ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
市街地エリアを抜けた先には打って変わってさながら闘技場のような開けたエリアに到着した。ボス戦というだけあって、こういったステージなのだろうか。ツムギがそんなことを考えていると不意にけたましい程のアラートが鳴り響く。あまりに巨大な熱源反応だ。センサーが指し示す方向を確認すれば今まさにデータが構築されており、RX-78-2 ガンダムの姿となってバトルフィールドに降り立つ。
しかしそれは決してストライクブレイザーやフレールのような機体サイズではない。寧ろ2人のガンプラは目の前のガンダムに比べれば精々、膝元位のサイズでしかなくSDガンダムであるタオSDカスタムに関しては足元程のサイズ差がある。
「あれ、PG……。PG Unleashed ガンダムじゃない!?」
ツムギは目の前のガンダムの各部アレンジされたデザインからガンダムはガンダムでも何のガンプラが元になっているのかすぐに気付いだのだろう。ガンプラは主にHG、MG、RG、PGというブランドがあり、他にもデフォルメされたBB戦士やSDやキャラクターを組み立てるFigure-rise Standardなど幅広いブランドが展開されている。その中でもPGは1/60スケールのサイズ感のガンプラとして売り出されており、目の前のガンダムはそのブランドから発売されたハイディテールなガンプラなのだ。
「うわー! デカい、カタそう、ナニコレ! こんなのむーりィ────────!!!」
「うわわわわ! こんな大きいなんて聞いてへんて──────!!!」
驚いているのもつかの間、戦闘は始まってしまった。こちらに向かってくるPGガンダムに咄嗟にストライクブレイザー達は各方向に散り散りになる。しかしあまりの圧倒的なまでの巨躯にリンどころか経験者を語っていたタオでさえパニックを起こしてしまっている。
「ちょっとタオ、アンタ経験者なんでしょ! あんなの慣れてるんじゃないの!?」
「いや! せやかて! こんな! ……後は任せたでツムギ!」
自分どころか威勢の良かったタオまでパニックになっている事にリンも我に返れたのだろう。すかさずツッコミの如き指摘を入れる。タオも何か上手く言葉を返したかったようだが戦闘中もあって良い言い訳が出てこず、あろうことかツムギに放り投げる。
「……確かにとんでもない存在感だ」
PGガンダムのビームライフルから放たれるビームは戦艦並の威力どころではない。まるでバトル漫画に登場するようなすべてを無に帰すような極太のビームだ。これには怖気づいてしまうリンとタオの気持ちも分かるというものだ。思わず冷や汗を流すツムギだが、一転して口元に笑みが零れる。
「でも、きっと……俺のガンプラの方が強い!」
それでもツムギは信じているのだ。
どれだけの存在感を示す相手であろうとそれでもユウヒからアドバイスされながら自分が心血注いで組み上げたストライクブレイザーの方が強いんだという想いが、いや確信が!
