ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「改めて、おかえりなさい、リリン。無事で良かった!」
GBBBBのロビー広場。帰還したツムギ達にリリンがゆっくりとした足取りで合流すると、リリンが戻ってきた事にリンは心から出迎える。
「みんな……怒ってないの?」
しかし当のリリンはどこか申し訳なさそうに眉尻を下げている。リリン自身、無限ループに陥り、これだけの騒動になってしまったことに責任を感じてしまっているのだろう。
「当たり前だろ。心配はしても怒るヤツはいねぇよ」
「みんな、アナタが戻ってきてくれて嬉しいんですよ」
そもそも怒るという選択肢はなかった。不安そうなリリンにマシマとシーナは優しく語りかける。
「で、悩みは解決したの?」
「あっ、そうそう! 戻ってきたからホッとしちゃってたけど、リリンは自分がどうすればいいのか、ずっと悩んでたんだよね」
ふとミサはリリンの悩みについて触れる。リンの言うようにリリンが戻ってきたに意識を向けてしまっていたが、それでもリリン自体の悩みが解決したかまだ分からないのだ。
「AIとしての自分と、人としての自分の間で苦悩しているようだったな」
「本来なら記憶をマザーであるアウラにフィードバックしてデータに戻るべきところだが……」
リリンの悩みについて触れるアータル。AIとしての在り方であれば、ライムの言う通り、このままこれまで得たデータと共にアウラと1つとなって消えるのみだろう。
「そんなの絶対ダメ! 折角会えたのに、お別れなんて!」
「リリン君の現状は運営も認識している。今後については、既に結論が出たそうだ」
だがそんな事、受け入れられる訳がなかった。リンだけではない。他の面々も同じ気持ちなのだろう。そんな中、マイスターはリリンの処遇について触れる。
《そもそもリリンがアバターとして産み出された目的はデータの収集だ。今のリリンの状態であれば、このままGBBBBで活動を続け、ユーザーと触れ合うことで最も効率が良いデータ収集が出来るだろう。だからリリンにはこれから先もアバターAIとしてGBBBBで活動し続けてもらう》
開発側であるカドマツからリリンの今後について説明される。何もアウラの中に溶けいく事だけが全てではない。リリンがリリンとして今後もGBBBBで活動し続ける事でより多くのデータを集められると判断されたのだろう。
「……みんなとずっと一緒にいられる、ってこと?」
「ああ。そうだ」
改めて自身の今後について確認するリリンにマイスターは柔らかく笑みを見せながら頷く。これでリリンは晴れて今後もGBBBBで活動していく事だろう。
「やったーっ! これで万々歳や!」
「本当に良かったぜ。これからもよろしくな、リリンちゃん」
望む限りの最良の結果に手放しで喜ぶタオに頷きながら、マシマはリリンに声をかける。
「リリンさんはこれからもずっと私達の大事な仲間です」
「やっぱりリリンがいないとね!」
シーナやミサもリリンの帰還を喜ぶ。大切な仲間として尊重しているからこそ、心から嬉しいのだ。
「また一緒に遊ぼうね、リリン!」
「正式サービスが始まってから出来ることが増えたんだ。リリンともっと遊んでいきたい」
β版より進化したGBBBB。リリンが帰ってきたことでもっと楽しめることだろう。リンの言葉に頷きながら、ツムギはリリンに手を差し伸べる。
──人は沢山の出会いを経て、沢山の事を学ぶ
──変わっていく事は避けられないし、自分の存在悩むことだってある
──だけど、それが成長するということ。未来を築いていくということ
──変わることを恐れたりしない。何があったって大丈夫
──だって、私には仲間と、全てを受け入れてくれるGBBBBがあるから
「……うん。これからも、ずっと一緒。ありがとう、みんな……!」
差し伸べられたツムギの手を取りながらリリンは周囲の面々を見渡し、笑みを見せる。それはまさに心からの笑顔と言えるほど無垢な可愛らしいものであった。
・・・
リリンの帰還から数日後、アルティメイトフォースゼロのクランルームではマイスターが引退の時を迎えていた。マイスターがGBBBBを去る……。多くのプレイヤーが惜しみ、この数日間はマイスターとの時間を過ごす為、大々的なイベントが行われていた。
「では、後の事は頼む」
クランルームにはマイスターの他にアルティメイトフォースゼロのメンバーとツムギ、ユカ、ユウヒ、ミサの姿があった。クランルームから見えるロビー広場を眺めていたマイスターはふと笑みを見せると、アルティメイトフォースゼロのメンバーに声をかける。
「任せてください。GBBBBの頂点の座は譲りましたが、アナタから受け継いだモノまでは消えやしません」
「そう言ってくれると心強いな」
代表してタツヤが答える。その堂々と力強いその姿にマイスターは嬉しそうに頷く。今後はタツヤがアルティメイトフォースゼロを引っぱっていくのだろう。
「アータル、ライム、彼等を頼む」
「言われずともな。だから安心してお前の道を進め」
「主殿の残したモノは我々が昇華してみせる」
ベテラン勢であるアータルとライムならば何かあってもタツヤ達を導いてくれる事だろう。長らく共に戦ってきた友人達へタツヤ達を託すと、ライムもアータルも快く送り出してくれる。
