ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak   作:ウルトラゼロNEO

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熱血のマシマ

 

「……マシマ、どうして前のチームを抜けたの?」

 

 バトルステージに選ばれたのは陸地の表面が盛り上がる山岳ステージ。まだ接敵していないニシワキエンジニアリングを警戒しつつ、ふとリリンがマシマにニシワキエンジニアリング脱退の理由を尋ねる。

 

「リ、リリン! ダメだよ、そんな不躾な……」

「ド直球な質問だな……。リリンちゃんには敵わないぜ」

 

 ユーキとのやり取りからあまり大っぴらにしたくないというのは伝わっていた。その上で聞いてくるリリンにツムギは慌てて咎めるも、遠慮知らずなリリンにマシマも思わず苦笑してしまう。

 

「……答えたくない?」

「……つまんない話になるが、それでも良いか?」

「うん、聞かせて?」

 

 流石のリリンも無理に聞くつもりはないのだろう。少し躊躇ったマシマだがリリンに観念したようであまり本人にとって面白い話でもないようで確認をとると、頷くリリンに話し始める。

 

「そう訊かれちゃ仕方ねえか……。ユーキの言ってた通り、俺はエースとしてチームを念願のジャパンカップ出場に導いた。だが大会に参加するための予算がどうしても工面できなくてな。出場辞退も止む無しか……。そう思っていた俺達の前に折よくスポンサーが現れてくれたんだ」

「じゃあ出場できたんだ」

「ところが資金提供の条件は向こうが推薦するビルダーを1人、出場メンバーに入れることだった。となると当然、元居た誰かが抜けなくちゃならないってことになる。それが俺って訳だ。ついでにそのままチームからも抜けたってわけだ。そのままチームに居続けたって後腐れが残って面倒だしな」

 

 マシマの口から明かされるチーム脱退の理由。暗くならないよう話してはいるが、口で説明する以上の出来事があったのは容易に想像しやすい。ツムギもリリンも何というべきか言葉を探っていると、不意にアラートが響く。

 

 ニシワキエンジニアリングだ。ガンダムサバーニャをベースにカスタマイズしたニシワキサバーニャ、GN-Xをベースにカスタマイズしたニシワキジンクス、そして……。

 

「マシマさん、来てくれたんですね」

 

 ユーキが操るニシワキX-1だ。やはりプロチームだけあって機体色は暖色系のオレンジで統一されているものの、ガンプラ一つ一つの完成度はこれまでのクラン戦の中でも群を抜いているだろう。

 

「あんだけ熱いアプローチを受けたんだ。応えないと恰好悪いだろ?」

「……そうですね。アナタはいつだって格好良かった。汚名を着せられたまま黙っていなくなるなんて格好良すぎですよ」

 

 クラン・ブレイカーズとニシワキエンジニアリングのバトルが始まった。ユーキの狙いはマシマに絞っているのだろう。すぐにニシワキX-1とクレインクインの攻防が始まるなか、2人のやり取りが通信越しにツムギ達に聞こえてくる。

 

「あの時、チームから外されるのは僕の筈だったんですよね。だけどアナタはそれに反発して出場を辞退した。そのお陰で僕は出場できたものの結局、チームは初戦敗退。身勝手な行動が敗北を招いたとして全ての責任をアナタが負うことになって……」

「……ま、身勝手な行動だったのは本当だしな」

「僕はあの時、何も知らず何も出来なかった……。あの時、僕が代わりに勝てていればあんな事にはならなかったのに……ッ!」

 

 スポンサーが推薦したビルダーも元々のニシワキエンジニアリングのチームメンバーと折り合いが良かったとも言えなかったのだろう。不和が生じたままジャパンカップに臨み、その結果は初戦敗退。マシマは不和を齎したその責任を取ってチームを抜けたのが真相らしい。

 

