TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します 作:Revak
八月二十二日。朝の九時。
千葉県銚子市、海岸にて。
「夏だ! 海だ! 海水浴だー!」
誰もいない海水浴場で魔法大学二年生一行は叫んでいた。
因みに生徒ではないがブーフも居る。エルンストが許可を出したので居る。
全員水着を勿論着ている。
アストレアたちは去年買った水着と似たのを新しく買っている。
これらはエルンストの紹介で行った魔道具店で売ってた魔道具の水着である為性能も高い。
水中での活動阻害無効、水圧無効、水中呼吸の効果が付いている。
「ていうか人いないな」
翔が海岸を見ながら呟いた。
この海岸は遊泳禁止のエリアであり海の家すらない。
あさりが居るような物ではなく砂地なので潮干狩りも出来ない。
「そろそろ迎えが来るから大人しくしろよー」
エルンストがやる気がなさそうに言った。
二年生はこれから郊外学習である。
全員参加型の旅費や活動費は取られないが単位的に絶対参加の行事である。
これから向かうのは竜宮城である。
伝承に搭乗する竜宮城其の物であり、海魔の王とその主が住まう水中都市である。
今更だが幻獣にもランクがある。
使い魔として主や憑依する媒体なく己だけで自己維持が出来る幻獣を真祖と呼び、この真祖は現在三人しかいない。そのうちの一人は五賢人の一人だ。
そしてそこからランクが大きく落ちるが一般的な幻獣よりも上なのが王と呼ばれる者たちだ。
基本的には人狼の王や吸血鬼の王、竜の王などが居るがこれらは種族的な物ではなく称号に近い。
だがそれでも総称されるだけの力を持っているが、王たちは真祖と違い魔道具への憑依や使い魔として誰か主君が必要になる。
それでも強力なのは変わらず同一種族に対し支配権や命令権を持っている。
王は現在六人まで居るとされるが公的に公言しているのが六人だけなのでそれ以外に居る可能性もある。
これから向かう竜宮城は海魔の王、レヴィアタン……の使い魔としての主であるビスケスが収めている。
街としてはせまく人口も千人ほどだが結構な広さを持つ。
住人としては魔法使いや人魚や魚人に半魚人が住んでいるが、残る六割はただの一般人である。
「お、来たぞ」
エルンストが海岸を見ながら呟いた。
それに合わせ生徒たちも海岸を見ると海から巨大な怪物が身を乗り出してきた。
それは巨大な亀だ。二十メートルほどの巨大なウミガメである。
背中部分は泡のようになっており中にソファや机が見えるし入口もある。
泡はガラスのようで透明感が高い。
「竜宮城便到着だべ。行くのはここの……ひーふーみーの九……いや十? 人でいいべか?」
疑問を発したのは本であるブーフが居るからだろう。
「ああ。この十人で問題ない」
エルンストがそう返す。
「わっかりやした。どうぞあっしの背に乗ってくだせぇ」
亀はそう言うと背中の入り口が開き階段がにゅっと出てくる。
「ファンタジー生物すげぇ」
翔や陽菜はファンタジーにあまり触れてこなかったのでファンタジー全開の幻獣を前に目をキラキラと輝かせている。
ダンジョンに潜っている一行はこれぐらい見慣れた物だとあまり気にせずエルンストに続き乗り込んでいく。
中は魔法で拡張されているのか外見よりも広かった。冷蔵庫もついている。
全員が乗り込むと扉が閉まり階段がシュっと収納される。
円形上の場所なので全員テーブルを囲うように座る。
『ほいじゃ行きまっせ~』
亀がそう言うとくるりと一回転するが揺れは感じない。
そのまま海へとドボンと入り、水中を進んでいく。
「すっげぇ! 魚とか見える!」
「海なんだから見えるに決まってるだろう」
翔の叫びに大地が冷静に突っ込む。
亀は水中をドンドコ進んでいく。速度は速く時速二百キロは出している。
他の海中の魚などにぶつかると大変なことになりそうだが当たらず避けて進めている。
