神ゲーなのに、今日も釣り日和   作:ひよこ大福

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四駆八駆の沼荒野

セカンディルの外へ出たあと、えびす天丼はすぐに釣り場へ向かうことはせず、手に入れた素材をどう使うかを考えながら足を進めていた。リバースラッシャーから手に入れた皮や牙、そして濁流の魔核はどれも明らかに装備や強化に繋がる素材であり、そのまま売ってしまうには惜しいと感じる一方で、それだけでは足りないことも同時に理解している。

 

「……金属系、足りてないな」

 

ぽつりと呟きながら、頭の中で素材の構成を整理する。皮や牙はあるが、武器として形にするためには芯になる部分が必要になるはずで、その役割を担うのはおそらく鉱石系の素材だと予想できる。

 

「……だったら、掘るしかないか」

 

そう結論づけたあと、えびす天丼はセカンディル周辺で採取ができるエリアの情報を思い出し、その中で名前だけ覚えていた場所へと向かうことにする。

 

四駆八駆の沼荒野。

 

名前からして分かりやすく、湿地帯のような地形であることは想像がつくが、実際に近づくにつれてその印象はよりはっきりしたものへと変わっていく。地面は固さを失い、踏み込むとわずかに沈み込むような感触があり、ところどころに水が溜まっている場所も見える。

 

「……これは、移動も気を使うな」

 

足を取られないようにしながら周囲を見渡すと、地面から突き出た柱のようなものがいくつも点在しているのが目に入る。それは自然の岩というより、泥と鉱石が混ざり合って固まったような不自然な形状をしており、表面には明らかに金属質の部分が露出している。

 

「あれが採掘ポイントか」

 

近づいて触れてみると、見た目以上にしっかりとした硬さがあり、適当に叩いて崩れるようなものではないことが分かる。

 

「……ツルハシだな」

 

インベントリから簡易ツルハシを取り出し、軽く握り直すと、そのまま最初の一撃を振り下ろす。鈍い音とともに衝撃が手に返ってきて、思っていたよりも硬いことを実感する。

 

「……意外とちゃんとしてるな」

 

二度、三度と振り下ろすたびに、少しずつ表面が削れていくのが分かり、完全に壊れるまでにはそれなりの回数が必要であることを理解する。

 

「……リズムだな、これ」

 

無理に力を入れるのではなく、一定の間隔で叩くことで効率が良くなることに気づき、同じテンポでツルハシを振るい続ける。

 

やがて表面が崩れ、いくつかの素材が手元へと入る。

 

【石ころ】

【灰色鉄鉱】

 

「……まぁ、基本はこれか」

 

石ころはともかく、灰色鉄鉱は明らかに使い道がある素材であり、これをある程度集める必要があることはすぐに分かる。

 

そのまま作業を続ける。

 

叩く。

 

削る。

 

崩れる。

 

素材が出る。

 

単純な繰り返しだが、その中で少しずつ感覚が掴めてくる。

 

「……あと何回で崩れるか、なんとなく分かるな」

 

柱ごとに耐久のようなものがあり、それを削り切ると完全に崩れる構造だと理解しながら、効率よく叩き続けていく。

 

その中で、ふと手応えが変わる瞬間があった。

 

「……ん?」

 

いつもより重い感触。

 

表面の削れ方も違う。

 

もう一度振る。

 

崩れる。

 

出てきた素材を見る。

 

【灰色鉄鉱】

【銀色鉄鉱】

 

「……お、出たか」

 

明らかに見た目が違う鉱石を手に取りながら、これがレア枠であることを理解する。数は多くないが、性能的には上位である可能性が高い。

 

「……こういうのが混ざるのか」

 

単純作業の中に当たりがある。

 

それだけで続ける意味が生まれる。

 

さらに掘る。

 

叩く。

 

削る。

 

崩れる。

 

次に出てきたものを見て、えびす天丼は思わず手を止める。

 

【沼棺の化石】

 

「……なんだこれ」

 

手に取る。

 

鉱石とは違う。

 

骨のような質感。

 

だが、完全に風化しているわけでもない。

 

「……これ、当たりだろ」

 

直感で分かる。

 

普通の素材ではない。

 

「……こういうの、好きだな」

 

思わず笑う。

 

単調な採掘の中で、こういう予想外のものが出る瞬間が一番面白い。

 

だが同時に、周囲の環境にも意識を向ける。

 

ここは安全な場所ではない。

 

「……そろそろ何か来てもおかしくないな」

 

沼地、素材ポイント。

 

条件は揃っている。

 

それでも今のところは何も起きていない。

 

「……なら、もう一本いくか」

 

一つの柱を掘り切ったあと、えびす天丼は少し離れた別の柱へと移動する。さっきと同じようにツルハシを構え、リズムを意識しながら叩き始める。

 

作業は変わらない。

 

だが、意識は変わっている。

 

どこでレアが出るか、どのタイミングで崩れるか、そして何が起こるか分からない状況そのものを楽しむ余裕が生まれている。

 

「……悪くないな」

 

ぽつりと呟きながら、ツルハシを振るう。

 

叩く音が沼地に響く。

 

その単調なリズムの中に、確かな進行と成長があることを感じながら、えびす天丼は次の一撃を振り下ろした。

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