PGガンダムから放たれるビームや牽制用のバルカンを軽やかに避けながらストライクブレイザーは一気にPGガンダムへと距離を縮める。確かにPGガンダムの装甲はリンの印象通り堅牢なものだろう。だがそれで打つ手がない訳ではない。
「そこぉっ!」
ツムギが狙うのは装甲の間から覗かせる関節部などの比較的脆い部分だ。350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルを半ばゼロ距離で足裏の関節部に放つ。そうすると先程まで圧倒的なまでのPGガンダムの巨体が大きく揺らいで膝をついたのだ。
「これならいけるかも!」
「こ、こうならやぶれかぶれや!」
PGガンダムのその姿に先程までパニックになっていたリンとタオも少しずつ勝機が見えてきたのだろう。こうしてはいられないとフレールとタオSDカスタムもストライクブレイザーの加勢に加わる。先程までの怯えようが嘘みたいにリンとタオは怒涛の攻勢に出る。勢いは完全にツムギ達が支配していると言っても過言ではないだろう。
「いっけえぇぇぇ──っっっ!!!!」
最早、3人の頭には勝利への感情しかない。激しい戦闘にアドレナリンが分泌されているのだろう。興奮気味のリンは身体全体の熱を放つようにフレールの腹部に内蔵された大出力ビーム砲・カリドゥス複相ビーム砲を放つ。赤白い極太のビームはフレールの武装で最大威力を誇るのだろう。そのままPGガンダムの頭部を貫いた。
「凄いね、リン!」
リンは勢いに乗ればどこまでも進んでいけるタイプなのだろう。頭部を貫かれたPGガンダムのその巨体を大きく揺らめくなか、その正面に躍り出たストライクブレイザーはガンバレルを展開し、全ての火器オプションの砲口をPGガンダムに向ける。
「これでっ!」
周囲に展開したガンバレルとストライカーの350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフル、そして手持ちの二挺のMA-M21KF 高エネルギービームライフルのさながらフリーダムガンダム系列のハイマットフルバーストの如き一斉射によって遂にPGガンダムはバランスを崩し、各部で小さな爆発をあげ、やがて轟音と共にそのまま爆散する。
「ガンバレルフルバーストってところかな」
PGガンダムの残骸はデータとなって消滅するなか役目を終えたガンバレルがストライカーに再び装填される。ツムギ達のモニターにはミッションクリアの文字が華々しく表示されるなか、ツムギはその喜びを分かち合うようにフレール達を見やる。
「やった──! 倒せたぁ──っ!」
「良かったぁ……。勝てた……」
リンとタオの反応は対照的だった。通信モニター越しでも分かるほど飛び跳ねて身体全体で喜びを顕にしているリンに対してタオは緊張状態から解放されて糸が切れた人形のようにぐったりとした様子を見せる。
「やったな、ブレイザー」
何となくミッションを通じてタオ達の人柄を理解してきたツムギは充実感を胸にこれまで一緒に戦ってくれたストライクブレイザーに労いの言葉を贈りつつミッションを終了させるのであった。
・・・
ミッションを終えてロビー広場へ戻ってきたツムギ達。ツムギとタオは兎も角、成り行きとはいえ一緒にミッションをクリアしたリンと対面を果たす。
通信越しにアバターを見てはいたが実際、目の前にしてみれば非常に可愛らしくミッションの印象も相まって非常に活発的な印象を受ける。
「おつかれー! 大変だったけど楽しかったー!」
「予想外の展開やったけどクリアできてホンマに良かったわー……」
ミッション成功の喜びを噛み締めてるのだろう。上機嫌なリンだったが安堵の様子を見せながら喜びを共有しようとするタオに対して途端に目尻が吊り上がる。
「アンタ、エラそうなこと言ってたけど逃げてばっかりじゃなかった? 本当に経験者なの?」
「うっ……」
出会ったばかりの時は散々仕切っていたわりにはPGガンダムとの戦闘ではパニックになり、挙句の果てにはGBBBBデビューしたばかりツムギに丸投げする始末。痛いところが突かれて最早言い訳のしようもないのかタオは申し訳なさそうにガックリと肩を落とす。
「実は……GBBBBにはかなり前からログインしてるんやけど、マルチでミッションに出たのはさっきのが初めてやったんや。バトルに自信がなくて、自分でチームを組んだり人のチームに入ったり、っていうのが怖くて出来へんかってん……」
