ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「これで行く手を阻むモノはなくなったで!」
「やっとリリンを助けに行ける……!」
モノリスを攻略し、クランルームに戻ってきたタオ達。大変なミッションではあったが、これで漸くリリンを助けに行ける。疲労感を滲ませながらもタオとリンは手放しに喜んでいた。
「わたくし達のチームワークの勝利ですね」
「俺たちの手にかかればざっとこんなもんだ!」
タイミングが合わなければモノリスの攻略は出来なかったろう。しかし作戦を成功に導けたのはシーナの言う通り、ここに集まったメンバーのチームワークが成せる技だ。そんなシーナに同意するようにマシマも得意げに話す。
「皆の協力のお陰で防衛システムの解除ができた。これでカオスの元に通じる道が開けたよ」
「とはいえ知っての通り、今日はもうミッションを受けることは出来ない。なので明日に備えて早めに解散し、皆には英気を養ってほしい」
いよいよカオスとの決着の時が目前に迫っていた。全てが決する明日に備え、マイスターとショウの言葉に集まった面々は頷く。
「そう言えばタツヤ君にアヤト君、ヒマリちゃんは?」
「彼等達なら一足先にログアウトした。タツヤ君が病院で目を覚ましたって連絡があったらしいからな」
ふとユウヒはアヤトとヒマリがいないことに気づく。それにウイルスの影響を逃れたタツヤもこの場にいても良い筈なのに姿が見えない。その事についてはショウが説明する。ウイルスから脱した事により、タツヤもリアルに戻ってこれたようで2人はそちらに向かっているようだ。
「良かったぁ……。このままリリンちゃんも取り戻そうね!」
「もっちろん!」
タツヤがいなくなってからアヤトとヒマリがずっと焦燥感に襲わられていたのを知っているからこそ、タツヤが帰ってきたことは我が事のように嬉しい。この流れに続けとばかりに話すナギサにリンは力強く頷く。
・・・
「「タツ兄ぃっ!」」
一方、アヤトとヒマリは病院に到着していた。GBBBBをログアウトして、急いで来たのだろう。じんわりと汗が滲んでいる。2人の視線の先にはタツヤの姿があった。既に私服に着替えており、今にも退院せんばかりだ。
「なんだ、来てくれたのか」
アヤト達を見るタツヤの表情はウイルスに操られた時に見た冷徹なものではない。見慣れた、温かくも優しい表情だ。
「……なにしてるの?」
「なにって……目を覚ましたんだから、ここにいる理由はないだろ」
そんなタツヤを見ているだけで彼が帰ってきた事を実感して、嬉しくなる。だがそんな喜びも束の間、患者衣から私服に着替えている事に改めて気付く。眉を顰めるヒマリにタツヤはあっけらかんとした様子で答える。
「ウチの事も気になるし、早く退院しないと──」
そう言って、退院の手続きをしようと病室から出ようとするタツヤだが、崩れ落ちるように体勢を崩す。このままでは冷たい床材に身体を打ち付けてしまう。
「……タツ兄は一週間寝たきり状態だったんだぞ。筋力だって落ちてるんだ。そんな状態で家の事やられても邪魔なだけだよ」
「そうだよ! 家の事ならヒマリ達に任せてよ。タツ兄は自分の事だけ考えて!」
だがその寸前でアヤトとヒマリはタツヤの脇から滑り込むようにその身体を支えたのだ。これ以上、タツヤに無理をさせまいと2人らしい言葉を送る。
「……タツ兄?」
ふと、タツヤの身体が震えたのを感じる。何かと思い、ヒマリがタツヤの顔を見てみれば、彼は目尻に涙を溜めていたのだ。
「……戻ってこれたんだな」
嚙みしめるように話すタツヤはそのままアヤトの肩に手を回し、ヒマリの頭に手を置いて引き寄せる。それはまるでアヤトとヒマリの存在をもっと強く感じるかのように。
「ただいま」
だからこそなのか、タツヤは何よりもこの言葉を2人に言いたかった。
「「おかえり」」
そしてアヤトとヒマリもその言葉に対する返しの言葉もずっと送りたかった。マトイ3兄妹はお互いの存在を確かめるように身を寄せながらも自然と涙を流すのであった。
・・・
一方、ツムギはまだGBBBBにいた。ロビー広場ではログインも制限されている為、あまりプレイヤーの姿は見当たらず、何とも言えないもの寂しさがあった。
「おーい、久しぶりー!」
そんなツムギに声をかけてきた人物がいた。見てみれば、バトルをした経験のあるシバやそのシバとマッチングでチームを組んだ事のあるダインやクロの姿があった。
「いやぁ、GBBBBもこんなに閑散とするとはねぇ。状況が状況だから仕方ないんだけれどもなぁ」
