ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
広大な宇宙空間。そこが今回のバトルステージだ。1on1形式で行われているバトルには一方にツムギが操るストライクブレイザーの姿があり、もう一方はシゲが操るアストレイ ブラックスターの姿がある。大小さまざまなデブリが障害物となるなか、お互いに決定打が得られないまま時間だけが過ぎていく。
「速い……!」
「ヴェハハハハッ! このままどんどん避け続けちゃうよぉ~~!」
ガンバレルを展開し、少しでも被弾を狙おうとするもアストレイ ブラックスターは身軽に避けていく。その機動力にツムギが思わず眉を顰めるなか、シゲは自慢の機動力を発揮しながら声高らかに宇宙を駆ける。
「……あの機動力を何とか出来ないようじゃマイスターには追いつけない!」
マイスター・アインが駆るガンダムルークの一番の特徴はその圧倒的なまでの機動力だ。いつかマイスターとバトルをして打ち勝つ。それが今のツムギの目標である。だからこそここで機動力を自慢とするアストレイ ブラックスターを対処できないようではマイスターと戦っても何もできないのがオチだろう。
「そんなの当たらないよぉ~」
ストライクブレイザーの350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルが火を噴く。まっすぐアストレイ ブラックスターに向かっていくが、これも軽やかに避けられてしまう。
「なぁあ!? デブリがあー!?」
だがツムギの狙いはアストレイ ブラックスターではなく、その前方、いや周囲のデブリだったのだ。高火力の射撃によってデブリが打ち砕かれるなか、デブリは散り散りとなって飛散する。それがアストレイ ブラックスターの動きを制限させるなか、シゲは目を丸くして驚くなか、アラートがけたましく鳴り響く。
狙いを成功させたストライクブレイザーが既にビームサーベルを引き抜いて迫ってきていたのだ。咄嗟にアストレイ ブラックスターはビームサーベルを引き抜いて両者、鍔迫り合いとなり、激しい剣戟を繰り広げるのであった。
・・・
「いやぁ、良いバトルだったねぇー。これぞマッチングの醍醐味よ」
数分後、ロビー広場ではバトルを終えたツムギは今回、マッチングしたシゲと顔を合わせていた。お互い良いバトルが出来たようで豪快に笑うシゲにツムギも満足そうだ。その後、多少の雑談をしながらもツムギはシゲと別れる。
「──だーれだ」
このままミッションを続けようかと悩んでいると、不意にツムギの視界が暗転する。驚いて身体を強張らせているとどこか柔らかで甘い声で耳に入って来る。
「あー、答えられないんだ。減点だね」
だがこの声に馴染みがないのか、ツムギは必死に脳を働かせているがいつまでも思い当たる人物が出てこない。目隠しをした人物の想定時間を超えたようで不満げながら視界が明るくなっていく。
「アオバさん……!?」
「ツムギ君だったよね。知った顔がいたからちょっかいかけちゃった」
振り向いた先に会ったオッドアイと視線が重なる。顔を見て、かつてバトルをしたアオバであることをすぐに思い出したツムギにアオバはクスクスと笑みを見せる。
「今日は1人なんだ」
「はい、クラン戦も控えてるから少しでも腕を上げたくて」
周りを見渡してもツムギの知り合いらしき人物はいないので今日はソロで活動しているのだろう。その理由は以前、告知のあったクラン戦だ。日々成長しているとはいえ、どんな相手とぶつかるかも分からない。だからこそ時間があれば個人でも経験を積んでいるのだろう。
「クラン戦かぁ……。私はソロだから気にしてなかったけど、そんなのあったね。じゃあ応援してあげるよ」
アオバは普段、ソロで活動している為、メッセンジャーなどで運営から通知があったとしても気に留めていなかったのだろう。だがよりにもよってアオバからツムギを応援する趣旨の発言が出てきたことに驚いてしまう。
「なーにその反応」
「いや……俺は覚醒を使えるから応援してくれるなんて思わなくて」