「それをずっと後悔してたってか? まったく真面目なお前らしいな」

「だから今日ここで僕はアナタを倒します! アナタの代わりに……いえ、アナタよりも勝てるようになったと証明する為に!」

 

 マシマにとってあまり振り返りたくない過去だからか、いつもに比べてクレインクインの動きが鈍い。対してユーキの決意は強く、その意思を力にしたかのように遂にニシワキX-1のビームサーベルの一撃がクレインクインに損傷を与える。

 

「どうしたんですか! アナタの本気はこんなものじゃないでしょう!?」

「まったく……買いかぶらないでくれよな。あの時だって俺が出てれば勝てたなんて保証はどこにもねえだろ……」

 

 他ならぬユーキはマシマの本気を知っているのだろう。だからこそ不覚を取るマシマに思うところがあり、かつての本気を引き出そうとするも、マシマはユーキが心底眩しそうにだんだんとバトルに気乗りしなくなっているように感じられた。

 

「……そうですか。それが本気というのならば!」

 

 自分の知るマシマはすっかり腑抜けてしまった。これ以上、かつての憧れを汚さない為にもユーキはせめて一瞬で葬ろうとクレインクインへビームサーベルを振りかぶって撃破しようとその一閃を走らせた。

 

 

 

 

 

 

「──ツムギ!?」

 

 

 

 

 

 しかしクレインクインは撃破されることはなかった。何故ならばストライクブレイザーが両者の間に割り込み、ニシワキX-1のビームサーベルを自身のビームサーベルで受け止めていたからだ。

 

「マシマさん。まだやれますよね」

「ハッ……こんな格好悪い姿を見せるつもりはなかったんだけどな」

「大丈夫ですよ。マシマさんだったら立ち上がれるって……また"格好良いところ"を見せてくれるって信じてますから」

 

 ニシワキX-1を振り払い、距離を取らせる為にバックパックの収束火線ライフルとガンランチャーを放って動きを牽制する。ユーキの猛攻に膝をついていたクレインクインを横目にツムギが確認すればマシマは自分の情けなさに自嘲してしまう。

 

「でも俺だって男です。マシマさんの"格好良さ"に敵わないかもしれないけど精一杯格好つけますよ。俺のガンプラが最強だって信じてますから」

「お前はいつも本気だな……。正直、羨ましいぜ。……いつからだろうな。本気になるのが面倒になっちまったのは」

 

 ふと笑みを浮かべながらおどけるツムギ。通信モニター越しに見る真っすぐなツムギの瞳に眩しそうに目を細めながら、マシマはだんだんと視線をそらす。

 

「あの時、全部に失望して、諦めて……。何もかも馬鹿馬鹿しくなったんだ……」

「じゃあ何でマシマはここにいるの? ガンプラバトルって馬鹿馬鹿しい?」

「……ッ! それは……」

 

 ニシワキエンジニアリングを抜けたのはマシマ自身が萎えて無気力になってしまったのもあるのだろう。では何故、そんなマシマがGBBBBにいるのだろうか。ニシワキサバーニャと交戦し、何とか撃破したリリンが問いかける。その無垢な瞳から放たれた問いかけにマシマは目を見開き、息を呑む。

 

「戦闘中に足を止めるなとそれがアナタの教えだったでしょう!」

 

 クラン・ブレイカーズが何やらやり取りをしているのはバトル越しでも感じられるが、全体的に動きが止まっていて隙だらけに思える。腑抜けただけではなく、そんな姿に苛立ちを感じながらユーキのニシワキX-1が迫る。

 

「──なに!?」

 

 だがその行く手を幾発かのビームが遮った。咄嗟に動きを止めるニシワキX-1は状況を確認してみれば、いつの間にかクレインクインのフィンファンネルが展開していたのだ。

 

「まったく……本当に馬鹿馬鹿しいぜ。一番好きで、一番やりたいことをやるのに本気出さずにどうするんだって話だよな!」

 

 ゆっくりと立ち上がりながら、クレインクインのメインカメラは真っ直ぐにニシワキX-1を見据える。

 

