TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します   作:Revak

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第32話

 

 五月のゴールデンウイーク。

 シリウス一行はダンジョン配信をしながらダンジョンを攻略していた。

 

「ここがボス部屋だね」

 

 そうして進んだ先は第七十層のボス部屋前だ。

 七十層は平原であり出現するのは巨人を模したゴーレムなどだ。

 巨人たちは白い肌に棍棒を持った者たちで四メートルほどの大きさを持つ。

 戦闘能力も高く魔法こそ行使しないが高い身体能力と連携を持ってシリウス一行を苦しめた。

 そんな巨人たちのボスとなるとやはり巨人だろうかと思いつつボス部屋の扉を開けて中に入る。

 

 中は円形上の広間だ。結構広くグラウンドほどの広さを持つ。

 その中央には玉座がある。巨大な石の玉座だ。

 座っているのは十二メートルほどの巨体を持つ巨人だ。白い肌にいかつい顔。大剣を背負っている。

 巨人が立ち上がる。

 

「でっか」

 

 陽斗がそう呟いた。

 圧倒的巨体である。勿論アストレアの本来の姿には劣るがそれでも十メートルを超えてる時点で化け物サイズである。

 三階建ての建物ほどの大きさを持つ巨人は咆哮を上げた。

 

「ウォォォォオオオオ!!!」

 

 耳をつんざく大声である。思わず耳をふさぎたくなる声だ。

 

【でっか】【うるせぇ!】【鼓膜ないなった】

 

 コメント欄も大盛り上がりである。

 登録者数も最近は増えて大台の千人に到達。スパチャの条件も解禁され最近は玉にスパチャも来る。

 尚スパチャ数一位はアオスである。既に合計十万ほどスパチャを送られている。

 

「うし、行くぞ!」

 

 カーラが突撃しその横を陽斗と大地が走る。

 カーラはヘイトを集め、盾を掲げる。

 その盾に向かって巨人、ボス名ヨトゥンは攻撃する。

 

 大剣と盾が衝突する。硬い金属同士がぶつかった嫌な音がした。

 

 大地がヨトゥンの右足に向かって打撃を入れる。

 叫びと共に殴打しへこませる。

 だがヨトゥンはぐらつくことない。殴られた足で蹴りを入れ、大地を吹っ飛ばす。

 大地は空中で体勢を整え着地し、再度突撃する。

 

 大地の代わりとばかりに陽斗が跳躍。ヨトゥンの顔面に迫る。

 顔面に向かって斧を振り落とす。確定クリティカルの大ダメージだ。

 ヨトゥンの顔が縦に罅が入る。

 しかしヨトゥンは動き口から吹雪の息を吐く。

 それにより陽斗は飛ばされるも代わりに大地が接近する。

 

 大地は後ろに回り少しジャンプし膝に蹴りを入れる。

 身体強化魔法を使った蹴りだ。罅が入りヨトゥンはしゃがんだ。

 

 しゃがむと同時にアストレアが四重曲九つの地獄(カルテットナインヘル)を放つ。

 合計三十二の魔力弾がヨトゥンの巨体に命中し、ダメージを与える。

 

 このまま果敢に攻め立てよう。そう思い大地と陽斗が襲いかかるもヨトゥンが衝撃波を放つ。

 

 魔力による衝撃波だ。周囲一帯を吹き飛ばしカーラも吹き飛んだ。

 

 影響を受けてないのは遠くに居たアストレアとアグネス、ブーフだ。

 

 大地と陽斗、カーラが体勢を直そうとしている隙をヨトゥンは狙う。

 ヨトゥンが立ち上がり剣を構える。

 流石に追撃させる訳にはいかぬとアストレアがエンハンスを使い突撃。

 ヨトゥンの大剣とアストレアのレーベンが衝突した。

 パワーではヨトゥンの方が上回っている。アストレアは大剣を反らす事で防御した。

 

 その間に陽斗が復帰し横から斧で攻撃する。

 ヨトゥンの左腕に罅が入る。

 

 アストレアが攻撃に転じる。その攻撃全てをヨトゥンは大剣で防ぐも細かいダメージが蓄積する。

 

 そこに更に大地が背中を殴る蹴るの暴行を加える。

 それを煩わしく思ったのかヨトゥンはぐるっとその場で一回転した。

 回転後の隙を狙い陽斗が胸に斧をぶち込む。

 胸にも罅が入る。

 

 瞬間ヨトゥンの目が赤くなった。

 

 これまでにない超スピードで陽斗、大地、アストレアを大剣で斬って吹き飛ばした。

 

 比較的近くに吹き飛んだ陽斗にヨトゥンは追撃しようとするがその間にカーラが入り盾で攻撃を受け止める。

 

 三人はそこそこのダメージを受けた。最も敬称なのはアストレアだ。身体強化の練度が違う。

 アストレアが攻撃役となり突撃し、その間に残る二人はポーションで回復する。

 

 アストレアはヨトゥンの背後に回りその首を落とそうとレーベンを振るう。

 だが、硬い。ガキンという硬い金属同士がぶつかった嫌な音によって弾かれた。

 

