ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「やはり、お2人とのミッションは特に戦いやすいですね」
ミッションステージである宇宙空間を舞台に鮮やかな噴射光の尾を引きながら次々に敵NPC機を撃破していくブレイズブレイカー達。改めてツムギはマシマとシーナの広い視野から齎されるサポートなど高い実力を感じ取る。
「当ったり前だぜ! なんせ俺とお嬢が付いてるんだからな!」
「マシマさんの発言は兎も角、ツムギさんの動きあってこそ連携が上手くいっているのです」
誇らしげに話すマシマを他所にシーナもツムギの操縦を褒める。独りよがりに突出すれば周囲も合わせるのは難しい。戦いの中でも周囲に常に気を配るツムギの戦い方は連携する方としてもやりやすかった。そんな会話も程々にブレイズブレイカー達はどんどん最深部へと向かっていく。
・・・
ブレイカーズ3号店。ユウヒが店長を務めるこの店には様子を見に来たショウの姿もあった。カオスの一件以降、後回しにしていた業務に追われ、多忙な日々を送っていたショウとユウヒだが、ここで漸く一段落してきたようだ
「新しいガンプラか?」
バックヤードの事務スペースではセレクトMでテイクアウト用に購入したサンドイッチを頬張るショウとユウヒがおり、ショウはふと近くに置かれている未完成のガンプラを見やる。
「ええ。僕の新しいガンダムブレイカーを作ろうかと」
「ほぉ……。見たところ、かなりの巨躯だな。Ξガンダムがベースか」
ユウヒの新しいガンダムブレイカー。長らくガンダムブレイカーの名を冠さないエスペランサを使用していたが、ここに来て新しいガンダムブレイカーを作り上げようとしているのだ。それもあって、ショウはユウヒのガンプラを興味深そうに観察する。ベースとなるのは機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイの主役機体であるΞガンダム。ユウヒ自体が巨躯な機体を好んでいるのもあるが、元々かなりの巨躯を誇るガンプラだけあって、存在感はかなりのものだ。
「ツムギ君達に触発されましてね。年甲斐もなく負けてられないって思っちゃったんですよ」
「胸の高ぶりに年齢は関係ない。お前なら素晴らしいものを仕上げられるだろう」
社会人として多忙な日々を送るユウヒ。自分のことは既に誰かを送り出す側だと思っていたが、全力で今を駆けるツムギ達を見て、熱くなるものを感じたのだろう。気恥ずかしそうな様子を見せるユウヒにショウはユウヒの肩に手を添えつつ微笑みかける。
「ふふっ、ショウさんにそう言ってもらえるのは嬉しいなぁ。でも、そう言うショウさんだって何もしてない訳じゃないんでしょ」
「そうだな。それにそれはきっと俺達だけではないだろう」
心底嬉しそうに人懐っこい笑みを見せるユウヒに頷きつつもショウはある人物に思いを馳せていた。
・・・
「……」
正式サービスが始まったGBBBB。ライムもアータルもマトイ三兄妹も各々で楽しんでいる。マイスターはアルティメイトフォースゼロのクランルームのソファーで深々と座っていた。
「なーにしてんの」
そんなマイスターに声をかけてきたのはユカだった。クランルームに入ってくるのも束の間、ツカツカと歩いてきたユカはマイスターの隣に座る。
「……一連の出来事で思い出す事が沢山あってな」
「ふぅん。まあ良いんじゃない? アンタ、忘れっぽい性格だし定期的に思い出すのは良いことよ」
ユカだけしかいないのもあって、普段のマイスター・アインの紳士然とした口調も砕けたものになっている。自分だけに見せるその姿を嬉しく思いながらもユカはマイスターを茶化す。
「ああ。俺はやっぱり独りじゃないんだって思ったんだ。お前だけじゃない。俺のこの心の中には今まで出会った多くの人が息づいているんだ。それがふとした瞬間に力をくれる」
「……そうだね。きっとそうだよ」
