ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
ロビー広場は今、マイスターの登場でざわついていた。か、マイスターからしてみれば慣れっこなのか、特に気にした様子もなく話を続けていた。
「噂には聞いているが、あの青い光……。君はどう感じている?」
「ブレイザーの事ですね。……正直、その正体までは分かりません。でも何となくブレイザーが俺のガンプラに宿ったきっかけは分かる気がするんです」
いまだ謎の存在であるブレイザー。一体その正体は何なのか。マイスターは他ならぬツムギに意見を求めると、やはりツムギも具体的なことは分かっていない。しかしブレイザーと共に戦い続けて気付いた事もあるのだろう。
「以前、俺のガンプラと全く同じガンプラに遭遇して戦闘になったんです。あの時は無我夢中でしたけど、でも堕ちていくそのガンプラに手を伸ばしてその手を掴んだ時、光が溢れたんです」
「そういえばそんな事もあったなぁ」
ツムギが話すかつてのストライクブレイザー同士の戦い。不可思議なことばかりの出来事だった為、あの場にいたタオも印象に残っているようだ。
「それ以降だったんです、ブレイザーの存在を感じるようになったのは。もしかしたらブレイザーはあの時のストライクブレイザーなんじゃないかって……」
「……成る程。そんな事が」
ブレイザーが何者であるのかはまだ分からないが、恐らくブレイザーが宿ったのはあの一件だろう。話を興味深そうに聞いていたマイスターは改めてツムギを見やる。
「……君も誰かに手を伸ばせる存在なんだな」
ふと零したマイスターのその言葉。何気ない言葉のように思えるが、その端々にはどこかマイスターの胸に迫ったものがあるような印象を受けた。
「……誰かに手を伸ばす。その姿は手を伸ばされている者に勇気を与えてくれる。君が誰かの手を掴もうとする人間だからこそ覚醒は使えたのだろうしブレイザーも力を貸してくれているのだろう。君は素晴らしい資質を持っているようだ」
マイスター自身も誰かに手を伸ばされてきた経験があるのだろうか。自らの手を見つめながらもどこか感慨深そうにツムギを評する。
「マイスターに褒められるなんて凄いやん! 僕も嬉しいわ!」
「タオが褒められた訳じゃないのに?」
「別に自分じゃなくても仲間が褒められるのはエエことなんやで?」
ツムギを高く評価しているマイスターの言葉にタオが我が事のように喜んでいる。その姿に何故他人が褒められているのにそこまで喜んでいるのかと不思議そうに首を傾げるリリン。だがその疑問はタオによって答えられる。その仲間を誇りに思っているからこそ賞賛を受ければ心から喜べるのだ。
「勿論、君達2人のバトルも見事だった。これからの成長を感じさせるものだったよ」
「そう言ってもらえてうれしいです! 僕ら、マイスターレベルを目指して頑張ってるんです!」
ツムギだけではない。ミッションを観戦していたからこそタオとリリンの立ち回りを賞賛する。仲間が褒められて喜べる辺り、これからのクランもどんどん成長を期待できるだろう。憧れのマイスターに褒められて嬉しいのか、タオはまさにアバターの外見相応に子供のように表情を輝かせ、熱心に語る。
「……成程。なら次はクラン戦に挑んでみてはどうだろう?」
≪──はいは~い、レコでぇーっす! さあ、今日もGBBBBニュースの時間の始まりですよー!≫
そう言ってマイスターは近くの大型モニターを見やる。そこには今まさに配信でレコが元気いっぱいにGBBBBニュースを伝えようとしていた。
≪本日のトップニュースはこちら! 【クラン同士による熱き戦いの開幕!】 そうです、皆さんお待ちかねの~……クラン戦が間もなく開催となります! チームワークが試されるこのバトル……。日頃の練習の成果をぶつけ合う白熱の舞台となるでしょう! 詳細は追って告知するということで! 楽しみに待っててくださいね~!≫
