TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します 作:Revak
翌朝の朝九時。
シリウス一行とサラはサラの屋敷内の庭にある物置に来ていた。
「これが物置?」
アストレアが信じられないという顔で問いかけた。
「そうよ。まぁ、物置にしては少し大きいわよね」
「少しどころじゃなくないか?」
大地がそう苦笑しながら言った。
物置として案内された先は一軒家ほどの大きさがある場所だ。
外見は三階建ての建物のようで横にも縦にも大きい。
「一階と二階、三階は特に何もないけど、問題は地下なのよ」
入って、とサラが先頭に立ち一行は入っていく。
中はごく普通の作りだ。
壁には棚があり掃除道具や庭の手入れ道具、よくわからないオブジェなどが置いてある。
「なんか、普通の倉庫だな」
大地が周りを見ながら呟いた。
「実際普通の倉庫よ。ダンジョンなのは地下からね」
そうして暫く歩くと地下への階段を見つける。
アグネスが解析し言う。
「これ、結構古い封印で強力な奴がかかってたね。永続しない代わりに効果時間中は超強力な奴だ。多分千年ぐらい前の物かな」
それにサラが驚いた顔をする。
「そうなの? そんな昔の先祖に魔法使いが居たのかしら……」
魔法の才能は遺伝しにくい。そのために家系に魔法使いが複数いるのは結構なレアと言えるだろう。
「それじゃあここからはいつもの順で行こう。サラはアストレアの傍に居てくれ。それでいいか?」
カーラが装備を纏いつつ言った。
「専門家に任せるわ。それじゃあアストレア、お願いね」
「任された」
アストレアもアイテムボックスから大鎌を取り出す。
大地、陽斗も装備を纏いアグネスを先頭に階段を降りていった。
降りていった先は整備された石の道が続いている。
壁には魔法の灯りがあり明るさは問題ない。
縦横に広く六人居ても余裕を感じられる広さだ。
「それじゃあ最奥まで案内するでいいんだよね」
「それで頼むわ」
「わかった。こっちだ」
アグネスに従い先へと進む。
「道中出てくるゴーレムはどうする? 念のため破壊するか?」
アストレアがそう尋ねる。
それにはアグネスが答えた。
「この手の魔法使いが作ったダンジョンは最奥に管理用の魔道具があるのが基本だ。無視しても大丈夫だろう」
「ん、わかった」
そうして警戒しながら進む。
雑談を交わす余裕はあるが真面目に攻略しないといけないので一行は無言だ。
十分ほど進むとアグネスが止まる。
「この先階段があるけど、ゴーレムが二体居る。交戦は不可避だ」
それにカーラがやる気を見せる。
「わかった。一体は私が押させるからもう一体は陽斗と大地に任せる」
「任せてくれ!」
「了解だ」
それに陽斗と大地は威勢の良い返事をする。
そうして警戒しながら少し進むとゴーレムに遭遇する。
鎧を纏ったゴーレムだ。中世の騎士のような恰好をしている。右手には剣を、左手には盾を持っている。
「こいっ!」
カーラが挑発するとゴーレムの片方がカーラに向かい、もう片方は陽斗に向かった。
カーラは防御魔法を展開し盾でゴーレムの攻撃を受け止める。
もう片方は陽斗に襲い掛かるも陽斗は回避率の確立を上げる事で回避する。
「ふんっ!」
攻撃した後の隙を大地が狙い拳で殴った。
腹を殴り腹がへこむ。
行動が出来なくなるほどのダメージではない。ゴーレムは剣で斬りかかるがそれより早く陽斗が斧でクリティカルダメージを出し両断した。
その間に大地は駆け出しカーラを襲っているゴーレムをぶん殴る。最近覚えた身体強化の魔法により上半身と下半身が別れ倒された。
「うし、この調子で行くぞ」
大地がそう言い、全員賛同し奥へと進んだ。
■
順調に第二層を進んでいた。風景は何も変わらない。
そうして進んでいると行き止まりに辿り着く。
「これ、魔法による鍵付きの扉だね。暗号を解かないと進めないみたいだ」