「ユーキ、お望み通り、俺の本気を見せてやる! 本気になったこの俺からダメージを奪えると思うなよ!」

 

 例え何もかもにやる気がなくなってしまっても、それでもガンプラバトルから、ガンプラから離れなかったのはその上でまだ好きだからだ。それに気付いた時、マシマの心に再び炎が灯ったのだろう。マシマの雰囲気は変わり、勢いを持ってニシワキX-1との戦闘を始める。

 

「格好良いな、マシマさん……。でも、俺だって!」

 

 元々マシマを評価はしていたが改めてユーキが慕っていた理由が分かった気がする。激しい攻防を繰り広げるクレインクインとニシワキX-1を横目にせめてその戦いの邪魔にならないようにとツムギはリリンと共に残ったニシワキジンクスと戦闘を始める。

 

「俺のガンプラが最強だって……最高なんだって……。口だけで終わらせない為にも!」

 

 ツムギがニシワキエンジニアリングとのバトルに名乗りを上げたのも強くなりたかったからだ。自分の思い入れのあるガンプラが最強。ただの主観でしかない。それを大っぴらに言えば調子に乗るなと笑われるだろう。ならば誰もがそれを認める為にも、自分に応えて戦ってくれるガンプラの為にも強くなると決めたのだ。

 

 ストライクブレイザーは覚醒を果たす。同時に展開したガンバレルはニシワキジンクスを取り囲み、四方八方からのオールレンジ攻撃を仕掛ける。だが相手もプロ。被弾を受けつつも最小限の損傷でオールレンジ攻撃を切り抜ける。

 

「……そこッ!」

 

 ストライクブレイザーと戦闘を繰り広げるニシワキジンクス。ビームサーベル同士の鍔迫り合いに発展するも覚醒によってステータスアップしたストライクブレイザーによって押し切られ、大きくのけ反ってしまう。そのタイミングをずっと待っていたのだろう。クレールのヴェスパーが貫き、ニシワキジンクスを撃破する。

 

「──うおおおおおおおッ!!!!」

 

 残るはニシワキX-1のみ。するとマシマの咆哮が聞こえてくる。見てみれば今まさにクレインクインとニシワキX-1はぶつかり合うように鍔迫り合いとなっていた。しかしニシワキX-1の押し負け、切り払われると瞬時に距離を取ろうとするも膝をついてしまう。

 

「これで……僕の勝ちですッ!」

 

 ユーキがすぐにマシマに食いつく。膝をついたクレインクインへビームサーベルを突き出しながら迫るニシワキX-1。誰もが固唾を飲んで見守っていると……。

 

「──なあ。昔に教えてなかったか? “奥の手は取っておけ”」

 

 危機的な状況に関わらず、マシマの声は非常に落ち着いていたのだ。ユーキはマシマを打ち倒せる。その一点のみに気を取られていたのだろう。上方から放たれたフィンファンネルによる攻撃によってニシワキX-1は貫かれる。

 

「そうだろ、ユーキ?」

「ふっ……。やっぱりアナタは強いな……」

 

 マシマもユーキもお互いの口元には笑みが。腑抜けたと思っていたマシマがかつての輝きを取り戻した事が心から嬉しかったのだろう。マシマへの賞賛を送りながらニシワキX-1は糸の切れた人形のように崩れ落ち、爆散する。

 

「……今回ばかりは俺だけじゃねえ。アイツらが一緒に戦ってくれたから勝てたんだよ」

 

 フィンファンネルが主であるクレインクインの元へ戻って来る。勝利の余韻に浸りながら高台から戦闘を見守っていたストライクブレイザーとクレールを見やる。あの2人はまだ若い。それは眩しく、純粋過ぎる程に。だがだからこそその光に照らされ、マシマはその心を再び磨き上げることが出来たのだ。

 

 ・・・

 

