なんか練習してみようと思って書いたものです
最近一次創作やってみようとしたのですが
うだうだしてしまったけれど書いてみました
他のところピクシヴ(は後になるか)やアルファポリス(予定)
カクヨムにも出してます
【病弱王女お見合いを成功させたら行かせないと兄である第一王子に溺愛される】
就寝前にカモミールティーを飲んでいたおかげでアルリス王国第一王女、リーゼル・フォン・アルリスはぐっすりと眠ることができた。
青い色の目を開ける。横になったまま、意識を浮上させつつ、自分の体内に気を配る。
――うん。今日は体調がいい。
ベッドに手をついて、体を起こす。一つ一つの動作をゆっくりと、だが、確実に行うようにする。
「リーゼル様」
「おはよう。マリア。今日はヴァルス王国のディートリヒ様とのお見合いね」
幼いころからの侍女であり、外見は四十代のマリアがリーゼルを起こしに来る。マリアが起こしに来るよりも、先に目覚められるようになった。
ベッドから降りて、サイドチェストの上に置いてある手帳にペンを取り、ベッドに座りなおしてから今日の体調を書き記す。
十六歳の時からマリアに言われて書くようにしている体調管理の記録だ。
「お体の方は」
「今日はとても調子がいいわ。ディートリヒ様に心配をかけないようにしなくっちゃ。――せっかく、王国から外に出られるチャンスなんだもの」
十八歳で、成人した今も、体調の方は以前よりはマシになっているが、それでも風邪をひいたりすることがある。
幼少期は殆どベッドの上で過ごしていたし、そのせいで王族の中でも影が薄かった。
それでも、今はこうして動けているし、お見合いだってできる。お見合いというか政略結婚ではあった。成人してすぐに隣国のヴァルス王国から申し込まれたのだ。
本日で三回目のお見合いで、第二王子であるディートリヒ・フォン・ヴァルスはとてもいい人だ。
政略結婚は国通しの契約や約束のようなものであるとリーゼルは知っている。それでも、王族の一員であるし、何よりも、王国の外に出たいと
リーゼルはずっと願っていた。王宮は鳥かごのような場所であったからだ。とても息苦しい。
「ご無理はなさらずに」
「ありがとう。マリア」
だぼっとした寝巻をまずは着替えることにする。それから準備。
政略結婚を成功させることは自分のためであるし、国のためにもなるのだ。手は抜けないのである。
母譲りの銀色の髪に似合う白色のドレス。アルリス王国第一王女として相応しく、なおかつ余り露出のないドレスを着て、
リーゼルは無事にディートリヒとのお見合いを終えた。お見合いの成果は大成功であった。ディートリヒとならば、ヴァルス王国でもやっていける気がした。
寄り添ってくれているというのがリーゼルにとっては救いである。
(お見合いが成功したから、後は細部を詰めて、輿入れね)
細部については自分ではなく両国の貴族任せだ。
二回目のお見合いの後で友人とともに輿入れの際に何を持っていくかも相談して選んだ。ハーブの種や苗、魔力で動くアロマランプ、アルリスは日常の魔法が発展しているから、
喜ばれるだろうし、リーゼルも慣れない土地に行くのだから、アルリスのものは持っていきたかった。
「――リーゼル」
王宮に戻り、父に報告をしてから、自室へと戻ろうとすると廊下で静かな声がリーゼルを刺す。
「兄さま」
リーゼルの四つ上の兄であり、第一王子、カスパル・フォン・アルリスは刺すような瞳でリーゼルを見下ろした。
魔導騎士団の団長で在り、魔力も豊富な彼はリーゼルとは対照的に幼いころから父王の後継者として注目されてきていた。
「ヴァルスの第二王子との見合いだったそうだな」
冬風のような声がする。とても低い声で、感情が読めない。リーゼルは怯えないようにしながら、カスパルと向かい合う。