アグネスが解析結果を言う。
今アストレアたち一行が居るのはそこそこ広い広間だ。
床にはセフィロトの樹の模様がある。だが位置が間違っている。
正面には扉があるが固く閉ざされている。
「これ、どうするのが正解なんだろ」
アストレアが疑問に思いながら問いかける。
「これセフィロトの樹よね。てことはこれを正しい位置に直すとかじゃない? これ取れそうだし」
サラがそう言いながらマルクトを手に取って見せた。
「ほら取れた」
「おぉー……問題はセフィロトの樹の位置なんて覚えてないってことだな」
「ググろうぜ」
大地がそう言いネクサスギアでネットを開こうとするが、地下なので圏外だった。
「誰かセフィロトの樹知ってる人ー」
アストレアがそう言うが手を挙げる者はいなかった。
「詰みか?」
大地が苦笑しながら言った。
「総当たりというのはどうだ」
カーラが脳筋手法を上げる。
それにアグネスが待ったをかける。
「間違えた位置にするとトラップが発動する。それはやめた方がいい」
「そうか……」
さてどうしよう、と一行は悩む。
ここから地上に戻るのは一苦労だ。
それに対し陽斗がポンと手を叩く。
「そうだ、アストレアに一階地上に転移してネットでセフィロトの樹の写真ダウンロードしてきて貰えばいいんじゃないか?」
それに確かに、と一行は納得した。
ではさっそくとアストレアは転移魔法で地上に戻りネットでセフィロトの樹をダウンロード。地下に戻る。
「戻ったよー」
「おう、じゃあ早速はめようぜ」
そうして五人協力しながら位置を直す。
十分ほど悪戦苦闘していると位置が直り、カチっという音がした。
ゴゴゴ、という音と共に扉が勝手に開いて行った。
「うし、先行くぞ」
そうして更に奥へ進んだ。
■
第三層を進んでいるとアグネスが「止まれ」と指示を出した。
「まずいな……正解の道はこっちなんだが、どうしてもトラップ部屋を通らないと行けなくなってる」
「トラップの内容は?」
「モンスター部屋だ。と言っても出てくるのはゴーレムだけだが……出てくるのまではわからないな」
「言うてこれまで出て来たゴーレム弱いし大丈夫だろ」
そう陽斗がのんきに言う。
それに賛同するのはカーラだ。
「正解がそれしかないなら進むしかないだろう。念のためサラ嬢は私の近くに居てもらうとしようか」
「わかりました」
そうして隊列を少し変えてから奥へと進む。
進んだ先は四角い広場だ。結構広い。
中央に入ると同時にブザー音が鳴り響く。
そして召喚魔法でゴーレムが次々と召喚される。
ゴーレムたちはこれまで出て来たのと同様鉄の鎧を纏った人形のようなゴーレムだ。
剣と盾を装備したオーソドックスな兵士である。
「私は罠の解除をするからみんなはゴーレムを倒してくれ!」
アグネスがそう叫びつつカーラの近くに移動した。
「了解!」
「任せろ!」
「全部殴ればどうにかなんだろ」
そうして戦闘組三人、アストレア陽斗大地が武器を構えつつゴーレムたちに突撃した。
アストレアは手加減する必要も今はないためエンハンスを使い身体能力を強化する。
ゴーレムたちをばっさばっさとなぎ倒すが数が減る気配はない。
大地と陽斗は拳と斧で攻撃していく。
一体一体は脆く一撃で破壊できる程度の個体しかいない。
だが数が多い。回避率を上げれる陽斗はともかく大地は何度か剣で斬られる。
だが身体能力強化の魔法を覚えたため皮膚の強度も上がっている大地は少しあざが出来る程度で済む。
「回復回復ぅ!」
アストレアが隙を見ながら回復魔法を飛ばして行くためダメージも問題にならない。
回復魔法は傷などの治癒と同時にスタミナの回復も可能にする。これでいつでもフルスロットルで活動可能だ。
「屍さらせオラぁ!」
アストレアがそう叫びつつ大鎌で薙ぎ払いを繰り出す。
ゴーレムの胴体から真っ二つに斬り裂き三体のゴーレムを破壊した。
だが、それでもゴーレムは湧いて襲ってくる。今も召喚の魔法陣からゴーレムが出てくる。
