ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
光を導く者
「──このガンプラを託したい」
それはGBBBBのβテスト開始前の出来事だった。真紅の瞳を持つ男性は喫茶店で向かう合って座っている茶髪の女性に女性らしい流線形のデザインを持つカスタマイズガンプラが収められたケースを差し出す。
「暫くあるところに行く。だから連絡が取れなくなるかもしれない……。でも、必ず帰って来るから」
「その代わり……ってこと……?」
精巧に制作されたそのカスタマイズガンプラはガンプラバトルやコンテストに持ち込んでも十分に活躍できるだろう。男性から差し出されたガンプラを受け取りながら女性は戸惑った様子を見せる。それはそうだろう。突然、連絡が取れなくなると言ったかと思えば、自分の代わりにとばかりにガンプラを渡されたのだから。
「理由とか……何なのかとかは言えないの?」
「……そうだな。下手に言えば不味い事でもあるから。でも……俺はそうしたいと思ったんだ。良いも悪いもない。ただ俺にも生きている意味があった……。だからこそ俺を形作ってくれたものへ恩を返す為にもその道を進まなきゃいけないって思ったんだ」
どこに行こうというのか。それが果たして何の為なのか……。教えてほしいと思っても男性は明かさず、だがそれでもその行動を選択した大きな理由が彼の中にはあるのだろう。揺るがない意志で答える。
「……その道は……私も一緒には行けないの?」
「……俺もずっと一緒の道を進みたいと思ってる。けどこれは寄り道みたいなものだから。俺達が一緒に進む道はこれじゃない」
どこか物悲しそうに話す女性。目の前の真紅の瞳の男性と共にありたいのだろう。男性も同じ気持ちのようだが、巻き込みたくはないという想いもあるのだろう。首を横に振る。
「……勝手なことを言ってる自覚はある。でも待っててほしいんだ」
「……分かったよ。だったら私、君が帰れる場所になるから」
「ありがとう。こんなに嬉しい事はない」
女性も自分なりに納得はしたのだろう。寂しさは残しつつもしっかりと男性を見据え、見送る決意を固めると、男性もフッと笑みを見せる。
「でも、今日はずっと。ずぅぅぅぅっと一緒にいてよ。それくらいは良いでしょ!」
「ああ。寧ろ俺もそうしたい」
この2人はどうやら交際関係にあるらしい。想い人を見送る気持ちを切り替えて明るく振舞う女性。それだけで男性も救われる想いもあるのだろう。テーブルの上の女性の手に自分の手を重ねながら微笑む。
「……必ず帰って来るよ、ミサ」
「うん……。いってらっしゃい、イチヤ」
そしてお互いに最愛の人の名を口にするのであった……。
・・・
GBBBB、アルティメイトフォースゼロのクランルームには1人の男性の姿があった。何かを思い返すようにずっと目を瞑ってソファーに身を預けていたが、ゆっくりと目を開く。
「……自分で選んだ道だ。必ず果たして見せる」
そうでなければ今、ここにいる意味はない。男性は懐からバイザー型アイテムを取り出すとその顔に装着し光に包まれる。GBBBBでのアバターの姿へと変わり、ロビー広場へ向かうのであった。
・・・
「──って感じでシーナもマシマも大活躍だったんだから!」
GBBBBのロビー広場。そこにはツムギ、リン、ミスターの姿があった。先の公式クラン戦での出来事の数々を振り返っているのだろう。熱の籠もったリンの話を微笑ましそうにミスターが聞いていた。
「成る程。そんな事があったのか。皆、クラン戦で大きく成長したようだね」
「そうなんだ! リリンもすっごく頑張ってて……」
ミスターは都合がつかなかったのか、マシマが加入してからクラン戦までの間、GBBBBでクラン・ブレイカーズと関わる事がなかった為、一つ一つの出来事を興味深そうに聞いてくれる。そんな聞き上手なミスターについつい話しているリンにも熱が入るほどだ。
「──盛り上がっているようだな」
