ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「ここがリリンの心の中……」
リリンの心の中にダイブしたツムギ達。全体的に暗く、不気味さを感じるデータ空間となっており、周囲を見渡したリンはこれがリリンの心の中とはとても信じ難い様子だ。するとブレイズブレイカー達の前に普段のミッションでのNPCのようにガンプラ達が出現してその行く手を遮る。
「って、何でガンプラが出てくるの!?」
「多分、防衛システムとかじゃない? 私の時はコンピューターウィルスがガンプラに見えるようになってたし。まあ今の状態は私達が外敵、コンピューターウィルスの立場だけど」
「平然としてるね。流石は経験者……」
矛先を向けてくる敵NPCに対して驚いてしまうリンではあったが、適切に対処しながらミサは淡々と説明する。その姿に経験者というのは伊達ではないと改めて感じてしまう。
「でも、防衛システムが出てくるってことは、リリンは中に入ってきてほしくないってこと?」
「誰だって心の中なんて覗かれたくはないもんね。……そう考えると、やっぱりリリンの心は人間と同じなんだね。人には恥ずかしさを感じる心があるものだから」
まるで自分達を拒否するかのように攻撃を仕掛けてくる防衛システムに複雑な面持ちを見せるリンだが、確かにミサの言うように了承もなしに人の心に入ってくるような存在は誰だって嫌だろう。
「と言っても、今の私達にとっては倒さないといけない敵なんだけどね。どんどん倒して、どんどん先に進むよ」
「強行突破ですね。得意な方です!」
アザレアブレイジングは先陣を切って次々に防衛システムが放つプログラムを撃破していく。今は下手に考えていても仕方ないだろう。アザレアブレイジングに続くようにブレイズブレイカーもスーパードラグーンを展開しながらその高火力を活かしてどんどん殲滅していく。
・・・
「順調だね。リン、うまくやれてるじゃない」
「うん、やってる事は普段のミッションと同じだし」
それから暫く。ブレイズブレイカー達はもう間もなく最深部へと到着するだろう。GBBBBトップレベルのプレイヤー達によって進められているのもあって非常にスムーズに作戦は進行していた。会話しているミサとリンの表情はまだまだ余裕だ。
「ところで、前に似たようなことをしたって言ってたけど、何かあったの?」
「あー、あの時は"ともだち"が無限ループに起こしちゃって、それを止めに行ったんだ」
経験者と言われただけあって、過去にどのような事が起きたのか気になったリンの質問に懐かしむように答えるミサ。しかしその内容も中々、突飛だ。
「他にも色々あったなぁ。近所のゲームセンターで暴走したロボットを助けたり、宇宙ステーションのAIの暴走を止めたりもしたしね」
「へ、へぇー……よく分かんないけど、色々あったんだね……」
先程の話だけでも中々の内容だが、それだけではなく他にも例を挙げるミサにリンは段々と表情を引きつらせていく。
「思い出すと懐かしいなー。宇宙ステーションに関してはウィルの奴もいたよ」
(お姉ちゃんって、もしかしてとんでもない人なんじゃ……?)
話だけ聞いていると、リンがそう思ってしまうのも無理ないだろう。あっけらかんと語っているが実際、もっと激しい戦いを乗り越えてきたのは間違いない筈だ。
「その戦いにはアマミヤ・イチヤさんもいたんですよね」
「勿論。普段はのそのそしているのに、あぁ言う時は誰よりも前に進んで道を切り開いてくれる。本当に格好良かったなぁ……。そんなイチヤに置いてかれないように私も必死になって努力してたけど」
ミサとアマミヤ・イチヤが同じチームなのは知っていたツムギの言葉に彼を思い出しているのだろう。アマミヤ・イチヤを語るミサの表情はとても明るく、さながら恋する乙女のようだ。
「……その気持ち、何となく分かるなぁ」
「ふふっ、でもずっと一緒にいただけに寂しいなぁ。今頃、どこで何をしてるんだろう」
リンもツムギに置いていかれないように必死になっていただけにミサの気持ちが理解できるのだろう。そんなリンにミサは微笑みながら、アマミヤ・イチヤに思いを馳せる。
・・・
「ホント、何をしてるんだろうね」
「ねー」
クランルームでは随時、ツムギ達の状況がリアルタイムで送られる中、先程の通信も聞いていたのだろう。ユウヒとユカはマイスターを挟みながらわざとらしい口調で話す。
「……」
当のマイスターはモニターを見ているもののその表情は何処か固く、引き攣っているようにも見えた。
「2人とも、そうイジメてやるな。時が来れば、イチヤ君は帰ってくる。そうだろう、マイスター?」
「……そう思っています」
