神ゲーなのに、今日も釣り日和   作:ひよこ大福

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水路都市フォスフォシエ

サードレマを出発してからしばらく。

 

えびす天丼は街道を南へ進みながら、周囲の景色をゆっくり眺めていた。

 

最初は草原地帯が続いていたが、進むにつれて地形が少しずつ変わり始めている。

 

地面は湿り気を帯び、水辺が増え、小さな川や水路のようなものが目立つようになっていた。

 

「……ほんとに水多くなってきたな」

 

そう呟きながら街道脇を流れる川を見る。

 

透明度が高い。

 

しかも、水面をよく見ると小さな魚影まで見えた。

 

「うわ、普通に魚いるじゃん……」

 

思わず足を止めそうになる。

 

すると頭の上の帽子が揺れる。

 

「止まったら日が暮れますわよ!」

 

「いやだって気になるだろこれ!」

 

「分かりますけど!」

 

「分かるんかい」

 

思わず笑ってしまう。

 

だが実際、かなり気になった。

 

川幅も広い。

 

流れも穏やかだ。

 

どう見ても釣りポイントだった。

 

「……フォスフォシエ着いたら絶対釣りできるよなこれ」

 

「できますわ!」

 

エミィルが嬉しそうに跳ねる。

 

「水路都市ですもの!」

 

「ちょっと楽しみになってきたな……」

 

そう言いながら再び歩き始めた時だった。

 

草むらが揺れる。

 

次の瞬間、小型モンスターが二匹飛び出してくる。

 

《リバーファング》

 

細長い体をした水棲系モンスターだった。

 

牙を剥きながらこちらへ飛びかかってくる。

 

「おっと!?」

 

えびす天丼は咄嗟に後ろへ下がりながら弓を構える。

 

最近は料理や釣りばかりしていたが、戦闘を忘れたわけではない。

 

むしろ、ルミナスガル戦を経験してから以前より落ち着いて動けるようになっていた。

 

「……よしっ!」

 

矢を放つ。

 

放たれた矢が一匹目へ命中する。

 

《クリティカル》

 

大きく体勢を崩したところへ、もう一匹が横から飛びかかってくる。

 

「うわ、近っ!」

 

慌てて短剣へ持ち替える。

 

爪が掠める。

 

だが、そのまま横へ流れるように回避し、勢いのまま短剣を振る。

 

「っ、らぁ!」

 

斬撃が入り、モンスターが吹き飛ぶ。

 

以前より身体が動く。

 

戦闘経験自体はそこまで多くない。

 

だが、釣りで集中力を鍛えられた影響なのか、最近は敵の動きを見る余裕が少し出てきていた。

 

「まだ来ますわ!」

 

帽子が揺れる。

 

「分かってる!」

 

飛び直してきた一匹へ矢を撃ち込む。

 

命中。

 

そのまま距離を取りながら追撃。

 

二匹目も短剣で止めを刺す。

 

数秒後。

 

モンスターが光へ変わった。

 

「……ふぅー……」

 

えびす天丼が息を吐く。

 

すると帽子が嬉しそうに揺れる。

 

「前より動き良くなってますわ!」

 

「そうか?」

 

「そうですわ!」

 

「いやでも、普通にちょっと焦ったぞ今……!」

 

「でもちゃんと対応できてましたわ!」

 

その言葉に、えびす天丼は少し笑う。

 

以前ならもっと慌てていた。

 

無理に距離を取ろうとして追い込まれていたかもしれない。

 

だが今は、敵を見る余裕が少しある。

 

「……まぁ、無駄じゃなかったのかもな」

 

「何がですの?」

 

「色々」

 

釣り。

 

探索。

 

料理。

 

遠回りばかりしている気がしていた。

 

だが、全部ちゃんと自分の中へ積み重なっている感覚がある。

 

そのまま街道をさらに進む。

 

途中でも何度か戦闘はあった。

 

水辺のモンスター。

 

飛行系。

 

群れで襲ってくる小型種。

 

だが、以前より落ち着いて対処できる。

 

弓で削り、近づかれたら短剣。

 

位置を見て、動きを読む。

 

その繰り返し。

 

「……うわっ、今の危なっ!?」

 

「右ですわ右ー!」

 

「分かってるって!」

 

「分かってませんでしたわ!」

 

「ちょっと油断しただけだ!」

 

そんな騒がしいやり取りを続けながら進んでいくうちに、やがて景色が大きく変わり始める。

 

視界の先。

 

巨大な水路。

 

石橋。

 

水上を進む小舟。

 

そして、その奥に広がる街並み。

 

「……おぉ」

 

思わず声が漏れる。

 

街の中を水路が何本も通っていた。

 

建物は水辺に沿うように並び、橋が複雑に交差している。

 

水面へ夕日が反射し、街全体が淡く光って見えた。

 

「……これがフォスフォシエか」

 

「そうですわ!」

 

帽子が嬉しそうに跳ねる。

 

「水路都市フォスフォシエですわー!」

 

「うわぁ……」

 

自然と足が止まる。

 

想像していたより、ずっと綺麗だった。

 

街そのものが水と一緒に生きている。

 

そんな感じがする。

 

橋を渡る人々。

 

水路沿いの露店。

 

船着場。

 

魚を運ぶNPCたち。

 

そして――漂ってくる魚料理の匂い。

 

「……やば、めちゃくちゃ腹減ってきた」

 

「まずご飯ですわ!?」

 

「いやだって匂いが反則だろこれ!」

 

思わず笑いながら、えびす天丼はフォスフォシエの門へ向かって歩き出した。

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