TS竜天使娘になったので魔法大学に通いながらダンジョン攻略します   作:Revak

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第6話

 

 四月五日。朝の八時半にアストレアは魔法大学に来ていた。

 大学内に入り案内板に従い一年生の教室に向かう。

 この魔法大学では普通の大学と違い講義ごとに授業場所が変わるという事はないし、一年生や二年生で教室が別けられている。

 一年生の教室に入ると其処にはまだ誰も居ない。

 席順は決まってないので適当なところに座る。

 机の上にノートと筆記用具を出しておき、暇なのでネットサーフィンをする。

 読むのは個人サイトに投稿されている二次創作小説だ。最近はネクサスギアの扱いにも慣れてきた。

 

 そうしてネット小説を読んでいるとかおりがやってきて隣に座ってくる。

 

「それ、面白いのか?」

 

 かおりがそう尋ねて来た。

 

「これって、ネクサスの事? 面白いけど……」

「ほー、ワシはスマホしか使えんからなぁ……」

 

 そう寂しそうな眼をする。

 

「なんで……あぁ、耳がないのか……」

 

 かおりは狐の耳が生えている代わりに人の耳が生えていない。

 ネクサスギアは人の耳にかけるのを前提とした道具なので人の耳がない人は使えない。

 

「まぁ、魔法でネットにアクセスしようと思えば出来るからいいんじゃがの、たまに話についていけん」

「あはは……そう言えば電話番号登録してなかったよね、登録する?」

「おお、しようしよう」

 

 そうしてアストレアとかおりは電話な番号を交換する。

 そこにサラもやってくる。

 

「あら、楽しそうね、何してるの?」

「電話番号の交換。サラもする?」

「するわ」

 

 サラもネクサスギアを使いアストレアと電話番号を交換した。

 

 そうして三人わいわい話していると部屋に教師であるエルンストが入ってくる。途端三人は黙る。

 

「ふむ。今日の生徒は三人だけか。では始めよう」

「あれ? 他の……男子生徒たちは誰もいないですが初めていいんですか?」

 

 サラが尋ねた。

 

「ああ。うちでは午前と午後で授業が分かれているが内容は変わらないんだ。この大学に通う者でも普通の高校や大学に通っている者もいるからね」

「なるほど」

「では、軽く自己紹介を。君たち一年生の担当になったエルンストだ。先に答えておくと独身で恋愛に興味はない。では授業を始める」

 

 そうしてホワイトボードにエルンストが書いて行く。

 

「まずは魔法を発動するのに必要なエネルギー、魔力について解説していこう。知っている者はいるか?」

 

 それに対しサラが手を挙げる。

 

「サラ、答えてみろ」

「はい。魔力とは万物に宿るエネルギーであり、通常の科学的手段では観測は不可能。魔法使いの身が認識、利用が可能な万物に変換可能なエネルギーです」

「八十点だ。さらに言えばこの万物というのは粒子や原子にすら、魂にも宿る。空気中の塵にすら魔力は宿り、魔法使いはそれ、もしくは自身から出る魔力を利用し魔法という現象を起こす」

 

 カツカツとホワイトボードに書いて行く。

 

「ではこの魔法だが、起こせる現象は多岐に渡る。自分自身の自己強化、単純な身体能力の強化から思考速度の強化などは簡易的な魔力操作で可能で魔法都すら呼べないだろう。最上位を言うならば死者蘇生や時間逆行、時間停止などは当たり前に出来る。魔法の第一人者であるアオス・シュテルベン・モルト様なら死者蘇生程度難なくこなすしな。次に──」

 

 

 そうして授業が続き、アストレアは板書をノートに写していくのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 

 みんなで飯でも食べよう、というかおりの提案に二人は乗った。

 二コマ目の授業も終わり今日の授業が終わったことで三人は大学の食堂に来ていた。

 メニューは豊富で材料を魔法で作った新鮮で美味しい物を使って魔法を使って時短料理している為寮よりは高いがそれでも普通の料理に比べれば安い料理を三人は注文する。

 トレーを持って三人は食べながら会話をする。

 

