ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「ずっと攻撃してるのに、ビクともしない! どうなってるの!」
Lブレイズブレイカーとの戦闘。3人がかりなのもあって本来なら撃破認定されてもおかしくないほどの攻撃は受けているにも関わらず、Lブレイズブレイカーは悠々と迫る。その姿に流石のリンも焦りを見せ始める。
《あれはリリンの生み出した機体だ。普通のガンプラとはワケが違うんだろうな。恐らく、リリンの思い入れが加わって、文字通りの最強になっちまっているんだろう。こいつをどうにかしねぇと……》
カドマツの説明通りならば、最強だと思うがあまり無敵となってしまっているのか。
「どうにかって?」
《それが分かりゃ苦労はねぇよ。何か良い手は……》
何か打開策があるのか。カドマツに尋ねるリンだが、当のカドマツも案はないらしく困ったような反応を見せながら必死に打開策を探す。
『──凄い……っ! 光が……光が溢れてく!!』
「……」
どんどんツムギ達が劣勢となるなか、マイスターの、いや、イチヤの脳裏にある出来事が過る。
「……リリン君は元はアウラが生み出したAIだ。マザーシステムたるアウラがプレイヤーの総意の器であるとするなら、プレイヤーの心を動かす事が出来れば、リリン君の心も、また……」
過去の出来事から何かを閃いたのか、マイスターは思考を巡らせるように1人、呟く。
《アイン、何か思いついたのか?》
「……カドマツ、GBBBB全体にこの戦いの映像を配信できるか?」
そんなマイスターの様子を見逃さず、カドマツが声をかける。するとマイスターはカドマツにこの戦いの模様をGBBBB全体へ映像配信出来るか尋ねてきたのだ。
《……ああ、任せろ!》
「マイスター、どうするつもり?」
マイスターは何か具体的な発言はしていない。しかしカドマツはすぐさま配信の準備に取り掛かる。マイスターの策を察したのか、それともマイスターを信頼しているからなのか、それとも両方か。しかし訳の分からないリンは疑問を口にする。
「自分自身の存在を見失っているのであれば、他の者がリリン君の存在を肯定すれば良い。1人2人の言葉では届かなくとも、この世界全ての人々の肯定があれば、リリン君も自分自身を信じられる筈だ」
暗闇の中で己の存在を見失っているのであれば、光を灯せば良い。全てを受け入れるのがリリンのGBBBBならば、GBBBBもまたリリンを受け入れるのだから。
《つまり、"GoodBuild!! "だな。配信動画にGoodBuildが集まれば、それがリリンを呼び覚ます刺激になる。……よし、繋がった! 頼むぜ、アイン!》
GBBBBにおける好意や賛同を意味するGoodBuild。それこそがリリンを救う鍵となる。マイスターの説明を引き継ぐように話したカドマツは配信の準備を整え、マイスターに呼びかける。
・・・
「どうしたんだぁ、一体……」
GBBBBのロビー広場。多くのプレイヤーで賑わうこの場所で全てのモニターに今、リリン救出作戦の為に戦っているツムギ達の姿が映し出される。それまでの配信をジャックしての緊急配信にシバをはじめ、多くのGBBBBプレイヤーが動きを止めて最寄りのモニターを見る。
「ねえねえ、ユカ達もいるよ?」
「あんなステージあったかな……?」
ロビー広場だけではなく、それぞれのクランルームでも戦闘の模様は配信されていた。バルバトスルプスレギーナをはじめ見知ったガンプラが見知らぬステージで戦う様子にユウキやネクスは首を傾げる。
《──聞こえているだろうか。GBBBBプレイヤーの諸君。見えているだろうか、この戦いの様子が》
「マイスター……?」
ロビー広場やクランルーム、マイハンガー。まさにGBBBB全体に配信されている。そんな中、マイスターの声が配信を通じて響き渡り、聞き覚えのある声にクロをはじめ、多くのプレイヤーがざわつき始める。
《君達も噂には聞いているかもしれない。GBBBBを襲った脅威と、それを退けた英雄達のことを……》
「それって……マシマさんのクランの……」
