ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「おいおい……何が悲しくて野郎3人で出撃なんだ? 予定じゃ窮地を救うヒーローとしてチヤホヤされる筈だったんだが……」
いよいよ始まったクラン戦。女性陣が目当てだったマシマは出撃前の陽気な態度から一転して、明らかにやる気をなくしてしまっている。今回のクラン戦はマシマの他にツムギとタオの男性陣で出撃していた。
「そりゃあれだけ下心見え見えやと遠ざけられて当然とちゃう?」
「だからってメンバーを男で固める必要なくねぇか?」
「でも、この戦いはシーナ達も見てるし、アピールは十分にできると思うで? ……活躍したら、の話やけど」
傍から見てもナンパ目的なのが丸分かりなのだからその辺が疎そうなリリンは兎も角、リンやシーナは出撃したがたないだろう。唇を尖らせて文句が止まらないマシマにタオは煽るようにニヤニヤと笑みをこぼす。
「……そうだな、彼女達にイイところを見せつけないとな! 2人とも足を引っ張るんじゃねえぞ!」
タオの発言はマシマを焚きつける事には成功したのだろう。俄然、やる気を見せ始めたマシマに御しやすいなとツムギとタオは苦笑しているとそれぞれのコックピットでアラートがけたましく鳴り響く。
「あれが今回の相手か!」
「一応、言っとくけど油断せんといてな」
相手クランの登場だ。すぐさま戦闘が始まろうとするなか、どこか軽薄な態度を崩さないマシマにタオは念のために注意を飛ばす。
「分かってるって! 俺の実力、お嬢に見せつけねえといけねえしな!」
「お嬢ってシーナのこと? 馴れ馴れしい呼び方やなぁ……」
「別にいいだろ。どっからどう見たって【お嬢】って雰囲気なんだしさ」
まだ距離がある為、射撃戦が始まる。お嬢という呼称に該当するであろうシーナを思ってか、何とも言えない表情を見せるタオだが、シーナの気品ある佇まいはリンですらお嬢様と言ってしまう位なのでマシマの言葉自体には否定はできないようだ。
「ま、お前らは適当にやっててくれ! 敵なんて俺が全部、片づけてやるからよ!」
マシマが操るガンプラはHi-νガンダムをベースにカスタマイズされたクレインクインだ。バックパックのフィンファンネルなど基本はHi-νガンダムのままだが脚部やシールドはνガンダムのパーツを使用していたり、シナンジュのビームライフル+バズーカを主武装に取り入れている。一番目を引くのはなによりバイザー型の頭部だろう。
「速い……!」
助っ人を名乗り出るだけあって、クレインクインの完成度は中々のものだ。下手をすればクラン・ブレイカーズの中でもトップクラスだろう。問題はビルダーの実力とファイターとしての実力が比例しているかだ。マシマの軽薄さもあって心配していたところだが、飛び出していったクレインクインの動きにツムギは驚く。
ただ無鉄砲に突っ込んだ訳ではない。自身に狙いを集中させるつもりなのだろう。それだけ危険が伴うが、迫る攻撃を紙一重で全て避け、一気に相手クランの一機の懐に飛び込んだクレインクインは素早くビームサーベルを引き抜くと一太刀浴びせて相手が動揺した隙にコックピットにビームライフルを突き付けてその引き金を引き、撃破する。
「……負けてられない。行こう、ブレイザー!」
だがマシマに全てを任せる気はない。そんなことは自分のプライドが許さない。すぐさま表情を引き締めたツムギはストライクブレイザーと共に戦場を駆け、クレインクインの大立ち回りの中に飛び込んでいき戦闘に参加していく。
「へぇ、度胸あるじゃねえか!」
「適当になんてやりませんよ! 俺のガンプラバトルはいつだって本気です!」
「真っ直ぐな奴だな。なら、その本気ってのを見せてみな」
このバトルの中でもマシマの実力は一回り、いやそれ以上の実力がある。それはすぐに分かった。それでもそれで引き下がる気はない。自分の手掛けたストライクブレイザーが一番なんだという気持ちがあるから。その意気込みはマシマにも伝わっているのだろう。ニヤリと笑みを見せるマシマにツムギは笑みを返す。
