心が読めるスキルを持って貞操逆転世界に転生したので、エッチな妄想が可愛い聖女様を徹底的に堕として曇らせようと思う 作:星舟能空
前世、ラブコメをこよなく愛する平凡な少年として生きていたぼくは、ある日異世界のスラム街に転生した。
転生したのは、同い年くらいの少年の身体。
当初、ぼくはずいぶん困ることになった。
なにせ、受け継いだこの少年の記憶によれば、この少年には家というものが存在しなかった。
スラム街の適当な空き家で勝手に寝泊まりする生活。
食べるものは、屋台などから盗みで得るか、女に身体を売るしかない。
そう、この世界では、男性に性的な価値というものがあるらしい。
どうやら、この世界では、女性がずいぶん男性より多いらしく、女性たちは欲求不満をこじらせている人が多いとか。
どちらにせよ、現代日本の価値観で生きてきたぼくにとっては、まるで地獄に投げ込まれたかのような生活だ。
だが、いくら生きるためとはいっても、ぼくは盗みはしたくなかった。
見ず知らずの女性に身体を売るというのも、ふつうの少年だったぼくにはハードルが高すぎる。ぼくはこれでもラブコメ脳だから、はじめては好きな人としたい。
そうなると、当然飢える。
なんとかして仕事を探そうと、商店や屋台にいって話しかけるが、孤児の少年を雇う者などおらず、門前払い。
3日もしないうちにぼくの肉体は限界を迎え、大通りの路上で、ついに倒れてしまった。
異世界の人々は思いの外冷たく、ぼくが倒れていても、誰も手を貸そうとはしない。
ああ、こんなことなら――
せめて、前世のモラルを捨ててでも、盗みをしておくべきだったか――
そんなことを考えながら、短い転生ライフを終えようとしていた、その時だった。
――にんにくを油で焼いたような、いい匂いがした。
虚ろな意識で、顔を上げる。
そこには、一つの大きなパンが差し出されていた。
もう何も考えられなかった。
ただ、無我夢中で齧り付き、無心で食べ続ける。
ああ、美味い……
なんて美味いんだ……
こんなにも食べられるということが有り難いことだなんて、前世では想像もしなかった。
そのガーリックトーストのような味付けをされたパンの美味しさを、ぼくは一生忘れることはないだろう。
あっという間にパンをたいらげたぼくは、恐る恐る、ぼくにそのパンを差し出してくれた人を見た。
その人は、真っ白な格好に、真っ白な髪をした、とんでもない美少女だった。
「て、天使さま……?」
自然と、そんな言葉が口から出ていた。
「天使は、嬉しい。でも、わたしはそんな立派なものじゃない。ただの聖女」
少女はそういって、ぼくに手を差し出した。
せ、聖女って言ったか?
それは、教会で一番えらい人、とんでもなく立派な女の子なんじゃ……
そんな少女が、汚らしい孤児のぼくに手を差し出している。
これを掴んで立ち上がれということか……?
こんなすごい人が、こんなに優しくしてくれるなんて……
この子は、本物の天使かもしれない……
ぼくは、一瞬でその天使さま、聖女と名乗った少女に、魅了されてしまっていた。
なんだかラブコメのクーデレ少女のような喋り方も、無性に可愛らしい。
すごい身分の人なのに、自分をただの聖女といってしまうその謙虚さも、孤児に手を差し出す優しさも、まるで聖人のようだ。いや、聖女なんだから、本物の聖人なのか。すごいな……素敵だな……
一瞬で少女に惚れそうになっていたぼくだったが、次の瞬間、そんな感傷は全力で吹き飛ばされることになる。
少女の手を取った最中――
なぜか、少女の考えていることが、すべて流れ込んできた――
そう、誰にも触れなかったので気づいていなかったのだが、実はぼくは、触れた相手の心を読む力を転生時に手に入れていたのだ――
だが、その心の声の内容は――
「ああ、尊い……尊すぎる……なんという美少年……絶対拾う。わたしだけのものにする。こんな美少年でもやろうと思えばわたしだけのものにできるとか、聖女になった甲斐がありすぎる……! ど、どんなエッチなこと教えちゃってもいいんだよね?……だってこの子はわたしだけの召使になるんだもんね? 主人の言う事はなんでも聞かないといけないもんね? やばいやばい、鼻血出ちゃう……落ち着けモモ、わたしは聖女、みんなの模範となるべき存在ということになっている……まずは冷静に、この子の尊敬する御主人様を演じるんだ……」
ぼくは、衝撃のあまり、逆にまったく表情を微動だにせずに済んだ。
驚きすぎて、全身が硬直してしまったのだ。
いま読み取れたのは、この子の心の声だろう。
だがその内容はあまりにも――
あまりにも、桃色過ぎた……!
ひたすら、少女の予想外過ぎる本性に驚いていたぼくだったが――
次の瞬間、ぼくに天啓が走った。
――前世、実はぼくが一番好きだったのは、「曇らせ」もののラブコメだった。
このぼくでも楽勝で堕とせそうな聖女様を徹底的にメロメロにしてから「曇らせて」いったら、ぼくの歪んだ癖を満たすことができるのでは……
その日からぼくの、聖女さまを「堕として」「曇らせる」、インモラルな召使ライフが始まったのだった――