ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「リリン、エエ感じに動けとるね!」
ミッションに選ばれたのは果てなく思える荒野ステージだ。早速タオに教わった事を実践しているのだろう。元々立ち回りの上手いリリンではあったが、より洗練された印象を受ける。
「……タオ、ベテランってなに?」
「えっ!? ……まだその話を引っ張るんかいな」
しかしリリンは賞賛よりも気になる事があるようだ。とっくに済んだ話と思っていた話を掘り起こされた為、タオは少々戸惑ってしまう。
「せやなぁ……。簡単に言うたら沢山経験を積んで知識を蓄えてる人のことかな」
とはいえタオも聞かれたら律儀に答えてしまう性分なのだろう。今日日、その意味まで説明される事なく当たり前のように使われているベテランの言葉の意味を説明する。
「……じゃあタオはベテラン、だね」
「へ? 僕が……ベテラン……?」
ベテランの言葉の意味とこれまでのタオの行動を見てそう結論づけるリリン。思いもよらぬ言葉ではあったのか、タオは目を丸くして呆けてしまっている。
「……タオ、どうしたの? 敵が来るよ」
「えっ、あぁっ……せやね! 気を取り直して続き行こか!」
それから何のレスポンスもなく、黙ってしまっているタオ。センサーが敵NPC機群の存在を知らせるなか、訝しんだリリンが声をかけると我に返ったタオは戦闘を再開していく。
「なあ、リリン。何で僕がベテランやと思ったん?」
戦闘を続け、次々に敵NPC機を撃破していくツムギ達。ミッションももうすぐ無事に終えることが出来るだろう。そんな中、タオは不意に先程のリリンのベテランの発言に触れる。
「タオ、ガンプラの事とか色々知ってる。ミッションも色々やってきた。だからベテランのだと思った」
「タオはマルチこそ初心者だったけど、俺に声をかけてくれて色々と教えてくれたじゃん。間違ってないと思うよ」
リリンの発言を後押しするようにツムギも声をかける。例えマルチは初心者だったとしてもその前からGBBBBで活動し、そこで培った経験や知識を教えてくれたタオはベテランと言ってもいいかもしれない。
「そ、そうかな……。もう僕、その域に入ってたんかな?」
「違うの?」
とはいえ当人としては実感の薄い話なようだが、通信モニター越しにリリンの無垢な視線が向けられる。
「そうか、ははは……。うん、そうやね。ベテランやね。……ならうちのクランにベテランを入れる必要もないっちゅうわけやな!」
タオははっきり言ってしまえば及び腰になってしまったり、咄嗟のハプニングに弱く実力が発揮できないところもある。だが、それでもそれまでに培ってきた経験や知識は決して無駄なものではない。現にタオはクラン・ブレイカーズにおいてそれらを惜しみなく伝えてきた。
「よーし、元気出てきた。行くで、みんな! ベテランの僕について来てや!」
それらの時間を振り返って、ようやく自信に繋がったのだろう。タオSDカスタムは先陣を切るとその言葉に頷いたツムギとリリンはその後に続くのであった。
・・・
「データ上でもガンプラって作れるんだね」
一方、ここはベクルックスのクランルーム。ほぼ女性で構成されているだけあって飾られている装飾品など華やかな雰囲気を纏うなか、その作業机には目の前のランナーを見ながら物珍しげにナギサは呟いていた。これはミッションをこなしている内にナギサが手に入れたガンプラのランナーだ。GBBBBでもデータ上ではあるがガンプラ一式が売られている。それ以外にもミッションをこなせばGBBBB内で使える通貨だけではなく各部位のパーツがランダムで手に入るのだ。
「最近は欲しいガンプラもそう簡単に手に入らないことも多くなりましたからね。ガンプラバトルはその名の通り、ガンプラがメインである以上、運営なりの処置という訳ですわ」
「……転売も横行してるしね。文字通りの争奪戦みたいな時期もあったから酷い時は本当にヤバかったよ」
残念ながらデータ上のガンプラなので現実世界に持ち帰ることは出来ないが、GBBBBでのバトルには活かすことは出来る。シオンはどこか苦笑気味に話すとガンプラが思うように手に入らないことにソフィーは露骨に不機嫌そうな素振りを見せる。
「でも、パーツを組み込めるって言うけどデザインもこれで纏ってるし、どう手を付けていいか分かんないよ」
「……想像力を解き放て、って奴だよ。こういうのは不意の閃きが鍵になる場合もあるし、ここにこれを組み込んだら良いだろうなっていう想像が活きる時もある。その内、ナギ子だけのガンプラが出来るよ。その時はアタシがGoodbuildを押したげる」
「ええ。ユカも今でこそカスタマイズしていますがGBBBBを始める以前は純正のバルバトスをずっと使い続けていました。その時の自分に合わせたカスタマイズがきっと出来る筈ですわ」
とはいえナギサはナギサでエアリアルのデザインが気に入っているようでここに手を加えるとなるとどこにすべきか悩んでしまっている。だがそれはソフィーやシオンも通ってきた道なのか、優しくアドバイスを送る。因みにソフィーが口にした【Goodbuild】とは所謂、SNSのいいねのようなものでガンプラをGBBBBに公開した際にユーザーの琴線に触れた際の評価としてもらえる機能だ。
「そう言えばユカさんやウィルさんは今日は来ないんですか?」
「あのパツキンはあれでもCEOだから滅多に来ないよ。アマミヤ・イチヤが目的っていうのも満更嘘じゃないっぽいね」
ふとユカとウィルがいない事に気付く。とはいえウィルに関しては彼の立場もあるのか、ベクルックスに所属こそしているが、ログインの頻度は高くないらしい。ユカに好意を寄せているような仕草は見られるが、ユカ目当てに無理にログインしてこない辺りは仕事と私生活のバランスを取っているのだろう。
「ユカは先程、仕事終わりにお風呂に入っていましたから、その内に来ると思いますわ」
「詳しいですね」
「……シオン姉は今、仕事で日本にいるんだよ。その滞在先に一人暮らししてたユカ姉の所に世話になってるらしいよ」
ユカはログインする予定はあるようだ。とはいえシオンは風呂上がりに落ち着いたら来るとは言うが、妙に詳しいその発言にナギサは思わず疑問が出てしまうが、ソフィーが補足するようにユカとシオンが同棲していることを説明するのであった。
・・・
「さて、と……」
そんなユカもGBBBBにログインしていた。ロビー広場を歩きながらベクルックスのクランルームにでも行こうかと思った時であった。
「どうもユカさん」
「おや、ノセっちじゃん」
ミッションを終えてタオ達と別れたツムギと出ぐわし、軽く挨拶を交わす。
「トオノ……じゃなくてナギサはどうです?」
「単純に遊ぶだけじゃなくてソフィーとGBBBBで配信活動を始めたんだよ。楽しんでるみたいだねー」
ナギサがベクルックスに所属しているのは当人から聞いているのだろう。GBBBBでミッションをこなすだけではなく動画サイトで配信活動を始めたというナギサにそのフットワークの軽さには驚かされてしまう。
「んー……そうだ。ノセっちは暇?」
「ええ。今日は特にもう予定がなかったのでログアウトしようと思ってました」
するとなにか思いついたようにユカはツムギの予定を聞いてくる。タオ達とミッションも行ったので今日はこのままログアウトでも良いと思っていたが、なにかあったのだろうか。
「じゃあさー。ちょいとアタシとミッションに付き合っておくれよ」
まさかの申し出であった。とはいえ断る理由もない。ツムギはユカの申し出に頷き、彼女が選んだ途中参加型のミッションに出撃していくのであった。