ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「流石は高難易度ミッション……。手強い敵ばっかりやなぁ」
今回受注したミッションの形式は出てくる敵機体を撃破し、最深エリアに待つボスを打ち倒す殲滅ミッション。しかし今回ツムギ達が受けたのは高難易度のものだ。以前と違い、敵群を撃破するのにも一苦労だ。
「道中の敵がこれならボスはどんだけ強いんやろうか──」
タオが思わずボヤいてしまうなか、3人のモニターにノイズが走る。今回が初めてではない。以前もあったノイズと同じものだ。
「なんや今の!?」
「確か前にもこんな事があったよね……」
ノイズにタオが驚くなか、やはり既視感はあったのかリンは周囲の状況を確認する。特に異常はないようだ。
「……集中力が切れるから嬉しくないな」
「でも、他に異常はないみたいだし、今はミッションに集中!」
以前のノイズに関しても運営に報告はしたが、やはりまだ解決はしていないようだ。ため息交じりのツムギに対して気を取り直すようにリンは声をかけると3人はそのままミッションを進めていく。
「そうだね。確かに相手は強いけど俺には覚醒があるから、何とかなるよ!」
「……あっそ」
気を取り直したツムギは改めてタオとリンを励ますように声をかける。しかしツムギの気持ちとは裏腹にその言葉に引っかかるものを感じたのか、リンは不機嫌そうに顔を顰めながらも敵NPC機を撃破する。
・・・
「ノセ、結構強いんだ……」
クラン・ブレイカーズの戦闘をロビー広場でナギサが観戦していた。クラン・ブレイカーズでの戦闘の中で一際目を引くのはツムギが駆るストライクブレイザーであろう。ストライクブレイザーの情報が小窓で表示されるなか、ナギサは驚いた様子で呟く。
クラン・ブレイカーズは如実に実力を伸ばしている。その中では際立っているのはストライクブレイザーを駆るツムギだろう。覚醒を会得したことがバネになったのだろう。撃墜スコアもツムギが飛び抜けており、それは初めてガンプラバトルをちゃんと観戦するナギサにもその実力は伝わっていた。そうこうしているうちにクラン・ブレイカーズは最深エリアに待ち構えていたボスであるPGユニコーンガンダムとの戦闘を開始していた。
・・・
PGとの戦闘はクラン・ブレイカーズの結成のきっかけになったミッション以外でもその後、いくつか受注したミッションの中で何度か交戦した経験がある。通常の敵NPC機に比べればそのサイズだけではなく、堅牢な装甲や高威力の兵装など大きな的として挑めば痛い目を見るのがオチだろう。
「なんか拍子抜けだね。高難度のボスってこの程度なの?」
「まだβテストやし不具合とか? 画面がおかしくなったりもしてたし」
しかし今のクラン・ブレイカーズにとってはそうでもないのか。PGユニコーンを相手に劣勢に立つどころかどんどんバトルの流れを掴んで優勢となっている。とはいえこれは曲がりなりにも高難易度ミッション。そのボスを相手にしている割には歯応えを感じないのか、リンは肩透かしを食らったような反応だ。それに対してタオも同じように思っていたのか、その原因を探る。
「だとしたら、ちょっとガッカリだよねー」
もしも不具合でこのような状況になっているのなら、それはリンとしても不本意なのか次は実力で勝つ。そう意気込もうとした瞬間だった。
「──ッ」
目の前にいたPGユニコーンは背後からいくつもの風穴を空けられ、糸が切れた人形のように倒れて爆散してしまう。ツムギ達ではない。思わぬ出来事に3人が息を呑むと、PGユニコーンを撃破した存在が姿を現す。
「ストライク……ブレイザー……?」
それはまさにツムギの呟くようにあげた名前の通りだった。まさに鏡に映したかのようにツムギの視線の先にはストライクブレイザーがいたのだ。
「どういう事? これ途中参加可能のミッションじゃないよね?」
「その筈やで。プレイヤー情報もなし……。まさか……これもバグ?」
ストライクブレイザーの出現に動揺していたのはツムギではない。リンとタオもストライクブレイザー同士が相対するこの状況に戸惑っていた。ツムギ達が捉えるストライクブレイザーはUnknownと表示されている。
「なっ──」
その行動は一瞬にして起きた。スラスターを噴射させ一気に加速して接近したUストライクブレイザー。反射的にストライクブレイザーとフレールが飛び跳ねるように距離を取るなか、反応が遅れたタオSDカスタムは頭部を捕まれ、そのまま地面に叩きつけられてしまう。
「タオ!」
混乱する状況の中、少なくとも目の前のUストライクブレイザーは敵である事には違いないようだ。すぐさまリンがフレールのバックパックに備わっているヴェスバーで援護しようとするがUストライクブレイザーの350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルの早撃ちによって被弾してしまう。
フレールがよろめいたタイミングに合わせてビームライフルの引き金を引かれる。それはまさに機械が行ったかのように正確無比な精度を持って真っ直ぐフレールのコックピット目掛けて空間を裂いて突き進んでいく。対処しようにも反応が遅れたリンは撃墜を覚悟するが……。
「ツムギ……!」
フレールの間に割り込んだツムギのストライクブレイザーがビームサーベルによって切り払った。同時に展開していた4基のガンバレルによる一斉射撃が放たれ、Uストライクブレイザーは咄嗟に後方へ大きく飛び退きタオSDカスタムとも距離をとる。
「リン、タオを連れて下がって。あいつは俺が引き受ける」
「でも!」
視線を外すことなくUストライクブレイザーと対峙しながらリンへ指示を出す。タオはまだ撃墜されていないようだ。ならばまだ助ける事が出来るだろう。しかし引付役を任せるのは気が咎めるのだろう。リンは反発するように叫ぶ。
「大丈夫。あいつは確かに強いけど、今の俺には覚醒がある。何かあった時はその切り札を切るよ」
その言葉にリンは再び眉を顰める。しかし状況が状況であることはリンも分かっているのか、すぐにタオの元へ向かい、後方へ下がる。レーダーでそれを確認したツムギはストライクブレイザーを飛び出させると半ば同時にUストライクブレイザーも動き出した。
まるで自分自身と向き合っているかのように同時にビームサーベルを引き抜いたストライクブレイザー同士は空中でその刃で切り結ぶ。ビームサーベルの光刃が触れる度に激しいスパークと火花のようにビームの残滓が飛ぶなか、ツムギの表情は険しくなっていく。
(強い……!)