「やばっ」

 

 すぐさまヨトゥンが動く。

 咄嗟に防御しようとするがそれよりも早くヨトゥンが動き──その大剣によってアストレアの左腕は切り落とされた。

 

 これはヤバいと痛覚遮断の魔法を使いアストレアは後ろに下がる。

 ヨトゥンはアストレアに追撃しようとするがカーラが攻撃し注意を惹く事で追撃させない。

 代わりにヨトゥンはカーラに向かって過激に攻撃する。

 盾と大剣がぶつかり合う。若干盾がへこんだ。

 

 アストレアが後方に下がりブーフが召喚したガーディアンの防御圏内に入り、そこで回復魔法を使い治癒する。

 切り落とされたところで回復魔法で治せるが時間はかかる。

 

 アストレアが下がった代わりに大地と陽斗が同時にヨトゥンに攻撃。ヨトゥンが吹っ飛ばされた。

 

 そこに更に追撃を入れる。大地が腹を殴りへこませ、陽斗が斧をぶち込んだ。

 

 後一撃、と言うところで再びヨトゥンが叫び衝撃波を放つ。それにより陽斗も大地も吹っ飛ばされた。

 それと同時に衝撃波の外に居たアストレアが四重曲九つの地獄(カルテットナインヘル)を放つ。

 一発一発は大したことないダメージでも三十二発も当たれば大ダメージとなり、全て腹に当てることでヨトゥンが上下真っ二つに折れた。

 

 ぱんぱかぱーん、とファンファーレが鳴った。

 送還魔法でヨトゥンの残骸が回収され、代わりに宝箱が出てくる。

 

 アストレアは治癒し終わり、一行は五人揃ってハイタッチをする。

 アグネスは今回働いてないがボス戦以外の働きが凄いので問題なしだ。

 

「早速開けようぜ!」

 

 プレゼントを貰った子供の用に陽斗が興奮する。

 

「よっしゃたまには俺が開けるか」

 

 大地が腕まくりしながら言った。

 

「よし、良いの頼むぞ!」

 

 陽斗が了承し大地が開けることになった。

 

 そして宝箱を開ける。

 

 中身は棍棒が一つ入ってるだけだった。

 棍棒はまるで巨人の骨をそのまま加工したような物であり結構な人ほどの大きさを持つ。

 

「なんだこれ」

 

 大地がそう呟きながら手に取ってみる。

 

「解析解析~」

 

 アストレアが上機嫌に解析魔法を当てる。

 

「ん~、これノックバック効果が凄い強いね。これで相手を殴ると高度四千メートルまで吹っ飛ぶよ」

「すげぇけど使いにくいな」

 

 相手が確定で吹っ飛んでしまうので使い道があんまりなさそうである。

 

「取りあえず部室に保管しておくか……」

 

 陽斗がそう言い、まぁそれでいいかと一行は了承した。

 

「それじゃあ今日の配信はここまで! ありがとうございました~」

 

 こうして配信は終わった。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 翌日の朝九時ごろ。魔法大学の運動場にて。

 アストレアと明は運動所に居た。

 

「という訳で君にプレゼントです!」

 

 そうアストレアは笑顔で言いながら箱を明に手渡した。

 

「あ、ありがとうございます……貰ってばかりですけど、これでいいのかな」

「良いと思うよ。返したいと思ったならゆっくり返してもらえばいいし」

「……わかりました。ありがとうございます!」

 

 そう言いながら明は箱を受け取った。

 

「中身、開けますね」

「どうぞどうぞ」

 

 そうして明は箱を開ける。

 中には銃が入っていた。

 オートマチック型の銃であり、M191A1である。

 

「じゅ、銃……」

 

 自分で頼んだ物とは言え、実物を手に取ると恐怖が勝る。

 この銃はもちろん本物の銃ではなく魔道具の銃だ。

 魔道具なので弾丸無限であり、使用者の魔力が続く限り魔力弾を放ち続けることが出来る。

 威力は使用者に依存するが最低でも実物の銃を上回り大砲クラスの威力を放つ。

 因みに外見がM191A1なだけであり弾倉は無いしリロードなんてできない。

 一応撃つとハンマーが下がるが形だけで意味はない。

 

「じゃあ、それ使って射撃訓練しようか」

「は、はい!」

 

 これから行うのはダンジョンに入るための訓練だ。

 ダンジョンでは敵であるゴーレムが出現する。

 それら相手に置きAIMや偏差撃ちを試しながら覚えるのではなく先に訓練することでやっておこうというのである。

 ただ魔道具の銃なので弾は基本真っすぐと飛び、ゆっくりと弾が落ちていく事はなく途中で霧散する。

 

 アストレアと明は一定の距離を取る。二メートル程離れた。

 

「じゃあ、撃とうか」

「……は、はい」

 

 相手が無事で終わると知っていても、人に向かって銃を撃つという行為に忌避間をどうしても明は感じてしまう。

 だがこれから行くことになるダンジョンでは人型のゴーレムなどが多数出現するのだ。人を撃つのに躊躇っていたら何も出来ない。

 

