転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話   作:微糖コーヒー

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第六十話:選ばないという選択

 

 理由は潰した。

 

 構造も壊した。

 

 流れも取り戻した。

 

 

 それでも──

 

 選ばない者はいる。

 

 

 理由がないのに、動かない。

 

 

 それは弱さか。

 逃げか。

 

 

 違う。

 

 

 意思だ。

 

 夜。

 

 自由滞在区の中心。

 

 

 グレイは、まだそこにいた。

 

 

 周囲の数は減っている。

 

 流れは外へ、途中へ、内へと動いている。

 

 

 だが、彼は動かない。

 

 

 その周囲に、数体。

 

 

 同じように、動かない者たち。

 

 黒狼が小さく言う。

 

「残りカスか」

 

 

「違う」

 

 俺は答えた。

 

 

「芯だ」

 

 レゴシが前に出る。

 

 

「もう道はある」

 

 

「出口もある」

 

 

「選べる」

 

 

 静かな声。

 

 

 だが、届く。

 

 グレイは笑う。

 

 

「だから何だ」

 

 

「選ばない」

 

 

 短い。

 

 明確な拒絶。

 

 ハルが言う。

 

 

「なんで」

 

 

 グレイは少しだけ考える。

 

 

「意味がないからだ」

 

 

「動いても、結局また選ばされる」

 

 

「なら最初から動かない方がいい」

 

 カナンが言葉を飲み込む。

 

 

 それは──

 

 

 彼が通ってきた感覚だ。

 

 俺は一歩前に出る。

 

 

「それでいい」

 

 

 全員が止まる。

 

 ハルが言う。

 

 

「……いいの?」

 

 

「いい」

 

 

 俺は答えた。

 

 

「選ばないなら、それも選択だ」

 

 黒狼が言う。

 

 

「おい」

 

 

「終わりじゃねえのか」

 

 

「終わりだ」

 

 

 俺は言った。

 

 レゴシがゆっくり振り返る。

 

 

「……ここで終わるのか」

 

 

「そうだ」

 

 

 短い沈黙。

 

 俺は続ける。

 

 

「全部を流す必要はない」

 

 

「全部を救う必要もない」

 

 

「ここまでで十分だ」

 

 ハルが小さく言う。

 

 

「……残すんだね」

 

 

「残す」

 

 グレイが笑う。

 

 

「敗北宣言か?」

 

 

 俺は首を振る。

 

 

「違う」

 

 

「境界だ」

 

 意味が分からない顔。

 

 

 だが構わない。

 

 俺は指をさす。

 

 

 途中。

 外の途中。

 自由滞在区。

 

 

 全てが見える位置。

 

 そして言う。

 

 

「ここが境界だ」

 

 

「流れる側と、止まる側の」

 

 沈黙。

 

 

 グレイの目が細くなる。

 

「線を引いたのか」

 

 

「違う」

 

 

「浮かび上がっただけだ」

 

 それが結論だ。

 

 

 流れは作った。

 

 構造も整えた。

 

 

 その結果──

 

 

 選ぶ者と、選ばない者が分かれた。

 

 レゴシが言う。

 

 

「……それでいいのか」

 

 

 俺は少し考えた。

 

 

 そして答える。

 

 

「良くはない」

 

 

「だが、現実だ」

 

 ハルが目を閉じる。

 

 

「全部は無理か」

 

 

「無理だ」

 

 カナンが小さく言う。

 

 

「でも……俺は動けた」

 

 

 ライカが頷く。

 

 

「私も」

 

 それでいい。

 

 

 全員じゃない。

 

 だが、確実に変わった。

 

 グレイが言う。

 

 

「面白いな」

 

 

「お前は流れを作った」

 

 

「俺は止まる場所を作った」

 

 

「どっちも残った」

 

 俺は頷く。

 

 

「そうだ」

 

 グレイは少しだけ笑う。

 

 

「じゃあ勝負は引き分けか」

 

 

 俺は答えた。

 

 

「違う」

 

 

「もう勝負は終わってる」

 

 沈黙。

 

 

「どういう意味だ」

 

 俺は言う。

 

 

「選べる時点で、流れは勝ってる」

 

 グレイの目が、一瞬だけ揺れた。

 

 選ばないことは、できる。

 

 だがそれは──

 

 選べる状態の中での選択だ。

 

 選べない世界とは違う。

 

 それが、決着。

 

 グレイはしばらく黙っていた。

 

 

 やがて、肩をすくめる。

 

 

「……くだらねえな」

 

 

 だが、その声は軽くなっていた。

 

 彼は背を向ける。

 

 

「好きにやれ」

 

 去る。

 

 

 止まる側として。

 

 レゴシが言う。

 

 

「終わったのか」

 

 

「終わった」

 

 

 俺は答えた。

 

 夜。

 

 屋上。

 

 

 流れは動いている。

 

 

 途中は機能している。

 

 

 外の途中も、繋がっている。

 

 

 自由滞在区は残っている。

 

 

 だが、もう“止まるだけの場所”ではない。

 

 イオリが言う。

 

 

「構造は安定しました」

 

 

「そうだな」

 

 ハルが隣に立つ。

 

 

「これで……終わり?」

 

 

「本編はな」

 

 少し沈黙。

 

 

「その後は?」

 

 

 ハルが聞く。

 

 俺は街を見る。

 

 

 灯り。

 

 流れ。

 

 そして、境界。

 

「残る」

 

 短い答え。

 

 ──メインクーンの俺が、“選ばないという選択”ごと、この世界に残してやる。

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