ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「おかえり。さっきは驚いたよ」
フリーダムフリートとのバトルを終えてロビー広場に戻ってきたツムギ達を出迎えるユウヒ。ユウヒがログインする事を知っていたツムギ達は特に驚くことなく合流するなか、タオは興奮した様子でツムギを見やる。
「ツムギ、メッチャ強いな! まさか君が"覚醒"を使えるなんて!」
「かく、せい……?」
タオはあの赤い光について知っているのだろう。興奮しながらツムギを褒め称えていると初めて聞くワードなのか、リリンは説明を求めるようにタオを見やる。
「……あれ、やっぱり覚醒だったんだ」
リリンとは違い、ツムギは覚醒について知っているのだろう。タオ達を他所に信じられないとばかりに呟く。
「さてはリリン、覚醒のこと知らんな!? よーし、僕が説明したるわ。覚醒っていうのは……」
「──覚醒はガンプラの能力を飛躍的に高める力。卓越した能力を持つプレイヤーだけが使える特別な技だよ」
覚醒の発現に我が事のように嬉しいのか上機嫌にタオはリリンに説明しようとする。しかしその言葉を引き継ぐように割って入った存在がいた。
「そう。そこにいる希望の守り手のようにね」
こちらに歩み寄ってきたのは褐色肌とモヒカンのような髪型が特徴的な人物だった。プロフィール画面を確認してみれば相手はあのブラックロータスを操っていたカオスであった。そんなカオスはユウヒを見やりながら話す。その口ぶりからユウヒも覚醒の使い手であるようだ。
「君、どうやって覚醒を身に着けたんだい?」
「そう言われても……。あの時初めて覚醒したんです」
そのままカオスはツムギに質問を投げかけるも、逆に理由があるとすればツムギも知りたいくらいでいまだ困惑を隠しきれていない。
「やはり、か。どうしたら発動できるのかは、いまだに解明できていないからね」
「ノーマルのシステムでサポートされてるらしいけどね。覚醒したから使える……だったかな。ガンプラバトルの原点。ガンダムグレートフロントでのバトルライブGでショウさんを始めとした何人かのプレイヤーが使えて、シミュレータの進化に続くように増えていったんだっけ」
ツムギの返答に納得したように答えるカオスに続くように話すユウヒ。どうやら覚醒は長いガンプラバトルの歴史の最初の段階からその存在が明らかになっていたようだが、いまだに謎の多いシステムだったようだ。
「誰もが使えるものじゃない。ツムギ君、ユウヒ君……。君達は特別な存在……ということだ。どうだね、ツムギ君。私のクランに入ってその技を極めてみないかい?」
確かにカオスの言うようにこの場で覚醒を使えるツムギとユウヒは特別な存在といってもいいだろう。その中でも目の前で、そして初めて覚醒したツムギに強い関心があるのだろう。あろうことかカオスはフリーダムフリートに勧誘する。
「ちょっと待ってください! ツムギはうちのクランの大事な仲間なんですよ!」
「それは分かっているとも。だが彼にとってもランクアップできるチャンスだ。悪い話ではあるまい」
すかさずタオが待ったをかける。しかしそんな言葉はカオスも知っての事だろう。だがそんな事よりもこの魅力的な存在を逃すのは惜しいようでフリーダムフリートに所属するメリットも伝える。確かに上位クランに入れば得られる事も多いだろう。
「光栄なお話ですが俺はブレイカーズのメンバーです。俺は……ブレイカーズの1人として成長したい」
ここでフリーダムフリートに参加する魅力はタオも嫌でも分かっているのだろう。不安げにツムギを見つめるなか、その視線に気づいたツムギは優しく微笑むと真摯な表情でそのカオスに向き直り、その申し出を断る。
「……そうか。振られてしまったようだね。はっはっはっ、ますます君のことが気に入った!」
その言葉にタオは手放しで喜び、ユウヒも微笑むなか、カオスは残念がるのも束の間、ツムギの人柄に好感を抱いたのだろう。腹を揺すって笑う。
「私は諦めないよ! 気が変わったらいつでも声をかけてくれ!」
無理強いするのはカオスとしても本意ではないのだろう。どこか爽やかさを感じさせながらツムギ達に背を向けて去って行ってしまった。
「それにしても災難な日やったわ……。ちゃんと設定したはずやのに、あんな相手が来るなんて」
「βテストとはいえ最近、バグが多いね」
カオスが去って行ったことに安堵しつつも先程のバトルを振り返るタオ。どうやらランクフリーバトルはタオの見落としなどではないらしい。ノイズの件もあってか、ツムギは困ったように答える。
「リリンもありがとうな。メッチャ心強かったで! 人違いって分かった時はビックリしたけど一緒に戦ってくれて助かったわ。まあ、これも何かの縁ってことでまた遊ぼな!」