「はい。先方が幸いにも私を気に入ってくれて……輿入れするつもりです」
「お前は体が弱いだろう」
体が弱いはずっとずっと言われてきたことだ。だけど、
「大丈夫です。鍛えましたから」
逆に刺し返すようにリーゼルはカスパルに告げると彼の前に右手を出した。力を籠めると右手の上に銀色の淡い光が現れる。
ディートリヒも褒めてくれたものだ。
金色の瞳が初めてリーゼルに注目する。カスパルが驚くのも無理はない。彼にとっての妹は体が弱くて魔力も安定せず、『面倒』な存在だったからだ。
リーゼルが右手を振ると銀色の光が空中に舞う。
「……お前が、ここまで?」
「体力をつけるための体力がない状態から初めて、ようやくです。隠れて体を鍛えたし、魔術の練習もしました。以前よりは倒れなくなりました。
公務だってやれるものはやっているし、だから大丈夫です。輿入れの方を成功させてアルリスに利益をもたらしますから」
そう、十六歳の時にようやく体力をつける体力が出来始めて、地道に鍛えたし、公務だって少しずつ参加してきた。
気丈にリーゼルはカスパルに向かって口元を緩めて、自信を見せた。宙に舞う銀色の光とリーゼルを交互に眺めていたカスパルはか細いリーゼルの右手首を掴んだ。
「ここまで、お前は自分を鍛えていたのか」
「……兄さま?」
長い冬が終わり、太陽の光が差し込んで春になったような、そんな声がした。
「行かせない」
「え?」
「お前はここにいろ。俺が、守る」
春が曇天になって雷が落ちてきたような衝撃がリーゼルを襲う。
「に、兄さま。何を言って……」
カスパルはリーゼルの右手首を掴んだまま壊さないように引き寄せた。カスパルの手がとても熱い。カスパルはずっとリーゼルに素っ気なかった。
魔力暴走で寝込んでいた時も見舞いに来てくれなかったし、たまに顔を合わせても形式上の会話をするぐらいだったのだ。
「ヴァルスには行かせない。お前の努力は認めるが、あそこは危険だ」
「私は、アルリスから外に出て自由になるの。ディートリヒ様だって認めて、守ってくれると言ってくれて」
「自由なんてあると思っているのか。あの国は第一皇子と第二皇子が争っている。――リーゼル、お前は誰かに認められたいのか?」
認められたいのかと問われてリーゼルの声が途切れる。認めてほしいのはあった。父も兄もリーゼルのことは放っておいていた。
金色から逃れるように彼女は視線を逸らせる。
「父さまも、兄さま達も、私を認めてなんて」
「俺は認める。よくここまで頑張ったな。リーゼル。病弱でいつ消えるのか分からないと思っていたのに」
引き寄せられた状態でカスパルはリーゼルの額にキスをした。唇が柔らかく、熱い。今までずっとカスパルから額にキスなんてされたことはない。
いきなり認められて、リーゼルの頭は竜巻に襲われたかのように混乱した。
「こ、婚礼の準備は進んで」
「止める。お前はここに、俺の傍にいろ。公務も、体調管理も、全部俺が面倒を見てやる。十八年間、愛さなかった分を今から愛す」
もう一度カスパルはリーゼルの額に唇を寄せた。唇の感触がリーゼルの額に伝わる。魔力が暴走しそうになるのを堪える。
ずっと愛してくれなかったカスパルがリーゼルの努力を認めてくれて、愛してくれると宣言した。
(頑張ったのが……報われようとしているのか、な)
細められたカスパルの目がリーゼルを柔らかく映す。自由になりたいと願っていたけれど、その優しさと手の熱に溶けてしまう。
カスパルはリーゼルの頬に唇を寄せた。長く、彼の唇が触れ、それだけで十八年分が満たされていく。
「リーゼル。まだまだ愛してやる」
「――はい」
望んでいた自由がなくなってしまったが、リーゼルはその手を振り払わず、熱に身を寄せた。
【Fin】