ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
ツムギ達の世界で稼働しているムーンベース。ロクト達をはじめとしたエリート達が業務に勤しむなか、その中にはイチヤの姿があった。
「研修は充実してるかい?」
「ええ、お陰様で」
宇宙技師としての道を進んだイチヤは今、研修の一環でムーンベースに訪れていた。大変ではあるが充実した日々を送るなか、ロクトはイチヤと何気ない会話をしていた。
「まさかジャパンカップでぶつかった君とこの月面で肩を並べて仕事ができるなんてね。不思議なものだよ。ガンプラは持ってきているのかい?」
「御守り代わりと言ってはなんですが、ロクトさんがいるのは知っていたので一応……」
「それは良い。ここからもGBBBBにアクセス出来るし、ウチの職員達もガンプラを趣味にしている者達は多いから是非、交流してやって欲しい」
イチヤとロクトは6年前にジャパンカップの舞台でガンプラバトルで戦った事がある。直接顔を合わせたのはそのジャパンカップ以来であるもののお互い強く印象に残っているのか、ムーンベースでの再会以降、ロクトは何かとイチヤを気にかけていた。
「そうだ。ハンガーに置かれている"アレ"は見たかい? 君なら喜んでくれると思ったが」
「……驚かされはしました。よく用意できましたね」
「許可取りや実際に動かすに至るまで大変だったけど、前例があったからね」
ふとロクトが話題に出した内容にイチヤは苦笑交じりに肩を竦める。大変だったと語るハンガーに置かれているとある存在について話を広げていこうとしていると……。
「──なんだ!?」
ムーンベース全体に警報が鳴り響く。たちまち動揺と緊迫感に包まれるなか、職員の1人が慌ててロクトの元へやってくる。
「コマンダー、緊急事態です! 例のエネルギーが突然、外宇宙の方へ放出されました! 今なおその状況が続いており、止まる気配がありません!」
「なに!?」
職員から齎させた現在の状況にロクトは驚愕して目を見開く。次元すら揺るがしかねないというエネルギーが放出されたと言うのだから無理もない。
「恐らくエネルギーが臨界に達しての事だとは思いますが、このままでは……」
「……世界の危機っていうのは、思ったよりも突然やってくるものだね」
素早く職員は現在、外宇宙に放たれているというエネルギー派のグラフを携帯端末の立体モニターに表示させて見せてくる。その内容にロクトは天を仰ぎ、それを真横で聞いていたイチヤも焦燥感を感じながらも近くの窓から見える柱のように伸びるエネルギーの本流を眺めるのであった。
・・・
「……何か意味がある……。いや、何かが起ころうというのか」
同時に地球ではショウは月を見つめるかのように空を見上げていた。その手には脈打つように輝いているアリスタを握られており、絶えず何かを訴えるような感覚を感じるのであった。
・・・
《チャンプが企画したジオラマコンテスト、現在沢山の御応募を頂いてます! 果たして誰が最優秀賞を手に入れるのか、結果が楽しみです!》
一方、GBBBBではレコのGBBBBニュースが配信されていた。
「ツム先輩、積極的にGBBBBの為に動いてるねー」
「まあ、チャンプ様だしね」
そんなGBBBBニュースが流れるロビー広場にはナギサ、ソフィー、ヒマリの姿があった。GBBBBニュースを横目に何気ない会話をするヒマリとソフィー。GBBBBにいればブレイズブレイカー立像をはじめ、ツムギに関する話題は自然と耳に入ってくる。GBBBBの絶対王者であったマイスター率いるに勝利し、個人戦においても頂点に立ったツムギはまさにGBBBBの頂点に立った王者だからだ。
「ノセ……」
そんなGBBBBニュースを複雑そうに見ていたのはナギサであった。ツムギと会う時間が以前よりも少なくなってしまった事を気にしているようだ。
「──チャンプだ!」