「まるで水族館みたいだな」
大地が外を眺めながら言った。
「それじゃあこれから行くところ再度説明するぞー」
やる気のない声でエルンストが言い始めた。
「これから向かう場所は竜宮城。ビスケスという魔法使いが治める街で人口は千人ほど。ただし人口の八割は魔法世界を知っている一般人。残る二割は魔法使いや人魚や魚人などの幻獣。街の作りは……まぁ。見てからのお楽しみだ。そして目的だが……そうだな、陽菜、答えろ」
唐突にエルンストは陽菜を指した。陽菜は臆することなく答える。
「はい。魔法世界で幻獣がどのように暮らしているのか、魔法を使った暮らしとはどういったものかを知るために課外学習に来ています」
「その通り。ま、ようは修学旅行みたいに色々見て回るだけだ。一週間楽しむと良い。楽しんだ後はレポート提出してもらうが。基本は着いたら自由行動だ。好きにすると良い」
「よっしゃ、観光として回ろうぜ!」
陽斗が元気よく言った。
「私としては街の歴史とか興味あるわね。図書館あるかしら……」
サラがそう言う。
かおりは「海に入るのは勘弁じゃな。しっぽがぬれてしまう」と返した。
そのあとも色々と話す。
街の作りはどうなんだろう、とか領主に会えるかな、などの話だ。
「せんせーこの飲み物飲んでいいすか?」
陽斗がそう冷蔵庫を開けながら言った。
「いいぞ。この亀のサービスの一つだ」
「あざっす! 皆何飲む? あるのは……オレンジジュースとコーラとメロンソーダと烏龍茶だな」
「じゃあ私オレンジジュースで」
アストレアが言うと全員飲みたいものを言い陽斗が冷蔵庫から取り出していく。
エルンストは烏龍茶を頼んだ。
そうして話すこと一時間。目的地が見えてくる。
「なにあれすっげぇ?!」
陽斗が窓の外を見ながら叫んだ。
海底にあるのは巨大な幻獣だ。
巨大な黒いクジラであり、サイズで言えば五キロにも及ぶ。
眼はなぜか六つもある。
「あれも幻獣だ。リヴァイアサンだな」
「すげぇな……クジラの背に街があるのか」
その背中にはこの亀と同じく泡のような障壁が高くある。
その中には街があり、奥には宮殿も見える。
まさしくおとぎ話に出てくる竜宮城其の物であり、豪華絢爛な城である。
亀が泳いで下降し、入口らしき場所に突入する。揺れは無かった。
突入した先は海岸であり、人も多数居る。
人気のなさそうな場所の海岸に出現し、亀の扉が開き階段がにゅっと出る。
「ご到着~足元にお気をつけてお降りくだせぇ~」
出入り口に近いエルンストが立ち上がり降りていく。それに合わせ他の者も降りていく。
「それじゃああっしはこれで。お帰りの時はよろしくたのんまさぁ」
そう言うと亀は潜って消えた。
見送るとエルンストがしゃべりだす。
「それじゃあこれからここの領主、ビスケスさんに会いに行く。寛容な方だが失礼の無いように。そのあとは泊る場所に案内して、そこからは夕方六時まで自由時間だ」
さっさと行こうとエルンストを先頭に海岸を出て街中を歩く。
「すげぇ……」
これぞファンタジーの街並みだ、と生徒たちはきょろきょろと周りを見ながら歩く。
魚人が串焼き屋をやっていたり、人魚が八百屋で看板娘をやっている。
街並みは暗い青色だ。そして至る所に水路があり、水路には亀の幻獣やゴーレムが居りそれらが移動を補助している。
街並みは少し薄暗いが至る所に魔法の光があるため不便を感じるほどではない。
住民も水着を着ている者も多いため生徒たちが水着で街を歩いても違和感はない。
「これぞ魔法使いの街、と言った雰囲気だな」
ブーフが懐かしい、と上機嫌のふわふわと浮く。
「ここからはこれに乗るぞ」
エルンストがそう言い水路に浮いている巨大なイルカを指した。
イルカは巨大で十メートルある水路の半分以上を埋めている。
四人乗りのイルカであり背には椅子が四つある。
三体居るので三組に別れて乗り込む。二百円かかった。