ツムギの感想通り、Uストライクブレイザーは強かった。攻撃の全てが正確にこちらを捉えて肉薄してくる。下手をすればこのままではツムギは撃墜されてしまうだろう。今もストライクブレイザーの左腕が切断されてしまった。
「ストライクブレイザーは……俺のガンプラだッ!」
しかし負けられない理由はあった。ストライクブレイザーだ。例え相手が同じストライクブレイザーであったとしても、だからこそ自分がGBBBBを楽しむ為に、自分の為に作り上げたツムギの全てが詰まったストライクブレイザーを使用して負けるわけにはいかなかった。
再びガンバレルを展開してオールレンジ攻撃を仕掛ける。実力はツムギよりも上回っているようだが、ツムギだけではなくガンバレルによる攻撃まで捌くのは難しくなったのだろう。徐々にUストライクブレイザーの被弾が目立っていく。
標的を一先ずストライクブレイザーからガンバレルに移したのだろう。二挺のビームライフルの早撃ちによって4基のガンバレルが破壊されるが、ツムギにとってはそれで十分だったのだろう。一気に接近すると350mmガンランチャーをゼロ距離で放とうとする。咄嗟に両腕でコックピットを守るように腕を交差させて防御態勢をとるUストライクブレイザーだがお構いなしに放たれたその攻撃によって大きくよろめいてしまう。その隙に頭部バルカンを使用することによってUストライクブレイザーのガンバレルストライカーに損傷を与えながらも蹴り飛ばす。
「ッ……!?」
追撃しようとUストライクブレイザーに向かっていくツムギだったが目を見開く。Uストライクブレイザーは4基のガンバレルを解き放つとオールレンジ攻撃を仕掛けてきたのだ。すぐさま回避しようとするが間に合わず損傷を受けてしまう。
それだけではない。まるで獲物を捕らえた蛇のようにガンバレルの有線がストライクブレイザーに巻き付き、そのまま締め上げながら至近距離でガンバレルの一斉射撃が放たれ、まさに削るようにストライクブレイザーの耐久値が減っていく。
「ツムギ!」
「まずいっ!」
その光景に後方へ下がっていたリンとタオが居ても立っても居られず動き出そうとする。このままストライクブレイザーが撃破されるのを見ているわけにはいかなかった。
「……舐めるなッ!」
だがリン達の援護を待つ前にツムギは覚醒を使用する。まるで空に輝く星のように眩い光を纏ったストライクブレイザーは強引にガンバレルの有線を引き千切るとそのままUストライクブレイザーへ突進していく。
「──ッ」
迎撃しようとビームライフルを向けるUストライクブレイザーだが、バックパックに爆発が起きる。先程のバルカンが仇になったのだろう。バランスを崩したUストライクブレイザーはそのまま地面へ向かって墜落していく。その光景に思わず目を見開いたツムギだが、すぐに眼を鋭く細めるとUストライクブレイザーの後を追う。
撃破しようとしたのか? 否、ビームサーベルを放り投げ、丸腰となったストライクブレイザーはそのマニュピレーターをUストライクブレイザーへ向けて伸ばす。
「手を伸ばすんだッ!」
その姿をじっと見つめていたUストライクブレイザーは促されるままマニュピレーターを伸ばし、その手と手は握り合う。
「……良かった」
何故助けようと思ったのかは分からない。しかし地面に激突する前にUストライクブレイザーを助け出すことは出来たようだ。ツムギが安堵のため息をついていると……。
≪……≫
「えっ……」
なんと目の前のUストライクブレイザーは強く光り始めたではないか。覚醒の光ではない。その強い光がどんどん眩しくなり、ツムギ達の視界を完全に奪っていく。
「……どう……なったんだ?」
視界が回復する頃にはUストライクブレイザーの姿はなかった。思わず先程繋ぎ合ったマニュピレーターを見つめるツムギ。疑問だらけの状況ではあるが先程の戦闘が嘘のようにモニターにミッションクリアの文字が表示されるとストライクブレイザー達はミッションエリアから離脱するのであった。