ハイスクールD×D〜刹那と獣と水銀と〜 作:Campus#R
ある世界にて。
その少年は平凡であった。勉強において得意な科目もなく、体育も得意とまではいかないがそれなり。目立った容姿でもない。
しかし、彼は何よりも普通の日常を愛していた。家族や友達と笑いあうことを、喧嘩することを、泣くことすらも愛していた。そして心の底からそれが永遠に続けばいいと。
その彼は今、倒れ伏し涙を流している。その体は血塗れで隣には同じように血塗れの少女。周りを見渡すと数人の少年少女が血だまりのなかに沈んでいた。
掠れ行く視界に映るのは二人の男によって惨殺される家族。絶望し泣き叫ぶ両親、それを笑いながらナイフで刺す男達。
何故こんなことになったのか、少年には全くわからない。が、この状況で彼が思ったのは男達への復讐心や力のない自分への後悔ではなく、
「ああくそっ!これで死ぬだと?ふざけんな!僕から日常を、あの一瞬を、刹那を奪うな!返せ!僕の愛した日常を!」
『自分の愛した日常への渇望』だった。
同時刻、別の世界にて。
その青年は天才だった。勉強も運動も、武術や芸術といったものでさえも全く苦労せずになんでもこなせた。初めて行うことでさえ熟練者のような動きをすることだって出来た。
故に、彼は産まれてこの方一度たりとも本気を出したことはなかった。本気を出せば勝負ということすら馬鹿らしくなるからだ。
その彼は今、這いつくばって口から血を吐きながら、眼前の銃口を睨みつける。銃口を向ける男はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべている。今まで歯の立たなかった相手を見下し、愉悦にひたっているのだ。
が、彼はがその時思ったのは目の前の男への悔しさなどではなく、
「これで死ぬのか?生まれてこの方一度たりとも全力を出していないのに?はっ!納得いくものか!出させろ!俺に全力を!」
最後まで出すことの出来なかった『全力を出すことへの渇望』だった。
同時刻、更に別の世界にて。
その老人は博識であった。その世界の知識という知識を貪り読み、全てを知ったからだ。世界を回り、そしてどんな小さなことでも徹底的に調べ、知識とした。
そこまで知識を欲した理由には『全てが既知に感じる』というのが根幹にあった。初めて食べる物も、初めて行う事も、初めて体験する事も、必ず何処かで経験したことがあるように感じる。故に彼はその既知感を感じない物を調べていった。その結果、全てを知り得たのだ。
その彼は今左胸を押さえながら必死に本をめくる。すでに読んだ本の隅々を、未知と感じる部分がないかと探しながら、狂気に駆らた目でひたすらページをめくる。しかし、時は残酷に進み彼を死へと追いやる。
その死の間際、彼が思ったのは
「まだだ。まだ死ねぬ!私はまだ未知も経験しておらん。その上このような終わり方?ああ認めん。そんな結末認めない。私に至高の結末を与えよ!」
『自分の納得いく結末以外認めないという渇望』だった。
「いいよ。その願い、全部まとめて叶えてあげる。」
「「「っ⁉︎」」」
そして三人が目を覚ましたのは真っ暗な空間であった。体はかろうじてあるが、半透明ですぐにでも消えてしまいそうな感じだ。そしてその暗闇の中は、彼らは立っているのか、逆さまなのか、はたまた浮いているのかもわからないほど上下左右の感覚がなかった。
「こ…こは?」
「この空間の名前は特に決まってないかな?強いて言うなら君達三人の為に作った空間と考えてよ。」
その言葉と共に目の前にいたのは十歳にも満たないであろう銀髪の少年。
「ようこそ諸君。まずはこうやって無理矢理連れてきてしまったことを詫びるよ。ゴメンね。」
「随分とあっさり謝ってくれたが、なんのことかわからん。説明をよこせ。」
「あははっ!それもそうだ。えーと、とりあえずショック受けるかもだけど、君達三人は死にました。いや、少し訂正。死ぬ直前でした。」
「それはなんとなく覚えておる。自らが死に近づくのをなんとなくではあるが。」
「そそ。で、回りくどい説明も面倒だからはっきり言うけど、実は君達は本来あの世界に生まれるべきではなかったんだ。」
「?それはどうゆう?」
飄々と、つかみ所のない態度で少年は話し出す。
「至ってそのままさ。僕、いや僕達『外なる者』は世界の管理をしている者だ。数多ある世界を統括し運営する。それが僕達の仕事。そしてその世界で問題やバグが起きれば、それを修正して元に戻すんだ。で、君達なんだけど…さっきも言ったけど、バグというかなんというか?根本的に産まれる世界自体違ったんだよね。まぁこっちの手違いなんだけれども。」
「完全にそちらの責任ではないか。」
「まぁそうなんだけど。」
