TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します   作:Revak

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第25話

 

 翌日の九月二十六日日曜日。

 シリウス一行はアーカディアの街のある店前に来ていた。

 

「ここがジャネット武具店か」

 

 武具店は川の前にある店だ。

 水車がくるくると川の流れによって回っている。

 店自体は古風というか中世の鍛冶屋を思わせる作りをしている。

 

 この店はネットでググると出て来た店だ。

 店の場所はアーカディアの街にあるとわかったが宝箱に入ってたチケットをどう使うかわからないので取りあえず来てみたのである。

 

 アストレアを先頭に中に入るとドアにつけられた鈴がちりんと鳴る。

 

「いらっしゃいませー」

 

 店員か店長のやる気のない声がする。

 

 中には多数の武具が置いてある。どれも魔道具だ。

 剣、槍、盾、メイスなどなど。防具ももちろん置いてある。

 

 アストレアが代表としてカウンターに座っている女性に話しかける。

 

 ピンク色の髪と赤い目をした女性だ。

 何故か裸エプロンの格好をしている。たわわな胸がこぼれそうである。陽斗と大地は目線を反らした。

 

「すみません、私たちこのチケットを手に入れた物なんですけど……」

 

 そう言いながらアストレアは六枚のチケットを見せる。

 

「はいはい……あぁ、これ? てことはあなた達ダンジョン進んでるんだ」

 

 感心したような声を店長のジャネットは上げた。

 

「このチケットはちょっと前に五賢人のモルト様が来て、ダンジョンにアイテム入れたいんだけどどういうのがいいのかって話があって、どうせならどんな武器や防具でも作ってあげるチケットならどうかってなってダンジョンに入れた物なんですよ。それじゃあこれ六枚あるんで六人分の武器か防具用意できますよ」

「おっまじ? ……値段は?」

「ただでいいっすよ。モルト様からお金は貰ってるんで」

「マジか! どうする?」

 

 五人は集まって話し合う。

 

「武器作ってもらおうぜ!」

 

 そう切り出したのはアストレアだ。

 それに対しアグネスが待ったをかける。

 

「全員攻撃力は足りている。不足している防御力を上げるべきだ」

 

 それにカーラも同意する。

 

「私はアグネスの意見に賛成だ。敵の攻撃の度私の元に来るのでは時間がかかるからな。素の防御力も高めた方が良い」

「じゃあ武器はまた今度だな。防具どんなのがいいかな」

「イメージ言ってくれれば幻術で見た目用意するよ」

「ならそれで頼むか。俺は柔道着で頼む。その方が気合入るんだ」

「俺はファンタジーの冒険者っぽい格好がいいな!」

「私は今の鎧をアップグレートしたのが良いな。それと──」

 

 四人はワイワイ話し合う。

 

 その間にブーフがジャネットに近づく。

 

「本用の防具や武器はあるかね?」

「流石にないっすね」

「そうか……」

 

 その返答にブーフはしょんぼりとした。

 

 十分ほど話し合った後アストレアが全員分の幻影を出す。人形サイズの幻影だ。

 

「すみません、防具こんな形でお願いしたいんですけど……」

「はいはーい今コピーしますから待ってくださいねー」

 

 そうして幻影をコピーし全員から望む効果を聞き出す。

 

 色々と聞きだした後、ジャネットが言った。

 

「じゃあ全員分作るのに二週間かかるんでその間お待ちください。電話番号教えて貰えますか? その電話番号に出来たら連絡するんで」

「じゃあ私のを」

 

 そうしてアストレアが電話番号を渡す。

 

「じゃあ二週間後によろしくお願いします!」

 

 そうして一行は店を出た。

 

「しかし二週間後か。その間どうする?」

 

 大地がそう話を切り出した。

 それにアストレアが返す。

 

「実は私やりたい事あって……二週間の間ダンジョン探索中止してもいいかな」

 

 真剣な声と表情でアストレアは言う。

 陽斗が口を開く。

 

「やりたい事ってなんだ?」

「うん……家族の墓参り、かな」

 

 

 ■

 

 九月二十八日。午後十三時半。

 アーカディアの街のとあるカフェ前にアストレアと透は居た。

 

 アストレアは透に話しかける。

 

「すみません、待ちました?」

「いや。今来たところだ……中に入ろうか」

「はいっ!」

 