「やった! あのニシワキエンジニアリングに勝てたで! これでクラン戦全勝や! マシマもみんなも凄かったで!」

「マシマさん、素晴らしい活躍でしたね。あれがアナタの本来の力、ですか」

 

 ロビー広場に戻ってきたツムギ達。これで全てのクラン戦を全勝で終える事が出来た。まさかの結果にタオは手放しに喜んでおり、シーナも感心した様子でマシマを見る。

 

「お嬢。俺の事、認めてくれたのか? なら本気を出した甲斐があったってもんだな!」

「もぅ、そーいうところだよ? 折角、イイ戦いしたのに」

 

 因縁のあるニシワキエンジニアリングに勝利しただけではなく、シーナから褒められたのもあって有頂天に達してしまったようだ。先程のマシマの戦いっぷりはリンも認めるところだが、こういうところはどうにも呆れてしまう。

 

「──おめでとうございます。クラン戦全勝ですね」

 

 そんなクラン・ブレイカーズに声をかけたのはユーキだった。負けた悔しさもあるだろうが、それ以上に憧れのマシマが本来の姿を取り戻したことが嬉しいのだろう。その声色は非常に爽やかだ。

 

「これでクランのランクも一気に上昇しますよ。次からの相手はもっとで手強くなりますね」

「その点は問題ねぇ。本気の俺が出れば、どんな相手でもどうにかなるさ。それにウチは俺以外にも頼もしい奴ばかちなんでな」

 

 ニシワキエンジニアリングへの勝利もそうだが、クラン戦全勝はクラン・ブレイカーズのランクを一気に高めることだろう。それに伴ったクランが相手としてあてがわれるが、マシマに憂いはない。寧ろ誇らしそうにクラン・ブレイカーズの面々を見やる。

 

「……そうみたいですね。アナタが素晴らしい仲間に恵まれたこと、僕も嬉しいです。いつかまたお手合わせ願います。その時は我がニシワキエンジニアリングがリベンジしてみせますよ!」

 

 自分がそうなれなかった事に残念な気持ちもあるが、それでもマシマが仲間に恵まれたのは嬉しい限りだ。だが負けっ放しで終わるのも認められるところではない。爽やかにリベンジを誓い、ユーキは去っていった。

 

「素晴らしい……仲間……」

「ああ、そうだ。みんな、本当にありがとうな。それで改めてお願いするぜ。これからもチームの一員として、よろしくな」

 

 ユーキの言葉を口にするリリン。そんなリリンに頷きながらマシマは改めてクラン・ブレイカーズへ感謝の言葉を送りながらも、クラン・ブレイカーズの一員として深々と頭を下げてきた。

 

「どないしたん? 急に畏まっちゃって……」

「いや、まあ……結構なし崩しな感じでチームに入ったからな。一度、改めてちゃんと言った方が良いかと思ってよ」

 

 まさか頭を下げられるとは思っていなかったのだろう。面食らうタオにどこか気恥ずかしそうにマシマは答える。その場の勢いでマシマのチーム入りが決まったようなものだったのでマシマ自身、思うところはあったのだろう。

 

「ふふっ、わざわざ改めて言わなくたってチームの一員になっていますのに」

「ははは、マシマって変なところで律儀なんやなぁ」

「ホントだよね。普段、あんなにテキトーなのに!」

 

 律儀な面もあるマシマ。軟派な性格でもこういうところがユーキに慕われていたのだろう。ユーキほどの付き合いではないが、その人柄に触れてシーナやタオ、リンは思わず笑みを浮かべてたちまちクラン・ブレイカーズは和やかな空気になる。

 

「あ、あのなぁ……。全く……これじゃ道化だぜ」

 

 何とか取り繕うとするもどうにもできず、項垂れるマシマの姿にまた笑いが生まれる。

 

「ふふっ……」

 

 その笑顔の中ではリリンの笑顔もあった。あまりに小さな笑いだったが、それは心からの笑顔だった……。

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