ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「やっぱり敵が強いなぁ。流石はマイスターからの挑戦状やなぁ……」
マイスターからの挑戦状とも言える高難易度ミッション。ミッションのクリア条件は敵NPC機群の中に現れる指定機体を撃破するという単純な内容だが、そもそも指定機体どころか、同時に展開される敵NPC機でさえ簡単に撃破する事は出来ず、手こずるのが現状だ。自分達の成長は日を追うごとに実感しているが、神経を使うバトルにタオはどこか声に疲労感を滲ませる。
「そう?」
「この難易度でもリリンはケロっとしとるなぁ……。けど戦力的には押され気味やし、このままやったらジリ貧になってしまいそうや」
だが疲れを感じさせるタオに対してリリンは特に気にした様子もなく、クレールの動きも鮮やかに向かってくる敵NPC機を撃破している。リリン自身も特に負担には思っていないようでその様子にタオは苦笑しながらも戦況を分析する。確かに個々ではまだ平気かもしれないが、全体を見ればこのままではどんどんツムギ達は劣勢に追いられるだろう。
「そうや、ツムギ! 前みたいにガツンと覚醒かましてや! 何だったらブレイザーとでもええで!」
「覚醒は兎も角、ブレイザーが手を貸してくれるかは俺にも分からないよ」
覚醒だけでも大幅なパワーアップを果たすが、アオバとの戦闘の時のようにブレイザーの力も借りられれば戦況は一気にひっくり返るだろう。しかしツムギも言うようにブレイザーが何をもって力を貸してくれるのか、その理由は分からないのだ。
「あれが目標機体みたい」
そんな会話を交わしていると、ふとリリンからの通信が入る。見てみれば、敵NPC機達の中に一回り大きい機体の姿がある。機動戦士ガンダムSEED DESTINYに登場するフォースインパルスガンダムだ。1/144スケールのHGサイズが多いガンプラバトルだが、目標機体であるフォースインパルスは1/100スケールのMGサイズで出現していた。
「は、速いっ!?」
フォースインパルスは出現するや否や積極的な攻撃を始めた。一気に飛び立つとビームライフルの引き金を引いて、数発のビームでストライクブレイザー達の動きを牽制すると、そのまま手近なところにいたタオSDカスタムの元へ一気に加速してビームサーベルを振りかぶる。そのあまりのスピードと迫力にタオは怯えてしまうほどだ。
「ツ、ツムギ!」
だがギリギリのところでフォースインパルスとタオSDカスタムの間にストライクブレイザーが割り込み、ビームサーベルで受け止めたのだ。
「……やっぱりクリアしたいよね」
MGサイズなだけあって出力も違うのか、ストライクブレイザーも力負けして徐々に圧されていく。この状況に眉を顰めながらもそれでもツムギの声色には諦めの色はなかった。
「俺だけの力でじゃない。俺達みんなの力で!」
ストライクブレイザーは覚醒を果たす。その瞬間、力負けしていた状況も一気に巻き返して、フォースインパルスを押しのけ、そのままの勢いでビームサーベルを持つ腕を切り落とす。同時にツムギの言葉を合図にしたかのようにフォースインパルスをタオSDカスタムとクレールが挟み込んで、それぞれの自慢の射撃兵装を放ち、損傷を与えていく。
≪──!≫
同時にストライクブレイザーにもまた変化が起きる。赤き覚醒の光の上でその左顔に青い炎のような光を纏ったのだ。それはブレイザーが力を貸してくれていることに他ならなかった。
「……そうだね、ブレイザーの力も一緒に!」
皆の力でクリアする。そんな想いに応えたかのように力を貸してくれたブレイザー。その意図を汲んだツムギは一気にストライクブレイザーを加速させると肥大化したビームサーベルの刃を持ってフォースインパルスを両断するのであった。
「流石やで、ツムギ! お陰でマイスターからのミッション、クリア達成や!」
「2人の援護とブレイザーが力を貸してくれたからだよ」
目標機体であるフォースインパルスを撃破した事で周囲の敵NPC機達は自壊していき、モニターにはミッションクリアの文字が表示される。高難易度ミッションだけあって途中までクリアできるか不安な面もあったが、それでもそれを乗り越えられたのは誰か1人が突出する訳ではなく、連携したからだろう。
「リリンも凄かったで! 元からセンスあったけど更にうまくなってるわ!」
「タオが色んな事を教えてくれたから。ありがとう」
「エエよエエよ。僕も教えるの好きやし。それに今回はバグもなかったみたいやし、文句なしの実力クリアで万々歳よね!」
