ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「ウィルも悪い奴じゃないんだよ。ただアイツも色々あってね。特に自分を見失ってる奴を見ると放っておけないんだよ」
「……分かってます。いつかバトルしてみたいです」
ログアウトしたウィルをフォローするユカに去り際の微笑を見たこともあってか、ベクルックスのエースであり、同じ覚醒の使い手でもあるウィルの実力とそのガンプラが気になるのだろう。ここで漸くツムギが笑みを見せる。
「タオ、リン。ごめん……。俺、調子に乗って自分を見失ってた。こんな俺だけどまだクラン・ブレイカーズで戦わせてもらえないかな……」
タオとリンの向き直り、深々と頭を下げるツムギ。頭を下げている為、2人の表情は伺えない。それがツムギの心を酷く揺さぶっていた。
「そんな気にせんでええよ。僕だって覚醒が使えたら調子に乗ってまうと思うし」
「まっ、覚醒をひけらかすような事、言ってた時は思うところあったけど反省にしてるんだったらチャラにしてあげるよ」
だがタオは朗らかな笑みを見せながらツムギを気遣うと、ツムギが覚醒絡みの発言をしていた時は微妙そうな反応を見せていたリンも快活に笑う。
「……ありがとう、2人とも」
顔をあげてリンとタオの表情を見て、こみ上げるものを感じながら泣き笑いのような表情を見せるツムギ。先程のウィルの言葉を発端とした冷たい空気もどんどん温かなものへと移り変わっていく。
「んじゃ、ついでに見落としてたものも教えてあげるねー」
「──わわっ!」
成り行きを見ていたシオン達も思わず笑みを漏らすなか、ツムギの背後にいるユカからの言葉に振り返る。見落としていたものとは何なのか、振り返ったと同時に悲鳴と共に自分の胸に何か飛び込んでくる。
「ト、トオノ!?」
「あ、あはは……やっほー……」
何かと思って視線を下げれば特徴的な水色の瞳と視線が重なる。よく見ればそれは間違いなくツムギの幼馴染であるナギサであった。ツムギがバトルを終え、声をかけるタイミングを伺っていたナギサだがそれに気付いたユカに背中を押されてしまい、このような状況になってしまったようだ。
「どうして……」
「ノセっちが楽しそうにしてたから気になっちゃって」
ガンプラどころガンダムシリーズにも疎いナギサがGBBBBにいるとは思わず、まさかの再会に面食らってしまうツムギだがその反応も最もだろうとナギサは苦笑を見せる。
「そろそろアタシ等も行くわ」
ツムギの謝罪、合流したナギサを見届けたユカは軽く手を振るとシオンとソフィーを引き連れて去っていくのであった。
「えっと……知り合いなんよね?」
「幼馴染……なんだ。でもガンプラどころかガンダムシリーズにも疎いからまさかGBBBBに来るなんて」
ツムギとナギサの反応から知人の間柄である事は分かったが、それでも置いてけぼりを食らってしまっている。とはいえツムギ自身もまだ状況を把握しきれていないのかナギサを見ては困惑した様子だ。
「まあでも楽しそうだから始めたって良い理由じゃない。アタシはリン。よろしく!」
「ナギサだよ。こちらこそよろしくっ」
ツムギとのやり取りを見る限り、悪い人物ではないのだろうと判断したリンは自己紹介と共に笑みを交わす。
「今日は……どうしよう? 正直、このままログアウトでも良いと思ってたけど」
「私も今日はログアウトするよ。GBBBBの体験がしたかっただけだし」
ミッションに続き、クラン戦もしたことで内容としては十分だとは思うが、ナギサをどうするか悩むようにツムギが視線を送ると、ブレイカーズで体験会をしている事もあってナギサもログアウトする予定のようだ。その後、多少の談笑をしつつツムギ達はログアウトするのであった。
・・・
「……ふぅ」
ブレイカーズ3号店。GBBBBからログアウトしたナギサはゆっくりとゴーグルを外す。GBBBBの近未来的な光景から一転、トイショップの作業ブースの光景が目に飛び込んでくる。
「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
「楽しかったです! ノセにも会えたし……また行きたいです!」
ゆっくりと固くなった身体をほぐすように身体を伸ばすナギサに気付いたユウヒはゆっくりと歩み寄りながら声をかけてくる。満面の笑みのナギサの反応からお世辞ではなく本心である事が伺える。
「でも、どうせならミッションしたいなぁ。ガンプラがあればミッション出来るんですよね?」
「折角ですし購入なされますか?」
「うーん……。何か初心者でも組みやすいのとかありますか?」
