ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
アラタ達の世界で行われるガンプラバトルシミュレータのデモンストレーションイベント。その会場に到着したアラタ達。周りを軽く見ても世界規模で大流行しているガンプラを扱ったイベントだけあって多くの人で賑わっている。
「アラタ君、限定ガンプラはどれを買うつもりなんだい?」
アラタ達ガンブレ生徒会の他にレイナ、アヤ、アカリの第10ガンプラ部、そしてもう1人、ガンブレ学園の生徒の姿があった。レイナのようにブレザーを羽織り、クセのある薄青色の髪を持つ気怠げな雰囲気のこの青年のはシイナ・ユウキ。かつては旧生徒会の生徒会長としてアラタ達の前に立ちふさがった人物だ。今ではアラタ達と和解し、友人としてアラタと付き合いのある彼は本日のイベントに合わせて販売される限定品のガンプラについて尋ねる。
「とりあえず目ぼしいものは幾つかある。まあ、事後通販もあるらしいから買いそびれてもまだ大丈夫かな」
世界規模の流行だけあって、限定ガンプラもすぐに売り切れてしまう。それを見越して既にイベント側から事後通販などの処置は取られているようでアラタは少しは安心しつつシイナと何気ない会話をしていると……。
「……どうしてシイナ先輩もいるのでしょうか」
「アラタ君が誘ってくれたんだよ。アラタに誘われて断る理由はあるかい?」
かつて対立していただけあって、当たり前のようにこの場にいるシイナに違和感を感じてしまうイオリだが、シイナはつまらない事を聞くなとばかりに答えると、再びアラタとの雑談に戻る。元々、学園を支配していた旧生徒会。その長であったシイナ自体は支配そのものに関心はなく、どちらかと言えば彼の為に動いていた前副会長の影響が大きかった。だがそれでもアラタ個人に向ける執着は病的にも思える程で今でこそマシにはなったが、それでもアラタ絡みは最優先にしているように見える。
「──おー……来たか」
会場を歩いていたガンブレ学園の生徒達に声をかける女性がいた。
「お久しぶりです、イチカさん」
「ん……」
茶髪のポニーテールを揺らし、気怠げに開かれた特徴的な真紅の瞳を持つその女性の名はアマミヤ・イチカ。この世界における彩渡商店街ガンプラチームに身を置き、2度の宇宙エレベーターの危機を救った女性だ。ガンプラビルダーとしても世界に名を轟かせるイチカはガンブレ学園にもイベントで呼ばれるだけの人物であり、面識のあるアラタは代表して挨拶をする。
「……新型シミュレータは手元の機材でメタバースに飛び込んでのプレイだそうだ。一々、ゲーセンに出向く必要がないのは有難いな」
「少しは運動しないと駄目ですよ。ただでさえ引きこもり体質なんですから」
イベントにはイチカも招待されたようだが、元々アクティブな性格ではない為、あまりテンションは高くない。家でもガンプラバトルが出来るという新型シミュレータに喜ぶイチカを彼女を慕うイオリが注意しようとするも、イチカは断るように舌先を出している。
「大体、これまでのドーム型のシミュレータをラブホ代わりしてる奴等もいてウンザリしてたんだ。盛りやがって……」
「どこかのガンダムゲーでもそんな話聞いたことありましたねぇ……」
長年、ガンプラバトルをプレイしているだけあってバトル外でも様々な出来事を体験してきたのだろう。露骨に不快感を表すイチカにアヤをはじめ、何とも言えない反応を見せる。
「あーあ、アタシもいいパートナーが見つからないもんかね。大学生活はもっと華々しいもんだと思ってたが……」
不快感を示すのもイチカには所謂、恋人の類が今まで出来た事がなく、それで嫉妬しているのもあるようだ。ボヤいているイチカにアラタ達も反応に困って苦笑している。
「理想が高ェだけじゃねえの」
「あぁん? なにか言ったか、クソガキ」
何気なく発したリュウマの一言にイチカはたちまち青筋を浮かべ、眉間に皺を寄せる。
