ハイスクールD×D〜刹那と獣と水銀と〜 作:Campus#R
課題で辛いから気分転換に書いたら、予想以上に長くなった。切り時もわからなかったのでそのまま投稿します。
今回オリジナル設定が出てきます。上手く説明出来たかわかりませんが……。
その翌日。今日は休日である。一誠はアーシアを連れて永斗の家へと来ていた。
が、一誠の表情は非常に浮かない顔をしていた。
「どうかなさったんですか?」
不思議そうに首を傾げるアーシアに一誠は更に心配になった。この家に下手すればアーシアにとって最も危険かもしれない人物がいるのだ。因みにアーシアの服装は昨日と同じ修道服。同じ物が何枚かあるようだ。
純粋な彼女に更に気が重くなる一誠。ただここで躊躇していても進まないので、意を決してインターフォンを押した
瞬間
「いらっしゃいませアーシアさん、一誠君。」
コンマ一秒の遅れもなく出迎えた永斗に一誠は膝から崩れ落ちた。
「お、一誠。遅いぞ。」
案内された部屋では既に十哉がくつろいでいた。
部屋は広々としており、大理石のテーブルと2人がけのソファが対面して置いてあった。永斗の父親により、他の内装にもこだわりが見える。
「時間通りだろうが。てか永斗止めてろよ。」
「五分前行動は基本だろ?それに彼女絡みの本気の永斗を止めれるとでも?」
「…悪かった。」
「わかってくれたならいい。アーシアさんは俺の隣に座って。」
そう言いながら十哉の対面のソファに腰をおろす。
「は、はい!」
内装を物珍しく見ていたアーシアは不意に声をかけられ、驚いたような声で返事をした。
「クククっ。」
反応が面白かったのか十哉が声を抑えて笑った。
それが恥ずかしかったのか、真っ赤になって一誠の隣に座った。
「ゴハァ…。」
約一名その表情に吐血し悶えていたが、気にした人はいなかった。
その後すぐに回復した永斗は十哉の隣に。
「さて話しに入る前に、折角のお客様です。ケーキでも食べましょう。十哉君、そこの箱に入ってるんで配って下さい。私は紅茶を入れますので。」
「はいよ。」
そして自己紹介などを交えながらゆったりとティーブレイクを終え、本題へと入った。
「とりあえずアーシア・アルジェントさん。貴女の現状から説明しましょう。」
「現状、ですか?」
「ええ。一誠君、彼女を。」
「わかった。」
そう言って一誠の隣に黄金の波紋が浮かび上がる。そしてそこから
「…うっ。」
天野夕麻、つまり堕天使レイナーレが出てきた。
「起きろレイナーレ。」
「…ここは、外?」
「ええ。貴女に聞きたいことがありまして。以前言っていた計画、そこに出てきたシスターは彼女ですか?」
「彼女…?っ!?アーシア・アルジェント。」
「…堕天使、様?」
お互いに目を見開き、顔を合わせる。
特にアーシアはレイナーレを見た後、怯えたように一誠達を見回した。
「どうして、一誠さんどうして?」
無理も無いだろう。アーシアからしてみれば見知らぬ土地で倒れてしまった(と彼女は思っている)自分を助けて、一晩泊めてくれた。そこで一誠の両親と触れ合い、家族の暖かさを知り、彼女自信も一誠に心を開いていた。
だから一誠がこちら側だと思わなかった、いや
「ごめんなアーシアさん。俺達3人は既にこっち側の人間だ。そしてアーシアさんの事もレイナーレから聞いて少し知っていたんだ。ただこれだけは信じて欲しい。俺達は君を利用しようとかそんな事を考えていたんじゃないんだ。」
一誠はアーシアの方を振り向いて言った。
「大丈夫。俺はアーシアには嘘はつかない。」
自然とそう言葉が出た。前は嘘をついてばかりだったのに、と自嘲しながら。しかし何故か、その言い方は『藤井蓮』としての時と重なった。
「っ!?(またこの感じ。懐かしいくて暖かい…。私が、私自信が告げている?彼を、一誠さんを信じていいと……。)」
アーシアは一誠の目を見つめながら、力強く頷いた。
「ありがとう。さて話を戻そう、どうだレイナーレ?」
視線を戻し、再び問いかける。
「ええ、彼女よ。間違いないわ。」
その瞬間、永斗から黒いオーラが立ち上る。
「なるほど、彼女に手を出そうとしたんですか。これはきちんとお話しをしておくべきですかね?」
あまりの威圧にレイナーレはガタガタと震える。