「ネットでも噂は広がってるよ。でも、それだけじゃなくそれに抗う君達の存在も」
「……まさにレジスタンスのようだってな。任せる事しかできないのは歯がゆいがGBBBBを頼んだ」
シゲの言うように今のGBBBBは人も少なく、ログインが出来てもやれることは限られている。露骨に残念がるシゲの横でダインは今のGBBBBについてネットで出回っている噂を口にする。これだけの事態だ。噂も広まるだろう。しかし中にはカオス達に抗うツムギ達の存在も語られているようだ。クロも無力さは感じながらもそれでも想いを託す。
「……任せてください。必ずGBBBBを取り戻してみせます」
シゲもダインもクロの言葉に続くように頷く。誰だってこんな状況を良しとするわけがないのだ。改めてGBBBBを取り戻す決意を固めたツムギは強く頷くと、その場を後にする。
・・・
「とは言ったものの……」
シゲ達と別れたツムギはマイハンガーでブレイズブレイカーのコックピット内で何やらシステムの確認をしてはため息を漏らす。
「あの月光蝶……。単なるアタックタイプのスキルじゃない。ナノマシン……というよりはGBVのようなウイルスをばら撒いて、他人のガンプラを掌握するか、ウイルスのタイプによってはガンプラのデータを破損させる」
ブレイズブレイカーは先程の戦闘でターンΩの月光蝶を真正面から受けて崩壊してしまった。GBVのようなウイルスに感染した形跡は見られないが、事態はもっと最悪な方向へ向かっている。
「……ブレイズブレイカーのデータが破損している。これじゃあ明日の戦いに参加できない。ブレイズブレイカーのデータを登録し直そうにもGBBBBを取り戻さないといけないし……」
ウイルスをまき散らす月光蝶によってブレイズブレイカーのデータが破損しているのだ。決戦を目前にしてツムギだけ出撃できない事態になり、ツムギは頭を抱える。
「……GBBBBは俺に色んなものを与えてくれた。苦楽を分かち合える仲間も、目指すべき大きな背中も」
GBBBBがあったからツムギの世界はより鮮やかに色づいた。そんなGBBBBが明日、全てが決するというの見ているだけなんてツムギにはどうしても出来なかった。
「だから……何も出来ないなんて嫌なんだ……。もう1人で蹲ってた俺じゃない……。みんなと……みんなと進んで行きたいッ!」
しかしツムギの想いがどれだけ強くとも、ブレイズブレイカーのデータは破損して使い物にならない。代わりのガンプラを用意して参戦したとしても、ツムギが今の自分のポテンシャルを活かそうと作成したブレイズブレイカー以上のものにはならず、まさに付け焼き刃でしかないだろう。
「出会い与えられて分かち合って……。奇跡みたいな日々を紡いで輝かしい軌跡に変えてたいから!」
どうにもならない状況下にツムギはただただ焦燥感に駆られていく。それでもツムギは諦めれず、その想いを叫ぶ。
《──……》
ふと、何かの気配を感じた。
どこからか自分を見るような気配。普通ならば不気味なものだが、ツムギは違った。弾かれたように顔をあげると、すぐさまブレイズブレイカーのコックピットから出て、リフトを通じて地面に降りていく。
「ブレイザー……?」
それは今まで幾度となく感じた気配。決して間違えるはずがない。ツムギは転びそうになりながらもボロボロのストライクブレイザーが置かれているハンガーへ向かう。
《……》
するとストライクブレイザーのツインアイが弱々しくだが輝き、首を稼働させツムギを見たのだ。火が灯ったかのようなその光を見て、ツムギは待ち焦がれた瞬間の筈なのに、何も言えず、ただその姿を見ていた。
するとストライクブレイザーは突然、動き出す。強引に動いた事でガンプラを固定するロック機構を破壊し、自由の身となるが、それでも元々、満身創痍の状態だったため、バランスを崩してツムギの目の前で倒れこむ。
《──……a……》
「……えっ?」
だが、それでもストライクブレイザーは機体を起こし、ツムギを見たのだ。それだけではない。スピーカーを通じて、何やら発声する。ブレイザーと過ごしていて、気配で主張する事はあっても何か言葉を発した事はなく、ツムギは目を見開いて驚く。
《──……イ…コウ……ツム、ギ》
それは幾度となくツムギがブレイザーに口にしていたフレーズ。それを今度はブレイザーがツムギに対して放ったのだ。
気付けば、ツムギは止めどなく涙を流していた。しかし拭うような真似はせず、ブレイザーの言葉にただ頷くと、ストライクブレイザーのコックピットに入っていくのであった。