ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
──タツヤとゼノギア、いや、キリサキ・シキの出会いは彼等の出会いは彼等が小学生の頃まで遡る。
世間ではGBBBBの前身とも言える新型ガンプラバトルシミュレーターのαテスト中に発生した事件。それに伴う宇宙エレベーターをも巻き込んだ一連のウイルス騒動で賑わっていた。
「4人のガンダムブレイカーの中じゃ誰が一番強いんだろうなー!」
世界的に大流行していたガンプラバトル。特に小学生などの年頃では、ウイルス事件を解決に導いたガンダムブレイカー達はヒーローのような存在であり、子供らしい最強議論までしている始末だ。
「今日もみんなでゲーセン行くか!」
タツヤとアヤトもこの年頃の時点でガンプラバトルを行っていた。その中でもタツヤはクラスの中心的な存在であり、そんな彼が一言声を挙げれば、自分も自分もと参加しようとしてきた。何てことのないいつもと変わらない何気ない日常。そんな中でふとタツヤの視界に留まる存在がいた。
「……」
キリサキ・シキ。特徴的な紫色の髪が目を引く少年。まともに喋った事は少ないが、同じ小学生ながらミステリアスな雰囲気を纏い、いつも1人でいる事の多い存在であった。だからだろう。何気なくタツヤもシキを誘おうと隣にいるアヤトに言ってみた。
「キリサキも誘ってみようか」
「やめなよ。あいつ、いつも1人だし遊びに誘っても途中でいなくなったりするらしいよ」
アヤトの反応はあまりよろしくない。確かに折角、遊んでいても途中で何も言わずにいなくなるような存在は子供ながらに印象が悪いのだろう。しかしシキが妙に気になってしまったタツヤは声をかけてみる。
「放課後、一緒に遊ばないか?」
反対したにも関わらず、結局はシキを誘う選択をしたタツヤに後ろにいるアヤトが明らかにつまらなさそうにしているなか、シキはジッとタツヤを見ていた。
「良いよ」
断られるかと思っていたが、返答は短いながらも了承の言葉だった。嬉しそうに顔を綻ばせるタツヤだがアヤトはどうせいなくなるだろと口には出さないものの不機嫌そうに顔を顰めていた。
・・・
アヤトが言っていた言葉は当たっていた。ゲームセンターでガンプラバトルで盛り上がっていたタツヤ達だが、シキは特にガンプラバトルに参加する事もなく、人知れずいなくなろうとしていたのだ。
「どこいくの?」
「うっ!?」
もうすぐゲームセンターから出ようとしたタイミングだった。筐体の間からタツヤがぬっとシキの前に躍り出た。流石に予想していなかったのだろう。目を丸くして驚いてしまっている。
「……帰るよ。やはり僕には合わない」
アヤトの言葉もあってずっとシキの行動は気にかけていたのだろう。純粋無垢な瞳を向けるタツヤにシキは観念したように答える。
「でもガンプラはやってるんだろ?」
「それは……まあ」
ガンプラが収められたケースはシキの手に握られていた。多人数に馴染めないのか、それでも折角足を運んだのに帰ってしまうのは勿体ないように思えた。
「そうだ。ウチに来ないか?」
無理にゲームセンターに引き留めていても仕方ない。しかしこのまま帰すのも勿体ないと考えたタツヤの提案。またしても驚いてしまったシキだが、結局はマトイ家に向かうのであった。
・・・
「これがキリサキのガンプラかぁ……!」
店舗兼住宅のマトイ家。一階のセレクトḾでは両親が喫茶店を営業しているなか、自室でタツヤはシキのガンプラを見ていた。シキが持ってきていたのはプロヴィデンスガンダムのガンプラであった。
「すっごいな……。素組なんかじゃない。かなり手を加えている。これをキリサキが?」
「うん。HGプロヴィデンスは今の目線で見ると稼働はかなり厳しいし、全体的に改修してみたんだ。可動域に関しては昔模型紙の付録で出てたSEEDシリーズのガンプラの可動域を広げるカスタムキットを中古ショップで手に入れられたのは大きかったけど」