そんなリン達に声をかけてきた人物がいた。3人が顔を向けた先にいたのはマイスター・アインであった。
「……久しぶりだな、ツムギ君。そちらの2人は初めまして、かな」
3人どころかロビー広場がマイスターの登場に驚くなか、以前、絡みのあったツムギに声をかけつつも、今回、初めて出会うリンとミスターにも声をかける。
「えっ……まさか知り合いなの?」
「前に声をかけてもらって少し話をしたんだ」
マイスターの登場だけでも驚きものだがまさかツムギと知り合っているとは思わなかったようで目を丸くして驚いているリンにマイスターとの出会いを簡潔に伝える。
「君達のクラン戦は私も見させてもらった。その様子ではツムギ君も、そしてチームメイトも大きく成長したようだな」
マイスターも日ごとに活躍しているツムギを気にしているのだろう。以前、話した時よりも精悍な顔つきになったように思えるツムギに成長を感じて、心なしか喜んでいるようだ。最もその話を聞いていたリンはまさかマイスターがクラン・ブレイカーズのバトルを見ているとは思わず驚いていた。
「それで彼に何か用かな? 挨拶に来ただけという訳ではないのだろう?」
「……失礼した。ミッションに出ようとした矢先に君達を見かけたものでね。ついでと言っては何だがツムギ君もご一緒願えないかな」
話を聞いている限り、3人に、と言うよりはツムギに声をかけてきたように思える。ミスターの言葉に本題を切り出すようにマイスターはツムギをミッションに誘った。
「タツヤ達からも話は聞いている。今日まで成長したその実力を見てみたいのだが、どうかな?」
「願ってもない機会です! 是非!」
同じクランなだけあってマイスターもタツヤ達からツムギの話は聞いているのだろう。だがマイスターと共にミッションに出るなど願っても叶うものではない。ツムギは身を乗り出すように答えるとマイスターも満足そうに頷く。
「はっはっはっ、折角の機会だ! その目でマイスターの実力を確かめると良いよ」
「ならば早速ミッションに──」
マイスターとの貴重なミッションの機会だ。学べることも多いだろう。ミスターの見送りにツムギが頷くなか、早速、マイスターはツムギを連れてミッションへ向かおうとする。だがそんなマイスターの動きを止めるようにリンが慌てて前に出てきた。
「あ、あのっ……ちょっと待って! それならアタシも一緒に行きたい! コイツとだけじゃないとダメ、ってことはないでしょ?」
「それは勿論。すまない、君も誘うべきだったな」
「あ、ありがとうございます!」
マイスターとの貴重な機会だ。リンも参加したいと思うのは無理もないだろう。そんな風にツムギは思いっているとマイスターは快く受け入れてくれて、リンは表情を綻ばせる。
「頑張ってね、2人とも!」
マイスター、ツムギ、リンでミッションへ向かう事となった。この後予定があるのかミスターはこのままログアウトするつもりのようだが、快く見送ってくれる。そんなミスターの言葉を受けながら3人は出撃していくのであった。
・・・
「あのマイスターと一緒に出撃かぁ……。うぅ、緊張してきたかも」
バトルフィールドに選ばれたのは月面基地だ。見慣れたストライクブレイザーの隣に立つガンダムルークを見て、リンは改めてGBBBBのトッププレイヤーとの共闘ミッションに緊張した面持ちを見せる。
「……リン君、だったか。変な意識をする必要はない。いつも通りのプレイを……。君の
「あっ、はっ、はい!」
何気ない呟きだったが、マイスターに聞かれていたのだろう。さり気ないアドバイスをして少しでもリンの緊張を和らげようとするマイスターにリンはおずおずと頷く。
(つい意識しちゃったけど、マイスターって気遣いも出来るし、良い人そうな感じね)
短いやり取りながらリンの中でマイスターの印象は良かったのだろう。先陣を切るように飛び出したガンダムルークの背中を追いながら共闘ミッションが始まっていくのであった。
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