「落ち着け永斗。計画のシスターが偶々彼女だっただけだろ?それに未遂だ矛を納めろ。」
十哉が永斗を宥める。
「ああ。それにこいつと話したが、事情が事情だ。少しは仕方の無い面もある。ここは本人同士で話し合わせた方が良いだろう。」
「…わかりました…。」
加えての一誠のレイナーレの擁護に永斗はオーラを鎮めた。
「では隣の部屋を使って下さい。私達がいたら話せない事もあるでしょう。何かしたら、わかってますね?」
「何もしないわ。私も命が惜しいもの。」
「アーシアさんも何かあれば。すぐさま駆けつけますので。」
「…多分大丈夫です。堕天使様、レイナーレさんからは敵意も何も感じませんから。」
そうして二人は隣の部屋へと移動した。
「上手く行ったな。」
「ええ、計画通りです。あれだけプレッシャーをかけておけば万が一があっても手出しは無いでしょう。」
「本当よく考えたよな、メールで来た時は驚いたぜ。ま、俺は出番殆ど無くて楽だったけどな。」
そう。これは永斗の考えた計画通りだった。アーシアとレイナーレをお互いに話しをさせ、わだかまりを解こうという計画だったのだ。そのため一誠はレイナーレの説得とカウンセリングを行い、ダメ押しに先ほどの永斗の威圧。レイナーレがアーシアに手を出す可能性をギリギリまで減らすのが大事だった。
「さてあちらのことは二人に任すとして、今度は私達の本題に入りましょう。」
加えて、これから話すことは2人には聞かせてはならない。合理的に3人と分けれる手段だったと言うことだ。
「ああ、頼むよ永斗。」
「この世界がどうなっているのか、だな。」
永斗は紅茶を一口飲んで、説明を始める。
「まず聞きたいのですが、この世界の座について考えたことはありますか?」
「……いや無いな。流出位階に到達しているとはいえ、座に居座る目的がない。」
「十哉の言う通りだな。それに見た感じ平和その物だ。裏で人外が蔓延ってなきゃ、だけど。」
「そう。一誠君の言う人外の存在、これが今回のキーです。そもそも本来人外というのは存在しない物なんです。前の世界を考えて見てください。人外がいたとすればこんな簡単に接触出来ていましたか?」
「無いな。今は人外を魔力による感知や式などで知っているが、前の時も今のように魔力を感知することに近いことは出来ていた。それでも1度も見たことがない。」
「それに前の世界で存在していたとすれば、ベイやシュライバー辺りが嬉々として殺し回っていただろうしな。」
「そう。しかしこの世界には存在するんです。これは座にいた神
『第八天』による者です。」
「「へぇ……ん?」」
「って待て永斗。お前は元第四天だよな?」
「ええ、その通りです。」
「マリィが第五天、あの外道が第六天、それを倒したであろうあいつらが第七天……おいまさか。」
「気づきましたか。そう、この世界は
私達の前の世界と同じですよ。あれから何千年、何億年経ったかはわかりませんけどね。」
「「……………」」
絶句であった。まさか新しく降り立ったであろう世界は全くの同じ。それに気付かずのうのうと過ごして来たのだ。
そしてこれは蘇りと同じ。記憶を持ち、新しい体で同じ地上に降り生きる。一誠と十哉にとって耐え難い物だった。
沈黙が降りる。
しばらくしてそれを破るように一誠が呟いた。
「…でもおかしいだろ。『少年』は俺達をきちんと転生させた筈だ。あの頼み方でミスなんかする訳がない。」
「そこはわかりませんよ。単純に彼のミスなのが、もしくは通信が取れなくなったことに意味があるのか、その辺は探りようがありません。外への干渉が出来るようになるにしても今すぐは無理でしょう。何せ今までの既知を真っ向から否定しなければなりません。私として嬉しい事ですがね。」
「とりあえずわかっていることだけでも話せ。先に進まない。」
十哉が先へと促す。
「そうですね。第八天とこの世界について解説しましょう。
とりあえずこの第八天は第七天である彼等と交代し座に至りました。第七天が倒されたのかどうかはわかりませんがね。そして座の運用には第七天の物をそのまま使ったようです。」
「そのまま使うって出来るのかそんな事。座の理ってことは彼等の願いだ。それを簡単に「それを成し遂げたのが第八天です。」」