シキの好みに合わせ、全体的なディティールアップの他に可動域の拡張。小学生の時点でそこまでやれるのは大したものだろう。純粋に感心してしまっているタツヤの言葉にシキも気を良くしたのか、上機嫌で説明してくれる。
「君もジオラマを作っているようだね。あれはそうだろう?」
そう言ってシキが指したのはタツヤが使用している机の上で完成途中のジオラマだった。廃墟に埋もれる朽ちた陸戦型ガンダムをイメージしているのだろう。しかしタツヤは苦笑いを見せる。
「うん……。頭では良い感じに考えてるんだけど、上手くいかなくて……。ダメージ表現も上手く行ってないんだよな」
「どれどれ……。これならライターを使って、炙ってみると良い。被弾跡や溶けを表現できる」
イメージ通りに進んでいない為、難航しているようだ。そんなタツヤを見て、シキは彼なりに考えてアドバイスする。
「ライター? いや、でも火だろ? 母さんが使っちゃダメだって」
「何故だい。自分の理想を表現する術があるのに君は足踏みするのかい? 君はそうやって妥協して生きていくのか?」
親から言われているのもあって難色を示していたタツヤだが、途端に饒舌に話すシキの煽るような言葉に子供心にムッとしてしまったのだろう。そのまま一階に行ってライターをとって来る。
「気を付けろ。下手したら必要以上に溶けるぞ」
シキの助言に従いながらタツヤは陸戦型ガンダムをライターで炙ってみる。おっかなびっくりで初めて見たが、実際に溶けだしたガンプラの表現に楽しくなり、夢中になっていたが……。
「──なにしてるの、アンタ達」
ふと部屋の入口から声が聞こえ、2人はビクリと震える。特に聞き覚えのある声もあってタツヤは明らかに青ざめてる。振り返ってみれば、そこにはタツヤの母がおり、その表情は厳しくタツヤのライターを握る手を見ていた。
「あのねぇ。火は危ないから使っちゃダメって言ったでしょ。何かあったら一番危ないのはアンタ達なのよ」
ライターを持って自室に戻っていったタツヤに気付いていたのだろう。子供ながらに火を扱う危険性を注意する母の姿にタツヤは何も言えずにいた。
「で、どういう流れでこんな事したの?」
言いだしっぺで言えばシキだ。とはいえ普段、ミステリアスな雰囲気を纏う彼もまだ小学生。大人に叱られるというのには馴れていないのだろう。明らかにもじもじとするシキをしり目にタツヤはおずおずと前に出た。
「ごめんなさい。俺がライターを使ってガンプラのダメージを表現できると思って、それで……。友達の前で見栄を張りたくて言いつけを破っちゃった……。叱るなら俺を叱って」
シキはまじまじとタツヤを見た。何でそんな事をわざわざしたのか。少なくとも自分の名前を出せば彼が責任を一身に負うことはないだろうに。
「……正直に謝れるのは大事な事よ。これからは気を付けなさい。でも、お父さんからも後で言ってもらうからね」
タツヤの母はタツヤとシキを交互に見ながら、やがて一区切りつけるようにタツヤの手からライターを取ると、その場を後にする。タツヤからすればこの後も気は重いが、一先ずは一件落着だ。
その後、門限もありシキを帰らせようと近くまで一緒に歩くタツヤとシキ。2人の姿は心なしか、しょんぼりとしてしまっている。
「また一緒に遊んでくれる?」
「え……」
何とも言えない気まずい空気が流れるなか、不意にタツヤからの誘いにシキは戸惑いを見せるが、やがて頷いた。
「じゃあ、これで俺達友達だな!」
シキの頷きにタツヤは心の底から嬉しそうに飛び上がる。夕暮れ時、沈もうとする太陽の逆光となったタツヤのシルエットと温かな日差しがシキの心に焼き付く。
それから月日が流れた。小学校を卒業し、中学校に進学したタツヤ達。タツヤの双子だからといって独自の交友関係がある為、アヤトとシキは絡む事は少なかったが、あの日からタツヤとシキは友達としての関係を育んでいった。思えば色々と馬鹿な事をやった。タツヤとシキの2人で台場のガンプラを中心に扱う施設に行くために自転車で遠出して2人揃ってパンクしてしまったりもした。今をどこまでを楽しむタツヤの無邪気な笑顔を見るだけでシキも明るい気持ちになれた。