タオは流れるようにリリンも褒めながらミッションのプレイ内容に満足そうに頷いている。以前はちょくちょく画面にノイズが走ったり、高難易度ミッションでもあっさりクリア出来たりとバグと思われるのが目立ったりしたが、今回は特にそういった事はなかったので手放しに喜んでいいだろう。
「バグ……? 良く分からないけど2人とも嬉しそうだし、良かった」
「バグ……か」
リリンの言葉に考えるように視線を伏せるツムギ。以前行った高難易度ミッションの際、鏡映しにしたかのように同じストライクブレイザーが目の前に現れた。あのストライクブレイザーはその手を掴んだ時、眩い光と共に消えていたが、思えばあの時以降、ブレイザーと思われる気配を感じ始めていた。ツムギの中で少しずつブレイザーの正体を紐解いていきながらもミッションをクリアした彼らはロビー広場へ戻っていくのであった。
・・・
「……何だか騒がしいね」
ロビー広場に戻ってきたツムギ達。リリンはふとロビー広場は妙に騒がしいことに気付く。会話で盛り上がるというより、何かの存在に圧倒されて噂しているかのようだ。
「──ミッション。お疲れ様」
何だろうと話しているツムギ達に声をかける存在がいた。誘われるようにそちらを見れば……。
「……私からの挑戦状、クリアしてくれたようだ」
そこにいたのは青いマントを羽織り、バイザーの特徴的な男性がそこにいたのだ。きょとんとした顔を見せるリリンだが近くにいたタオは目に見えて動揺してしまっている。
「マッ! マ、ママママママ……!?」
「ママ? タオのお母さん?」
「オカンちゃうよ!」
「じゃあ、お母さんになってくれるかもしれない人?」
上手く言葉を紡げないタオだが、リリンの天然がさく裂し、すかさずタオのツッコミが入る。とはいえリリンへのツッコミ出したらキリはないため、ツッコミも程々にタオが改めて声をかけてきた人物を見やる。
「マ、マママ、マイスター・アイン!? 本物ですか!?」
「私のアバターキットは発売されていない……。正真正銘、本物だ」
GBBBBにおける絶対王者であるマイスター・アインがそこにいたのだ。普段絡んでいるミスターと違い、目の前のマイスターは本物のようだ。
「マイスター……最強のプレイヤー。そんな人が私達に何か用?」
「……前にチーム戦で覚醒を使い、その後も青い炎のような光を発現させたというプレイヤーがいたと聞いてね。興味があったんだ。君達のミッションも観戦させてもらっていたよ」
リリンもマイスターの話は聞いているのだろう。それが何故、並のクランの一つである自分達の元に現れたのか疑問を呈すと、マイスターは物静かな程、落ち着いた物腰のままツムギを見やる。
「……君が覚醒を使えたプレイヤーか。あの力は誰でも使うことが出来る技じゃない。ガンプラを愛し、バトルを愛している者こそが使える技だと私は考えている。君は素晴らしい才能を秘めているようだ」
「……マイスターも覚醒が使えるんですよね」
覚醒はいまだ謎の多いシステムだが、マイスターなりの見解を見せる。その言葉を聞きながらツムギもマイスターも覚醒の使い手である事に触れる。GBBBBにいれば嫌でもマイスターの話は耳に入って来る。マイスターはあまり覚醒の力を多用している訳ではないのでここ暫くは覚醒の力を使ったという話は聞かないが、それでも過去に使用した事があるという噂位は聞いたことがある。
「ガンダムルーク……。スターバーニングガンダムをベースにカスタマイズされているあのガンプラも素晴らしい出来です。あなたの強さに追いつけないけど、でもいつかバトルしてみたい……。そして勝ちたい」
ふとガンダムルークの立像を見ながら話すツムギ。クリアパーツ一つとっても丁寧に仕上げられている。改めて見ても素晴らしいガンプラと言えるだろう。だからこそそんなガンプラを作り、そしてバトルにおいても絶対的な存在でいるマイスター自身へ自分の全てを注ぎ込んだガンプラで挑戦し、勝ちたいとすら思えたのだ。
「……2万年早い、と言いたいがガンプラに限界なんてない」
真っ直ぐな熱意にマイスターは人差し指と中指でVサインを作りながらもツムギが気に入ったのかふと笑みを漏らす。
「私にそう教えてくれた者達に憧れて今日まで進み続けてきた。少し話をしないか?」
改めてマイスターはツムギ、タオ、リリンをそれぞれ見やる。マイスターと話せる貴重な機会で断る理由もないだろう。それぞれが頷いたのを確認したマイスターは会話を再開していくのだった。