おう、さんきゅー」
軽く礼を言い合い探索を再開する。
その間もコメント欄は大盛り上がりだ。
【蜘蛛のリアリティヤバ】【ポリゴンのつなぎ目とか無いんだが】【動作もグラも現実その物じゃねこのゲーム】【こんだけ金かかってるのに見つけられないの怖いんだが】
【アストレアちゃーん。このゲームの名前教えてー】
「ん-、このダンジョンの名は不死王の墳墓、です。それ以外は秘密で!」
【秘密主義だなぁ】【まぁそれだけわかればググれば出るやろ】【出なかったら怖いがな】
そうしてコメントと仲間と話していると宝箱を見つける。
「よし、開けよう」
陽斗がそう言い宝箱を開ける。
中身は若干悪かった。
治癒のポーション一つに鞭が一つだ。
鞭の方は魔道具だ。
「解析しまーす」
横からアストレアが宝箱をのぞき込む。
「治癒のポーションは擦り傷とか治る程度、鞭の方は振るうと鞭に炎が着く効果付きだね」
「炎か……ここじゃな使えないな」
洞窟という閉所空間で炎を使えば最悪酸素が無くなって酸欠で死ぬかもしれない。
これまでもこういった使えない魔道具は出て来たがその度に売却してきた。
取りあえずしまっとこうとアストレアのアイテムボックス内に収納する。
「けど結構宝箱出るな。探索して一時間なのにこれで九個目だぜ」
「モンスター倒しても利益内から宝箱で利益だしてるのかもね」
「割と挑戦者の事よく考えられたダンジョンだよな、ここ」
四人でそう話し合いながら宝箱を閉じ、探索を再開した。
■
特にイベントもなく、ダンジョン探索は順調だ。
だが、洞窟であり地図アプリをもってしても広大であり六月十九日になってもまだ第十二層までしか進めていなかった。
そうして十九日、配信を終えた一行はダンジョン近くのファミレスに寄っていた。
「探索系の仲間がいるな」
そう言うのは大地だ。
それぞれ料理とドリンクバーを頼み長居する気満々である。
「そうだけど、だれかいい人いる?」
アストレアがそう尋ねる。
それに対し大地と陽斗は黙りこくった。
魔法世界に来て数か月経つがコネなどないのである。
「だったら、幻獣はどうだ?」
カーラがそう提案した。
「幻獣? 探知特化の知り合いでもいるの?」
アストレアが首をかしげながら問いかける。
「知り合い、というほどではないが……妖怪の里に一人探知に特化した幻獣が居てな。彼女が居れば効率的にダンジョンを攻略できるだろう」
「おお、ぜひともスカウトしたい」
アストレアがワキワキとする。
「だが問題があってな……彼女は妖怪の里に居て、通常手段で行くことは叶わないんだ」
「魔法で隠されてるってことか?」
陽斗がそう問いかける。
「多分そうだろうな。二年生の時遠足で妖怪の里を見学に行ったときに知り合っただけの仲だし、彼女ネクサスギア持ってないからラインも好感してないしな……どうやって行くかという問題もあるし……」
「それならわざわざそいつ探してスカウトするより掲示板化何かで探知系魔法使い募集した方がよくないか?」
大地がそう尋ねる。
「ただ探知系能力は高いんだ。迷子になった私をすぐ見つけてくれたし、先生の元まですぐ案内してくれたしな」
「それならその人がいいな。よし、困ったときは先生に聞いてみよう!」
「授業と関係ないことだから答えてくれるかわからんが……まぁ、ダメもとで聞くだけならいいか」
そうして届いた料理を食べながら話を続ける。
「二年の時妖怪の里に連れてった先生は誰だ?」
大地がそう問いかける。
「望月先生だ。歴史の担当だな」
カーラが答える。
「望月先生か……あの人実年齢幾つなんだろうな」
望月というのはフルネーム望月文の事だ。
歴史担当の教師であり実年齢は二百を超えているが外見年齢はどう見ても十六歳にしか見えない女性教師である。
「女性に年齢を訪ねるのはマナー違反だぞ」
「む、すまんな。それじゃあ飯食い終わったらみんなで行くか」