「君、何でそんなに髪伸ばしてるんだい?」
「妹がさ。髪伸ばした方が似合うって言うから、アヤトと伸ばしてるんだ。そういうシキだって伸ばしたら似合うんじゃない?」
馬鹿みたいな話も沢山した。中学生らしく外見にも気を遣い始め、タツヤが中学生時代に気になっていた女の子の好みをそれとなくシキが聞いたりもしたことがあった。シキがいつも一緒にいる一番の親友にあてたポエムも何も気付いていないタツヤによってシキの目の前で読み上げられたこともあった。全てが色褪せない良い思い出だ。
「──駄目だ。このままでは負けてしまう。僕のことは見捨てろ」
ガンプラバトルもどれだけやっただろう。タッグバトルで窮地に追いやられた時、シキは迷わず自身を切り捨てるような判断をした。少なくとも自分を気にしなければタツヤは勝てると思ったからだ。
「そんなこと出来るか! 今と俺とお前でマヴだ! お前を犠牲にはしない!」
「損失もなく勝利するなんてムシの良い話はそうありはしない。時には選択をする必要がある。最悪の結果になる前に」
「選択はするさ! 2人で勝つんだ!」
タツヤが操るゴッドガンダムが覚醒の赤い輝きを放つ。それはかつてシキが見た太陽を背にしたタツヤの姿を思い起こさせた。シキのプロヴィデンスを救い出したタツヤはそのままシキと共に相手のコンビを撃破し、勝利する。
シキの中ではやがてタツヤは誰よりも優先される親友であり、心強いヒーローであり、全てを照らす太陽のような存在に変わっていった。そして同時に自問自答する。そんな彼と共にいる自分はどうなんだと。それでもタツヤと共にいれる時はシキは心から全てを忘れて明るくなれた。それがやがて彼自身がタツヤと共に勝ちたいという想いに呼応するように覚醒の力を発現させるまでになったのだ。
「高校は別々かぁ……。でも、俺達の付き合いはなくなるわけじゃないしな」
「とはいえ、これまで通りの付き合いはなくなるね」
「それでも会えなくなるわけじゃないさ」
やがて進学の時がきた。タツヤとアヤトは奏海高校へ、シキはまた別の学校へ。あの日を思い出させるような夕暮れ時の中で2人はどこか寂しそうな雰囲気を見せる。
「またガンプラバトルしような。俺達ならもっと上を目指せる。覚醒のその先を」
「覚醒のその先……? いまだに何なのかも分かっていないのに、その先を目指すというのか? そもそもそんなものがあるか分からないのに」
ガンプラバトルにおける覚醒はいまだに多くの議論を呼ぶシステムだ。いまだに全容が掴めていないシステムなど前代未聞だろう。
「それはそうだけど、でもそう考えたらワクワクするんだよ。シキもそうだろ?」
「まったく……君という奴は」
あの日と同じく太陽を背に笑顔を見せるタツヤ。普段は毒舌な面をあるシキだが、タツヤがそう言うのならそうだと思えるのだろう自然と笑みが浮かぶ。2人の笑い声は夕暮れに吸い込まれていった。
・・・
「道化が随分と偉そうな口を叩くじゃないか!」
時間はガンダムルークとターンΩの戦闘に戻る。マイスターの発言に怒りを見せたゼノギアはマスタークロスとビームサーベルを巧みに使い、ガンダムルークへ迫るが、相手はGBBBB最強のプレイヤー。全てを紙一重で避けていく。
「ちぃっ!」
それが更にゼノギアの苛立ちを募らせる。そんなターンΩだけを狙ったスーパードラグーンのオールレンジ攻撃が仕掛けられ、ゼノギアは舌打ちをしながらなんとか避けるとスーパードラグーンは主の元へ帰っていき、遠くでキラリと何かが煌めいたと思えば、何かが迫ってきていた。
「お前を目の前にして何も思わないっていうのはやっぱり無理みたいだ……ッ」
ブレイズブレイカーだ。ターンΩを見据えるツムギの瞳には怒りが見える。ブレイザーの為にも復讐という選択肢は取りたくないとは思っていた。その考えは今も変わっていない。それでも怒りを忘れた訳ではない。ツムギの怒りを表すようにツインアイを輝かせたブレイズブレイカーも戦闘に加わり、戦闘はより激化していくのであった。