転生したらメインクーンだった俺が、獣社会の“歪み”を踏み潰す話   作:微糖コーヒー

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第六十七話:境界の向こう側

 

 境界は、終わりじゃない。

 

 線を引いた瞬間に、向こう側が生まれる。

 

 こちらと、あちら。

 

 流れる側と、止まる側。

 

 だが──

 

 その境界は、固定されたものじゃない。

 

 揺れる。

 滲む。

 時に交わる。

 

 だから意味がある。

 

 朝。

 

 詰所の窓から見える景色は、いつも通りだった。

 

 青い灯りが点在し、

 その間を獣が行き来する。

 

 流れは、変わらず続いている。

 

 だが、ほんの少しだけ違う。

 

 “余裕”がある。

 

 レゴシが言う。

 

「今朝の流入、外からが多い」

 

 

 黒狼が地図を見る。

 

「こっちの境界、少し広がってるな」

 

 

 カナンが記録を指す。

 

「自由滞在区からの移動も増えています」

 

 

 ライカが頷く。

 

「境界が曖昧になっています」

 

 イオリが静かに言う。

 

 

「想定通りです」

 

 境界は固定しない。

 

 

 固定すれば、それは壁になる。

 

 

 壁になれば、流れは止まる。

 

 だから──

 

 揺らす。

 

 昼。

 

 外の途中。

 

 いつもより、多くの個体が境界付近に集まっていた。

 

 

 理由は単純。

 

 

 迷っている。

 

 一体の草食。

 

 

 自由滞在区から出てきたばかり。

 

 

 灯りの前で止まる。

 

 

 内側へ行くか。

 

 途中に留まるか。

 

 外へ出るか。

 

 レゴシは声をかけない。

 

 

 ただ、近くにいる。

 

 それだけでいい。

 

 草食は長く迷う。

 

 

 だが──

 

 

 自分で決める。

 

 

「……途中」

 

 選ぶ。

 

 黒狼が小さく言う。

 

 

「増えたな、こういうの」

 

 

 レゴシが頷く。

 

 

「自分で決めるやつ」

 

 それが流れだ。

 

 夕方。

 

 自由滞在区。

 

 ここも変わっている。

 

 

 以前のような停滞はない。

 

 

 だが、完全に流れているわけでもない。

 

 一体の肉食が立ち上がる。

 

 

 少し歩く。

 

 

 灯りを見る。

 

 

 止まる。

 

 

 戻る。

 

 

 また座る。

 

 動いている。

 

 

 だが、選ばない。

 

 それでもいい。

 

 カナンがそれを見て言う。

 

 

「……あれも、選択ですよね」

 

 

 ライカが答える。

 

 

「はい」

 

 止まることを、選んでいる。

 

 それは否定しない。

 

 夜。

 

 詰所。

 

 報告は安定している。

 

 

 だが、数字だけでは見えないものがある。

 

 ルイが言う。

 

 

「境界が広がっているな」

 

 

「そうだ」

 

 イオリが答える。

 

 境界は、線ではない。

 

 

 帯になる。

 

 その中で、

 

 動く者。

 止まる者。

 

 両方が存在する。

 

 レゴシが言う。

 

 

「これ、どこまで広がるんだ」

 

 

 黒狼が肩をすくめる。

 

 

「分からねえな」

 

 分からなくていい。

 

 固定しない。

 

 

 だから続く。

 

 夜。

 

 屋上。

 

 風が強い。

 

 

 灯りが揺れる。

 

 遠く。

 

 

 自由滞在区。

 

 

 その向こう。

 

 さらに外。

 

 

 まだ見えていない場所。

 

 そこにも、流れは行くかもしれない。

 

 止まる場所も、増えるかもしれない。

 

 それでいい。

 

 全部を管理しない。

 

 

 全部を把握しない。

 

 残るのは──

 

 

 選べる構造だけ。

 

 それがあれば、

 

 どこでも動く。

 

 境界は越えられる。

 

 

 戻ることもできる。

 

 それでいい。

 

 風の中で、灯りが揺れる。

 

 

 その下を、獣が通る。

 

 こちらから向こうへ。

 

 

 向こうからこちらへ。

 

 止まりながら。

 

 

 動きながら。

 

 それが続く。

 

 ──メインクーンの俺が、“境界の向こう側”ごと、この世界に広げてやる。

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