「いや、大勢で行っても邪魔になるだろ。アストレアとカーラに頼んだ」
「それもそうか……じゃあ二人とも、頼んだ」
「任されました」
そうして食事を終え、四人は解散した。
■
六月二十一日。午後十一時。
アストレアはカーラと合流し職員室に向かっていた。
一階の職員室に着き「失礼します」と言ってからドアを開ける。
中には教師たちが居る。
レグルス、エルンスト、望月、田山の四人だ。
この大学には十一人の教師がいる。
アストレアとカーラは望月に近づく。
「望月先生、今ちょっといいですか?」
望月はくるりと椅子を回転させ二人を見る。
「はい。なんですか?」
カーラが問いかける。
「妖怪の里に行きたいんですが、どうやったらいけるのか教えてくれませんか?」
カーラは唾をのむ。
妖怪の里は特に場所を隠されていないが一応幻獣の里なので結界に隠されている。
普通の人間が入れないよう守られた場所だ。一般人に存在が知られると面倒なことになるので隠されているのである。
アストレアの解析を解体の魔法があれば場所させわかれば侵入は容易だがそんなことするわけにはいかない。
「妖怪の里ですか? でしたらホームページがあるのでそこか申し込みして行けますよ」
その言葉に二人ともきょとんとした顔をする。
「ホームページあるんだ……」
アストレアがそう呟いた。
「はい、あります。ちょっと待ってくださいね」
望月はそう言うとパソコンから魔法世界用のネットを開き検索、するとそこにホームページが出て来た。
ホームページには堂々と「ようこそおいでませ妖怪の里!」と書かれている。
「このページからここに申請すれば妖怪の里に行けます。場所は長野県の山奥ですね」
「ありがとうございます。こちらか申請してみます」
「けど、申請しないと行けないんですか?」
アストレアが気になったことを問いかける。
それに対し望月が答える。
「妖怪の里は一般人が来れないよう魔法で結界を張ってますからね。それを無視していくとなると不法侵入になりますから申請は必須です」
「なるほど、わかりました」
ありがとうございましたーとアストレアとカーラは礼を言いながら職員室を後にした。
■
六月二十四日。午後十二時。
アストレアとカーラの二人は転移魔法で長野まで来ていた。
アストレアがシエロからコピーした情報系の魔法で長野を千里眼で見て転移。認識阻害しながらカーラを抱えながら空を飛ぶこと三十分ほどで目的地にたどり着いた。
それは長野にある廃トンネルの前だ。手前には狐の石像があり、石像前には若い男が立っている。
きちんとネクサスギアを付けている。
アストレアはカーラを抱えながら男の近くに降りる。もちろんカーラをおろしてからだ。
降り立つと男が話しかけてくる。
「貴方たちが申請してきたアストレアさんとカーラ・ルボーさんですか?」
「はい、あってます」
「ありがとうございます。今から妖怪の里に入るので、ついてきてください」
そうして男に二人は着いて行く。
トンネルに入り、潜って抜けると其処は別世界だった。
「おぉ……」
そこにはのどかな農村が広がっていた。
家々の建築様式は昭和のそれに近く、平原にぽつぽつと家がある。
公園もあり、公園では幻獣たちが話している。
天狗の幻獣と鬼の幻獣だ。その二人はアストレアとカーラに気づくと手を振ってくる。
アストレアとカーラも振り返す。
「それじゃあ、私はここで。なにかあったり帰る場合はこちらに連絡をください」
男はそう言うとネクサスギアの電話番号をドロップでアストレアとカーラに与える。
ありがとうございましたーと二人は礼を言う。
「それじゃああの人……アグネスさんを探そう」
「どこにいるかなー」
「まずはあの二人に聞いてみよう」
「そうだね」
そうして二人は公園に行き鬼と天狗に話しかける。
カーラのが人物的特徴を知っているのでカーラが話しかけた。
「すみません、ちょっといいですか?」