「……うん」
タオはそのままリリンを見て感謝を伝える。色々あったが今ではリリンと共にバトルが出来て良かったと思える。それはツムギも同じようで微笑を見せると、そんな2人を見てリリンはコクリと頷く。
「ねえ、リリンって……」
「あー……説明するとややこしいんですが」
だがリリンについて何も知らないユウヒはそれとなくツムギの隣に移動すると、リリンを見ながら尋ねる。そう言えばユウヒは知らなかったなとツムギはこれまでのことの経緯を話し始めるのであった。
「──ふーん。覚醒かぁ」
その様子を遠巻きで見つめている存在がいた。
「また懐かしいもんを見たねー」
ロビー広場の2階。その手すりに身を預けながらツムギを見つめるふわりとした質感の茶髪の女性。クラン・ブレイカーズとフリーダムフリートのバトルを観戦していたのだろう。くつくつと笑っている。
「あれは……ユウヒでしょうか」
「みたいだねー。覚醒の使い手、それにユウヒ。不思議な運命を感じるよ」
そんな女性の隣では美しいナチュラルブロンドの髪が目を引く女性の姿もあった。2人はユウヒを知っているのだろう。ユウヒに視線を向けつつも茶髪の女性はツムギ達に背を向け、マイハンガーに移動すると一緒にいた女性もそれに続く。
「ユウヒに声をかけなくてよろしかったの?」
「向こうは盛り上がってるしねー。邪魔しちゃ悪いっしょ」
ミッションを受注していたのだろう。出撃の準備を進めるなか、ふとナチュラルブロンドの髪を揺らしながら女性は尋ねるとクスリと笑いながら飄々とした態度を見せ、そのままハンガーで出撃の時を待つ自身が操るガンプラを見上げる。
「それよりもアタシも勘を取り戻さなきゃいけないからね」
それはガンダムバルバトスをベースにカスタマイズされたガンプラであった。その口ぶりからガンプラバトル自体はやったことがあるのだろう。ジャケットのポケットに手を突っ込みながら連れの女性に振り返る。
「マイスターってのに会わなきゃいけないし」
「そうですわね。その為にわたくし達はGBBBBに来たのですから」
悪魔の名を冠するガンプラを背に茶髪の女性の特徴的な"真紅の瞳"がまっすぐ見つめた。その言葉にふっと笑みを漏らしながらナチュラルブロンドの髪の女性は自身のガンプラの元へ向かうと2人は出撃していくのであった。
・・・
「ふぅ……」
数時間後、日付が変わるかどうかの時間でツムギは一息つく。自身の作業机の上には組み立てられた1/144スケールのZガンダムが置かれていた。
「ZはEVOLUTION版は確かに売り文句にする位には可動域も素晴らしいんだけど、旧版HGUCも見劣りする部分はあれどスタイル自体は結構好みなんだよなぁ……」
Zガンダムは二機置かれていた。どちらもツムギが作成したのは違いないが、細分は違っており、どうやらサイズは同じでも商品としてのガンプラは違うものであるらしい。うっとりとした様子で二機のZガンダムを交互に見つめていると不意にスマートフォンが着信を知らせる。こんな時間に誰だろうと思えばスマートフォン内のGBBBアプリのメッセンジャーを通じてリンが電話をかけてきたようだ。
「もしもs──」
《──ごめん!》
応答するのも束の間、電話口からリンの勢いのある謝罪が響き渡る。見た目こそ瓜二つのリリンと接していたせいか、内容は謝罪だがリンの大声に今は安心感すら覚えた。
《どうしても外せない用事が出来ちゃって今日GBBBにいけなくなっちゃって……。それで連絡も出来なくて……》
「あぁ……。まあ気にしないでいいよ。それより用事は大丈夫だったの?」
《うん。まあ何とかなったかな》
どうやらリンは急用があってGBBBに来れなかったようだ。とはいえ正直、今日に限って言えばリリンとの出会い、フリーダムフリートとのバトル、そして覚醒と目まぐるしい一日でリンの存在を完全に忘れていた。当然ながらそんな事は間違っても口には出さないが。
《それで今日はなにかあった?》
「そう、だね。リンにも話しとかないといけないか」
ログイン出来なかったことでツムギが怒っているか不安だったが杞憂だったようだ。話を今日のGBBBでの出来事に移行すると様々な出来事があった分、情報として話さなければならないかとツムギは今日の出来事を説明し始める。
(俺、ユウヒさんみたいに覚醒が使えるようになったんだよな)
雑談が混じった説明の中でふとツムギは覚醒について思い返す。カオスも言っていたが覚醒はユウヒも使用することが出来る。ユウヒだけではない、大半のガンダムブレイカーがその力を行使することが出来るのだ。憧れに少しでも近づけたことに喜びを感じつつもツムギとリンの談笑は夜の闇に溶け込んでいくのであった。