「彼は自分の渇望を流れさせる土台として第七天のルールを解析し、一貫したシステムとして残しました。自分の渇望を最大限発揮するために必要だったのです。それが座に認められた、故にその法則が崩れていないのです。現に第七天の理自体、今までの理の総称です。不可能では無いでしょう。」
「その第八天の渇望ってのはなんだ?」
「簡単な渇望です。『人間は素晴らしい、人間は輝ける』。自分のみではなく、人間という種に対する渇望です。
第八天は第七天の理により争いのない平和な世界に産まれました。しかし、消えた争いと共にあらゆる神秘が消えてしまった世界です。あるのは昔から伝わるお伽噺や童話だけ。第八天はそれらを読み、その世界へとのめり込んでいきました。
第八天はそこから人間の可能性を心から信じていました。それこそ童話やお伽噺のように人間はどんな逆境でも輝けるのだと。そしてそれはとても尊く、美しいと。しかし、第八天の求めるような世界は何処にもありません。空想は所詮空想、その現実にぶつかったんです。
ただそこで終わりませんでした。彼は諦めず求めた結果、何かの要因で座に至ったのです。そして先程話したように第七天の理をシステムとし、自分の渇望を流出させた。結果、人間にとって舞台装置であり、乗り越えるべき壁であり、倒すべき物として人外が産まれました。システムの役割はリカバリー、人間が死んだとしても行く末に不満の無いようにという徹底した人間大好きさんの傍迷惑な渇望です。」
「なるほど。人は可能性、故に人は素晴らしい。共感も出来るが、何かが違うとしか言えないな。」
十哉は考えながらそう言う。
「これには続きがあります。第八天は人外を作り出したが、差し当たり問題が生じます。それは身体スペックの違い。産まれた人外は人間を遥かに超越し、多くの人間が殺戮されました。
これに危機感を覚えた第八天は自らの末端を地へ下ろし、神を名乗ります。そしてその周囲に心の純真な人外、天使を置き、様々な武具を作り人間に与えます。いつか見た神話やお伽噺での武具。人間はそれらの武具を使い、人外を倒して名を上げました。第八天も大層ご満悦だったでしょう。神話の再臨です。」
「まぁようやく自分の望んだ物が見れた訳だからな。」
一誠が相槌を打つ。
「しかし今度は人外が人間に与えた武具を奪って使うようになり、結局元へと戻り始めました。そこで第八天は人間のみに使える武具を作ろうと思います。だが人外の力は人間より強く、結局人外に使われる。その時第八天はある魔術を座より知ります。名を
「「!?」」
「ただしこれには余計な物と一つの問題点がありました。余計な物は不老長寿と不死身、動力が人の魂、そのせいで起こる殺人衝動。あくまで第八天は人間として頂点を目指したいと思ったからです。そして問題点は聖遺物が無いこと。元々神秘の無かった世界ですから聖遺物に出来るような物が存在しません。
そのため、彼は自作した物に余分な部分を消した
第八天はこれを一定数作り、人間に埋め込みました。埋め込まれた人間はその身体能力と異能に近いその力で活躍し、勇者、英雄と呼ばれる者も現れるようになりました。ただし、魂によって強化されていく
「なるほど、神器所持者=弱体化版聖遺物の使徒って事か。位階についてはどうなってる?」
十哉が永斗に尋ねる。
「残っているようですよ。一誠君の神器を見て照らし合わせました。神器の発言をしていない状態が『活動』、神器を実体化させその能力を使う状態が『形成』、
「なるほどな。で?」
「で?とは何ですか一誠君?」
「とぼけるなよ永斗。お前の事だまだ続きがあるだろ?それに第八天は座に『いた』んだろ?」
「お二人共鋭いですね。」
そう言って永斗は一度温くなった紅茶で口を潤す。
「ここから第八天が予想だにしていないことが起きます。それが人間の欲です。」
「人間の欲?」
「人間が力を持つということは必然的にその力を振りかざす者が現れます。それこそ自分が王になったかの如く好き勝手するように。そんな事が起きればどうなるか、答えは簡単『争い』と『虐殺』と『弾圧』です。力を持つ者同士は自分の力量を周りを巻き込んだ殺し合いで比べ、一般人を力の誇示に殺し、それを恐れた一般人は集団となり力を持つ者を殺す。人外を倒すための力は何時しか人同士の争いに使われました。」
「第八天の意思と違うことが起きたわけだ。」