それに対し鬼の方が快く答える。
「おう、なんだ。観光名所でも知りたいのか?」
「いえ、そうではなく……鼠の妖怪の幻獣のアグネスという方を知りませんか?」
「アグネス? あぁ、あの小柄な。あの人ならこの時間なら家にいるはずだけど、何の用だい?」
それにはアストレアが答える。
「実は私たちダンジョンを攻略してまして、その仲間になってもらえないかなと」
「ダンジョン? そんなのあったっけ?」
ダンジョンという言葉に鬼と天狗両者疑問符を浮かべる。
ダンジョンの知名度は悲しいが低いのである。
「アーカディアの街にあるんですよ。そこを攻略したいので仲間がいるんです」
「ふーん。ま、よくわからんがわかった。暇してるし案内してやるよ。こっちだ」
そうして鬼の案内の元二人は里を歩く。
里の中には天狗や鬼、カラスや一反木綿、獣人などが居る。
この里は妖怪の里というが長が妖怪であるだけなので妖怪以外も割といる。
そうして十分ほど歩く事で目的地の家に着く。
三階建ての木造建築の家だ。
「ここがアグネスさんの家だ。案内はここまで、それじゃあな」
そうして鬼は去っていった。
「じゃあ押すね」
インターホンをアストレアが押すとピンポーンと音が鳴る。
インターホンから声がする。
『はい。なんでしょう』
声は若い……というよりは幼女の声にも聞こえる物だった。
「すみません、アグネスさんに用事があるのですが、今いいでしょうか?」
『私に用、ですか? 少し待ってくださいね』
そうして階段を降りる音がし、ドアが開かれる。
「はいどうも……あんたら、誰?」
出て来たのはまさしく幼女だ。
百四十センチの小柄な体。鼠色の髪と目。
特徴的なのは頭上から生える鼠の耳と尻から生えている鼠の尻尾だ。
「お久しぶりです、アグネスさん。あの時迷子になっていた者、と言えばわかるでしょうか」
カーラが苦笑しながらそう自己紹介する。
その言葉にアグネスはぽんと手を叩く。
「あぁ、あの時の。なんだい、今度は何の用だっていうんだい?」
「実は、今私たちはダンジョンを攻略してまして……その、仲間になってもらえないかな、と」
「ダンジョン? よくわからないが、まぁ中に入りな」
おいでとアグネスが手招きし、二人は家に入る。
玄関で靴を脱ぎリビングの椅子に座る。アグネスが麦茶を用意してくれたのでアストレアは飲む。
「それで、そのダンジョンってのは何だい? ゲームに出てくるボスとか出るやつかい?」
それに答えるのはアグネスだ。
「はい。不死王の墳墓という五賢人の方々が作ったダンジョンがありまして、私たちは今そのダンジョンを攻略しているのです。全百層の内今は十二層を攻略しています」
「一割は進んだのか。けどダンジョンてことは……なるほど。探知系特化の魔法使いが欲しくて私に会いに来たって訳かい」
「はい、その通りです。ダンジョンでは宝箱も多く出現するので換金すれば金銭も多く得られます。ですのでアルバイトの代わりにするというのもまた──」
アグネスはカーラの金銭、という言葉に目を輝かせた。
「何? お金が手に入るのかい? どれぐらい手に入る?」
「今のところは三時間潜って一人当たり一万円ほどは手に入りますね」
「探索職なしでそれだけ?! てことは私が居ればもっと儲かるね! いいよ、行こう今すぐ行こう!」
その言葉にアグネスはひゃっほいと興奮する。
「あの、ダンジョンはアーカディアの街にあるので住居などは……」
その言葉にアグネスは冷静になる。
「む、それもそうか……それじゃあ引っ越し先を探したりするので二週間はかかるな。時間を貰うが大丈夫か?」
「大丈夫です。乗り気になってくれて私もうれしいです」
「む。これから仲間になるんだ、敬語は使わなくていいぞ。そちらの女性もな」
「わかった。よろしく頼む、アグネス」
「あぁ、よろしく、カーラ」
こうしてアグネスが仲間になった。