「あっ、でもでもたまにはウチのお店来てほしいなー! だってマイスターって生活力皆無なんでしょ? 栄養のあるもの食べないと!」
「んー……?」
マイスターを気遣いながら、明るく話すヒマリ。だが、その発言の内容にマイスターは動きを止める。まるでマイスターのリアルを知っているかの発言だ。
「昔、ユウヒさんから聞いたことあるんですよ。今の住居がどこか知りませんけど、来れたら来てください」
「……まさか彼等に教えたのか?」
アヤトも同様に話す為、マイスターはユウヒを見るが、当の本人はマイスターの正体は明かしていないのだろう。首を横に振っている。
「俺達だってガンダムブレイカーなんですよ。先輩達の動きからずっと勉強してきたんです。重なる部分があったって不思議じゃないでしょ」
「大体、ここ最近のマイスターはリアルでの知り合いに出くわす機会が多かったからか、割とボロが出まくりでしたよ」
自力でマイスターの正体に勘づいていたようだ。タツヤの話だけなら誇らしいものだが、アヤトのどこか呆れたような言葉にはマイスターも頬を引き攣らせる。
「まっ、らしくない事はしてたけど、それも今日で終わりでしょ」
「うん。マイスターがいなくなった穴は大きいとは思うけど、きっとツムギ君達が埋めて新しい種を植えてくれるよ」
アヤトの発言にクスクスと笑いながら、どこか待ち望んでいたように話すユカ。そんなユカに同意しながら、ユウヒはイスターが後ろ髪を引かれないように新世代への期待を見せる。
「……俺はマイスターのようにはなれません。でも、それならそれなりに俺らしくGBBBBに向き合っていくつもりです」
「それで良い。君は君だ。私ではない……。君達の歩みは遠巻きながら見守らせてもらう」
マイスターの代わりになどなれないし、そもそもなるつもりもない。何故ならマイスターとは違う個を持っているから。ツムギの言葉に穏やかな笑みを見せたマイスターはGBBBBを託す。
「……マイスターはこれからどうするんですか? やりたい事があるというのは聞きましたけど」
「友人を探しに行きたくてね。道なき道を歩いていくだけさ。躓いて、泥を啜って……。好きな女性と愛を深めて」
ふとツムギはマイスターの引退後について尋ねる。軽く聞いただけなのでやはり気になるところだろう。そんなツムギにマイスターは柔らかな口調で答える。前人未到の道へ進もうとしているのだろう。多くの苦難が待っているだろうが、それでも彼には寄り添ってくれる最愛の人がいる。
「迷ったり、足を止めたりするかもしれないが、その時はじっくり考えていくさ。私は……俺は1人じゃないから」
「……そうだね。分かち合えればきっと進めるよ」
自然とミサがマイスターの隣に寄り添うように立つ。そんなミサの肩を優しく抱きながら微笑を見せるマイスターにミサも愛おしそうに微笑みながらマイスターに身を預ける。誰にも踏み入る事の出来ない2人だけの空間だ。そんな姿をツムギ達は優しく見守り、マイスターはGBBBBを去るのであった。
・・・
《おぉっと、バトルトーナメント個人戦、ここで決着! 勝者はクラン・ブレイカーズのリーダーであるツムギ! 名実ともにGBBBBのチャンピオンとなりました!》
マイスターの引退から半年後、ソフィーの日本旅行も終わり、母国に帰って久しく、GBBBBでは新たなイベントが開催されていた。個人戦として開催されたバトルトーナメントでツムギが優勝したのだ。ツムギ個人でのGBBBBの頂点に立った事で紛れもなく彼がGBBBBのチャンピオンとなった事をレコが高らかに告げる。
「やっぱりチャンプは強い……」
ロビー広場で悔しそうに顔を俯かせるのは先程、ツムギと戦ったプレイヤーだ。バトルトーナメントの決勝まで行くだけあって相当な実力の持ち主だったようだが、ツムギに敗北し、心から悔しんでいるのが分かる。
「──良い戦いだったよ」
そんなプレイヤーに声をかけたのはツムギであった。そのアバターも以前のものとは異なり、髪には青いインナーカラーを入れ、その服装もマイスターから以前、優勝祝いとしてもらった衣装データをカスタマイズしたものに変わっていた。マイスターが足元まで覆うマントだったのに対し、腰まで届く程の薄青色のロープを纏い、ブレイザーの炎を思わせる蒼の留め具で固定している。全体的にツムギの以前のアバターとマイスターのアバターを掛け合わせ、更にブレイザーの要素を組み込んだ新しいアバターとなったツムギはブレイズブレイカーの立像をバックに歩み寄る。
「次は……次は勝ってみせます!」
「良い心意気だ。だが……俺にも意地がある。そう簡単にこの座は譲らないよ」
負けず嫌いなタイプなのだろう。複雑そうな視線を送るも食って掛かるその姿にツムギも好きなタイプなのだろう。自信に満ちた笑みを見せると、一瞬、怯んだものの望むところだとばかりに笑ったプレイヤーは更に強くなるためにツムギから去っていく。
「……お前がどこにいるかは分からないけど、俺はここにいる。ここで進み続けるよ」
いまだブレイザーは戻ってきていない。寂しさは感じるが、きっとGBBBBの頂点に立つ限り、ブレイザーもツムギの姿は追いやすいだろう。いつか進み続けた先の再会を信じて、ブレイズブレイカーの立像を見上げたツムギはブレイザーの炎を模したロープの留め具を撫でるのであった。