転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話 作:微糖コーヒー
境界は、終わりじゃない。
線を引いた瞬間に、向こう側が生まれる。
こちらと、あちら。
流れる側と、止まる側。
だが──
その境界は、固定されたものじゃない。
揺れる。
滲む。
時に交わる。
だから意味がある。
朝。
詰所の窓から見える景色は、いつも通りだった。
青い灯りが点在し、
その間を獣が行き来する。
流れは、変わらず続いている。
だが、ほんの少しだけ違う。
“余裕”がある。
レゴシが言う。
「今朝の流入、外からが多い」
黒狼が地図を見る。
「こっちの境界、少し広がってるな」
カナンが記録を指す。
「自由滞在区からの移動も増えています」
ライカが頷く。
「境界が曖昧になっています」
イオリが静かに言う。
「想定通りです」
境界は固定しない。
固定すれば、それは壁になる。
壁になれば、流れは止まる。
だから──
揺らす。
昼。
外の途中。
いつもより、多くの個体が境界付近に集まっていた。
理由は単純。
迷っている。
一体の草食。
自由滞在区から出てきたばかり。
灯りの前で止まる。
内側へ行くか。
途中に留まるか。
外へ出るか。
レゴシは声をかけない。
ただ、近くにいる。
それだけでいい。
草食は長く迷う。
だが──
自分で決める。
「……途中」
選ぶ。
黒狼が小さく言う。
「増えたな、こういうの」
レゴシが頷く。
「自分で決めるやつ」
それが流れだ。
夕方。
自由滞在区。
ここも変わっている。
以前のような停滞はない。
だが、完全に流れているわけでもない。
一体の肉食が立ち上がる。
少し歩く。
灯りを見る。
止まる。
戻る。
また座る。
動いている。
だが、選ばない。
それでもいい。
カナンがそれを見て言う。
「……あれも、選択ですよね」
ライカが答える。
「はい」
止まることを、選んでいる。
それは否定しない。
夜。
詰所。
報告は安定している。
だが、数字だけでは見えないものがある。
ルイが言う。
「境界が広がっているな」
「そうだ」
イオリが答える。
境界は、線ではない。
帯になる。
その中で、
動く者。
止まる者。
両方が存在する。
レゴシが言う。
「これ、どこまで広がるんだ」
黒狼が肩をすくめる。
「分からねえな」
分からなくていい。
固定しない。
だから続く。
夜。
屋上。
風が強い。
灯りが揺れる。
遠く。
自由滞在区。
その向こう。
さらに外。
まだ見えていない場所。
そこにも、流れは行くかもしれない。
止まる場所も、増えるかもしれない。
それでいい。
全部を管理しない。
全部を把握しない。
残るのは──
選べる構造だけ。
それがあれば、
どこでも動く。
境界は越えられる。
戻ることもできる。
それでいい。
風の中で、灯りが揺れる。
その下を、獣が通る。
こちらから向こうへ。
向こうからこちらへ。
止まりながら。
動きながら。
それが続く。
──メインクーンの俺が、“境界の向こう側”ごと、この世界に広げてやる。