 そうして二人はカフェに入り、適当な席に座る。四人席だ。

 

 二人はそれぞれココアを注文する。それとチョコケーキだ。好みが似通っているのである。

 

「それで話って?」

 

 注文した物が来たタイミングで透が話を切り出した。

 透は仮面の上からココアとケーキを食べているが魔法の力である。アストレアは見るのは初めてじゃないので特に何も言わなかった。

 

「実は、両親の墓参りをしたいんですが……その、両親が最後どこで死んだかもわからなくて、調べようがないんです」

「まぁ、過去から八十年近く経ってるからね。それを調べてほしいと?」

「というよりは調べられる人を紹介してほしい、です。魔法使いの探偵さんとかに調べて貰おうかなと……」

「ん、良いよ。一人魔法使いの探偵を知ってる。紹介しよう」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「別に良いよ。アフターフォローも秩序の刃の仕事だからね。こちらこそ気づかずすまない」

「いえいえ、大丈夫ですよ……盆を過ぎたころに気づいちゃった私も悪いですし」

 

 そうアストレアは苦笑しながら言った。

 

 そう。アストレアのしたい事は両親……家族の墓参りだ。

 と言っても父は幼少のころに離婚して絶縁しているのでどこにいるか知らないし興味もない。したいのは母親と姉の方だ。

 最期に住んでいた街は知っているがそこから引っ越した可能性もある。そこから探しまくるとなるとそう言ったことが得意ではない自身ではどれだけかかるかわからない。

 ならば魔法が使える専門業者の頼んだ方が良い、と思ったのだ。

 

 透は財布を取り出し財布からある名刺を取り出す。

 

「えーと、ここだ」

 

 そう透は名刺を差し出す。

 

「これは……真壁探偵事務所?」

「あぁ。埼玉県の川越市に居を構える事務所だ」

「埼玉県っすね。わかりました。ありがとうございます。今度行ってみます」

「おう……ところでダンジョン配信の方はどうだ? 順調か?」

「順調で今第二十六層まで進みました」

 

 その言葉に透は仮面の下で驚いた顔をする。

 

「おぉ、結構進んでるな。再来年には攻略できそうだ」

「……気になってんだんですけどダンジョンってなんで作ったんです? 宝箱の中身とかも五賢人……モルト様の物だって聞きますし」

「あぁ、あれ作ったの完全なノリと勢いなんだよ。最初はアオスの奴が最近倉庫が溢れそうとか言いだして、じゃあ売れよって言ったんだけど売るのはもったいないとかいうし、じゃあ他者に譲渡とか……手色々話してたらダンジョン作って配置することになった」

「えぇ……? ノリと勢いであの規模のダンジョンを……?」

「俺以外の奴らみんなぶっ飛んでるからなぁ」

 

 ノリと勢いで作ったあんたもぶっ飛んでるのではないか。そう思ったがアストレアは黙っておいた。

 

 

 

 

 ■

 

 十月二日。朝の九時ごろ。

 アストレアはアーカディアの街を経由し埼玉県川越市のある場所に来ていた。

 場所としては人気の多い場所だ。駅からは近いとも遠いとも言いにくい場所だ。

 

「ここか」

 

 着いた先は四階建てのビルだ。

 一階には喫茶店が入り、二階が探偵事務所になっている。

 まるで小さくなった名探偵の店のようだと思いながら外の階段を上っていく。

 

 上がり切ったところに扉はあり、インターホンもある。

 ぽちっと押してインターホンを鳴らす。

 

「はーい」

 

 インターホンから若い女の声がした。

 ここの主は女なのだろうかと思いながら返事をする。

 だが名刺に書かれている名前は真壁恒一。男の名だ。

 

「すみません、少し変わった依頼をしたくて来た者なんですが……特に予約とかはしてません」

 

 その台詞に声の主は露骨に機嫌がよくなる。

 

「わかりました! 依頼ですね! どうぞ中へ!」

 

 言われるがままアストレアはドアを開けて中に入る。

 

 中は典型的な事務所の作りだ。事務机と椅子が一つずつ、客人用のソファが二つに机が一つ。

 壁には棚が幾つかあり本やファイルが入っている。

 

「失礼しまーす」

 

