ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
ムーンベース。ガンプラバトルでは幾度となく舞台となった月面基地だ。勿論、戦いとは無縁な場所だが、この場所を中心にスペースコロニーの建設が行われようとしている。
「コマンダー、例のエネルギーですが……」
宇宙飛行士達が従事するなか、宇宙飛行士の1人が船長を務める男性に声をかけながら手に持つ携帯端末の立体映像を表示させると、そこにはグラフらしきものが映し出されていた。
「ふむ……。ここ最近になってエネルギー波が活発になっている……。一体、何なんだ……」
グラフを見ながら頭を悩ませる男性の名はロクト。ロケット製造会社である鹿児島ロケットに所属する宇宙飛行士だ。コマンダーの地位に就いている事もあり、経験豊富な人材ではあるが、ここ最近、月面で見つかった未知のエネルギーについてはまだまだ分からない事だらけのようだ。
「カドマツさんには次元を揺るがしかねない、なんて言ったけど満更、冗談とは言い切れなさそうだ」
このままエネルギーが増幅すれば、どのような影響があるかも分からない。カドマツとは6年前から親交があるロクトは先日、彼と連絡を取った際の会話を思い出しつつも胸騒ぎを覚えるのであった。
・・・
ツムギ達が過ごす世界とは異なる世界。異世界と言っても魔法を扱うなどと言ったファンタジーも存在せず、その文明はツムギ達の世界と同じレベルだ。そんな世界でとある学園が存在した。
──ガンブレ学園
ガンプラの制作、及びガンプラバトルに特化した人材教育を目的とした大規模学園都市の一翼を担う学園である。生徒達は皆、ガンプラを愛し、切磋琢磨することでその技術と精神を磨き上げていた。
「うんうん、今日も我が校の生徒達は素晴らしいねぇ」
ガンブレ学園の廊下を1人の黒髪の青年が歩いていた。周囲を見渡せば、ガンプラの話題ばかり。全力を持ってガンプラに打ち込んでいる生徒達の姿を見ては、しきりにうんうんと頷いていた。
「会長ー! ちょっとガンプラのアドバイスが欲しいんですけど良いですか?」
そんな青年に1人の生徒が声をかける。そう、この青年はこのガンブレ学園において生徒会長を務めている人物でもあるのだ。
「勿論。この天っっっっ才ガンプラビルダーのソウマ・アラタが力になろうじゃない」
左腕の親指、人差し指、中指の三本指を伸ばし軽くクルッと回して、敬礼のような動作を取る青年の名はソウマ・アラタ。自意識過剰にも感じるほどの自信に満ち溢れた表情で相談を持ち掛けてきた生徒に対応するのであった。
・・・
「ふぃー……お待たせー」
それから数十分後、ガンブレ学園の生徒会室にアラタが訪れる。既に生徒会室の中には何人かの生徒がおり、アラタを出迎える。
「おっせぇーな! どこで油買ってたんだ!」
「それを言うなら、油を売ってただろ。この筋肉バカ」
そんなアラタに一番に声をかけてきたのは赤紫色の髪が目を引く青年であった。彼の名はトモン・リュウマ。生徒会副会長の1人を務める人物だ。粗雑で天然な性格なようで遅れてきたアラタに文句を言うが、その内容にアラタは頭痛を感じながらツッコミを入れる。とはいえその物言いが気に入らなかったのか、リュウマはギャーギャーと騒いでいる訳だが。
「まあまあ。この間の文化祭も大成功だったし、少しは大目に見てあげようよ。アラタ君、あんなに頑張ってたんだし」
「ユイ先輩、そうやってアラタを甘やかし続けるのは流石に感心できませんよ」
そんなリュウマを窘めるのは赤みがかった茶髪を結う白いリボンが特徴的な可憐な少女ミカグラ・ユイだ。三年生で任期こそ短いが、今は副会長として幼馴染のアラタを支えている。しかし弟のように可愛がっているところもある為、何かとアラタには甘いが、そんなユイを書記を務める切りそろえた紺青色の髪の少女コウラ・イオリが注意する。
「先輩は学園を救った人気者ですから……何かと声をかけられてますよね。で、でも少し寂しいかも……」
「おぉぅと、マリカちゃぁん。安心してくれ、俺はマリカちゃんだけは寂しい想いをさせないよ」
生徒会長としてのアラタとしてではなく、その地位につくまで様々な出来事があったのだろう。生徒達から人気を集めるアラタの事は分かっているのか、会計であり小柄のくせのある紫髪の眼鏡の少女サクライ・マリカかオドオドとした様子で寂しそうに肩を落とすと、アラタはすかさずマリカの隣にスライドし、マリカの頭を撫でる。
「いい加減にしなさいっ! 話が進まないじゃない!」
「おいおい、怒るなよ委員長。遅れたのは事実だし、ごめんよ。早速始めましょうか」
頭を撫でられるマリカは心底嬉しそうにしているが、対してイオリは面白くはなさそうだ。勢いよく立ち上がってアラタを指差すイオリ。アラタとイオリは同じクラスであり、彼女は委員長を務めている。そんなイオリを普段の呼称で呼びながら、アラタは改めて遅刻した謝罪をしつつ生徒会の仕事を始めるのであった。
・・・
「こんなもんかねぇ」
それからしばらく。生徒会の仕事もひと段落つき、椅子の背もたれに身を預けたアラタは一息つく。
「そう言えば、アラタ君。今度のイベントの事なんだけど」
「あぁ、新型ガンプラバトルシミュレータの奴?」
ふとユイがアラタに声をかける。イベントという言葉にすぐに思い当たるのか、アラタは身を起こしてユイを見やる。