「魔法ってすごいんだね、死者蘇生も出来るって聞いて驚いちゃった」

「まぁ、出来るのは一部の上澄みだけじゃがな。そうそう出来る魔法じゃない」

「けど、私なら出来るかも? コピー能力で死者蘇生の魔法をコピーすれば……」

「え、アストレアコピーなんて出来るの? 強いわねー」

 

 などと話しているとシエロがやってくる。

 向かい側の席にシエロが座る。

 

「あれ? シエロ様、何の用ですか?」

 

 アストレアがそう尋ねるとかおりとサラの二人が目を点にして驚く。

 

「し、シエロ様?! 魔法世界の頂点の一人がどうしてここに?!」

「ああ、そう慌てなくていいよ。ちょっとアストレアに話があってね」

「それ、ワシらも聞いていい奴かの」

「別に聞いてもいいよ。君たちが参加しても面白そうだし」

 

 その台詞に三人はてなマークを頭に浮かべる。

 

「君、二千に十六年ってことは現代ダンジョンものの小説とか読んだことある?」

 

 唐突なラノベの話に三人はまたもはてなを浮かべ、アストレアが問いかける。

 

「ありますけど、まさか現代にダンジョンが出来たとかいう話じゃないですよね」

「出来た、じゃなくて作ったが正しいねぇ」

「え?」

「うん。二年前、うちの馬鹿どもが酒に酔った勢いで『どうせなら現代ダンジョン作ろうぜ★』って言いだしてね。その勢いでこのアーカディアの街にダンジョンを作ったんだ。アストレア、君にはこのダンジョンを攻略してほしい」

「え、えぇ? ダンジョン攻略? 私が?」

「ちなみに配信機材もこっちで用意するからダンジョン配信物にも出来る。どうだい?」

「どう、と言われても……ダンジョンってことは異世界化か何かですか?」

「いや、空間魔法で拡張しただけの現実だね。出てくるのもゴーレムとかだけで幻獣とかは基本出ないよ。ただ、ゴーレムを破壊してその素材を持ち帰ることでお金には出来る。君、今働けてないんだしいいバイトになるんじゃない?」

「むむっ……確かに……」

 

 バイトになる、という台詞にアストレアは心惹かれる。

 

「そう言えば銀行口座とかも持ってないんですけどダンジョン配信始めれば作れますかね」

「やるならこっちで作ってあげるよ」

「やります」

 

 即答だった。

 それに対しかおりが「いやまて」と止める。

 

「ダンジョン配信なんて訳の分からんことしない方がいいぞ。命の危機もあるかもしれんぞ」

「あ、それはないよ。ダンジョン自体に危機脱出魔法つけてて、命の危機に瀕すると自動でダンジョンの外まで転移させてくれるから」

「嫌なところで便利じゃな……」

「それに美女がエロイ格好でダンジョン配信すればダンジョンも人気になってくれるかもしれないからね」

「それがメインですか?」

「まぁ、そうだね。作るだけ作ったはいいけど人気ないんだよねー」

 

 たはーとシエロは笑う。

 

 アーカディアの街にあるダンジョン、名を不死王の墳墓は五賢人のうち三人が協力して作った代物だ。

 板倉透、死と生を操るアオス・シュテルベン・モルト。ヴィクトリア・フォン・シュタイエルの三人だ。

 それらが酒に酔った勢いではっちゃけて作ったのがダンジョンであるが、内装には他の魔法使いの手を入れた。

 自分たちだけで作っても限界があるとし、他の魔法使いにも手伝わせたのだ。

 その謳い文句はこうだ。「魔法の実験場作ったから好きにゴーレムとかトラップ設置していいよ」と。

 その結果ダンジョンには多数のゴーレムやトラップが設置された。

 が、肝心の攻略者がまるでいない。閑古鳥が鳴いているのである。

 

「だから、アストレアにはダンジョン配信をしてダンジョンの人気を集めてほしいんだ。美女でTSという人気を集めやすいキャラしてるからね」

「なるほど……」

 

 割とアストレアは乗り気になっていた。

 金を合法的に稼ぐ手段が見つかったのである。気にならない方がおかしい。

 戸籍なし銀行口座なしの身元不確かな人間が金を稼ごうと思えば通常手段では出来ないだろうに、その手段を用意してくれることにアストレアは感謝する。

 