 そう言いながらアストレアは玄関で靴を脱いで上がる。

 

 部屋には二人の男女が居た。

 

 アストレアの近くに居るのは女子だ。年齢も十六かそこらだろう。

 濡れ羽色の方までかかる黒い髪に整っている容姿。カジュアルな服を着ている。

 その少女はアストレアを見て一瞬驚いた顔をするがすぐに表情を取り繕う。

 

「ようこそ、真壁探偵事務所へ! 私は助手の天城澪(あまぎみお)です!」

「は、初めまして、アストレアって言います」

 

 よろしく、とアストレアは小さく頭を下げた。

 

「お客さんかい?」

 

 奥の扉が開き、そこから男が出て来た。

 歳は三十代後半ほどだろう。無精ひげを生やしているくたびれたおっさんという雰囲気の男だ。

 黒髪黒目で日本人らしい容姿をしている。一応スーツは着ているが年代物なのかえりが垂れている。

 

「もう真壁さん! お客さんの前なんだからシャキっとしないと!」

 

 もー、と天城は真壁の襟を正す。

 

「それじゃあおかけになってください! お茶とコーヒーどっちがいいですか?」

「こ、コーヒーでお願いします」

「わかりました!」

 

 アストレアは緊張しながらソファに座る。

 探偵に依頼をするなど生涯初めての事だから緊張してしょうがないのである。

 ソファに座ると真壁も座り話しかける。

 

「それでお客さん、どんなご依頼で? 人探しですかい?」

 

 それに対しアストレアは緊張しながらも返す。

 

「えっと、一応は人探しなんですが……ある人の墓を探してほしいんです」

 

 その言葉に真壁は少し驚いた表情をする。

 

「墓探しですかい? なんでまた?」

「実は母親の墓を探したくて……ただ、あるかもわかっていないんですが……」

 

 そこに天城がコーヒーを机に置く。

 

「……詳しくお伺いしても?」

「はい……実は私、過去から来たにん……幻獣と人間の融合体なんです。少し前新聞に載っていたと思うんですが……」

「あぁ、あの五賢人がわざわざ救出したっていう実験体の……ということは?」

「はい。私は過去から魂を回収されて、現代で作られたらしく……家族はもう、亡くなっています」

「そうでしたか、それは失礼を……それで、墓参りがしたいから墓を探してほしい、と」

「はい。お願いできますか?」

「そうですね……」

 

 真壁はめんどくさそうな顔をする。

 実際めんどくさい依頼だ。墓があるかもわからないし、新聞が事実なら七十年八十年前の人間の墓探しだ。

 手間も暇もかかる依頼である。

 そこに横から天城が口をはさむ。

 

「受けましょうよ。両親の墓参りすら出来ないのは、かわいそうです」

 

 そう天城が言うも真壁の表情は変わらない。

 

「ところで前金百万、成功報酬二百万円持ってきたんですが、相場がわからなくて……これで足りますか?」

「その依頼受けましょう」

 

 真壁はいきなりきりっとした顔をし表情を取り繕った。金に釣られたのが目に見えてわかる。

 尚人探しの基本報酬は高くても百万円である。*1

 相場の三倍払おうというので天城が口をはさむ。

 

「いえ、相場は百万円ほどなので前金五十万成功報酬五十万円で大丈夫です」

 

 天城に対し真壁は口を尖らせた。

 

「黙ってれば大金が手に入った物を……」

「お客さんには真摯に対応しないと駄目ですよ! それじゃあ、ご両親に関して知ってることを教えてください」

「はい……と言っても父親に関しては調べる必要は無くて、母親に関してだけ調べてほしいんです。記憶の限り住んでた場所は──」

 

 そうしてアストレアが情報を上げていくと天城がメモを取っていく。

 

「最後に住んでたのはI県N市の市営住宅……と、じゃあそこの市役所行って調べればいいですね」

「お願いします……こういう時依頼人はどうしたらいいんでしょう?」

 

 アストレアはどうしていいのかわからないので問いかける。

 

「電話番号を教えてくれれば探し終えた時に電話するので、それまで待っててくださいね」

 

 天城はそう笑顔で言った。

 

「わかりました……お願いします」

 

 アストレアは深く頭を下げるのだった。

*1
あくまで作者調べなので本当かどうかわかりません

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