ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
シーナからの相談を終えたツムギは1人、ロビー広場に戻ってきていた。GBBBBでの悩みならいくらでも力になれるとは思うが、現実での悩みともなれば出来ることは限られてる。しかしそれでもツムギに出来る事ならするつもりだ。気持ちも新たにツムギはナギサと待ち合わせ場所に向かう。
「ノセ~!」
程なくしてナギサがやって来た。相も変わらず露出の高い衣装に少々心配にはなるが、その後からナギサの後を追ってやってきた人物がいた。
「アナタは……」
「っす」
ソフィーだ。気だるげにしながらジャケットのポケットに手を突っ込んだままやって来た覚えのあるその姿にツムギはかつてバトルをした相手である事もあってすぐに思い出すと、ソフィーは言葉短めに挨拶してくる。……最早挨拶なのかもわからないが。
「さっきログインしたらソフィーに会ってさ。ノセと遊ぶこと伝えたらついて来たんだよ」
「暇だったんで。邪魔?」
ナギサと遊ぶだけだと思ってたのもあって、ソフィーが来たことは予想外だった。特に深い理由もなくナギサについて来たようで気だるげな瞳をツムギに向けると、「そんな事はないよ」と微笑みながら首を横に振る。
「……今日、何やるのか決まってんの?」
「いや全然。会って決めれば良いかなーって思ってた」
何気なくついて来たが、ソフィーはどのミッションで遊ぶかなど一切、聞いてないようだ。それは学校で誘われたツムギも同じようで張本人のナギサを見やるとどうにもツムギと一緒に遊ぶことが第一でノープランだったようだ。
「ノセって呼んでいい?」
「なんでも」
「ん。アタシとノセなら大概のミッションは何とか出来るけど、ナギ子はなー」
チラっとツムギへの呼称を確認して了承を得ると、ミッションカウンターに赴いて受注可能なミッションを漁る。覚醒の使い手であるツムギと客観的に見た自分の実力、そして初心者であるナギサを加えたチームとしてどのミッションが最適か、選んでくれているようだ。
「そういえば2人で配信活動始めたって聞いたけど」
「んー。まあボチボチかな。私がガンダム詳しくないからリスナーが教えてくれたりしてるんだ。そうそう、今日から1人でエアリアルが出るっていうアニメの同時視聴会もするんだよー」
ミッションを選ぶソフィーの後ろ姿を眺めながら、ふと以前、ユカから教えられたナギサ達の活動について触れると、劇的と言わないまでも固定のリスナーも付き始めて順調に活動出来ているようだ。
「選んだ」
手頃なミッションがあったようだ。ミッションを3人で受注すると、そのまま出撃していくのであった。
・・・
ミッションの形式は現れる敵NPC機達を撃破していく殲滅ミッション。ステージは市街地だ。ストライクブレイザーとサマエルが先頭に立ち、その背後にナギサのエアリアルが控える形だ。
「どんどん行こう!」
「ああ。好きに動いてくれ!」
早速現れた敵NPC機にビームライフルの銃口を向けるエアリアル。飛び出していくエアリアルに対してその動きを予測しながらストライクブレイザーとサマエルは散開しながらも戦闘が開始される。
ストライクブレイザーのガンバレルが放たれる。市街地ステージでは有線が干渉する弊害もあるが、それも織り込み済みであるツムギは計算しながら的確に現れた敵NPC機群の耐久値を瞬く間に減らしていく。
「今だっ!」
「おーらいっ!」
一定まで減らした耐久血を確認するのと同時にガンバレルはストライクブレイザーへ再度装填される。すぐさまツムギはナギサに声をかけると、エアリアルのビームライフルから放たれたビームはまっすぐ敵NPC機を貫き、そのまま接近戦に持ち込むと次々に撃破していく。
「良い動きだ! 昔から何でもそつなくこなすよね」
「ふっふぅーん。ノセの誉め言葉は耳に良いねぇ。もっと褒めてくれたまえー?」
「えっ? じゃあ可愛い」
「おぅふ。なんとなく甘いもの欲しいって言ったら生クリームを口にぶち込まれた気分」
