ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「最後の対戦相手はニシワキエンジニアリングか……」
いよいよクラン戦も大詰め。最後のクラン戦の相手はニシワキエンジニアリング。何か思うところがあるのか、マシマは珍しく神妙な面持ちを見せる。
「知ってるの?」
「ニシワキエンジニアリング言うたらガンプラバトルでその名を轟かせた老舗のチームやで。プロチームの中でも強豪で、所属してるのも世界レベルの実力者ばっかりや」
「へぇ、所謂、名門チームって感じ?」
マシマの反応に相手クランについて知ってるのかとリンが尋ねてみれば、タオが簡単に説明してくれる。世界レベルの実力者揃いとなればそう簡単に勝てる相手ではないだろう。
「……ずっと名門だった訳じゃねえよ。寧ろ昔は大会に出る予算すら足りないこともあったんだぜ。それでも足掻いて、試行錯誤して……。腕とかスピリッツ的な何かとかで今の地位を勝ち得たんだ」
ニシワキエンジニアリングについて妙に詳しいマシマ。それはタオのように知識として覚えているという訳ではなく、まるで見てきたかのように語っているのだ。
「詳しいんだね、マシマ」
「それに貴方が女性のこと以外でそこまで饒舌になるなんて……」
妙に饒舌にニシワキエンジニアリングについて語るマシマにリンやシーナは意外そうに驚いている。今の話を聞いていても女性の影が見えないから尚更だ。
「ひょっとして向こうのチームにメッチャ可愛い女の子がいるとか?」
「いや、残念ながらそういう訳じゃ……」
マシマがここまで詳しい上に言葉数が多い理由は女性絡みか? 冗談交じりに問いかけるタオに苦笑しながらもマシマはどこか複雑そうな表情を見せていた。
「──その声、もしかしてマシマさんですか?」
様子がおかしい、と言わないまでも今日のマシマはどこか妙だ。マシマ以外のメンバーが何だろうと視線を交わしていると不意にマシマが声をかけられる。
「マシマさん、ですよね……?」
クラン・ブレイカーズの視線の先にいたのはスポンサーなのだろうか、企業ロゴのステッカーがいくつか貼られているパイロットスーツに身を包んだ首元まで伸びた髪が特徴的な男性だった。当然ながらツムギ達は誰なのか知る由もないが、ただ1人、マシマだけは息を吞んでいた。
「……誰だっけ? すまねえ。男の顔は覚えてられなくてよ」
「なに言ってるんですか! 僕です! ユーキですよ!」
「はははは、ジョーダンだよ、ジョーダン。そうムキになんなよ、ユーキ」
驚いていたのも束の間、途端にとぼけた反応を見せるマシマに慌てた様子で名前を明かす男性ことユーキ。男性のことを知ってはいたが、からかっていたのだろう。マシマはどこか複雑ながらも笑みを見せる。
「……マシマさん、何だか雰囲気が変わりましたね」
「……お知り合い、ですか?」
マシマの雰囲気になにか思うところがあったことを口にすると、そのユーキの言葉や今までのやり取りを見て、2人の関係が少なくとも知人の間柄であると感じたシーナが問いかける。
「申し遅れました。僕はニシワキエンジニアリングのユーキと言います。マシマさんがウチのチームにいらっしゃった頃、お世話になっていて……」
「ニシワキエンジニアリング!? さっき言ってたプロチームでしょ!?」
丁寧な挨拶をしてくるユーキ。物腰も柔らかく、短い時間ながら真面目な好青年といった印象を受ける。だが特出すべきはニシワキエンジニアリングに所属していると言うだろう。驚いたリンが改めてユーキを見てみれば確かにパイロットスーツに貼られたステッカーの中にニシワキエンジニアリングと思われるロゴがあった。
「マシマがそこにいたって事は……」
「プロビルダーやったってこと!? 通りで実力あるわけや……」
しかもユーキの発言の中にはマシマもかつてはニシワキエンジニアリングに所属していたというのだ。思わずリンとタオが顔を見合わせる。確かにマシマのバトルの実力もクレインクインの完成度もクラン・ブレイカーズの中では群を抜いている。かつてのプロビルダーとなればそれも納得だ。