「こ、これ大丈夫なの?」
防御魔法のバリアの中に居るサラが心配そうにカーラに尋ねた。
「この程度問題ない! モンスター部屋は何度か経験済みだからな!」
バリアの維持に力を注ぎながらカーラはそう叫んだ。
時折近づかれて攻撃を受け続けると受けたダメージを返す魔法でバリアの外のゴーレムにダメージを与えつつ耐久をする。
「解除完了! 今いるので終わりだ!」
アグネスがそう叫びよっしゃ、と三人は気合を入れる。
「全員死ねゴラァ!」
アストレアがそう叫び大鎌を振るいゴーレムたちを薙ぎ払っていく。
陽斗と大地は堅実に一体ずつ相手し破壊していく。
そうした掃討戦が五分ほど続き残ったゴーレム全てを破壊出来た。
「よし、これでここは安全だな」
アストレアがそう言いながら大鎌をしまった。
「それじゃあ、先に行こうか」
アグネスがそう言い進み始める。
「しかしなんで物置にこんなダンジョン作ったんだろうな」
大地が気になって話し出した。
それに答えるのはサラだ。
「わからないわ。祖母に聞いてみたけど祖母の若いころからあったらしいし……」
「アグネスが言うには千年前の代物だからな。何か手記とか見つかればいいんだけど……」
そうして話しながら奥へと進む。
■
五層の奥まで進んだ。
道中謎解きの類はもうなくゴーレムが徘徊しトラップがあるだけだった。
ゴーレムの少ない道を選びトラップは避けるか解体し進むことで最奥へとたどり着いた。
「これ結界魔法だな」
そうした奥には両開きの扉があり、黒いが金のスリットが所々入っている。
魔法陣が浮いており正面を向いている。
「まぁ私の手にかかればちょちょいのちょいだよ」
そう言いながらアグネスが解析と解体を始める。
正直アストレアの解析魔法の方が精度は上だが専門家に任せた方が良いだろうとアストレアは何も言わない。
そうしてすぐに解除され、門が開く。
一応警戒しながら部屋に入る。
部屋は長方形の部屋で奥行きがある。
奥の左右には巨大なおっさんの顔に手足が生えた奇妙な像がある。両個体ともハルバードを持っており交差させている。
正面にはまたも結界魔法が貼られており、その奥には一冊の本が置かれている。
警戒しながら奥へと進むが特に何も起こらない。
結界の前に着くとアグネスが解析を始めようとし、即座に辞めた。
「駄目だ、これリアクティブアーマー……干渉した途端トラップが発動する仕組みだ。解除も出来ない」
「どうにか出来ないの?」
サラが尋ねる。
「うーん。トラップ発動させていいなら解除出来るけど……これ何かしら魔法的、物理的に干渉した途端何かしらのトラップが動くタイプだから危険だよ」
「まぁ、見るからに怪しいあの像動きそうだよな」
陽斗が像を見ながら言う。
「先手を打って壊しとくか?」
アストレアが大鎌を構えながら言った。
「いやそれでもトラップ発動するから駄目だよ」
アグネスが慌ててアストレアを止める。
どうしようか、と一行は頭を悩ませた。
一分ほどの沈黙ののち、サラが口を開く。
「どんな罠だとしても踏み砕けばいいと思う。力技で突破は出来ない?」
それに対しアグネスは微妙な顔をしながら回答する。
「これまでのトラップやゴーレムを見るに対処できなくはないだろうけど……」
「ならいいんじゃない? ここまで来たんだしさ」
アストレアがサラを肯定するかのように言う。
それにアグネス以外賛同する。
「わかった。じゃあ解除するよ」
アグネスがそう言い全員武器を構えた。サラは危ないのでカーラの傍に移動する。
アグネスが結界に触れた。
途端像が動き出す。
ハルバードを構えアストレアに突撃。
その速度はこれまで以上に速かった。アストレアがこれまで戦ってきた敵どれよりも速い。
油断も慢心も出来ぬとアストレアはエンハンスを起動。ハルバードを大鎌で受け止める。
だが、少し押される。
(不味い! このレベルだと他のみんなが!)