 明は銃を構え、引き金を引いた。

 ドン、という重低音と共に魔力で出来た弾丸が放たれる。

 だが銃口を下げてしまっていたのかアストレアから遠い足元に着弾した。

 

「ほら、ちゃんと狙わないと」

「は、はい!」

 

 一発撃ったら気を取り直したのか、明は何度も撃つ。

 だがそのすべては外れる。

 七発撃っても外れ、アストレアがうーんとうねる。

 人に向かって撃たせるのはまだ早かっただろうか、と思っているとアストレアの胸に衝撃が走る。

 胸に魔力弾が命中したのだ。

 因みに強化魔法を使っているのでダメージは無い。この程度の魔道具と魔法使い初心者の攻撃でダメージを負うほどアストレアはやわじゃない。

 

「お、今のいいよ。その調子その調子!」

「はいっ!」

 

 そのまま明は銃を撃って行く。

 胸に当たり、頭に当たり、足に当たる。

 しかしそれでも外れていく。

 命中率は五割と言ったところだろうか。

 

「よし、じゃあ次は動く的撃とうか」

「はい、わかりました!」

 

 という訳で今度はアストレアが明の周りを歩き始める。

 ドンドコ撃っていくがまたしても当たらない。

 偏差撃ちや置きAIMを意識しても当たらない。

 半分やけになって乱射したら二発ほど当たった。

 その感覚を頼りに何度か撃つ。

 どうやら動かない的よりも動く的を撃つ方が良かったのか、途中から命中率は八割を超えた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 だが息が上がってきた。

 魔力切れである。

 

「ん、ここらで休憩しようか」

 

 アストレアはそう言うとくるくる回るのをやめ明に近づきながらアイテムボックスからポーションを取り出す。

 魔力回復のポーションだ。味は不味いが回復はする。

 試験管の瓶に入っているポーションで青色をしている液体だ。

 因みに傷を治すポーションは赤色、魔力回復が青色、スタミナ回復は緑色をしている。

 製造方法は幾つかありゼロから魔法で作る、土地や植物を魔法で作り出し調整するなどがある。

 

「ほら、これ飲むと良い」

「あ、ありがとうございます」

 

 明は銃をポケットにしまいながらポーションを受け取りのむ。

 

「ま、不味い……」

「良薬は口に苦しっていうだろう? 諦めな」

 

 はは、とアストレアは笑みを浮かべた。

 

 諦めて明はぐいっとポーションを一気飲みした。

 

「魔力結構回復しましたね……続きお願いします!」

「おう、じゃあ今度は多数の奴を動きながら狙ってみようか」

「多数、ですか?」

「おう、ちょっと距離とるね」

 

 そう言うとアストレアは明から十メートル程離れた。

 

「この辺でいいか……じゃあ、行くよ。<下位アンデッド創造>」

 

 アストレアの足元から黒い魔法陣が浮かび上がる。

 行使するのはアオスからコピーした死霊魔法だ。

 周囲の死者の残留思念を元にアンデッドを作り出す魔法である。

 六体のスケルトンが産み出された。

 肉も皮もない骨だけの姿。成人した男性の骨である。

 尚ここらへんで過去人間が死んだ記録は無いのでこれは野鳥や微生物の残留思念を流用し人型に形を整えているだけである。

 

「じゃあ、こいつらに君に向かって歩かせるから、どんどん撃って行こう」

「は、はい?」

 

 そう言うとアストレアはスケルトンたちを明に向かって進軍させる。

 

 明はあわてず騒がず落ちついて。銃でスケルトンを狙う。

 最初の二発は外れるが三発目は命中した。

 一発受けただけでスケルトンはばらばらになりただの骨に戻った。

 最下位のアンデッドなので銃弾一発で死ぬ──アンデッドなので正しくは消滅──するのである。

 

「どんどん足すからね~」

 

 アストレアはそう言い再度魔法を行使しスケルトンの数を増やす。

 流石にこりゃあかんと明も後ろに引きながら銃を撃って行く。

 

 命中率も上がり二体、三体と倒していくが倒す数より接近する数が多い。

 スケルトンが明の目と鼻の先に着いた瞬間明は腰を抜かして倒れた。

 アストレアが指示を出しスケルトンを止める。スケルトンはカタカタと骨を鳴らしていた。

 

「倒れてないで敵を倒さなきゃ」

「いやこれ結構怖いですよ!」

 

 明はそう主張する。

 

「ただの骨じゃん。怖くないよー」

「ただの骨でもホラーの題材になるぐらいには怖いものですよ人骨は!」

 

 明は大声で叫んだ。

 それに対しアストレアは「そっか」としょんぼりした。

 アストレアは明に近づき手を差し伸べる。

 明は手を取り立ち上がる。

 

「それじゃあ今日一日、訓練しよっか」

 

 アストレアは笑顔でそう言い放ち、明は引きつった笑みをするしかなかった。

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