ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
水面に崩れた氷山がいくつも浮かぶ極寒のステージ。そこにバルバトスルプスレギーナ達が降り立ち、ドローレスの奇襲を警戒していると、不意に前方の海面から大きな水飛沫が発生する。
「みーんな、纏めて沈めてあげる! アタシの全力でね! ニッシシシシシシシシシ!」
ドローレスが現れたのだ。そのコックピットにいるのは当然カルパッチョであり、余裕綽々の憎たらしい態度を見せる。
「アンタ、なんでわざわざあんなオッサンに協力してるの?」
「そんなの……面白そーだからに決まってるじゃん!」
GBBBBを破壊しようなどという行為に何故、走るのか。リンからすれば理解できない。ドーラのような破壊衝動でもあるのか? しかしカルパッチョはあまりに無邪気に答える。
「カオスに頼めばガンプラをメッチャ強化してくれるしさ。それでぶっ放せるのがサイコーに気持ちイイんだよね! 目立てるしさ!」
「……だとしたって、こんなことを?」
その無邪気な様子から偽りではないのだろう。ユウヒも何を理由にガンプラバトルを行うかは個人の自由と思っているため、そこに関してとやかく言うつもりはないが、それにしてもGBBBBを破壊しようというのはあまりにも逸脱している。
「大体、アンタ達だって使ってたじゃん。アタシがあのAIにウイルスを移してあげたお陰で準決勝を勝てたんだし!」
「準決勝……。それにAIにウイルス……。まさか……」
「……あれ? あのAI、アンタ達には黙ってたんだ? 仲間に黙ってるなんてヒドイねぇ」
そうは言われても少なくともリン達はGBVを利用した記憶はないし、使うつもりもない。だがカルパッチョの準決勝というワードからユカは出撃前のリンの話を思い出し、線が繋がったような感覚を味わう。最もカルパッチョからすればユカ達の反応こそ意外だったようだ。
「そっ、GBVをあのAIにうつしたのはこのアタシ! まあ、アタシがツムギ君の友達だ、って言って近付いたから、あのAIもアッサリ、アタシと握手して感染してくれたんだけどね!」
「……君がやったことで多くの人達が悲しんだんだ。君みたいなタイプは言っても分からないんだろうけど」
あっけらかんと悪びれる様子もなく答えるカルパッチョ。それどころかどこかリリンを嘲笑うような態度さえ見せている。だがカルパッチョが何を思うとも彼女の行動をきっかけにクラン・ブレイカーズは深い悲しみに落とされた。それを知っているからこそユウヒの言葉に僅かな怒気が籠る。
「うっさいなぁ。所詮ゲームでしょ? 本気になっちゃってさぁ。さあ、無駄話は良いからバトルしようよ! ニシシシシ!!」
だがユウヒの言葉は説教じみて感じたのだろう。鬱陶しそうにしながらも目の前のバトルに意識を向けたカルパッチョはビームランスを構えて突撃してくるのであった。
「アンタみたいな奴に負けたらリリンに合わせる顔がない!」
ドローレスに対してすぐさま散開するエスペランサ達。回避の中でリン・カーネーションは腰部の高出力ビーム砲を放つ。しかしやはり強化されているガンプラ。ドローレスは素早く回避すると、そのままリン・カーネーションへ距離を詰めていき、ビームランスを振るう。
「させないよ」
しかしビームランスの一撃はドローレスとリン・カーネーションの間に割り込んだバルバトスルプスレギーナの超大型メイスによって受け止められ、そのまま振り払うと同時にテイルブレードを放つ。まるで獲物を食らうかのように執拗にドローレスを狙うテイルブレードにドローレスも後方へ距離を取りながら回避に専念する。
そこに追撃に放ったのはリン・カーネーションのバックパックに装備されたドラグーンだ。テイルブレードとドラグーンの合わせ技にカルパッチョも僅かに眉を顰めるなか、エスペランサからバックパックの二連装GNキャノンが放たれる。
「さっきから当たってないじゃん! どこ狙ってんの?」
しかしこれも軽やかに避けたドローレスは海中に潜り、姿を消す。下手に海中に飛び込んでもドローレスには手も足も出ないだろう。三対一の状況下においても被弾もなく、煽るようにカルパッチョはユカ達を挑発する。
「アイツ、強い……!」
「でも、隙が無い訳じゃないね」
カルパッチョは口だけではなく、実力も兼ね備えているようだ。リンが苦々しい表情を浮かべるなか、ユカは冷静にドローレスが海面から現れるのを持つ。
「行くよ、バルバトス」
ユカはトランス系スキルの阿頼耶識システムを発動させ、性能を向上させる。バルバトスルプスレギーナのツインアイは赤く染まり、稲妻のような荒々しい光が走る。
「避けてみなよ!」
水中から飛び出したドローレスは両肩のシールド裏面に装備された左右系六門のビーム砲を放つ。すぐさま避けるバルバトスルプスレギーナ達だが、ドローレスはそのまま再び水中へ戻ろうとする。
「もうちっと遊ぼうよ」