ユウヒとユカも多かれ少なかれミサを持たせ続けるアマミヤ・イチヤに思うところはあるのだろう。気持ちは理解しつつもそんな2人を宥めつつ、ショウはマイスターを見やると、彼は重々しく頷いていた。
「さて、いよいよ最深部に到着したようだぞ」
ショウはふと作戦状況を見れば、丁度ブレイズブレイカー達が門番のように立ち塞がっていたPG機体のような巨大プログラムを撃破していた。
・・・
「よし、これで先に進めるはず」
固く閉ざされた門まで辿り着いたツムギ達。門を開こうとミサがアザレアブレイジングのマニュピレーターを伸ばし触れようとするも、途端に弾かれてしまう。
《エラー。アクセスは拒否されました》
「えっ、何で!? ボスを倒したのに、何で開かないの!?」
《アドミニストレータ権限により、この領域へのアクセスは拒否されています》
無機質な機械音声が響く。とはいえ先程、門番のように立ち塞がっていた巨大プログラムを撃破したにも関わらず、これ以上進めない現状にミサは驚いていると機械音声はその理由を示す。
「アドミニストレータ……。管理者のことだよね? ここの管理者って言ったら、リリン本人なんだろうけど、それに拒否されているってことは……」
「それってつまり……リリンが心を閉ざしてるってこと……?」
管理者による拒否。それはつまりリリンによる拒否ということだろう。ミサの言葉を引き継ぐように話すリンだが、それはそれでショックを受けてしまう。
「マイスター! そっちで何か分かる?」
《今のところは何とも。私達にとっても未知の状況だからね。君達の報告を聞くのも含めて、まずは状況を整理しよう。一旦戻ってきてくれ》
分析チームであるマイスター達に情報を求めるミサだが、マイスター達も状況を打破するだけの情報はないようだ。今はマイスターの言う通り、戻るしかないだろう。ブレイズブレイカー達は帰還するのであった。
・・・
「まさか、ボスを倒しても進めないなんて。これまでに私が経験してきたバトルではそんな事なかったよ。一筋縄ではいかないなぁ……」
「……予想以上に問題は根深いようだ」
帰還してきたツムギ達3人だが、その表情は暗い。経験者であるミサでも初めての事態にマイスターも考えを巡らせるように腕を組む。
「どうにかして先へ進めないの?」
「現状では何とも言えないが、リリン君自身が拒否しているとすれば内側から鍵がかかっているような状態と言える。だとすると今の我々には打つ手はないか……」
何としてでもリリンに戻ってきてほしい。はやる気持ちを抑えられないリンの質問にマイスターは首を横に振る。今の現状ではどうにもならないだろう。
「既に次の手だては考えてある。そうだろう、アイン」
「ああ。AIの専門家に心当たりがある。私の方から彼に協力を要請してみよう」
落胆してしまうリンを励ますようにライムは次なる作戦を考えているであろうマイスターに話を振ると、予想は的中しており、AIの専門家なる人物を招集するようだ。その人脈の広さに周囲は感心している。
「私もシステム側に協力を要請し、リリンのデータを再度調査してみよう」
「調査の結果次第でまた君達の手を借りることもあるだろう。その時は追って連絡する」
AIの専門家を待つだけではなく、自分に出来ることを少しでもしようするアータル。リリンのことは心配だが今はどうすることも出来ない。今日は解散するのであった。
・・・
ログアウトしたツムギは深々と椅子に身を預ける。リリンのこと、そしてブレイザーのこと。気になることが多くて一度頭を整理しようとするも気分は暗いままだ。
「ノセ、今日の晩御飯どうする?」
「……そう言えば3人で自炊してみるって話してたっけ」
ふと背後を見れば相変わらずベッドを占領しているナギサとソフィーが同じようにログアウトしてきていた。時刻ももう夕方。ソフィーの問いかけにツムギは思い出したように身を起こす。
「カレーにしない? ノセ、カレー好きだったよね」
「えっ、まあ、そうだけど……」
ナギサが早速提案してくる。内容はツムギが好物なカレーだ。ナギサの言葉にツムギはおずおずと頷く。
「じゃあ決まりっ! 早速食材買いに行こーっ!」
身支度を整え始めるナギサに釣られるようにソフィーやツムギも動き出す。このナギサの周りを引っ張って進むその性格は時として非常に心強い。
「……ありがとね、ナギサ」
「んー? カレーはみんな好きだし、気にしないで良いよ〜」
戸締まりをしながら夕焼けの道を歩き出す3人。ふとツムギはナギサに感謝の言葉を口にする。ナギサがこのタイミングでツムギの好物を選んだのはリリンの事、そして何より戻ってこないブレイザーの事で気落ちしていると考えたからだろう。それを感じ取ったツムギの感謝の言葉を知ってか知らずか、ナギサは眩しい笑顔を見せてくれるのであった。