マイスターの心に宿る存在達。それはユカにとっても心当たりがあるのだろう。懐かしむように笑うマイスターの横顔を眺めたユカは彼の肩にもたれ掛かるのであった。
・・・
「──どうだ! これが俺とお嬢の力だ!」
一方、クラン・ブレイカーズもバトルを終え、ロビー広場に戻ってきていた。既にトップレベルのクランだけあって手際よくミッションを終えたマシマは自慢げにガッツポーズを取る。
「ツムギさんを忘れてはいけません。勝てたのは個人の力ではなく、チームワークのおかげですよ」
「まあ、これでこそマシマさんって気もしますけど」
ツムギを除け者にしているかのような物言いにシーナが注意をすると、最早相手がマシマである為、当のツムギは気にした様子もなく苦笑している。
「クラン全体で見ても、連携が凄く良くなってるよ。あの激戦をくぐり抜けたことで更に成長できたんだね!」
「何せカオスたちを倒してGBBBBを崩壊の危機から救ったんだからな。それだけの経験をすりゃ成長もするさ。リリンちゃんだって無事に救い出したしさ」
ベテランのミサから見てもクラン全体の連携はより良いものになっているのだろう。とはいえそれだけの経験をしてきた訳だ。マシマは誇らしげに語る。
「リリンさん……ですか」
「あの時、ブレイザーも無理してくれてでも、あんなに頑張ってリリンを取り戻したのに……。リリンやブレイザーのことも、マイスター達の事も信じてるけど、やっぱり……早く会いたいな」
しかし何気なく放ったひと言は和やかだった空気を一変させてしまった。重々しくリリンの名を口にするシーナに続くようにリンも堪えていた寂しさを吐き出す。
「おっと、悪ィ……。こんな空気にするつもりはなかったんだが。あっ、そうだ。さっきは聞きそびれたんだがツムギやミサの方はどうなんだ? GBBBBを始めてから変わったところとかないのか?」
「俺はガンダムブレイカーの名を受け継いだ事ですかね。願掛のつもりでしたが、タツヤさん達から受け継いだバトンをしっかり繋いでいくつもりです」
何気ない言葉だった為、やってしまったとマシマは渋い顔を見せながら、すぐに話題を変える。ツムギも空気を変えることを第一に考えたのだろう。すぐにマシマの質問に答え、改めて決意を示す。
「そっか。今はツムギがガンダムブレイカーのバトンを受け継いでるんだね。何だか感慨深いなー」
「そう言うミサさんはどうですか?」
ミサ自身、アマミヤ・イチヤやユウヒ、そしてショウや2代目ガンダムブレイカーであるシュウジという人物と繋がりがある。だからこそ近くで見てきた分、思うところがあるのだろう。しみじみ呟くミサにツムギは話を振る。
「私は特に変わらないかなー。朝起きて、会社行って、仕事して……。朝起きて、会社行って、仕事して。朝起きて、会社行って、仕事して……」
最初こそ和やかだったミサだが、だんだん沼にハマっていくようにその表情はどんよりと暗いものになっていく。社会人の悲哀、その片鱗を見た。
「うっ……まるで無限ループですやん……」
「まさに、終わりのないワルツ、だな……」
まだ馴染みのないタオも将来を考えて気が重くなり、マシマも苦い顔を見せる。
「あっ、でもよく考えたら意外とイベント盛りだくさんかも! あれこれ雑用押し付けられたり、理不尽なことで怒られたり、いつ家に帰れるか分からなかったり……」
気を紛らわせようと思考を変えようとするミサだったが、その言葉にはだんだんと熱が籠もってくる。
「うがーっ! なんか思い出しただけで腹立ってきたー! 先週の残業なんて私のせいじゃないし!」
「お、お姉ちゃんが怒りのハイパーモードに!?」
遂には怒りが頂点に達したようでまさに噴火のように怒りを見せるミサ。リンもそんな姿、あまり見なかったのだろう。唖然としてしまっている。
「うぅっ、イチヤに会いたい……。ぎゅーって。ぎゅーってしてほしいぃ」
「あの明るかったミサさんが、これほどストレスを抱えていらしたなんて……」