確かにPGガンダムでの戦闘は活躍していた、というには少しばかり苦しい。本人もバトルの腕に関しては思うところがあるのだろう。それがきっかけでマルチプレイが出来ず、勇んでみたは良いものの先程のミッションの通りになってしまったようだ。そういう意味ではマルチプレイにおけるタオはツムギやリンと同じように初心者といえるだろう。
「あの……ツムギ、ごめん。散々エラそうなこと言って……。許してくれへん」
「なに言ってんの」
流れるようにツムギに顔を向けたタオは謝罪の言葉を口にする。しかし返ってきたのは短くも鋭い言葉だ。そこから続く言葉に嫌な想像をしたのだろう。タオの身体は強張る。
「さっきも言ったけどタオが声かけてくれたの嬉しかったんだよ。それにタオだって初マルチプレイなのにその上で俺のこと気にかけてくれたんだって思えたらもっと嬉しいよ」
「……っ。ありがとう! エエ奴やなぁ、君は!」
そもそもツムギにとってはタオの経験に関しては大きな問題ではなかったのだろう。そんなことよりもタオの心遣いが嬉しかったのだ。だからツムギにはそもそもタオを責め立てる気も、許すかどうかなどは頭にはなかったのだ。そんな純粋なまでの優しい言葉に感極まった様子で思わずツムギの手を取りながらタオは晴れ渡るような笑顔を見せる。
「じゃあさ、またこの3人でミッション行こうよ。みんな初心者だったら気を遣うこともないでしょ」
「そやね! それがエエと思うわ」
ツムギ、タオ、リン。図らずもそれぞれ初心者が集まったのも何かの縁だろう。リンの提案にタオも名案だとばかりに強く頷き、ツムギも似た反応だ。
「あっそうだ。それなら、折角やし僕らでクラン組まへん?」
そこでタオからクラン結成の提案を出される。クランとはオンラインゲームにおいて同じ目的や気の合う者達が集まってチームを組むことだ。チームとして共にイベントやミッションにも参加する。ある意味、オンラインゲームの醍醐味ともいえるだろう。
「へぇー面白そうじゃない。じゃあ今日からアタシ達でクラン結成だね!」
「じゃあ折角だし、このままフレンド登録しようか」
この3人でのクラン結成は異論はないのだろう。乗り気のリンを横目にツムギはコンソール画面を表示させるとタオもリンも倣うようにコンソール画面を開き、3人はそれぞれフレンド登録を済ませ、そのままクラン結成の手続きに入る。
「クランの名前、どうする?」
「そやなぁ……。ツムギはなにか良い案とかある?」
半ば勢いでクラン結成まで話が進んでしまった為、クラン名については何も考えてなかった。リンも名前に関して特にこだわりがないのか、2人に意見を伺うとタオも特に思い付かず、ツムギに意見を伺う。
「……ブレイカーズ」
とはいえツムギも何か考えていた訳ではなく、瞬時に思考を巡らせながら咄嗟に出てきたのは今、現実世界でツムギがいるユウヒの店の名前だった。
「ブレイカーズ……。まあ良いんじゃない? 変に凝った名前とかだと覚えにくいしね」
「せやね。じゃあ今日から僕達のクランの名前はブレイカーズや!」
咄嗟に出た名前ではあったが、リンもタオも特に異論はなかったのか、すんなりと受け入れてくれた。ツムギがホッと胸をなでおろすなか、クラン結成の手続きも終え、正式に3人はクラン・ブレイカーズとしての活動を始めることとなった。
「それじゃあ次にミッションに行く時はメッセンジャーで教えてね。今日はありがと!」
今日はリンもこれでログアウトするつもりなのだろう。最後は捲し立てるように話すとブンブンと笑顔で手を振りながら慌ただしく走り去っていってしまう。
「……最後は言うだけ言うて嵐みたいに去っていったなー」
「走ると危ないよー」
騒がしいリンが去っていったのでツムギとタオの間に妙な静けさが残るなか、リンの勢いから解放されて、どこか疲れたように肩を落とすタオだがその隣ではツムギがマイペースにもう聞こえていないだろうリンに注意している。
ツムギが良い人柄なのは十分理解しているが、こっちはこっちでマイペースな為、今後、タオは自分が振り回されるのを予期したのだろう。タオは酷い頭痛に苛まれるように唸る中、ツムギとタオも今日は解散しようと揃ってログアウトするのであった。