「第八天は悩みました。どうすれば良いのか、神器を取り上げれば人間はまた人外に狙われる。だがそうしないと争いはなくならない。
思考の末行き着いた結論は、逆らえないような強大な力があればそんなことは無くなる、という考え。力には更なる力を。そのために第八天は自分の子を地上に下ろします。俗に言うキリストと呼ばれる存在です。そして人々の信仰を集めた彼を殺した槍、磔にした十字架、血を入れた杯を使い作り上げた物が『
しかし追い討ちを掛けるように事が続きます。それが人外同士の大規模な戦争。始まりは四人の巨大な力を持つ人外を中心とした『悪魔』と、天使が邪な心を持ち堕天した『堕天使』が冥界の覇権を巡って争いが起きました。そこに沈静化の為に送り込んだ天使を巻き込み三つ巴の戦争となりました。戦争は泥沼化し何百年と続きました。勿論人間にも影響が出ます。それは異常気象や地殻変動などの自然災害として襲いかかりました。
この時点で第八天は余りにも疲弊していました。本来ただの人間。それが座の理をシステムとし、出来ない魔術を行使して神器を作ったことで、本来無いはずの寿命という概念に囚われます。そして戦争の沈静化に向けて動くことが更に衰弱させていきました。それこそ悪魔のトップである魔王や神話の神程度の力しか持たない程に。」
ふぅ、と一息ついて続きを話す。
「そして第八天にとって止めとも言える事が起きます。それが一誠君の右腕に宿る神滅具の素体、ドライグともう一体の龍による争いです。」
「こいつの?」
驚いたように自らの右腕を見る一誠。
(『何?こっちに意識向けて。大事な用事だから出てくるなって言ったじゃないの?』)
(『いやお前の話題になったからつい、な。それより本当にそんなことしたのか?』)
(『ええ、理由は覚えてないけどね。もう遠い昔よ。』)
(『そっか。』)
「終わりましたか?」
永斗が一誠に尋ねる。待ってくれていたようだ。
「ああ、悪い。続けてくれ。」
一つ頷くと永斗は続きを語り出した。
「その二体は二天龍と呼ばれる程の力を持つ龍でした。二体は戦場を飛び回り争い続けました。三つ巴の戦争など知ったことではありません。羽ばたきで全てを壊し、息吹で燃やし、爪は大地を引き裂き戦場は荒れに荒れました。そんな戦争するどころでは無くなった状況に、三種族は手を結んで倒しにかかりました。しかし余りに強大な力を持つ二体に歯が立ったのは、弱体化した第八天を初めとする三種族のトップだけでした。そして彼らは二天龍に戦いを挑み、結果魔王は四人共全滅、天使、堕天使も力のある幹部を大勢亡くしました。そして第八天の寿命も風前と灯火となったのです。
死期を悟った第八天は最後の力で二天龍を神滅具として封じそのまま亡くなりました。
大分長くなりましたが以上ですね。」
そこまで話して疲れたのか、永斗は冷めた紅茶を飲み干し新しく注ぐ。
「なるほど、この世界の事と第八天についてもわかった。さっきの言い方からして、現在座は空席って事か。」
十哉が聞いた事を纏めるように話す。
「ええ。交代もせず空席になった事で理のみがそのまま座として機能しています。」
「第八天が死んだ後戦争はどうなったんだ?」
一誠が尋ねる。
「戦争は各陣営の疲弊が激しく休戦状態になりました。多少の小競り合いはあれど、大規模な物は起こっていません。人間への影響も無くなりました。」
「そうか。…とりあえず思う所は色々あるけど今の話からして、」
声が震える。
「小猫は先輩の生まれ変わりか?」
一誠は手に汗をかいているのがわかった。それを認めないかのように手を握り込む。
永斗はカップをソーサーに置き、
「彼女の言葉と現状から推測するに恐らく…」
その後の言葉は聞けなかった、いや聞こえなかった。
隣の部屋から壁を突き破る轟音が響いた。
最後の一誠について補足
手に汗をかく→氷室先輩の生まれ変わりと前の日常を取り戻せる期待
手を握り込む→その期待する自分を戒める
みたいな感じです。
設定に関して分からない点や矛盾があれば感想などで受け付けます。
加えて次の投稿はこの話の前として、アーシアが兵藤家で目覚めた後の話を入れると思います。
恐らく今年最後の投稿です。
みなさん来年もこの小説をよろしくお願いします。
良いお年を。