転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話 作:微糖コーヒー
理由は潰した。
構造も壊した。
流れも取り戻した。
それでも──
選ばない者はいる。
理由がないのに、動かない。
それは弱さか。
逃げか。
違う。
意思だ。
夜。
自由滞在区の中心。
グレイは、まだそこにいた。
周囲の数は減っている。
流れは外へ、途中へ、内へと動いている。
だが、彼は動かない。
その周囲に、数体。
同じように、動かない者たち。
黒狼が小さく言う。
「残りカスか」
「違う」
俺は答えた。
「芯だ」
レゴシが前に出る。
「もう道はある」
「出口もある」
「選べる」
静かな声。
だが、届く。
グレイは笑う。
「だから何だ」
「選ばない」
短い。
明確な拒絶。
ハルが言う。
「なんで」
グレイは少しだけ考える。
「意味がないからだ」
「動いても、結局また選ばされる」
「なら最初から動かない方がいい」
カナンが言葉を飲み込む。
それは──
彼が通ってきた感覚だ。
俺は一歩前に出る。
「それでいい」
全員が止まる。
ハルが言う。
「……いいの?」
「いい」
俺は答えた。
「選ばないなら、それも選択だ」
黒狼が言う。
「おい」
「終わりじゃねえのか」
「終わりだ」
俺は言った。
レゴシがゆっくり振り返る。
「……ここで終わるのか」
「そうだ」
短い沈黙。
俺は続ける。
「全部を流す必要はない」
「全部を救う必要もない」
「ここまでで十分だ」
ハルが小さく言う。
「……残すんだね」
「残す」
グレイが笑う。
「敗北宣言か?」
俺は首を振る。
「違う」
「境界だ」
意味が分からない顔。
だが構わない。
俺は指をさす。
途中。
外の途中。
自由滞在区。
全てが見える位置。
そして言う。
「ここが境界だ」
「流れる側と、止まる側の」
沈黙。
グレイの目が細くなる。
「線を引いたのか」
「違う」
「浮かび上がっただけだ」
それが結論だ。
流れは作った。
構造も整えた。
その結果──
選ぶ者と、選ばない者が分かれた。
レゴシが言う。
「……それでいいのか」
俺は少し考えた。
そして答える。
「良くはない」
「だが、現実だ」
ハルが目を閉じる。
「全部は無理か」
「無理だ」
カナンが小さく言う。
「でも……俺は動けた」
ライカが頷く。
「私も」
それでいい。
全員じゃない。
だが、確実に変わった。
グレイが言う。
「面白いな」
「お前は流れを作った」
「俺は止まる場所を作った」
「どっちも残った」
俺は頷く。
「そうだ」
グレイは少しだけ笑う。
「じゃあ勝負は引き分けか」
俺は答えた。
「違う」
「もう勝負は終わってる」
沈黙。
「どういう意味だ」
俺は言う。
「選べる時点で、流れは勝ってる」
グレイの目が、一瞬だけ揺れた。
選ばないことは、できる。
だがそれは──
選べる状態の中での選択だ。
選べない世界とは違う。
それが、決着。
グレイはしばらく黙っていた。
やがて、肩をすくめる。
「……くだらねえな」
だが、その声は軽くなっていた。
彼は背を向ける。
「好きにやれ」
去る。
止まる側として。
レゴシが言う。
「終わったのか」
「終わった」
俺は答えた。
夜。
屋上。
流れは動いている。
途中は機能している。
外の途中も、繋がっている。
自由滞在区は残っている。
だが、もう“止まるだけの場所”ではない。
イオリが言う。
「構造は安定しました」
「そうだな」
ハルが隣に立つ。
「これで……終わり?」
「本編はな」
少し沈黙。
「その後は?」
ハルが聞く。
俺は街を見る。
灯り。
流れ。
そして、境界。
「残る」
短い答え。
──メインクーンの俺が、“選ばないという選択”ごと、この世界に残してやる。