遂には恋人であるアマミヤ・イチヤの名を口にする。長らく会えていなかったこともあり、フラストレーションと溜まっているようで、それを見ていたシーナも何と声をかけていいものか悩んでしまう。
「ストレス……? せや! そんな時こそGBBBBや! 正式版になってから、今までよりも更に上の難易度とか、追加された要素が色々あるんや! ストレス解消になりそうなミッション、出てみたらええんとちゃう?」
「……ふぅ、そうだね。生きる為には戦い続けないと!」
何とかミサの怒りを鎮めようとタオは提案する。折角、GBBBBという世界にいるのだ。ストレスを解消できる何かもきっとある筈だ。ミサもある程度吐き出してスッキリしたのだろう。漸く元に戻ってくれた。
「よーし、じゃあ次に行くミッションは私が選ぶから! 実は新規実装されたミッションで面白そうな奴があったんだよね!」
「まあ! どんなミッションなんです?」
「それはその時のお楽しみってことで! じゃあまた今度ね!」
ミッションに関しては元々目ぼしいものがあったようだ。すぐに食いつくシーナに勿体ぶりながらミサはこの場を後にする。残された一同はミサが戻ったことに安堵しつつも一体、どんなミッションをプレイする事になるのか気になってしまう。とはいえ、ここで考えても仕方ないだろう。これをきっかけに一同、今日は解散する。
・・・
「……ふぅ」
GBBBBからログアウトしたツムギはゴーグルを外しながら一息つく。今日も両親はいない。静かな部屋、いや、家……。
「──おっかえりー」
ではなかった。両親こそいないものの背後のベッドの方から聞き馴染みのあるナギサの声が聞こえて、振り返る。
「遅い。待ちくたびれたよ」
「そうだよ。折角、ソフィーが旅行で遊びに来てくれてるのにさー」
なんとツムギが普段使用しているベッドには部屋着姿のナギサとソフィーの姿があるではないか。ナギサは兎も角、ソフィーが何故、ツムギの家にいるのか? それはナギサが説明したように夏休みの期間を利用してソフィーが日本に旅行に来ていたのだ。
「……あのね。そうは言うけど2人とも、ずっと俺の家で寝泊まりしてるよね? 流石にまずいんじゃないの?」
「なんで? パバは兎も角、ママも、何だったらノセのご両親だって良いって言ってくれたじゃん」
ソフィーが日本に来たのは数日前のことだ。そこからずっとツムギの家で寝泊まりしているのだろう。それだけではなく、ナギサまで家にやってきた始末だ。
頭痛を感じるツムギに許可は取ってるようでナギサはあっけらかんと答える。ツムギの両親に関しては昔から知るナギサ、そしてツムギと共通の友人であるソフィーということもあり、普段家に1人でいることの多いツムギの為に許可したようだ。
「……ソフィーもシオンさんは知ってるの?」
「日本にいることは知ってるよ。宿泊に関してはナギ子の家で泊まってるって言ってるけど」
(シオンさんにバレたら、八つ裂きにされそう)
ツムギはふとベッドでスマートフォンをイジっているソフィーに声をかける。何気なく答えるソフィーだが、ソフィーを大事にしているシオンの事だ。異性の部屋で何日も宿泊しているなんて聞いたらどうなるか、ツムギはますます頭痛を感じてしまう。
(2人とも無防備過ぎるんだよ……。ここ数日、俺がどれだけ脳内でライムさんの尊厳破壊して煩悩を紛らわせているか……。今日ははいぱーギャン子辺りの格好をしてもらうか)
普段は好青年なツムギではあるが、やはり年頃の男子高校生。薄着で好きにしている美少女2人の姿は刺激が強いのだろう。何とか間違いが起こらないように気を紛らわせようと苦悩する日々だ。
「そんなことよりさ。2人のオススメのガンダム観ようよー!」
「だね。じゃあアタシのオススメから観てもらおうかな」
そんなツムギを知ってか知らずか、ナギサとソフィーは鑑賞会の準備を始める。少しでも意識している事を悟られれば特にソフィー辺りは身を寄せてからかって来る。それだけは避けようとツムギは脳内ライムと共に2人の準備を手伝うのであった。