ストライクブレイザーやサマエルに比べれば、エアリアルの完成度はお世辞にも高いとは言えないが、立ち回り自体は褒められる。上機嫌に鼻を鳴らすナギサは調子に乗って更に賞賛の言葉を求めると、プレイを褒めていたが咄嗟には次の賞賛は浮かばず、思わずナギサの容姿や性格に触れて褒める。とはいえ思わぬ方向からの誉め言葉にたちまちナギサの顔は赤く染まり、振り下ろしたビームサーベルも虚空を切ってしまう。
「……ふぅん」
そんなやり取りを眺めながら、ソフィーはエアリアルとストライクブレイザーを見やる。幼馴染というだけあって気心は知れているのか、それは初めての共闘ミッションであっても連携が取れている。というよりナギサの動き全てに対応するようにツムギが動いているのだ。そんな姿を眺めながらもいつまでもそうしている訳にもいかないとサマエルも戦闘に加わるのだった。
・・・
「じゃあ撮るよーっ!」
戦闘も落ち着いた頃、ナギサの提案で写真が撮りたいという話になり、コックピットから出るとそれぞれのガンプラが背後にそびえる中、ナギサを挟むようにツムギとソフィーが立ち、そのまま自撮りを何枚かパシャパシャと撮っていく。
「いいねいいね。じゃあ今度はガンプラだけで~」
ナギサは写真に写り具合に満足しながらも今度はガンプラ達を纏めて撮ろうと丁度いい画角を探し始める。
「……ノセ、さっきの戦闘、全部ナギ子に撃破させようと動いてたでしょ」
「バレてた? よく見てるんだね、流石」
「……アタシにはそーいうの良いから」
そんなナギサを見守るように眺めていると、ふといつの間にかソフィーはツムギの隣に立ちながら先程の戦闘を振り返る。流石にベクルックスの一員としてバトルをしている訳ではないのか、その観察眼を褒めるもソフィーは照れくさそうにポケットに手を突っ込んだまま肘で突いてくる。
「まあ最初はあぁいう成功体験の方が良いかなって。どうせ楽しんでほしいからさ」
「優しいんだね」
「そういうソフィーだってサポートするつもりでこのミッションを受けたんでしょ。意外と優しいんだね」
敗北から学べる事もあるが、やはりミッションをクリア。何よりそれがお膳立てされたものであろうとも自分が活躍したという成功体験があった方が良いだろう。そんなツムギを短く褒めるソフィーだが、そういうソフィーもナギサに合わせたミッション選びをしている。彼女もまた他者を気遣える人間なのだ。
「意外は余計だっつーの」
ふとソフィーは小さく笑みを漏らしながらツムギを見やる。普段、気だるげにしているが、こうして笑みを見せるその姿はその容姿も相まって年相応で可愛らしかった。
「んなぁ──!!!?」
ツムギもソフィーに釣られて笑うなか、割って入るようにナギサの悲鳴が聞こえてくる。2人がそのまま視線を向ければ、慌てた様子でナギサが走ってきていた。
「次のNPC機が来たか!」
ナギサの背後、遠巻きにも第二陣の敵NPC機達が迫っているのはすぐに分かった。
「思った以上に速い……! 乗り込めるか……?」
問題は敵NPC機が到着する前にガンプラに乗り込めるかどうかだ。とはいえ考えていても仕方ないだろう。3人はそのまま真っ直ぐそれぞれのガンプラに向かっていくが……。
「まずっ──!」
敵NPC機はツムギ達に銃口を向けるとその引き金を引いたのだ。ゲームであるので現実に影響はないが、それでも生身で受ければ一発敗北だ。幸いにもビームはツムギ達に当たることはなかったが近くのビルに直撃し、ビルの崩落が始まる。
「危ないっ!」
落ちてくる瓦礫に動きが制限されるなか、崩壊したビルがそのまま横倒しのようにツムギ達に迫って来る。半ば本能的にツムギはナギサとソフィーに覆い被さり、最後の時を待つ。まず避けるのは間に合わないのは誰が見ても明らかだった。
「……あれ?」
しかしツムギ達を影が覆うだけでいつまでもビルに潰されることはなかった。3人は思わず顔をあげながら周囲の状況を探ると、その原因はすぐに分かった。
≪……≫
ストライクブレイザーが崩壊したビルを受け止めていたのだ。だが当然ながらツムギはストライクブレイザーに乗っていない。そして他の誰かがストライクブレイザーに乗り込んだ訳でもない。
「ブレイザー……」
ツムギが思い当たる存在は1つしかなかった。崩壊したビルをそっとツムギ達と正反対の位置に置きながらツムギの呟きに応えるようにストライクブレイザーのツインアイは青色に切り替わり輝くと、左顔に青い炎のような光を発現させるのであった。