その言葉に満足そうに頷いたマシマはフィンファンネルを解き放ち、ストライクブレイザーもガンバレルを展開する。無線と有線、それぞれのオールレンジ攻撃がバトルを彩るのであった。
・・・
「どこもかしこもクラン戦ばっかだねー」
一方、ロビー広場にはアオバの姿があった。基本的にソロで行動しているアオバは公式イベントなだけあってクラン戦一色となっているロビー広場にどこか居心地の悪そうな笑みを見せている。
「「あっ」」
特にクランにも所属していないアオバには関係ない話ではあるが、ついついクラン戦の映像を見てしまっている。丁度、クラン・ブレイカーズのバトルも映し出されており、足を止めて見ていると不意に視界の端に覚えのある顔を捉え、相手も気付いたのか足を止める。
「アナタは確か……」
「おひさー」
ユカだ。ツムギばかりと会話していたが、初めてツムギと会ったあの日、一緒にいたのは覚えている。ユカもアオバを覚えていたようで緩い挨拶をしてくる。
「ノセっちのバトル見てんの? お熱だよね」
「いや、これは偶然ですけど……今日はなにを?」
「アタシ? 暇だったからログインしただけよ。同じクランの妹分達は配信活動してるし、他はちょっとタイミング合わなかったんだよね」
状況だけ見ればアオバがツムギのバトルを見ているのは変わりないが、アオバの言うように偶然でしかない。ユカもユカで暇つぶしでGBBBBにログインしただけで特に目的はないらしい。
「アタシはユカ。確かアオバちゃんだったよね」
「ちゃん付けで呼ばれるのなんて久しぶりですね……」
初めて出会った時はこの2人の会話はなかったが、ユカとしても記憶に強く残っているのだろう、最もちゃん付けで呼ばれたことにアオバは苦笑してしまっているが。
「んで、アオバちゃんはどうしてるの?」
「いや、私も特には……。クラン戦なんてやってますけど、私はそういうのにも入ってませんし何かクラン戦一色って感じで居心地悪いし、今日はもうログアウトしようかなって」
人に取り入るのが無意識のレベルでうまいのか、アオバの隣に自然と立ちながら会話を続ける。ツムギのバトルを眺めていたが、バトルの流れは共に戦っているマシマのクレインクインが掴んでいる。今も一機撃破して後は残り一機だ。
「どっかに入る予定はないの?」
「特には……。GBBBBでいるのも覚醒の使い手を倒して倒して倒し続けるのが主目的ですし」
人の楽しみ方はそれぞれだ。ソロが肌に合う者もいるだろう。だがそう語るアオバの目はどこか寂し気だった。
「ねえ、ウチのクランに入らん?」
それを感じたのだろうか。ユカはアオバをベクルックスに勧誘したのだ。思わぬ提案にアオバは驚いてユカを見やる。
「覚醒の使い手を倒すのが目的ってのは否定しないよ。でもさ、それもガンプラバトルをしてた妹さんがきっかけなんでしょ。誰かと一緒に遊ぶの自体は好きなんじゃない?」
「それは……まあ」
アオバの目的自体は否定しないもののその根本にある感情に触れていくユカ。アオバもその事自体は否定するつもりはないもののどこか言葉を濁している。
「──どうだ、お前ら! 俺の操縦技術はそこらの奴とは違っただろ!」
「やるやん、マシマ! ホンマに凄かったで!」
ふと騒がしい声が聞こえてくる。見ればあのままバトルに勝利したツムギ達がロビー広場に戻ってきていた。得意げに話すマシマにバトルの流れを完全につかんでいたのを間近で見ていたタオは純粋に賞賛の言葉を贈る。
「……けど、そんだけの腕があるなら名前も売れて普通にモテそうな気もするけど」
「引く手あまたで放っておかない気はするよね。やっぱり言動が原因なんじゃ……」
「おいおい……モテない前提で言うんじゃねえ。俺くらいの腕がありゃどこで何してようがモテんだよ」
その後、コソコソとマシマについて話しているタオとツムギに呆れながら事実かどうかも分からない事を言いつつ、その首根っこを摑まえる。