「ガンブレ学園はガンプラを主軸にした学園ではあるけど、まさか新型ガンプラシミュレータのデモンストレーションのイベントに呼んでもらえるなんて光栄な話ね」
「今のシミュレータでもスゲーけど新型って何できるんだろうな」
今度のイベント、それは新型ガンプラバトルシミュレータのデモンストレーションイベントの一環でガンブレ学園生徒会が招待されたようだ。嬉しそうに頬を緩ませるイオリと近くではリュウマが新型ガンプラバトルシミュレータに対して期待を膨らませる。
「──失礼するわね」
するとおもむろに生徒会室の扉が開く。そこには頭には白いペレー帽を被った純白の白髪が特徴的な美しい顔立ちの少女を筆頭に2人の少女も後に続いて生徒会室に足を踏み入れる。
「新型ガンプラバトルシミュレータのイベントの日程について改めて確認したくて」
白髪の少女の名はアイゼン・レイナ。黒のブレザーを肩にかけているのが印象的でその紫色の瞳が目を引く。そんなレイナが生徒会室に訪れたのはアラタ達が招待されたイベントの日程の確認だったようだ。
「でも、本当に良いのかしら。私達も参加させてもらえるなんて」
「良いよ。向こうにはもう相談して了承貰ってるし、第10ガンプラ部には世話になってるしな」
イベントの招待者の中にはレイナ達も組み込まれているようだ。生徒会の人間ではないレイナは困ったように笑うも、アラタはあっけらかんとした様子で答える。第10ガンプラ部とはレイナを部長にした部活だ。
「ふふふーん! まあ生徒会長は世話が焼けますからねー! これ位の役得がないとやってらんねーってもんですよ! 感謝してくださいねー?」
アラタのフォローで少しは気も和らいだレイナだが、そんなレイナの横から進み出たブロンドのシニヨンヘアをち大きな白いリボンで纏めた少女が得意げにアピールするようにピースサインを作りながら話す。彼女の名はイチカワ・アヤ。レイナを慕う第10ガンプラ部の一員だ。
「相変わらず余計な事しか言えないなぁ、君はなぁ」
「うぇえぇぇぇ、ぶちょぉ、おだすけぇぇぇ」
レイナに対して気さくに話していたアラタもアヤの物言いには思うところがあったのか、おもむろに立ち上がるとアヤの柔らかな頬を全力で引っ張り、先程まで得意げだったアヤもたちまち涙目になってレイナに助けを求める。
「ふふっ、楽しいイベントになりそうですね」
「まあな。まっ、予定がつかなった連中の分まで楽しもうじゃねえか」
そんなアラタとアヤの姿を微笑ましそうに見守りながら、いつの間にリュウマの隣に立っていたのは同じく第10ガンプラ部に所属する少女ミツルギ・アカリであった。ワンサイドアップの黒髪と緋色の瞳が印象に残るアカリにリュウマは屈託なく笑いかけ、生徒会室はより賑やかになっていくのであった。
・・・
生徒会室での賑わいからしばらく。夕焼けの下、生徒達が下校するなかアラタはとある部室にいた。そこは第08ガンプラ部。アラタ達が生徒会となる以前に活動する拠点にしていた場所だ。
『──そうか。ならばお前もガンダムブレイカーだ』
『バトンタッチだ。お前はお前の好きを貫け』
ここでかつてアラタに影響を与えた1人の少女と出会った場所でもあった。
「ガンダムブレイカー……か」
その時の事を思い出しているのか、アラタはガンダムブレイカーの名を口にする。かつて学園を支配していた旧生徒会を打倒したアラタ達。とりわけ中心的な存在であり、ひと際活躍したアラタは生徒達からガンダムブレイカーといつしか呼ばれるようになったが、あの時出会った少女が口にしたガンダムブレイカーの名は今のアラタが振り返っても重い意味を持つ名であると感じてしまうのだ。
「……アイツ等、どこに行ったんだ。まるで世界から消えたみたいにいなくなって……」
アラタが出会った少女。そしてその少女の知り合い達はアラタと出会ったのも束の間、アラタ達の元から去っていってしまった。その時はまた会えるものかと思っていたが、どれだけ待とうと、探そうと少女を見つける事は出来なかった。
「気付けば、シュミレータにいたんだよな。ホント、いつの間にって感じだけど……」
少女との出会いはこの部屋に置いてあるガンプラバトルシミュレータの内部が輝き、中を確認すればその少女がおり、それが出会いだ。今振り返ってもあまりに突飛な内容だが現実で起きた事である為、今でも不思議に思いつつもアラタは少女と出会ったガンプラバトルシミュレータの扉を開く。
「……なんだこれ」
何気なく開いたガンプラバトルシミュレータだったが、中にキラリと輝く何かがアラタの目に留まる。何かと思い、確認してみればそれは小さな宝石アリスタであった。
「……アイツの……カナデのか?」
アラタ自身、アリスタがどういうものか分かっていないが、少なくともこんな宝石、身近な存在は持っていなかった。考えられるとすれば、このシミュレータをきっかけに出会った少女だ。その少女の名を口にしながら、一先ずアリスタを回収したアラタは第08ガンプラ部から出る。
本来交わる事のない世界、時間軸。それが合わさるピースはそれぞれの世界で揃いつつあった。
というわけで最終章は筆者のNewガンダムブレイカー小説【ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway】のオリキャラ達と原作キャラが一部、ゲスト登場します。こちらも過去作を知らなくても問題ないよう書くつもりですので安心していただけたらと思います