乗り込むとイルカ型ゴーレムは動き出し、すいすいと水路を高速で泳いでいく。
「はえぇー!」
陽斗がそう叫びながらはしゃいだ。
速度で言えば亀の方が圧倒的に上だがこのイルカの方が街並みが見えるので速度が目に見えてわかるのである。
暫く乗っていると速度を落とし、イルカは城前で止まった。
「ここが領主の城だ」
エルンストがそう言いながらイルカから降りる。それに合わせて生徒たちも降りた。
イルカは去っていった。
「でけぇ」
アストレアは城を見上げながら呟いた。
まさしく竜宮城其の物である。屋根には亀の甲羅が使われている。
入り口、門前には魚人の兵士が二人立っている。
エルンストがすたすたと歩いて行き、生徒たちはあわてて着いて行く。
門番に止められることなく城の中に入れた。
「この城は二階までは一般公開されているからな。下手なところにはいかないように」
エルンストの注意に生徒たちは了承する。
そうして奥へ進んでいくと扉があり、そこには人間の門番が居た。
「魔法大学から来た者だ」
エルンストがそう言うと槍を持った門番は笑みを浮かべた。
「話は伺っています。どうぞこちらへ」
そう言うと扉が開く。
更に奥へ進み、もう少し進むと其処には巨大な門があった。
人魚と人間をモチーフにした彫刻が彫られた門である。
近づくと門が自動的に開いて行く。
門の奥は玉座の間だ。
海底らしく玉座は巨大なホタテの貝で出来ている。クッションも置いてあるので座りごごちはよさそうではある。
青いカーペットが敷いてあり、エルンストとブーフ以外は緊張しながら奥へと進む。
玉座には二人の男女が座っていた。
片方は金髪碧眼の男だ。上半身裸であり鍛え上げた体をしている。
優男、と言った雰囲気だがツラは良い。モデルにでもなれそうな顔をしている。
その男に抱き着いているのも美女だ。
水色の髪と瞳をした女であり、白い尻尾が生えている。尻尾は太く先端は牙のついた口となっている。
これもまたグラビアアイドル顔負けというかアイドル以上のつらをしている。
でっれでれの表情を浮かべながら男に抱き着いている。薄着であり金色のビキニを着用している。
「おぉ、来たか」
男の方、この街の領主ビスケスが口を開いた。
「えぇ。来ました。今年の二年生です」
エルンストがそう話始める。
「うむ。余はビスケス、この竜宮城の王だ。そしてこちらは妻である海魔の女王レヴィだ」
「よろしく~」
レヴィはそう笑顔を浮かべた。
「しかし……ふむ。今年の二年生はレベルが高いな」
そうビスケスはある一人──アストレアを見ながら言った。
アストレアは見つめられはてなにかあるだろうかと疑問を浮かべる。
「うむ。気に入った。そこの女、名はなんという?」
ビスケスはそうアストレアに話しかける。
アストレアは緊張しながらも返す。
「アストレアと言います……私に何か?」
「ほぉ、良い名だ。どうだ? 余の側室にならないか?」
その言葉にアストレアは「は?」と間抜けな声と共に間抜け面を晒した。
(側室? 側室って、嫁だよな、結婚? 男と? セックスすんの?)
そこまで想像しアストレアは顔を赤くする。
正直男とセックスする事自体は別にいいが初対面の相手とする気はなかった。
「お、お断りします! 私元男なんで、そう言うの無理です!」
「元男? 今女ならいいだろう。ブツが付いている訳でもあるまいし。しかし惜しいな……やはり余の側室に……」
そこにエルンストが待ったをかける。
「あー、一応うちの生徒なんで求婚はまた今度にしてくださいビスケスさん」
「む、すまんな……誘うのはまた今度にするとするか」
パン、とビスケスは手を叩いた。
どこからともなく人魚の兵士がやってくる。
人魚と言っても男の人魚だ。魔法で空中を泳いでいる。
「客人たちを案内せよ」
「畏まりました」
人魚の兵士に案内され、生徒たち一行はホテルへと案内されるのだった。