ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
バトルステージは地球を眼下に見下ろせる宇宙空間。1on1形式で行われているこのバトルではストライクブレイザーがスラスターの光の尾を引いて突き進んでいた。
「あれが……ガンダムブレイカー」
やがてセンサーが相手を捉え、ツムギもモニターで視認する。ショウが操るガンダムブレイカーMk-IIはまるで宇宙に身を委ねるように静止していた。
ガンダムMk-IIが支援戦闘機Gディフェンサーとドッキングした形態であるスーパーガンダムにインスパイアを受けて製作したのだろう。ビームキャノンとウイングを搭載したバックパックを装備していた。
ブレイカーMk-IIはツムギがこれまで見てきたどのガンプラよりも精巧に作成されていた。全体的なディティールアップをはじめ、バトルに出さずその出来栄えを評価するコンテストに出したとしても十分な結果が出せるだろう。
「……いけ、ガンバレルッ!」
思わず生唾を呑んでしまうなか、その存在感に圧倒され、飲み込まれてしまうのを振り払うようにストライクブレイザーはガンバレルを4基全て解き放つ。
シゲとのバトルでは様々なデブリに干渉されてしまい動きも制限されてしまうが、同じ宇宙空間でもこのステージはデブリは少ない。ガンバレルを活かした戦い方が出来るだろう。
縦横無尽に宇宙を駆けるガンバレル。4基全てがブレイカーMk-IIに狙いを定めて向かっていく。ここで多くのプレイヤーはガンバレルそのものを避けるように回避行動をする訳だが……。
「──ッ」
キサラギ・ショウは違った。4基のガンバレル全てから放たれる射撃の中を掻い潜ってストライクブレイザーに接近してきたのだ。その動きにツムギは目を見開く。僅かな動きで被弾する状況で掠りもなくあっという間に距離を詰め、眼前まで迫っていたのだ。
「こう近づけば四方からの攻撃は無理かな?」
「そんなこと──!」
言い切る前にストライクブレイザーのモニターは大きく揺れる。接近した勢いを活かしてそのまま突き刺すように深々と蹴りを浴びせてきたのだ。
「所詮はMk-II……とは言うまいな」
ストライクブレイザーは機体がくの字に大きく曲がる。そのまま勢いに任せて流れていくように吹き飛ぶストライクブレイザーにバックパックのビームキャノンを放つことで直撃させる。爆炎が上がるなか、ショウがストライクブレイザーの動きを観察していると、赤い閃光が爆炎を抜け出て一気にブレイカーMk-IIに接近する。
「……やっぱり凄い! これが……ガンダムブレイカー……ッ!」
覚醒の光を纏ったストライクブレイザーはビームサーベルを抜き放ち、切りかかるもブレイカーMk-IIはまるで察知していたかのように機体を僅かにずらして最小限で回避すると続けざまに切りかかって来るストライクブレイザーに対して自身のビームサーベルを引き抜き、鍔迫り合いとなる。ビーム同士が拮抗し、周囲にスパークが発生するなか、ツムギはショウの実力にただただ感嘆とした声を漏らす。
「でも……それでも最後まで諦めたくない……!」
幾度となく刃を交えるなかでブレイカーMk-IIは闇雲にビームサーベルを振るうのではなく剣技とも言える程、高い操作技術を持ってストライクブレイザーを制していく。誰が見てもツムギとショウの間には絶対的なまでの差があった。それは他ならぬツムギ自身も理解していた。
「俺のガンプラが一番、強いんだって! 最高なんだって……! ガンプラに胸を張りたいから!」
ツムギはまるで子供のように叫ぶ。技術の差など関係ない。自分のガンプラこそが最強なんだ。それはツムギだけじゃなく多くのガンプラファイターが抱く誇りだろう。だからこそ例えどれだけの差があっても諦めたくなかった。
≪──!≫
そしてその想いに呼応するようにブレイザーが現れる。ストライクブレイザーの左目を中心に青い炎のような光が現れる。
「お出ましか」
覚醒のステータスアップがブレイザーの出現により、更に跳ね上がる。刃を交えるなかでそれを実感したブレイカーMk-IIは様子を見るようにストライクブレイザーの攻撃を捌いていきながら観察に徹する。