「ありがごうとざぃます。早速明日からダンジョン配信しようと思います」

「おっありがとう。じゃあ今からアルカナスパイヤに行って、ダンジョン配信機材とか渡そうか」

「はいっ!」

 

「き、気を付けるんじゃぞ~」

「なにかあったら頼ってね~」

 

 かおりとサラはそう言いシエロと共に去っていくアストレアに対し手を振っていった。

 

 

 

 

 ■

 

 

「これが配信用のサイトだね」

 

 アルカナスパイヤのシエロの自室で。パソコンを使ってシエロが魔法使い用の動画投稿サイトを見せていた。

 

「魔法使い専用のサイトなんてあるんですね」

「ちょっと前に作ったのさ。一応魔法使い用のSNSもある」

 

 ほら、とツイッターによく似たSNSサイトを見せられる。

 

「ちなみに全部アルカナスパイヤ(うち)管理なんだよね。管理してくれる人いなくてねー」

 

 たはーとシエロは笑う。

 

「じゃあまずはSNSアカウント作って宣伝しないといけないですね」

「だね、そこは僕も宣伝しようか。ついでにアオスの奴にも宣伝させたろ」

 

 二人はワイワイ話して仲良くなりながらアカウントを作る。

 アカウント名はアストレアのダンジョン配信。フォロワーはシエロ一人。

 

「最初のツイート内容どうします?」

「それは……うん。そこはTS美女をアピールして──」

 

 そうして話しながらツイート内容を決め、こうなった。

 

『少し前に邪悪な魔法使いの手でTS美女化したアストレアです。過去から来ました! 今の時代には不慣れで、お金を稼ぐためにダンジョン配信始めました! よろしくお願いします!』

 

 という物だ。

 

「じゃあ次は配信用のドローンを貸し出そう。ほらこれ」

 

 シエロがアイテムボックスから白くて丸い球体を出す。

 バスケットボールほどの大きさの白いメカメカしい球体だ。中央にカメラがある。

 

「なにこれ」

「反重力機構で浮遊する最新型のドローンだよ。これとネクサスを繋げれば配信が手軽に出来る。カメラ設定で設定した人以外モザイクもかけれる優れものさ」

「すごいっすね未来技術」

 

 重力だなんだと聞くとここが未来なのだとアストレアは実感する。

 

 そのほか色々と話し、銀行口座と戸籍も作ってもらった。

 そうして、明日から配信を始めることが決まったのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 翌日の昼一時。アストレアはダンジョンに来ていた。

 昨日は帰るなりかおりに変なことされなかったなど聞かれたりダンジョン配信なんて大丈夫なのかと聞かれるなどあったが問題はなかったと言えるだろう。

 

 格好も気合を入れた物だ。

 上下とも白い服でスカートを履いている。パンツは白だ。

 サイハイブーツを履いているし、気合を入れた格好と言えるだろう。

 

「ここが不死王の墳墓……墳墓か、これ?」

 

 大学から徒歩十分ほど歩いた先にそのダンジョンはある。

 見た目は完全にギリシャのパルテノン神殿その物だ。ただ色が違く、黒色で構成されている。

 

 階段を上って進むとそこには受付と階段があった。

 受付は二種類ある。

 

 片方の受付にアストレアは進む。

 

「あら? 知らない人ね」

 

 受付の紫色の髪をした少女と言える年齢の魔法使いはアストレアを見るなり呟いた。

 

「ええっと、今日からここでダンジョン配信をするアストレアです」

「ああ、シエロ様激押しの。話は聞いてるわ、大変ね、あんたも」

「簡単にお金稼げると聞いてきました」

 

 ふんすとアストレアは胸を張る。

 

「ダンジョン攻略はそう簡単じゃないと思うけど……ほら、これに名前書いて」

 

 紫髪の少女、リラがボードを渡す。

 言われるがままアストレアは紙に名前を書く。

 

「一応規則でここに名前を書くことになってるの。ありがとね」

「いえ、あ、ここから配信初めていいですか?」

「いいわよー」

「ありがごうとざぃます!」

 

 アストレアは少し離れてからアイテムボックスからドローンを取り出しネクサスギアを接続する。

 公式アカウントから初配信開始とツイートし、五分ほど待ってから配信を始める。

 ドローンのカメラが赤く光った。配信中の証だ。

 