しかしドローレスが現れるタイミングをずっと狙っていたユカはテイルブレードを放つ。穿つような一撃もすぐにドローレスは避けるが、ユカの狙いはテイルブレードの直撃ではない。そのまま弧を描き、ワイヤーでドローレスを拘束して、そのまま引き寄せたのだ。
「こんなの……!?」
そのままバルバトスルプスレギーナの目の前に移動させられたドローレス。攻撃の為に拘束が解かれる中、ならばとビームランスで攻撃しようとするカルパッチョだったが、目の前のモニターを見て思わず息を呑む。
──獲物を求める白い悪魔がそこにいた。
血走ったように赤く染まったツインアイはドローレスだけを見ていたのだ。咄嗟にビームランスを突き出そうとするも、そんなビームランスを諸共せず、大きく振りかぶった超大型メイスの質量を持った一撃はビームランスごとドローレスを轟音を立てて地面に叩きつける。
「あーもぅっ!」
バトルが始まり、初めての直撃。しかも超大型メイスの一撃は強化されているとはいえ、かなりの損傷を与えられた。カルパッチョは苛立ちながらもビームランスを拾い上げ、バルバトスルプスレギーナに攻撃しようとするもその前に躍り出たエスペランサはGNフィールドを形成し、干渉を防ぐ。
GNフィールドに弾かれた際に隙が発生したところをリン・カーネーションの高出力ビームによる直撃を受けたのだ。思わず後方へ飛び退くドローレスだが、エスペランサを飛び越えたバルバトスルプスレギーナは自身を砲弾のようにして突撃してきた。
「こっちはこんなに強化してんのにぃっ!」
「所詮ゲームでしょ。肩の力抜きなよ」
流れはユカ達に傾き始めた。思うような動きが出来ずに苛立つカルパッチョに対して意趣返しのような挑発をする。それが自分の発言からのものだと分かっているカルパッチョは更に苛立ちで顔を歪ませる。
近接戦のスキルにおいてはユカの方が上手なのだろう。大ぶりの超大型メイスの中にテイルブレードと脚部のクローのビームサーベルによる攻撃を織り交ぜてドローレスに反撃の余地は与えない。
「もぉー死んでよ!」
「こっわ。ダメだよ、そんな言葉使っちゃ」
癇癪を起したかのように怒りを見せるカルパッチョ。その際の発言に子供かと言わんばかりにユカは鼻で笑いながらも超大型メイスを地面に突き立て、そのまま両肩のスカルヘッドユニットを装備してドローレスを殴りつけ、仰け反った際に脚部のビームサーベルとテイルブレードで舞うようにしてドローレスの両腕を切断する。
既に両腕を失ったドローレスには為す術がなかった。しかしバルバトスルプスレギーナは超大型メイスを地面に引きずりながらゆっくりと迫って来る。
「対ありー」
バルバトスルプスレギーナは超大型メイスを振りかぶり、そのまま反応が遅れたドローレスに叩きつける。その質量を持った一撃にドローレスは深々と地面の氷の中に埋もれる。
「流石、ウイルスで強化されてるだけあってしぶといね。ぶっ壊れるまでもう少し付き合ってもらおうかな」
「ひっ……!」
だがそれでもドローレスはまだ撃破に至っていなかった。GBVによるステータスアップも馬鹿には出来ないものだ。とはいえ嬲るような真似は好きではないが撃破しなくては話にならない。再び超大型メイスを振りかぶるバルバトスルプスレギーナの姿は悪魔のようでカルパッチョの表情が恐怖に歪む。
「──その辺にしたまえ」
しかしここにきて、第三者による乱入が入る。蛍火のような光がバルバトスルプスレギーナを襲い、ユカは咄嗟に後方へ飛び退く。誰かと思って確認してみれば転送ゲートを利用してフィールドに介入してきたゼノギアのターンΩだった。
「出てこれるかな?」
ドローレスの前に立ったターンΩはバルバトスルプスレギーナ達と対峙するなか、ゼノギアはカルパッチョに通信を入れると、カルパッチョはドローレスのコックピットから出てくる。その姿を確認したゼノギアはターンΩのコックピットにカルパッチョを回収する。
「介入とは珍しいね。次は君が相手ってこと?」
「いや? 勝負はもう決している。これ以上は時間の無駄というだけさ」
ユウヒは警戒心を露にしながら問いかける。このままターンΩとの戦闘となるのか? しかしゼノギアはその気はないようでシールドのレギルスビットでドローレスを破壊する。
「おめでとう。残る四天王は1人だ。精々頑張ってくれたまえ」
破壊されたドローレスからエンブレムが出現する。まっすぐリン・カーネーションの手中に収まるなか、健闘を称えるように拍手をしたゼノギアはそのまま転送ゲートを利用してフィールドを去る。
「アタシは……アタシは負けてない! 余計なことしないでよ!」
「そうだね。君は負けていないさ。それよりも先程は大丈夫だったかい?」
転送ゲートを利用してカオスの要塞へ帰還するなか、カルパッチョは負けを認めず駄々をこねるように叫ぶ。誰がどう見てもユカ達の勝利だったように思えるが、ゼノギアは話を合わせつつ、カルパッチョを気遣ったような発言をする。
「……っ」
先程、自身を見下ろすバルバトスルプスレギーナの悪魔のような姿を思い出したのだろう。途端にカルパッチョの顔が青ざめ、震えるなか、それを少しでも和らげるために操縦するゼノギアの首元に抱き着くのであった。