(……真っ直ぐだな)
ショウがストライクブレイザーの動きを見て感じたのは、愚直なまでに真っ直ぐな姿勢だった。それはただ目の前のことにか見えていない若さがそうさせているのか分からない。
「そんな子供だまし!」
ブレイカーMk-IIは接近してくるストライクブレイザーに対してシールドを放棄して、ストライクブレイザーのモニターを阻害しようとする。追い込まれたからこその咄嗟の誤魔化しの動きだと感じたツムギは笑みを見せるが……。
「──ああ。だが君は騙せたようだ」
シールドを突き抜けて連射された数発のビームがストライクブレイザー各関節を撃ち抜き、ストライクブレイザーは失速する。シールドは誤魔化しの為に投げたのではない。次の攻撃を悟られる為の布石だったのだ。その早撃ちの技術にツムギは驚くなか、シールドを突き抜けて投擲されたビームサーベルがストライクブレイザーの頭部を貫く。
続けざまにブレイカーMk-IIはシールドに装備されている小型ミサイルを的確にビームライフルで撃ち抜き、爆散させると大きく吹き飛ぶストライクブレイザーに対するように静かにビームライフルを向け、その引き金を引く。たった一発のビームは鋭くストライクブレイザーのコックピットを貫き、ストライクブレイザーを撃破するのであった。
・・・
「流石、ガンダムブレイカーだよな!」
「生でバトルが見れるなんて……!」
ロビー広場ではガンダムブレイカーの話題で持ちきりだった。10年以上の時が経とうと決して衰えないガンプラバトルの英雄的存在に大いに盛り上がっていた。
「むぅ……ノセだって凄かったのに」
「光が強すぎると見えないことだってあるよ」
誰もかれもショウの話題ばかり。対戦していたツムギの話題が聞こえないことにナギサは不満げに頬を膨らませると、ユウヒは苦笑しながらも戻ってきたツムギを出迎える。
「……やっぱり強かったです。しかもキサラギさんは覚醒すら使ってなかった」
「そうだね。でも良い目標になるんじゃない?」
負けたことに純粋に悔しさを感じる一方、ツムギはショウが全力でなかった事も察してはいた。ユウヒにとってもショウは大きすぎる存在なのか、同意しながらもメッセンジャーを開く。
「ちょっと用が出来たから先にログアウトしててくれって」
今、この場にくればすぐに気付かれそうなものだがショウはロビー広場に戻ってきていない。どうやら何か用が出来たらしく、その言葉を聞いたツムギとナギサはユウヒと共にログアウトする。
・・・
「──まさかこちらにいらっしゃるとは」
人気のない通路の一角にショウの姿があった。そんなショウを背後から声をかけてきたのはマイスター・アインであった。
「君も息災のようで何よりだ。君の活躍はよく目にしているよ。成長したな」
「……私なりに大人の真似事しているつもりです」
ショウとマイスター・アインは面識はあるのだろう。しかも2人の間の雰囲気は砕けたものであり、ショウはマイスターの正体も知っているのだろう。2人の親しさを感じさせる。
「ならばその仮面は君が大人を演じる為に付けているものかな?」
「……お好きに受け取ってもらって構いませんよ」
どこか意地悪な物言いをするショウに困ったような笑みを見せるマイスター。
「だが大人を演じたいのなら、君を想う存在達がいる事を忘れてはいけないよ」
「……分かっては……います」
ショウの言葉がどこか突き刺さるものがあったのだろう。冷静な物腰でいることの多いマイスターはどこか苦虫を嚙み潰したような様子を見せる。
「君は気負いやすいからな。君が様々な事を受け継いできたように君の影響もまた誰かにきっと受け継がれている……。その仮面を外せる日もそう遠くない……。俺はそう思っているよ」
すれ違いざまに激励するようにマイスターの肩を触れながら笑みを見せるショウ。その顔を見たマイスターもつられるようにどこか弱弱しい笑みを見せる。
「“彼ら”のこと頼むよ」
彼ら、とは誰なのかはこの2人には分かっているのだろう。ショウの頼みに力強く頷くマイスターの姿を見たショウは満足そうに笑みをこぼしてログアウトするのであった……。