とはいえ今回はミッションやバトルの様子を観戦していただけだ。どうせなら自分も参加したいと思ったのだろう。ナギサの問いかけに頷きながら近くの模型コーナーに視線を向けるユウヒ。とはいえナギサはガンプラどころかプラモデルも触ったことがない。その表情には少し不安の色がある。
「でしたら、こちらなどは如何でしょう」
少々お待ちくださいと言い残して模型コーナーに向かったユウヒは初心者でも組みやすいプラモデルをいくつか見繕ってナギサの元へ持ってくる。
「初心者の方にオススメするならばSD、EG、HGの3種でしょうか。デフォルメが特徴のSD。パーツ数が少なく入門編にピッタリなエントリーグレード、前の2つに比べれば難易度は少々上がりますがガンプラバトルではポピュラーで様々なラインナップを誇るハイグレードがあります」
ユウヒがナギサの前のテーブルの前に置いたのは3種のガンプラのパッケージであった。それぞれのブランドの説明をするユウヒにナギサはじーっとそれぞれのガンプラを見やる。
「うー……ん。じゃあこれで!」
ユウヒの説明もあり暫く悩んだナギサだったが、やがて決心したように指差したのはHGのガンプラであった。
「HGガンダムエアリアルですね。組みやすいしパーツ分割によって細かな色分けもバッチリ。何より良く動く。とても良いガンプラですよ」
「何だか見た目が可愛くて。後、道具も欲しいんですけど……」
それは流線型の女性的な印象を受けるガンダムが描かれたガンプラであった。ガンダムエアリアルのプラモを選んだナギサにユウヒは商品紹介をするとニッパーなど推奨される最低限必要な道具を見繕ってそのまま2人でレジへ向かっていく。
「では、僕からこちらをプレゼントします」
会計を済ませてレジ袋に入れられたエアリアルを渡しながらユウヒが紙袋もナギサに差し出す。そこに入っていたのは新品のGBBBBゴーグル一式が入った機材であった。
「え、えぇっ!? そ、そんな悪いですよ!」
「GBBBBデビューを祝って……と言いたいところですが」
まさかのプレゼントにナギサは慌てふためきながら断ろうとするが、ユウヒは気にする必要はないとばかりに紙袋を手渡しながら言葉を続ける。
「ツムギ君のこと、よろしくね」
それは今まで接していたブレイカーズの店長であるユウヒとしてではなく、ツムギの知人のユウヒとしての言葉だった。
「ツムギ君は良い子だよね。何だったら良い子過ぎるまである。あの子はそうやって振舞う癖がついちゃってるんだよ」
ツムギの人柄に触れながら話すユウヒ。ツムギは礼節を弁えている為、接していても不快感を感じることはない。だがそれについて長年接してきたからかユウヒは思うところがあるようだ。
「ノセ……ご両親が昔から忙しくて家で1人でいる事が多いって」
「ご両親の事は好きみたいだから関係がこじれてる訳じゃないみたいだけど、だからこそご両親に心配かけない為に良い子であろうとしてたみたいだね」
ナギサも幼少期によくツムギと遊んでいた。何だったら今日、学園でのツムギとの会話に出てきたが、それはツムギから誘ってきたことの方が多かった。それは偏にツムギが孤独から抜け出したかったのだろう。
「昔、誰もいない公園でさ。あの子が1人で泣いてたんだ。そこでツムギ君と知り合ったんだけどガンプラが好きみたいだったらそこから時間が合えば一緒にいたりしたんだ」
今でも覚えている。茜色の空が暗がりを見せていく中、公園の隅で1人でいた少年のことを。見過ごせなくて手を差し伸べたことを。それがユウヒとツムギの出会いだったようだ。
「ツムギ君にとってガンプラは取り繕う事もなくありのままを表現してくれる。あの子の手掛けたガンプラもバトルもツムギ君のエゴがよく出てる。きっとGBBBBならありのままのツムギ君であれる筈だよ。だから何かをする必要はない。ただありのまま一緒に楽しんであげてほしいんだ」
ガンプラのコンテストで負ければ悔しがるしバトルで覚醒の力を手にすれば人並みに調子に乗る。ツムギにとってガンプラやGBBBBでのバトルはありのままのツムギでいられる。ユウヒがGBBBBにログインするのもツムギの様子が気になっているのもあるのだろう。作業ブースに飾られたツムギのガンプラを見つめながら改めてナギサに願う。
「……分かりました! 任せてください!」
ユウヒと接した時間は長くはないが少ない時間ながらその人柄は分かった気する。ナギサは力強く頷きながらブレイカーズを去るのであった。
エントリーグレードって一応、道具を使わずに手でパーツが取れるって宣伝してますけど組む時は毎回、ニッパーを使ってしまうので今一実感がないのです