ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
ツムギは蒼い死神に戦慄する。警戒はしていた筈だった。向かってくる
(んー……どうしたもんかね)
ストライクブレイザーとBDエクストラの戦闘の様子を見ながらユカはトントンと考えを纏めるように握っている操縦桿を指先で叩く。このまま自分がストライクブレイザーと肩を並べてBDエクストラと戦えば少なくとも敗北する事はないだろう。しかし同時に安易にその選択肢を取っていいものかと考えてしまう。
「ノセっち、その子を1人で相手すること出来る?」
「えっ? いや、大丈夫ですが……」
「そっか。じゃあ頼むよ」
ユカからの通信にツムギは少々戸惑った様子を見せる。別に援護を求めていた訳ではないが、かと言って何か行動を起こすわけでもない。文字通り戦闘の様子を見ているのだ。
「その子は覚醒の使用者を狙ってるみたい。少なくとも覚醒を良く思わない奴だっているだろうし、そういう手合いを真正面から相手すんのは今後のノセっちの為にもなると思うよ」
アオバも戦闘前に話していたが覚醒は誰もが使える訳ではない。だがその力によって齎される力は決して無視できる範囲ではなく、それが使えない者達の中には快く思わない者だっているのは当然ともいえる。だからこそその生の感情と真正面からぶつかる事はガンプラバトルを続ける上でツムギの成長に繋がると思ったのだ。
(だからって……)
BDエクストラの攻撃を避けながら反撃するが、悉く避けられてしまう。覚醒を使う者を裁くと豪語するだけあってその実力は本物のようだ。そんな状況が続き、ツムギは知らず知らずのうちに表情を険しいものにさせていく。
覚醒は今でも何故習得できたのか分かっていない。それは運営側でさえそうだ。覚醒したから使える、そのような曖昧な状態で今日まで覚醒の力は使われてきた。
(……この力は持っていちゃいけないものなのか?)
覚醒を使える事で少々驕っていたツムギだが、その心に不安を煽るように冷たい空気が流れ込んでくるような感覚を覚える。確かに誰もが使える訳ではない覚醒の力は不公平に感じるものだっている筈だ。
「君の力はそんな物かなぁ? 覚醒がなければまともに戦えないんだったら寧ろ必要かもね」
動きが鈍っていくストライクブレイザーを前髪で見え隠れしている右目の赤い瞳が捉えながらアオバは煽るように口角を吊り上げながら嗤う。その言葉に眉間に皺を寄せるツムギだったが、ばら撒かれるように放たれるマシンガンとバルカンの弾丸によって動きが制限されてしまう。
「こっちが本命……ッ!?」
咄嗟にガンバレルを展開するが、100mmマシンガンの銃身が焼き付く程、放たれた攻撃にストライクブレイザー自体は動けず、すかさず放たれたBDエクストラのバックパックのミサイルと180mmキャノンの砲弾をまともに直撃してしまう。
「じゃーま」
それだけではない。銃口を向けてくる1基のガンバレルをBDエクストラは素早く捉えるとビームライフルでケーブルを撃ち抜いた。ストライクブレイザーとの繋がりを失った事で力なく落下していくガンバレルを素早く掴まえるとそのままストライクブレイザー目掛けて投げつけ、バルカンで破壊し更なる損傷を与え、ストライクブレイザーは地面に倒れこんでしまう。
倒れた事で激しく揺れるコックピットでツムギが耐えるなか、それが落ち着いたと思った瞬間にはその耳に先程までの激しい攻撃とは正反対の静かな足音が聞こえる。
強引にメインカメラを掴まれ、持ち上げられた先にいたのは蒼い死神。依然EXAM-SYSTEMによってそのバイザーは赤く染まっているなか、その奥の2つの丸いカメラアイは狂気さえ感じてしまう。だが既にBDエクストラはビームサーベルを引き抜いており、このままコックピット目掛けて突き刺すつもりだろう。
(覚醒が使えたら……みんなと楽しめないのか?)
アオバと覚醒に纏わる言葉がツムギを十分なパフォーマンスを発揮できずにあわや撃破一歩手前まで追いつめている。しかし今なおツムギは悩み続けていた。
(覚醒を使わないで……自分を殺してプレイした方が……何も思われないのかな)
ツムギは昔から“良い子”であろうとした。それが仕事で多忙な両親に心配をかけない方法である事を幼いながらに理解していたから。しかしそれは同時に少しずつツムギの心を摩耗していた。それを再びGBBBBでもやるべきなのだろうか。
「……嫌だ」
ぽつりと零す。
「嫌だ嫌だ嫌だッ!」
まるで子供のように叫ぶ。この声を聞いたアオバとユカは僅かに眉を顰める。感覚的なものだが撃墜を恐れてのものにしてはあまりにも大袈裟過ぎるからだ。
「GBBBBではありのままの俺でいたいッ!」
≪──!≫
ツムギの強い想いに“何か”が呼応する。
まるで滾っていたものが限界を超えて吹き出たかのように左目のツインアイが青色に切り替わり、より一層輝くとそこを中心に左顔を覆うように青い炎のような光を纏ったではないか。
「これは……ッ!」
今まで優勢に状況を運んでいたアオバは驚きで目を見開く。覚醒者を裁くというだけあって覚醒の研究はしてきたつもりだが、目の前のストライクブレイザーの現象は初めて見る。ステータスアップのトランス系のスキルを使った訳ではない。
「クッ!」
≪……!≫
このままではまずい。咄嗟にBDエクストラはビームサーベルを突き刺そうとするが、そうする前に人間の反射神経を超え、その動きを予測していたかのようにBDエクストラの腕を掴むとそのまま握り潰したのだ。BDエクストラは咄嗟に後方へ大きく飛び退いてストライクブレイザーと距離を詰める。
「……誰なんだ?」
一連の動きはツムギが行った訳ではない。寧ろそのコックピットでツムギは戸惑っていた。だが同時にツムギの中に確信が生まれる。今までストライクブレイザーに見つめられたり、コックピットで何者かの気配を感じたことがあった。今ならハッキリ分かる。このストライクブレイザーには"何か"が宿っている。
──BLAZER
「ブレイ、ザー……?」
ツムギの問いかけに答えるように正面モニターに文字が浮かぶ。よくツムギはブレイザーの名を呼びながら出撃していた。それがまさか名前を示すように表示されるとは思わなかったのだ。
今はツムギ自身にも状況は分からない。ブレイザーを名乗ったようにも思えるこの何かが何であるのかも。それでもツムギは意を決したようにBDエクストラを見据える。
「行くぞ、ブレイザー!」
ツムギが自分を殺すことなく、ありのままでGBBBBを楽しみ続ける為に。そんな今を、明日を、その先の未来を切り開くために。その呼びかけに応じて咆哮を上げるかのようにストライクブレイザーの左顔に燃える炎のような青い光は強まる。覚醒による赤い光とブレイザーをきっかけに生まれたような青い光を纏いながらストライクブレイザーはBDエクストラとの戦闘を再開するのであった。