転生老婆の怪しい店 作:ああああああああ
当たり前の話だが、何処の世界にも治安が悪い場所と言うのは存在する。前世で言うスラム街と言えば、風景を想像出来なくは無いと思う。そんな場所に俺は転生した。いや、この場合は憑依したと言うべきか。
一般的なこういう類の物を浅く広く嗜んできた身としては、夢に見た展開と言っても過言じゃなかった。正直言ってワクワクしていたのだが、今の自分を知って希望は絶望へと変わった。
普通こういう類の話の主人公は男な事が多い。理由としては、その方が書きやすいからだと思われるあくまでも推測だが。若く、イケメンで才能があったりなかったりする主人公がヒロイン候補とバトルして仲を深めたり、とある事がきっかけで、王女と仲良くなった後その身近にいた敵国の内通者を撃退して、王女から感謝されたり展開を膨らみやすかったりするのだろう。そんなテンプレは、所詮全部フィクションである。
現実はそうは甘くない。まるで、幼児が誤飲しない様に塗ってあるヤツみたいに辛く苦いのだ。その証拠に、俺の転生先は老婆だった。白髪で、腰が曲がっていて老い先短い老婆。
「後、生きて数年だろうな」
仮にも自分の身体になってしまったのだから、残された時間が否が応でも分かってしまう。だから、精々好き放題生きる事にした。他人に迷惑を掛けてでも、残りの人生を少しでも楽しく過ごす事に決めた。
まずは、その為に金を稼がなきゃいけない。だけどどうやって?その答えは、一つ。俺にはスキルがあった。何の役にも立たないガラクタを製造出来るスキル。それを使って悪人相手に商売をする事にした。悪人なら、心があまり痛まなくて済む気がするからだ。さて回想は終わったが、現実に変わりは無かった。
その現実と言うのは。まだ若い少女が老い先短い老婆に、殺気を向けていると言う最悪な状況だ。正直言ってプライドなんか殴り捨てて、命乞いをしたかったのだが。そこでそれをしたところで何になるのか?と言う話だ。そもそも、いまさっき開店して最初のお客様がこれかよ。幸先が悪すぎる。そう思っていると、漸く少女が口を開いた。
「武器が欲しい」
「渡したら?」
「殺す」
「渡さなくても?」
「殺す」
無いなら、何とか作るしか無い生存エンドを。俺は必死に脳みそを回し始めた。
「そんな事を言われて渡す馬鹿はいないだろうよ。……そもそも、何で人を殺そうとなんて思うんだい?」
「そしたら、おじさんがご飯をくれるから。理由なんて無いよ」
光の無い目で少女がそう呟いた後、一気に距離を詰められる。咄嗟の動きで判断が遅れる。そして、首を絞められる。凄い力だ。見た目の割に怪力過ぎるだろ。
「お喋りはおしまい。もう一度聞くけど武器はある?」
喉から手が離れる。空気をありったけ取り込み。
「なぁ、ガキ。知ってるかい?戦場の英雄と世界を騒がせる殺人鬼。どちらも人殺しなのに、立場が大きく違うんだ。おかしなもんだろう?人殺してるのは変わり無いのに、片方は歓声を浴び、片やもう片方は怒声や蔑みを受ける事になるのだから」
「何が言いたい?言ったよねお喋りは……」
「良いかい?お前が慕うそのおじさんはケチでバカなのさ。お前はいつまでもそんな無能に付き合うつもりかい?人じゃなくてモンスターを殺せば金になるんだ。その稼ぎがあれば飯なんていつでも食える」
グゥと返事は腹で返された。成程、お前も今を生きたいだけか。
「嘘」
「嘘じゃない。信頼の証拠に、アタシを殺さないと約束するのなら武器を渡そう」
俺はスキルで使った
「
「木の棒じゃないの?」
「素手よりはマシだろ」
さぁ、モンスターでもぶっ殺してきな。と無理矢理少女を店から追い出した。結局、その日はその少女以外誰も来る事は無く、最初の営業は赤字で終わった。