「ベクルックスやアルティメイトフォースゼロ、ガンダムブレイカー……。それがまた何かと戦ってるってことかな?」
マイスターの説明にすぐさまユーキはマシマが所属するクラン・ブレイカーズを、ブッキーも噂は知っていたようでモニターに映る名だたるビルダー達の戦闘の様子から、薄々何かを勘付き始める。
「あの人達……」
「……彼らが戦っているのか」
気付き始めたのはブッキーだけではない。かつてGBBBBを救った英雄達が再び苛烈な戦いの中に身を置く状況にサーヤやリュウセイをはじめ、誰もがモニターから目を離せなくなる。
《その英雄達の中に、1人の少女がいた。しかし彼女は今、己のあり方を見失っている。これは彼女を救う為の戦いだ》
「……自分を見失う、か」
己のあり方を見失った1人の少女を救う為、アオバをはじめ、GBBBBを救った英雄達が再び立ち上がっている。己を見失うという部分に思うところがあったのか、アキナは目を伏せる。
《彼女がもう一度、自分自身を取り戻すために君達の熱い想いを届けてくれ!》
『……素晴らしいバトルだ。私のガンプラ魂も熱く燃え上がってきたよ!』
熱い想いを届ける……。いきなりの言葉ではあったが、GBBBBプレイヤーとしてそれが何を意味するのか、多くのプレイヤーがすぐに理解したのだろう。そんな中でミスター・ガンプラもブレイズブレイカー達の決して諦めずに立ち向かい続けるその姿に胸を熱くさせ、身体を震わせる。
「僕はただ見守ることしか出来ないけど……」
ユーキの
「私の……」
サーヤの
「俺達の想いが、助けになるなら」
リュウセイの
「今一度、奇跡を起こしてくれ!」
ミスター・ガンプラの
「何だかよく分からないけど、頑張れぇぇー!」
「ヒーローショーか! まぁ、それ位ストレートな応援の方がいいかもな」
ユウキやロウヤの、いや、全てのGBBBBプレイヤーが気高く戦い続けるブレイズブレイカー達の姿に心動かされ、GoodBuildを押し始める。
「GoodBuild1個じゃ足りないねぇ」
「……俺もあそこで戦いたいが、それが出来ないのならせめて」
「及ばすながらブッキーさんも応援するよ〜」
シバやクロ、ブッキーも続々とGoodBuildを配信に対して押し始める。
「……こんなので許されるとは思わないけど……でも、私も一歩進みたい」
そしてアキナも……。誰もがツムギ達の勝利を、そしてリリンが救われることを願っていたのだ。
・・・
「ヤバ……。そろそろ限界かも……!」
「くっ……まだ、だ……! リリンと話すらしてないんだ!」
長い戦いの中で集中力も切れてきたのだろう。ブレイズブレイカー達は明らかに攻撃を受ける事も多くなり、損傷が目立っている。それは何より当人達が自覚しているのだろう。リンもツムギも苦々しくLブレイズブレイカーを見やる。
《もうちょっと粘ってくれ。後少しで……。よし、行け!》
ツムギ達の限界が迫っている事は分かっている。だからこそ膨大に集まったGoodBuildに対して、カドマツは手早く作業を進め、遂に完了する。
「な、何これ!?」
するとLブレイズブレイカー達の周囲を小さな光球が無数に現れ始めたのだ。Lブレイズブレイカーだけではなく、リンも驚くなか、小さな光球達はLブレイズブレイカーに吸い込まれるように炸裂音を上げながらぶつかっていく。
《この配信に寄せられたGoodBuildとそこに込められた想いをデータに変換してリリンにぶつけているんだよ》
「凄い……! これだけの数なら……!」
GBBBBプレイヤー達の想いの一つ一つがLブレイズブレイカーに届いていく。先程までどんな攻撃を受けても意に介す事もなかったLブレイズブレイカーは動きを止め、怯んでいく。その姿を見ながら、ツムギはこの策の手応えを感じ始める。
「この配信を見ているユーザーの想い、そして我々の想い……。想いの力がリリン君の心の壁を崩そうとしている。後一息だ! 皆の声を、直接、リリン君に伝えよう!」
GoodBuildの光を受けて、視界が閃光に染まる。視界が回復した頃にはLブレイズブレイカーが纏っていた不気味な紫色の輝きも覚醒の光も消え去っていた。怯んだ様子のLブレイズブレイカーを見ながら、マイスターは通信で呼びかける。
