無縁塚で、独りごち 〜この難易度Lunatic幻想郷で〜 作:胡桃の中の団子
静かに浮き立つ波の音が、どこか平衡感覚を狂わせる。ここから先で紡がれる独白は、遠い昔にあったような、そんな話。ただ、そのおとぎ話は『今は昔』と語り部から紡がれようとも、
「前世の記憶がある」
瞬間、幾何紗は妙な感覚に襲われた。今、現実として存在している事象や景色が、まるで存在していないかのような、そんなふわふわとした感触がしたのだ。
蛮奇の方もナニかを感じ取ったらしい。だが彼女はオブザーバーではない。
幾何紗は情景を目で観て淡々と語った。その光景はくだらない寸劇のようにも思えた。古い白黒の濁ったフィルムを定点から眺める。ただそれだけの作業。それなのに、幾何紗の目頭はどんどん熱くなっていく。
苦しみのなかで悶えて、なけなしの命の灯火を使い果たした。その結果が自死という、落としどころのないバッドエンド。
ただ、悔しかった。自分で首を吊ったはずなのに、あわよくば帰りたいと思ってしまう己の精神の脆弱性が憎かった。
「……どうして帰りたいのかな?」
今も孤独のなかに暮らして居るものの、小さな小さな
こんなにも幸せなのに!! いや、これは……帰巣本能なのだろうか?
「──して!! しっかりしてッ!!」
──あなたは自ら命を絶ち、ナニかとしてまた輪廻の枠組みにいることを赦された。あなたに祝福のあらんことを──
幾何紗は蛮奇に肩を揺すられて目を覚ました。染みのついた、天井。
「う“っ……! か“はッぁ……」
堪えきれない吐き気が、目覚めたばかりの幾何紗の意識を無理やり覚醒させる。蛮奇がナニかを吐き出す幾何紗の背中を擦りながら言った。
「い、いきなり倒れたのよ!! 覚えてる!?」
銀色に仄めく
その血は少女の口から止めどなく溢れて、やがて収まった。そして少女の口から飛び出した砂のような血は、空気に溶けるかのように霧散していく。
ナニかの代償を払わされたのだろうか。幾何紗は弱々しく「ごめんなさい」とだけ呻いた。涙を流しているのも
「わたしのほうが、ごめんなのだが」
蛮奇の方が内心は混乱しているだろう。幾何紗が自らの過去か、或いは出自を述べ始めた瞬間からナニかが狂い始めた。
いや、幾何紗は初めから狂っていると正しく誰もが判断していたはずだ。
その、誰しもに照射する強大な妖力と、屈託のない殺意で、幾何紗は孤独で在り続けた。
だがそれが、ブラフか、はたまた単に堅い外殻なだけだとしたら。中身は視界に映る『その者』こそが正体だとして──。
蛮奇は、彼女に情を宿したのかもしれない。発端は一種の憐れみかもしれない、同情かもしれない。だけれど、
「あまりにもこのままだとかわいそうよ」
この瞬間だけは、側にいてやってもいいのかな。蛮奇はそう、自嘲気味ながらも祈った。
土日くらいは毎日3千文字は書いてぽんぽん投稿してみたいなーと思いました。文章の密度を濃くしたりとかも出来ると思っていますが、それだと3日に1回くらいの投稿ペースで4〜5000文字になるかと思います。しかし、なんか今のままでぽんぽん書いては載せていくほうがテンポがいいようにも思います。そのように、思いました。