クラン同士のマッチング戦なら普段も出来るが、それが公式の大会のようなものとなればまた大きく盛り上がることだろう。まだ初報の段階のようだがその内、様々な情報が開示されていくことだろう。マイスター達だけじゃなく、GBBBBニュースを見た者達が盛り上がるなか、レコはいつものようにGBBBBニュースを締めくくり、配信を終える。
「……多くのクランと対戦することで個々の力だけではなくクラン全体の実力も伸ばせるだろう。君達なら十分結果を残せる筈だ」
「は、はい! ありがとうございます! クラン戦、挑戦してみます!」
マイスターの言うように多くのクランとぶつかる事で刺激を受け、更なる成長を期待できることだろう。マイスターからの期待の言葉にタオは緊張した面持ちながらクラン戦への参加を決めてしまう。特に相談もしてはいないが、少なくともこの場にいるツムギもリリンも異論はない為、タオに続くように頷いていた。
「……では、君達の戦いに期待している」
静かにそう言い残すとマイスターはマントを翻してツムギ達の元から去って行ってしまう。その背中をツムギ達は手を振って見送る。
「あのマイスター・アインに直々に声をかけられてもうた……。夢みたいやったね……。いや、もしかしたら夢かも? リリン、ちょっと頬つねってみてくれへん?」
「つねる? なにか意味でもあるの?」
「ボケやんか! あーもう、この感動が何で分からへんのん!?」
憧れの人物であるマイスターに声をかけられて、まだ夢心地のようなタオは締まりのない顔でリリンに頬を向けるが、その行動に意味を見出せないリリンは理解できなさそうに首を傾げる。感動に水を差されたかのようにツッコミを入れるなか、タオは1人、ブツブツと感動をかみしめていた。
「……今日のタオ、なんか変」
「まあ、憧れの人が目の前に来てそれも話も出来たのならあぁもなるよ」
タオの様子に困惑したようなリリンにツムギは少なくともタオの心境は理解できるのか、それでも1人舞い上がっているその姿には苦笑してしまっている。
「でも、あのマイスターって人から凄い力を感じた……。アナタに似てるかも」
「マイスターと俺が……? 本当なら嬉しいけど」
あまりマイスターと会話はしていなかったが、それでもリリンはマイスターに感じるものがあったのだろう。ツムギを真っ直ぐ見つめながらそう話すも、当のツムギは同じ覚醒の使い手以外で共通点を見出せず、いまいちピンと来ていない様子だった。
・・・
「まだ見てんの?」
ツムギ達とマイスターの邂逅から数時間後。ベクルックスのクランルームではそれぞれテーブルに腰かけているウィルとユカの姿があった。ナギサとソフィーが配信活動の中で行っているミッションの様子を見ながら、ユカはチラリと対面に座って、何やらジッと自身のコンソール画面からバトルの映像を見ているウィルに声をかける。
「なにか問題があるのかい?」
「……そうは言ってないじゃん」
ウィルが見ているのは全てマイスターのバトルの映像だ。ガンダムルークの一挙手一投足を見逃さないとばかりに隅々まで見ているウィルの言葉にユカは眉を顰めながら視線を逸らす。
「……マイスターってイッチなのかな」
「さてね」
何とも言えない空気が2人の間に流れるなか、ふと漏らしたどこかか細いユカの言葉にウィルはモニターの映像を切り上げると、改めてユカに向き直る。
「だが、あの戦い方に覚えがある。僕が見間違う筈がない……。いずれはあの気取った仮面も引き剝がしてやるさ。GBBBBの絶対王者マイスター・アインに興味はない。僕が興味があるのは卑屈で根暗なアマミヤ・イチヤだ」
「アンタ、本当にイッチのことが好きだね」
「やめてくれ。僕が好きなのは君だけだ」
どこか確信したような口ぶりに思わずユカは苦笑してしまうが、どこかムキになったようにウィルは否定する。最もその言葉にユカは「恥ずかしげもなく言うよなー……」とまたしても苦笑気味だ。
(イチヤは進み続けている。昔は止まって見えたが、いつしか見えない程のスピードを持って……。だからこそ置いて行かれるわけにはいかないんだ)
ユカと談笑しながらもウィルの脳裏にはアマミヤ・イチヤの存在があった。いつか必ずGBBBBでアマミヤ・イチヤと戦う時が来る。そんな確信を胸に抱くのであった。