「おおっと、ウチの筋肉バカが失礼。それよりもそろそろイベントの時間だし、そちらに行きましょうか」
空気が一瞬にして張り詰めるのを察したアラタはすぐさま隣にいるリュウマの腹に肘打ちをしつつ、時間を確認してイベントへ意識を向けさせるのであった。
それから数時間後、新型ガンプラバトルシミュレータによるデモンストレーションイベントが行われた。メタバース空間を舞台に行われる新時代のガンプラバトルにアラタ達だけではなく、観客達も盛り上がり、期待感を膨らませながらイベントは終了する。
・・・
「みんな、お疲れ様」
イベントの控室にて集まっていたアラタ達。盛り上がったイベントに熱が冷めやらぬなか、レイナはアラタ達を労う。
「アバターを使うっていう点は前のシミュレータも同じだったしRECOCOがそうだったけど、実際にガンプラに乗り込んでってのは夢があるもんだね」
「一般に出回るのはまだ先だろうけど、楽しみだね」
アラタ達の世界の既存のガンプラバトルシミュレータはアバターを作成してのプレイが可能であり、実際にガンブレ学園で知り合った者の中にはアバターを通しての付き合いの人物もいた。しかしそれはあくまで他プレイヤーとの交流に用いられるのが精々で今回のようにメタバース空間に構築された己のガンプラにアバターとして乗り込んでのガンプラバトルは今回が初であり、アラタとユイは期待感に胸を躍らせる。
「全員いんな」
そんな中、ふと控室の扉が開けば、イチカが部屋に入ってきた。相変わらず気怠そうな雰囲気だ。
「……お疲れ。スタッフさんも喜んでたぞ」
「それは良かったです。とはいえ私達はいつも通り、ガンプラバトルをしていただけですが」
「そのいつも通りのガンプラバトルが出来たってのに意味がある。バグなんかあってそもそもガンプラバトルが出来なくなったら意味ないからな」
改めてイチカからも労いを入れ、運営スタッフ達の反応を告げるとアカリも嬉しそうにしながらも謙遜するように話すも、イチカはふっと微笑む。
「ところでだ。お前らまだ時間はあるか?」
「なにかあるんですか?」
ふとイチカの話はアラタ達の今後の予定へ。突然の話にマリカが首を傾げていると……。
「イベントは終わったが、スタッフさん達の好意でもう少しだけ新型シミュレータに触らせてもらえそうなんだ。データ取りの一環も含まれてはいるが、どうする?」
何とイベントは終わったが、まだ新型シミュレータでのガンプラバトルが出来るというのだ。イチカの問いかけにアラタ達はたちまち目を輝かせる。
「決まりだな。じゃあ行くか」
そんなアラタ達の反応に満足したように頷きながら、イチカはアラタ達を連れて場所を移動する。
・・・
「よし、みんな準備はいいな」
特別に用意された一室に円で囲むようにアラタ達とイチカは椅子に座っていた。新型シミュレータに用いられるゴーグルを装着したアラタ達は仲間達に声をかけ、各々問題ないと声を上げる。
「新型シミュレータでも最強が何か証明してやろうじゃない」
元々ガンプラバトルを愛しているのもあって新型シミュレータを前にアラタは高揚感を抑えられずにいた。己のガンプラが最強である。それはアラタだけではなく、リュウマ達も同じ思いであり、アラタの言葉に口角を上げる。
「……ん?」
いよいよメタバース空間に飛び込もうとした時、アラタは上着のポケットに違和感を感じる。熱を帯び、脈打つ何かを感じ取ったのだ。
その違和感は事実であった。アラタの上着のポケットには先日、ガンブレ学園で拾ったアリスタがあり、まるで何かに共鳴するかのように輝いているのだ。
アラタがゴーグルを外すのも間に合わず、アリスタは強烈な輝きを放つ。その瞬間、アラタ達は本来進むべき道がグニャリと歪むような感覚と共にその意識はまた別の空間へ目指していく。
複雑に絡み合う世界線の糸の中、想定外の事態と共に引き起こされたそれはやがて次元や時間を超え、