「では何故気が付いた時にその修正とやらを行わんかったのだ?」
「したさ。君達が過ごしていた世界とこっちの世界の流れは異なる、更に世界毎に進む時間も異なるんだ。まあ簡単にいうとこっちのが断然君達の世界よりも遅いんだ。で、すぐに修正した結果ああなったんだ。」
「なるほど。つまりは先程の私達が経験したあの死に方は貴様が演出したのか。随分と趣味の悪い。」
「イマイチ壮大すぎてよくわかんなかったけど、目の前のやつが全ての元凶なら」
「こいつを殴ればよかろう。」
思わぬ黒幕の登場に殺意を抱く一同。が、その後の言葉にそんな気持ちは消え去る。
「おいおい、いいのかい?僕は君達に非常に魅力的なお誘いをしに来たってのにそんな態度で?」
「誘い?」
「そう。ここに連れて来た時最初にいったよね?聞いてなかったのかなぁ?ねぇ君達
その願いを纏めて叶えてあげるって言ったらどうする?」
「「「何(だと)(だって)?」」」
「やり直しが可能なのか?」
だとすれば、と彼らは各自思惑を馳せる。だが、
「勘違いしてるみたいだね。僕は願いを叶えるって言ったんだよ?だれもやり直させてあげるとは一言も言ってないよ?」
「ならどうやって?」
「簡単だよ。さっきも言ったろ?君達は産まれる世界を間違えたって。なら本来の世界に行ってそこでやり直せばいいのさ。」
「本来の世界?」
「そう。そこなら永遠の日常も、全力を出す場も、納得のいく結末だって迎えれる。どうだい?」
「……その言葉に嘘偽りは?」
「ないよ。僕が保証しよう。因みに否定すればさっきの世界へ逆戻り。そのまま死んで、本来の世界でない所で永遠に満たされない願いを抱きながら、輪廻の輪を繰り返すことになる。」
その言葉に黙り込む一同。
「……なるほど。これはもはや一種の脅しというわけだ。己の願いを叶えたくば従えと。」
「脅迫的なものは好きじゃないんだけど、ま、そうだね。」
「…いいだろう。それに付き合ってやる。元よりあの世界に興味はない。願いが叶うならそれに準ずるもまた一興。」
「同じくだ。本当に全力を出せるなら元などどうでもいい。」
老人と青年は本来の世界に行くことを決めた。
「……僕もいいよ。」
遅れて少年も賛同する。
「おや?驚いた。他の二人と違って君は否定する可能性もあったから、こんなに早く決めるとは思わなかったよ。」
「確かに心残りはあるさ。本来の世界に行ったとしてもさっきまで過ごした世界の両親や友達は、僕の日常を構成した人達はいないだろう。」
でも、と少年は続ける。
「それ以上に僕は自分願いを掴みたいんだ。」
「……ふふっ…あははははっ!あー、いいねぇ!その気持ち。自分の欲求に従う、実に人間らしい!なら善は急げだ。早速君達の本来の世界でそれぞれの渇望を満たし、思うがままに生きてくれ。君達の生き様楽しんで見させてもらうよ。あ、十全に楽しんでもらえるよう、前世の記憶とここでの記憶は消させてもらうよ。」」
その言葉と共に体が透け始める。
「はっ!最後まで皮肉が効いているな『外なる者』の一人よ。」
「まぁお前が楽しむか否かはさておき、十分に楽しませて頂こう。」
「勝手に殺されたのは気にくわないけど、一応お礼は言っとく。ありがとう。」
その言葉を最後に三人は空間から消えていった。
「はぁ、疲れたー。でも今日の仕事はこれで終わり。早速昨日買った本の続きを「お疲れ〜。ちょっといいかい?」げぇ…。」
見た目三十歳位の一人の男が現れた。
「…なんですか?仕事はさっき万事抜かりなく終わらせたはずです。というか貴方が来たってことは悪い予感しかしないんですけど?」
「なに、些細な事だよ。」
口振りからして少年の上司のような立場らしい。
「君の部下三人程がまたミスをしてそれぞれの世界の人を殺ってくれた。まぁ、そこまでならよかったんだが更にそれを報告せずに勝手に他世界に転生させてね?しかも同じ世界に。このままだとあの世界、好き放題されて崩壊するのが目に見えてるから、責任持って修正よろしく。」
「……………くっそ、あの馬鹿共またやらかしたか。あーあどうしよ?」
「更に厄介なのが特典与えて転生させてる。しかも割と王道で厄介なものを。」
「すみません。これこういう時の為に書いてたものでして受諾して「辞表は受けんよ。」」
「だがまぁ、流石に辛いだろうと思ってな。君は最近仕事漬けだったし。だからこれに関しては君に一任するよ。好きなようにやりなさい。ある程度の支援はしよう。」
その言葉に反応した少年。悪どい笑みを浮かべていた。
「その言葉。嘘偽りはないですね?」
長くなりそうなんで分けます。転生前転生の話しでこんなに延びるとは。流石駄文。
ここだけだと何の話しか全くワカンネーwww早めには投稿します。