ナギサに何と声をかけるかソフィーとヒマリが視線を交わすなか、不意に声が聞こえてくる。すると慌ただしく他のプレイヤー達が動き始めた先にいたのはツムギであった。
チャンプとして始めた配信活動も相まって人当たりの良い人柄は広まっているのだろう。加えてガンプラバトルに多大な影響を与えたガンダムブレイカーに名を連ね、ツムギ自身もGBBBBに影響を与える存在になっているだけあって彼を慕うGBBBBプレイヤーはかなりの数だ。
「ツム先輩、やっぱ人気だね」
「ガンダムブレイカーって一部じゃアイドルみたいな扱いになってるしね。殆どが顔出してリアバレしてるし、そういうヒマリだって可愛いってちょくちょく話題になってるよ」
人に囲まれるツムギの姿を見て、苦笑してしまうヒマリにツムギを囲むプレイヤーの中には黄色い声も聞こえており、ソフィーも肩を竦める。福岡の時もそうだが、ガンダムブレイカー達はリアルでのイベントにも顔出してしているため、その整った容姿に加え、ビルダーとしての実力の高さが一部でのアイドル的な人気に火をつけたようだ。
「あっ、ナギ──」
そんな中、ふとツムギは遠巻きからこちらを見ているナギサ達に気付く。視線が重なり、ナギサの鼓動が高鳴る中、自分の名を口にしようとするツムギに気づいて頬が緩むのを感じてしまう。
「──チャンプ、少し良いか」
だが、その名を最後まで呼ばれることはなかった。ツムギに声をかけたのはアータルであった。
「あっ……」
何やらツムギに耳打ちして話しているアータル。あまり人に聞かれたくない話なのか、アータルに頷いたツムギは周囲に声をかけながら、道を開けてもらうとどこか後ろ髪引かれるようにナギサを見ながらその場を後にし、ナギサは肩を落とす。
「ま、まあ、次があるよ! 元気出してこ!」
「うん。こっちに声かけようとしてたしね」
露骨に残念がっているナギサをフォローするヒマリとソフィー。2人の気遣いは理解しているのだろう。ナギサが弱々しく頷いていると……。
「──っ!?」
何やら別の方向からドタドタと足音が聞こえてくる。何だろうと思ってナギサが顔を向けた瞬間、何から逃げようとするかのように走っている少女の姿が視界に飛び込んでくる。少女も後ろを気にして前を見ていなかったのだろう。少女が気付いた時にはナギサとぶつかっていた。
「っと、大丈夫!?」
何とか足を踏ん張って耐えたナギサは体勢を崩し、尻もちをつこうとしている少女の手を咄嗟に掴む。
「……えっ、ノセ……?」
しかし少女の顔を改めて見た時、ナギサは固まってしまう。ナギサだけではない。ソフィーもヒマリも少女を見て驚いていた。
「ありあとー。マージ助かったよ〜」
黄色いっぽい薄茶色の髪に緋色の瞳。まさに少女はツムギの性別が女性であったら、このような外見だったのではないかと思ってしまう容姿であったのだ。最もどこか飄々とした態度はツムギとはかけ離れているのだが。
「って、あれ、君ぃ……もしかして」
「えっと……アナタは……」
すると少女はナギサを見て、何か気付いたのか、マジマジとナギサの顔を覗き込む。思わずナギサはたじろいでしまう。
「──ブレイズ」
距離が近かった為、ナギサの反応からごめんごめんと距離をとる中、改めて少女はナギサを見据えて答える。
「それがあーしの名前だよ」
ブレイズブレイカー立像を背後に答える少女ことブレイズ。目の前にいるのは少女とはいえ、ツムギを思わせる容姿やその名前にナギサ達が戸惑っていると……。
「……っと、しつっこいなぁ!」
「えっ、ちょっと待って!?」
ふと何かに気付いたブレイズはおもむろにナギサの腕を掴むと走り出す。唖然とするソフィーとヒマリがとりあえず後を追うなか、4人は人混みの中に姿を消していく。
「……」
先程までナギサ達とブレイズがいた場所にやってきたのはツムギと瓜二つの青年であった。物言わぬ静かな雰囲気を纏いながら周囲を見渡した青年はブレイズの後ろ姿を見つめると、そちらの方向へ足を進めるのであった。