「……リリン、聞こえとる? 僕らみんな、リリンの帰りを待ってるんや」
タオが
「GBBBBを一緒に楽しみ、共に戦い……そうやって絆を深めてきましたよね」
シーナが
「とんでもない事件に巻き込まれたりもしたけどよ。全部ひっくるめて良い思い出だぜ」
マシマが
「みんな、アナタの事を大事に思ってる。だからこうして、必死に呼びかけてるんだよ」
ミサが
「リリンが言ったんだよ。GBBBBは全てを受け入れるって。ありのままのリリンで良いんだよ! だから帰ってきて、リリン! また一緒にGBBBBで遊ぼうよ!」
リンが呼びかける。リリンがクラン・ブレイカーズとして過ごした日々はこんなにも温かなものを齎しているのだ。
「……っ!」
そんな中、Lブレイズブレイカーは胸部のカリドゥス複相ビーム砲を放つ。苦しみを吐き出すように放たれたその一撃は全てを飲み込まんばかりにブレイズブレイカー達に迫り、ツムギは思わず息を呑む。
《──!》
──蒼き炎が燃え上がる。
風を切って、ブレイズブレイカー達とビームの間に何かが投擲され、地面に深々と突き刺さるとビームを切り裂いたのだ。
「あれは……」
ビームを裂いたものは一本のビームサーベルであった。だがただのビームサーベルではない。そのビームの刃には荒々しい青い光が渦のように走っていたのだ。それを見たツムギはやがてふと笑みを見せる。
「……そうか。そうだよな。お前だってリリンを助けたいに決まってるよな」
そのビームサーベルにゆっくりと近づいたブレイズブレイカーは引き抜く。このビームサーベルは誰のものなのか、すぐに理解したツムギはLブレイズブレイカーに向き直り、覚醒を果たす。
ツムギの覚醒を受けて、ブレイズブレイカーが引き抜いたビームサーベルの刃に青い光だけではなく、覚醒の赤い光も加わり、赤と青の二重螺旋の光を纏ったビームサーベルはやがて膨大なエネルギー量を受けて、サーベルというよりは最早、光の槍と化す。
「リリン……今の君は昔の俺と同じなんだ。自分の殻に閉じこもって蹲って……だからこそ自分の中に巣食ったものに蝕まれる」
かつて公園で1人、涙を流していたツムギ。そこでユウヒに出会い、救われた。あの事は孤独感に苛まれていたが、今はハッキリと自分は1人ではないと言い切れる。だからこそ今のリリンに対して重なる部分もあった。
「だから今度は俺が君に手を伸ばす。君の心に届けて見せるッ!」
二重螺旋の光の槍を構えたブレイズブレイカーは狙いを定めるように深く腰を落とすと、一気に投擲する。全てを穿つかのように放たれた光の槍はLブレイズブレイカーを貫き。やがて爆発する。
「リリン!」
爆発が晴れた先、そこにはリリン・カーネーションの姿があった。崩れ落ちそうになるリリン・カーネーションにすぐさまリンはリン・カーネーションのスラスターを稼働させて近づいて受け止める。
「みん……な……」
「リリン、無事なんだね……。良かったぁ……」
遅れてブレイズブレイカーとガンダムルークもやって来るなか、リリンもリン達を認識したのか、か細く声を発すると、リンはリリンの無事を確認して心より安堵したように肩を落とす。
「今度こそ一緒に帰ろう、リリン。みんなが待ってるよ!」
「……うん!」
リリン・カーネーションの両腕をとって笑いかけるリンにリリンも釣られるように笑みを漏らしたのだ。
「……あっ」
確認してみれば、ナギサ達の戦闘もリリンを救い出した事がきっかけで終了したようだ。その事に安堵していると、ふとツムギは空を切り裂いて、一筋の流星がこのフィールドから去っていくのに気付く。
「……まだ帰ってこないか」
「……きっと理由があるんです。でも、今はリリンの為に来てくれた。それだけで十分です」
マイスターも先程のビームサーベルや去り行くその姿に誰なのかは察しはついているようで、ツムギに声をかける。リリンは戻って来たが、ブレイザーはいまだツムギの元へは帰ってきていないのだ。だがそれでもリリンを助けるためにこの場にまで来てくれた。仲間を想ってのその行動にツムギは寂しそうにしながらも笑みを見せるのであった。