ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「馬鹿な……。AIが自らの意志で新たな機体を創り上げただと……?」
カオスデビルガンダムとの最終決戦。ストライクブレイザー・リブレイクとリリン・カーネーションの巧みな連携でカオスデビルガンダムを攻撃していくなか、カオスはただの道具だと思っていたAIが新しいガンプラを創造した事に驚愕していた。
「AIなど、命じられたことを命じられたままに実行することしかできない存在だ!」
「私は命じられるだけの人形じゃない! 私は、私だから!」
AIをあくまで道具としてしか見ていないカオスにリリンは真っ向から己の意志をぶつける。
「そうだよ! リリンにだって心があるんだから!」
「その心がまた新しい可能性を生み出す。未来を創るんです!」
そんなリリンの意志にリンとツムギが同調する。2人はリリンと共にGBBBBでの時間を過ごしてきた。だからこそリリンをただの道具と見做すカオスの主張を認めるわけにはいかなかった。
「AIの……心……だと……?」
道具に過ぎないAIに心が宿るというのか? そう言わんばかりに動揺するカオス。
「──そんなものが……そんなものが私を倒せるものか!」
しかし例え本当に心を持つAIだとしても、その上で想いは、その強さは自分の方が勝っているはずだ。そう言わんばかりにカオスデビルガンダムは攻勢を強るが、心を乱されているカオスの操縦では今のツムギ達を傷付けることは叶わず、どんどん追い詰められいく。
「人の手で作られたガンプラでバトルするこのシミュレータこそ、人の手で運営するべきなのだ! その事に何故気付かない!?」
「それも正解だと思う。だけど、正解は一つじゃない」
カオスの主張も否定する事なくリリンは受け入れる。人の数だけ考えがあり、正解がある。それが最適解かどうかの違いだけだ。
「ガンプラバトルには色んな楽しみ方がある。ガンプラに興味がない人も初心者も楽しんで良い。全てを肯定する、それがガンプラバトル、それがGBBBB……。それを私はみんなから学んだ」
ガンプラバトルを行う上で資格なんてない。ただ純粋にガンプラバトルをしてみたい、楽しみたい……そんな純粋な想いがあれば誰でも受け入れられる。それがGBBBBを見てきたリリンが得た考えであった。
「みんな、か……。しかし、その正体を示してしまった以上、もうお前は"みんな"の中には帰れない!」
ただの人間ならば兎も角、リリンやブレイザーはAI。人は自分と異なる存在を恐れる。カオスは決してリリン達がGBBBBのプレイヤー達に受け入れられる事はないと語り、その事を想像してか、リリンは苦々しい表情を見せるが……。
「──勝手に決めつけんなや! みんな、リリンの帰りを待ってたんや!」
突然、通信越しにカオスの考えを真っ向から否定するタオの声が聞こえてきたのだ。
「タオ!? 通信が繋がってるの!?」
「先程、リリン君とアウラのリンクが復旧した時、オープンチャンネル設定に変わったようだな」
通信が通じなかった状況を知っていただけに突然のタオからの通信にリンが驚いていると、マイスターはその理由を推測して答える。
「リリンの話、聞こえてたで。リリンの言う通り、全てを肯定してくれる自由な世界がGBBBBや!」
「そのお陰で私達は救われました。この世界が生きる力をくれたのです!」
タオだけではなくオープンチャンネルを通じてシーナの声も聞こえてくる。いや、この2人だけではない。
「勿論、制限や不自由はあるが、それはリアルだって同じ事だろ?」
「その不自由さも引っくるめて、GBBBBの楽しさ、面白さなんだよ!」
マシマやミサもGBBBBという環境で感じてきた想いを伝えてくる。
「楽しいこと、辛いこと、納得いかないこと。ま、色々あるだろうが……」
「その全てがビルダー達を成長させる糧となるのだ。そこに、人もAIも関係ない」
GBBBBで過ごしているうちに楽しい事だけではなく、特に嫌なことに出くわすこともあるだろう。しかしライムやアータルもその経験があって今日までビルダーとして強くなっていたのだ。
「時に自分にない力を目の当たりして思い悩むかもしれない……。でも!」
「それすらも超えてみせる! 誰かを追うのではなく、自分だけにしか持てない力で!」
広大なGBBBBという世界で自分と違う何かに悩まされるかもしれない。それでもアオバやウィルのように乗り越えられる筈だ。
「……そりゃGBBBBがなくたって生きてはいけるよ。でもさ、それはアタシ達の世界から色が一つ抜け落ちるって事なんだよ」
「所詮は遊び……。生死を分かつようなものはありません。ですが、だからこそワタクシ達は全力で、本気でこの世界へぶつかることが出来るのです!」
勿論、極論でいえばGBBBBがなくても生きる事には何の影響もないだろう。だが、ソフィーもシオンもそんな色褪せた世界で生きるなど我慢ならなかった。
「誰かに任せっきりなのももう嫌なの! 大切な人達と大切な世界は自分も手を伸ばして守る!」
「伸ばした手はみんな違う。誰一人として同じ人なんて居やしない!」
「だから絆を繋いで自分と、そしてGBBBBの可能性を広げていくんだ!」