「本当に凄い方ですよ。ニシワキエンジニアリングの中でも絶対的なエースでしたから。その手腕でチームをまとめ上げて、全国大会であるジャパンカップに導いてくれたんです!」
「……よせよ、ユーキ。もう昔のことだ」
今はニシワキエンジニアリングに所属していなくてもユーキの中でマシマの存在は大きいのだろう。我が事のように誇らしく語るも、当のマシマはあまり気乗りする話でもないようだ。
「……やっぱりチームメイトの方にも、昔の事はお話されてないんですね。聞きましたよ。あの時、マシマさんがチームを抜けたのは……」
「よせって言ってんだろ。今更掘り返す話じゃねえ。それに男にゃ知られざる過去のひとつやふたつは必要じゃねぇか。……な?」
話だけ聞いていてもマシマがニシワキエンジニアリングを抜ける際、何かひと悶着でもあったのだろうか。少なくともその事を知っているだろうユーキが話そうとするのも触れられたくない話題のようですぐさま話を遮り、それ以上場の空気が悪くならないようおどけた様子でウインクする。
「過去……ですか。あなたがそう言うのなら、僕は今の自分を見てもらいます!」
過去があり、そして今がある。かつて同じチームで過ごしていたが、マシマがいた頃よりも成長している事を自負しているユーキは力強くマシマを見据える。
「次のクラン戦、僕はエースとして出場します。……待ってますよ、マシマさん」
これ以上の言葉は必要ないと思ったのだろう。マシマに背を向けつつ、肩越しに振り返ってそう言い残し、ユーキは迷いのない足取りで去っていく。
「ユーキがエース……。そうか、ハハハ」
「マシマさん。あの方となにかあったのですか?」
去っていくユーキの後ろ姿を見つめながら、どこか感慨深そうに笑うマシマ。少なくともマシマとユーキは険悪な仲という訳ではないようだが、それでも過去に何かあったのだろう。シーナが問いかける。
「ま、チームを抜けた時に色々とな。男の誘いじゃ気は乗らないが……あいつにああ言われたら出ないわけにはいかねえか。この試合、俺も出させてもらうぜ」
メンバー選出はまだ行っていないが、マシマが名乗りを上げる。ユーキとの事情を抜きにしても相手はプロチーム。実力のあるマシマが出るのは誰も異論はないようだ。
「……私も出たい」
「おっ、積極的じゃないか! パートナーに名乗り出てくれるなんて! いつもクールなリリンちゃんにそんな情熱的なところがあったとはな」
するとリリンがマシマに続いて名乗りを上げる。前回、マシマが出撃した際は男性陣のみで構成されていたのもあって、マシマはすぐにいつもの軟派な態度を見せ始める。
「リリン、最近ホントに積極的だよね。前の試合もそうだったし」
「……色んなこと経験して、知りたい。今はそういう気持ちがある……のかな?」
「良い傾向良い傾向! じゃあよろしく頼むぜ!」
とはいえ、今回のクラン戦。イベントを通してリリンは全試合出撃している。リンは積極的に行動しているリリンに成長を感じているようでどこか嬉しそうに笑っていると、リリンもGBBBBでの日々を通じて考えることもあるようだ。マシマはこのチャンスを逃すまいとリリンの出撃を取り付けるが、実際、リリンが積極的に物事に関わろうとするのは確かに良い傾向だろう。
「俺も出たいです!」
残るは1人。ここで名乗りを上げたのはツムギだった。
「折角のプロのチームと戦える機会なんです! そんなチャンス逃せませんよ」
「まあ、今のアイツらを相手にするにはお前の力は必要か……。分かった、このメンツで決定だ」
ツムギ自身、プロのチームと戦う経験を逃したくないのだろう。断っても無理にでも付いてきそうな勢いだ。とはいえクラン・ブレイカーズではブレイザーの存在を抜きにしてもツムギの実力は1、2を争うレベルだ。客観的に見てもツムギが出るのは理にかなっているだろう。
「じゃあ、拝みに行くとするか。今のアイツって奴をよ」
マシマ、ツムギ、リリンの3人での出撃が決定した。男の誘いは気が乗らないと言いつつニシワキエンジニアリングを抜け、自分の知らないユーキがどこまでの実力を持っているのか楽しみなのだろう。笑みを見せながら出撃していくのであった。
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