「ま、そんな事よりとっとお嬢達と合流しようぜ。お嬢が俺の帰りを待ってるんでな!」
そのままツムギ達を両脇に抱えながら意気揚々とシーナ達の元へ向かっていくマシマ。あの勢いはだれにも止められないだろう。
「……」
「本当は寂しいんじゃない? 誰かと一緒にいたいんでしょ」
そんな光景を見ていたアオバはどこか眩しそうに直視を避けるように顔を俯かせる。アオバの内心を察してかユカはその肩に手を添え、その心にも寄り添おうとする。
「……何で私を勧誘してくれるんですか?」
「どーにもね。生きるのが不器用そうな子って放っておけないんだよ。まあ無理にとは言わないけど」
例えアオバの本心がユカの言う通りだったとしてわざわざ勧誘してくれる理由は何なのだろうか。腕に自信があるが自分に拘る理由もない筈だ。だがユカはどこか懐かしむように笑みをこぼしながら話す。彼女自身、今日に至るまで様々な人間達と出会ってきたのだろう。
「……良いですよ。アナタのクランに入ります」
「へぇ、誘っておいて何だけど良いの?」
「息抜きですよ。少し肩肘張ってた気はしますしね」
どこか考えるように視線を彷徨わせていたアオバだがやがて意を決したようにベクルックスへのクラン参加を決める。乗り気でないようにも見えたため、どこか意外そうな反応を見せるが、気分転換も兼ねてなのかアオバはクスリと笑みを見せる。
「あっ、でもごめん。ウチにも覚醒の使い手いたわ」
「えっ」
「まあまあ。たまにしかログインしないし悪い奴じゃないから。それに覚醒の研究がしたいなら近くで見てるのも良いと思うよ」
が、ここでユカから思わぬ発言が飛び出た。呆気にとられるアオバだが一度参加を決めたのなら一先ずは逃す気はないと言葉巧みにアオバを諭しながらその背中を押して移動を始める。難色を示すアオバもやがて考えを良いサンプルがいる程度に考えることにしたのか、一先ずは納得した様子だ。
・・・
「……それでワタクシの知らない女性を連れ込んだのですか?」
ベクルックスのクランルーム。ユカと連れてこられたアオバの前には事の経緯を説明されたシオンが明らかに不満そうに腕を組んでいた。
「えっと……ダメ、ですか?」
「……いえ、アナタには落ち度はありませんし歓迎いたします。ようこそベクルックスへ」
あまりの態度にアオバも歓迎されていないと思ったのか、すぐにでも辞退しようとするもアオバの加入自体は文句はないのか、相変わらず不服そうながらも一先ずはアオバを歓迎する。
「相っっっっ変わらず人を誑し込むのが上手いですわねぇえ? 毎晩とっかえひっかえでもしてるんじゃありません事? ガンダムSEED16話の再現でもしてるのかしら? あー不健全不健全。お互いの羽の痛みでも感じていらっしゃるんだわ」
「毎晩アタシと一緒のベッドで寝てんのはアンタでしょうが。いや、変な事はしてないけど……」
ググググとユカの頬に自身の頬を押し付けんばかりに不満をあらわにするシオン。シオンの好きにさせつつも、先程のシオンの発言もあってか、一瞬困惑した反応を見せたアオバもいるので訂正する。
「大体、ソフィーがナギちゃんを勧誘した時はアンタ、何の文句も言わなかったじゃん。アタシが誰かを誘ったって良いっしょ」
「それとこれとは話が別ですわ! そうやってワタクシに飽きたら次の子に手を出すんですわ……」
「アンタみたいな奴、飽きる訳ないでしょ。じゃなきゃ同棲してないし一緒に寝たりもしてないっつーの」
「えへへ」
ナギサがベクルックスに加入したのを後から聞いた際は特に反応も見せなかったが、やはりユカが誰かを勧誘したというのが問題らしい。ヨヨヨ……と泣き真似まで始めるシオンに呆れながらも思わずポロっとこぼした言葉にたちまちシオンはだらしない顔を浮かべる。
(少なくとも退屈はしさそう……)
気を良くしたのか、「仕方ありませんね。ならば今日、一緒にお風呂に入ることを許してあげますわ」などと口走るシオンを鬱陶しそうにあしらうユカを見ながらこれから待つであろう愉快なクランでの日々にアオバは思わず笑みを漏らすのであった。