途端に悪戯っ子のように笑いながら後ろに手を組んで前屈みになりながらツムギの顔を覗き込む。その姿に少々圧されながらもツムギは驚いた理由を明かす。覚醒を毛嫌いしているアオバが覚醒の使い手であるツムギを応援すれるとは思わなかったのだ。
「言ったでしょ、君の事は少し気に入ったって。それに名を上げた君を倒せば、私にとっての証明になるからね」
非覚醒の存在が覚醒の使い手を打ち倒す。それは名前が大きければ大きい程、大きく知れ渡るだろう。覚醒を使う者を断罪するとまで豪語したアオバらしいと言えばらしいのかもしれない。
「で、その後はどう? あの青い光に関してなにか分かった?」
「それが何も……。俺のガンプラには何かが宿ってる……。そんなことくらいしか」
「何かがねぇ……」
ブレイザーの力を発現したのはアオバとの戦闘があった時は初めてだ。アオバ自身、あの光が何なのか、気になるところではあるがツムギも断言できるほどの確信はないため、首を振るのみだ。
「GBBBBはAIによって管理されてるってのは公になってるけど噂じゃあユーザーの動向を探って更にGBBBBを発展する為に調査用のAIを派遣してるなんてのも聞いた事があるな」
「……AI、ですか」
「君のガンプラに宿ってる存在がそうとまでは分からないけどね」
顎に手を添えながら、うーんとかつて耳にした噂を口にするアオバ。その話にツムギが反応するなか、不確かな情報の為、首を横に振る。
「でも、あれが何であろうとちゃんと纏めて私が倒してあげるから首を洗って待っててね」
そっとツムギの首に両手を添えながらアオバは妖しく笑う。その蠱惑的な仕草にツムギが視線を逸らせなくなってしまうなか、満足したアオバはクスリと笑みを漏らすと、ツムギの元から去って行ってしまう。
「完全に目を付けられちゃったな……」
傍から見ても上機嫌なアオバの背中を見ながらツムギは困ったように頬をかく。ひとまず区切りも良かったのか、ツムギはそのままログアウトするのであった。
・・・
「AI?」
後日、ツムギとナギサはブレイカーズ3号店に訪れていた。ユウヒとナギサが知り合っていた事に驚かされたりもしつつもふとツムギはユウヒにアオバからの噂話について話していた。
「噂でしかないんですけど、もしかしたらブレイザーの正体もそうなんじゃないかって」
「まあ、噂が本当ならありえない話じゃないよね。でも、それが何で1ユーザーに過ぎないツムギ君のストライクブレイザーの中にずっといるのかって疑問があるけど」
作業ブースの一角を借りながら、ツムギの中で生まれている考察を口にすると、ユウヒもその考え自体は否定しないでも、すぐに疑問に思った事を口にする。
「ユウヒさーん、ダリルバルデとファラクトのプラモってないんですかー?」
「そこになければないね」
ユウヒの指摘にまたもうーんと腕を組んで頭を悩ませるツムギ。すると陳列棚の方からミカエリスをはじめとした本編を見てハマったのか、水星の魔女シリーズのガンプラをいくつか抱えたナギサが目当てのガンプラの中で見当たらないガンプラを尋ねるも、どうやら品切れ中のようでたちまち口を尖らせて不満そうな顔を見せる。
「AIと共に戦うかぁ……。パッと思い浮かぶので言えばかつての彩渡商店街ガンプラチームとその関係者だけど、1人を除いて連絡が取れないんだよねぇ……」
取り敢えず今、抱えているガンプラの会計をしようとナギサがレジへ向かっていくのを横目に少しでも力になろうとしているのか、ユウヒは伝手を頼ろうと少し頭を悩ませていると……。
「あぁ……あの人も力になってくれるかもしれないな。じゃあ今度会いに行ってみようか」
「どなたにですか?」
やがて1人、ユウヒの中で適任の人物を導き出したのだろう。会計を済ませたナギサが戻って来るなか、ツムギはその人物について尋ねる。
「始まりのガンダムブレイカー……。キサラギ・ショウさんだよ」
それは原初の存在にして争いの連鎖を断ち切る英雄。その名を聞いた瞬間、ツムギの鼓動が跳ね上がるのを感じるのだった……。