そう思いアストレアはちらりともう一体を見る。
そこにはカーラがタゲを取りつつ陽斗と大地が攻撃をしていた。
あれならばすぐにやられることはないと思いアストレアはこの一体に集中することにする。
大鎌を振るって攻撃をするも開いてもハルバードで迎撃する。
(身体能力では俺のが上だが技術で負けてるな)
数合斬り合う事でそう察する。
ならば、とアストレアは後ろにジャンプし距離を取る。
「
オリヴィアからコピーした魔法を放つ。
対し像はハルバードの柄を地面に差し、不動の構えだ。
魔力弾が全て像に命中する。
命中後、そこにあったのは少ししか傷がついてない像だ。
(遠距離の軽減? それとも魔力そのものに対する耐性……どっちだ?)
魔法を入れかえ解析魔法を使う。
触れなければ正確にはわからないが、それも格上や隠ぺいしている相手に限る。
相手をほぼ丸裸にすることに成功する。
(さっきのは移動しない縛りをすることで防御力の強化だな。あからさまな遠距離は防がれると思っていい。効果時間はそこまで長くないっぽいな。他は雑魚召喚だけか)
「やれるね」
そう言いアストレアは像に突撃する。
像はそれを見てハルバードを構えぐるぐると回転し出す。
竜巻のように風を起こしながらアストレアに突撃する。
それを見てアストレアはさすがにあれに巻き込まれるとやばい、と感じ回避に変え後ろにジャンプする。
それに合わせ像もジャンプしアストレアに突撃。
そのまま横からハルバードでアストレアを攻撃する。
アストレアはとっさに大鎌を挟むことで防御には成功するも腕の骨が折れた。
そのまま吹き飛ばされ横側の壁に衝突した。
(か、回復魔法を!)
戦闘時回復魔法を使うのは基本悪手だ。
精神や肉体に干渉する魔法はとかく他者からの干渉も受けやすい。
そのため戦闘時に回復魔法を使えばそれを逆手に取られ肉体を腐らされることもある。
だが相手はゴーレム、魔法の仕えない相手だから大丈夫だと思い回復魔法で折れた腕を治し大鎌を構え突撃する。
回転が終わりクールタイムでも発生しているのか像は動かない。
そのままアストレアは像を真上から切り落とす。
深い切れ込みが入るも行動停止に至るほどではない。
像はハルバードを持っていない左手の方でアストレアを掴もうとするがアストレアはアルゲティを放つ。
魔力のレーザー砲により像の胴体に風穴が空く。
だがそれでも像は動く。ならばとその巨体でタックルをかました。
それにはアストレアは反応できずタックルを受け吹き飛ばされる。
空中を回転しながら体勢を直し着地すると同時に像がハルバードを振り落とす。
咄嗟に大鎌の柄を挟むことで防御できるも足場がへこむほどに強力な一撃を貰う。
「ふんぬらばっ!」
ならばとエンハンスと魔力操作の身体能力強化を合わせ、更に単純に魔力を放出することでハルバードを弾いた。
その隙を狙うように三度連続で斬りつける。
深い傷が刻まれるもまだ動く。
「しぶといな!」
いつもの不死王の墳墓のゴーレムなら既に壊れているダメージを受けても相手は動く。
像は口を開け魔力をためる。
「それあり?!」
ゴーレムが行使するのは魔法ではない。
自己維持に使う魔力すら消費することによる単純な魔力をレーザーとして放つ技だ。
上に大鎌を上げている為そのままアストレアはレーザーを腹に喰らい奥へと吹き飛ばされる。
「ぐぇっ!」
入口の扉にぶつかりようやく止まる。
止めをささんと像は突撃をかます。
(ぼ、ぼうぎょを──)
そう思うもそれよりも早く像が動く。
ハルバードによってアストレアの体は右肩から斜めに斬られた。
「いてぇぇぇぇぇえ!!」
そう叫ぶも像は止まらず止めを刺そうとする。
流石にあかんと登録しておいた転移魔法で像の背後に転移する。
像の攻撃が地面を攻撃した。
(これがラストチャンス!)
そう思いアストレアは大鎌を振るう。
魔力操作による身体能力強化と魔法による強化を全力で会わせる。
結果──像は顔の半分から上下真っ二つに斬られた。
流石にこれで機能停止し像は止まった。
「た、助かった……」
そう呟きながらアストレアは回復魔法を行使する。
そして服を着られ胸が露出しているのにも関わらずもう一体の像の元へ駆け出した。