ヒマリもアヤトもタツヤもGBBBBという世界の中で出会いを重ね、成長してきた。そして何より自分達の絆をより強固なものへ変えたのだ。
「まだまだ初心者で分かんないこともいっぱいあるけどさ。だからこの世界が楽しいんだよね!」
「カムバックしてもそうだよ。昔は気付かなかった事はこの世界にはいっぱいある」
ガンプラバトル初心者のナギサ、そして復帰したユカ。お互い環境こそ違えど、この世界はその度に色んな角度から色んな発見をさせてくれる。
「GBBBBはまだ始まったばかりだ。ここでは人間もAIも等しくチャレンジャーだ」
「だから失敗したって良いんだよ。自由な世界なんだからさ。その時は立ち上がって自由に楽しんでいこうよ」
ショウもユウヒも、ガンダムブレイカーの歴史も最初はただの願いから始まり、多くの破壊者達が目の前の困難に挑戦する事で輝かしい未来を創造していった。
「──そう、我々の想いは1つだ!」
ここで戦う者達だけではない。きっとGBBBBのプレイヤー1人1人に様々な想いがあることだろう。だが今だけは共通する想いがあるはずだ。代表するようにマイスターは高らかに叫ぶ。
『この世界は奪わせないッ!』
自然とGBBBBを取り戻す為に戦う者達の声が重なる。その純粋な想いは誰にも奪う事も汚すことも出来ないのだ。
「肯定、だと……? 誰が……誰が私を肯定してくれた!? 運営が私を黙殺するから、私は世界を滅ぼすのだ!」
オープンチャンネルで聞こえてくるビルダー達、そしてリリンの真っ直ぐ想い。だが、その言葉は今のカオスには呪いのように聞こえた。
「人形風情が舐めた真似を……! ガンプラバトルシミュレータを新たな時代へ誘うのはこの私……今を生きる人間だ!」
妄執に囚われたカオスは目の前の存在達が邪魔で仕方がなかった。己の主張を押し通す為、カオスデビルガンダムはこれまでの比でないほどの高出力のビームを放とうとする。
「このままでは、まずい……!」
あんなモノが放たれればこのフィールドもタダでは済まないだろう。その事を感じ取ったマイスターはこの状況を危惧する。
「私は……俺は……何の為にこの世界に来た。大切な人を待たしてでも、この世界に来たのは……理不尽も絶望も関係ない、ただ純粋に自由に楽しめる世界を後に続く人達に与えたかったからの筈だ」
マイスターは自問する。いや、マイスターとしてではない。その画面の奥の1人の人間に問いかけているのだ。
「それなのに俺は見ている事しか出来ないのか……?」
ガンダムルークは既に限界に近い。自分はただこの状況をただ指を加えて眺めている事しか出来ないのだろうか。
『──けど忘れんなよ。俺の中にお前達がいるように、お前の中に俺達がいれば、同じ道を歩いている。立ち止まることがあっても、背中を押してくれる筈だ』
「──ッ」
マイスターの脳裏に彼にとって兄のような、友のような、そして何よりかけがえのない師である存在の言葉が過る。
『なあに心配すんな。お前の手には未来を掴む手があるんだ。ただ真っ直ぐ前だけ見てくれれば、そのうちに俺達の道は重なるさ』
『──また会おうぜ、イチヤ』
「……ああ、そうだな。こんなところで足踏みしてる場合じゃないんだ。そうじゃなきゃアンタは俺を置いてく」
マイスターはふと笑みを漏らす。諦めの自嘲をしたものではない。次の瞬間にはマイスターの表情に活気が戻っていた。
「アンタと誓ったあの日から、教えてもらった飛び方を忘れちゃいない」
限界に達しているというのにぎこちない音を立てながらガンダムルークは立ち上がったのだ。それはマイスターの想いに応えようとするかのように。
「俺はまだ未来を掴めるこの手があるんだ。だから頼む……応えてくれ、ガンダムッ!」
マイスターの強い想いに共鳴するようにツインアイを輝かせたガンダムルークは覚醒を果たす。
──俺のこの手が輝き吼えるッ!
──未来を掴めと羽ばたき叫ぶッ!
マイスターの脳裏に再会を誓い合った覇王の如し力強さを持った存在の声が過り、自然とガンダムルークも予備動作に移っていく。
「ウオオオオオオォォォォォォ──ッッッ!!!」
マイスターの咆哮が響き渡る。ハイパースターバーニングナックルを発動させたガンダムルークはカオスデビルガンダムへと向かっていく。
「マイスター、貴様ァアッ!」
「悪いが、俺も最後まで諦められない人間でな……!」
収束されようとしているビームの前に飛び出し、渾身のハイパースターバーニングナックルを放つガンダムルーク。しかしその寸前、拳のように握っていたマニュピレーターを大きく広げ、掴みこむように指先を反らせたのだ。予期せぬ高エネルギーの横槍によって収束していたカオスデビルガンダムのビームは暴発し、カオスデビルガンダムに大きな損傷を与えた。
ガンダムルークも撃墜までは免れたもののそれでもガンダムルークそのものは完全に大破し、吹き飛んでしまう。思わぬ横槍にカオスが激昂するなか、してやったりとばかりにマイスターは口角を上げる。
「2人共、頼む! 勝って、未来を切り拓け!」
もう限界以上の行動を起こしたガンダムルークは今度こそもう何も出来ない。マイスターは全てをツムギ達に託し、彼等も己の未来を切り拓く為、強く頷き、応えるのであった。