「えーと、こんにちは! TS美女のアストレアです! 画面映ってます?」

 

 それに対しコメントが流れる。

 ネクサスギアにコメント欄を映しているので問題なくコメントを読める。

 

【映ってるぞ】【美女だ】【ダンジョン配信とかラノベみたいな事ようやるわ】

 

 視聴者数は十人と言ったところだ。これは多いと言える。

 突如現れた新人の訳の分からない配信に十人も来てる時点で異例と言えるだろう。

 

「あ、映ってるんですね。よかった! えっと、自己紹介なんですが……他何いいましょう?」

 

【その角とか翼何?】【種族教えてけろ】【おっぱい何センチ?】

 

「この翼は私天使とかドラゴンとかの融合体なのでついてます! 種族は人間と幻獣の融合体で、おっぱいは百四センチです」

 

【デッッッ】【セクハラにまじめに返してて草】【揉ませて♡】

 

「揉ませるのはさすがに駄目です。魔法系の質問はありませんか?」

 

【どんな魔法使うの?】【今日はどこまで行くつもり?】

 

「魔法はコピーです。シエロさんとか板倉さんの魔法をコピーして使えます」

 

【シエロ様の魔法使えるの?!】【強くて草】

 

「ただコピー魔法の代わりにコピーした魔法以外使えないし魔法を開発も出来ないらしいです!」

 

【致命的な欠点……とは言えないな。デメリット込みでも強力だ】【コピー条件は?】

 

「カメラとか通さず肉眼で視界内に入れる事です!」

 

【コピー条件ガバガバやんけ】

 

「あっと、そろそろダンジョンに入りますね~」

 

 

 そうしてアストレアはダンジョンへと入っていく。

 階段を降りていく。灯りはぽつぽつと設置されている。

 

「雰囲気ありますね~」

 

 そうして階段を降りた先は墳墓だ。

 横幅は広く六人横並びでも問題ないだろう。

 左右の壁には窪みがありそこにはオブジェとしての骸骨がある。

 

「最初の敵は何でしょう。無難にスライムとかスケルトンですかね?」

 

【このダンジョン第一層はスライムしか出ないよ】【スライムは残骸回収すると百ミリリットル二百円になるよ】

 

「スライムの残骸で二百円……何に使うんでしょう?」

 

 そうしていると何かが跳ねる音がする。

 それに警戒しアストレアは拳を構える。

 通路の脇から敵が出て来た。

 

 緑色の粘体。少し透き通る体の中央には黒い結晶がある。

 スライムだ。

 

 これは幻獣としてのスライムではなくゴーレムだ。

 液体状のゴーレムに過ぎない。

 材料として使われている液体はわざわざ再利用するとポーションに出来るという物で手間暇かけて作ってある代物だ。

 

 ゴーレムとは魔道具の一種だ。

 魔法使いが材料やコアを決め作り出した代物で一定値以上の損傷、もしくはコアがあるならコアを破壊されれば活動を停止する。

 維持には周囲の魔力を自動的に吸って動くように出来る為、ダンジョン内に雑に大量に配置しても問題はない。

 

「初戦闘! 行きます!」

 

 アストレアはそう宣言し突撃する。

 カメラワークは自動調整なので問題なく映る。

 

 体に魔力を纏いスライムに向かって蹴りを放つ。

 それだけでスライムは爆散した。

 

「あ、弱い」

 

【まぁこのレベルの幻獣が攻撃すりゃこうなるわな】【パンツ見えた】

 

「と、取りあえず残骸回収しますね」

 

 アストレアはアイテムボックスから買っておいた瓶を取り出し、ポルターガイストの魔法で念動力を使い残骸を集める。

 

 今、アストレアはクラスメイト全員の魔法をコピーしストックしてある。

 ポルターガイストはザ・マッドマンの魔法だ。

 

 今のセット内容はこうだ。

『アイテムボックス』『空間消滅』『ポルターガイスト』『回復魔法』『空間転移』

 である。二つ枠が空いている。

 

「どんどん行きましょう!」

 

 残骸を回収し終えたアストレアは先へと進むのだった。




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