ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
「今日の敵、なんか強い……!」
月面基地を飛び回ってビームライフルの引き金を引きながらリンは険しい表情を見せる。それもそうだ。このミッションはリンが選んだわけではない。元々、マイスターが受けたミッションの為、ミッションレベルも当然、普段のミッションよりも跳ね上がっており、NPC機であっても中々撃墜が難しい。
「これでッ!」
ふとリンがツムギ達を見てみれば、宙へ舞い上がったストライクブレイザーはガンバレルを展開し、ハイマットフルバーストのように周囲に展開したガンバレルとバックパックのガンランチャーと収束火線ライフル、そして手持ちの二挺の高エネルギービームライフルを構えると、全ての武装を解き放つ。さながらガンバレルフルバーストというべきか。放たれた攻撃の一つ一つは確実にNPC機達に直撃し、撃破していく。
「──!」
だが全てを撃破したわけではない。取りこぼしたNPC機達がストライクブレイザーに迫ろうとするが、宙がキラリと光ったの同時にまさに稲妻の如き一閃と化したガンダムルークが一瞬のうちにNPC機達を両断していく。
「……アタシだけ弱音吐いてられないよね」
初めての共闘ミッションながらスムーズな連携を取って撃破していくストライクブレイザーとガンダムルーク。その姿を見ながら、リンも刺激されるものがあったのだろう。次なる敵へビームライフルを向けるが……。
「──後ろ!?」
フレールのコックピットで警報が鳴り響く。リンが確認するのも遅く、既に背後を取っていたNPC機がビームサーベルを振り上げていた。
一閃。
リンが直撃を感じて思わず目をつぶってしまうが、NPC機を背後からビームが貫き、NPC機は糸が切れた人形の如き力なく撃破されてしまう。
「……アンタに助けられるなんて」
爆炎の先にいたのはこちらにビームライフルを構えているストライクブレイザーであった。本来ならば窮地を救ってくれた仲間の筈なのだが、リンの表情はどこか複雑そうだ。
だが助けてくれたのは事実。リンが何かしら言おうとした瞬間、ストライクブレイザーを映していたモニターにノイズが走った。
「今のって……またノイズ?」
「……また、か。同じような事でも?」
フレールに合流するなか、リンの呟きを聞き逃さなかったマイスターはその言葉の意味を探る。
「う、うん……。前にも何回か……」
「……やはり影響が広がっているか」
ノイズ自体はリンが言うようにこれが初めてではない。しかしマイスターもノイズの原因に見当がついているのか、神妙な面持ちで呟く。
「影響……? それってどういう……」
「いや、今はよそう。最後のお客だ」
影響、とはどういう事なのだろうか。マイスターの呟きを聞き逃さなかったリンが詳しい話を聞こうとするが、不意に敵機を知らせるアラートが響く。マイスターが確認してみればこちらに接近してくるカスタマイズガンプラ達の姿があり、ツムギ達のストライクブレイザーを見るや否や携行武器の銃口を向けてくる。
「ねぇ、この敵、やけに硬くない!? 全然効いてないっぽいんだけど!」
迫る攻撃を回避しながら反撃に転じるストライクブレイザー達。操作技術はあるようだが、それでも今のツムギ達には遠く及ばない。しかしこちらの攻撃が直撃しても撃破どころか目立った損傷がないようにも思える。あまりの自体にリンは慌ててしまう。
「……落ち着いて。冷静に対処するんだ。相手が誰であろうとする事は変わらない。相手の動きを見極め、着実にダメージを与えていけば良い」
「わ、分かった!」
対してマイスターは冷静だ。ガンダムルークの攻撃も軽微なダメージで済んでいるようだ。マイスターレベルでも軽微なダメージかと思うが、逆に言えばダメージは通るというわけだ。マイスターのアドバイスにリンは目の前の敵ガンプラに集中する。
「性能に実力が追いついていないッ」
フレールのヴェスパーと共にストライクブレイザーが全ての火器を解き放つ。放たれた一斉射撃は相手ガンプラに直撃し、ダメージが蓄積されるなか、直撃でよろめいたところをストライクブレイザーは一気に接近してビームサーベルで切り捨てる。
(……明らかに相手の性能がおかしい。本来、ここまでのスペックは出ないはずだが)
マイスターは残りの二機を相手取りながら冷静に分析する。ガンプラの出来からしても相手の性能はそれに比例せず、異常なスペックを発揮しているのだ。だがどれだけ性能があったとしても使い手の実力まで上がる訳ではない。現にガンダムルークが高機動を活かして縦横無尽に周囲を駆け巡るのに翻弄されてしまっている。
一太刀。また一太刀と圧倒的なまでの機動力で翻弄しながらも着実に攻撃を入れていくガンダムルーク。目にもとまらぬその動きにやがて限界が訪れたのだろう。残った相手のガンプラ達は撃破される。
「ふぅ……何とか勝てた……。にしても何だったの? あんなに硬いなんて滅茶苦茶作りこんでたとか?」
「一先ずロビーへ戻ろう。2人ともお疲れ様」
その後、最深部で待ち構えていたNPCボスを撃破してミッションをクリアした3人。しかし先程の相手のガンプラの異常な性能が引っかかるリン。それはツムギもマイスターも同じようだが、マイスターは2人を労いながらもミッションを終えるのであった。
・・・
「2人とも、今日はありがとう。君達の実力も確かめる事が出来たし、とても有意義な時間を過ごせたよ」
「実力“も”……? 他にも確かめたいことがあったんです?」
ロビー広場に戻ってきたツムギ達。充実した時間を過ごせたことを表すように微笑むマイスターにその言葉に引っかかりを感じたリンは尋ねる。
「……君達には説明しておいても良いかな」
3人で過ごした時間は短いが、その時間の中でマイスターはツムギとリンは信用に足る人物達だと判断したのだろう。途端に神妙な面持ちを見せ、その様子にツムギとリンも思わず生唾を呑む。
「今回のミッション中、ノイズが発生しただろう?」
「あー……あれ? 前にも何回かありましたけど……」
「運営ではあのノイズはGBBBBへのクラック行為が原因で起こっているものだと推測している……。誰かが不正にこのGBBBBにアクセスしてシステムを改竄したり、壊したりしているということだ。その影響で異常に操作や処理が重くなったり、ミッションの難易度やマップが勝手に変更されるなどの異常が報告されている……」
今、GBBBBはβテストの真っ最中だ。リンもツムギも今まで発生していたノイズなどもβテストだから発生しているバグだと切り捨てい特に気に留めていなかったが、どうにも人為的に引き起こされた結果だという。
「そんなことが……!? 一体、誰がそんなことしてるの!?」
「残念ながらそれはまだ分かっていない……。巧妙に細工されていて、犯人の尻尾を掴むことが出来ていないんだ。それに今日のミッション中に戦った相手……。アレに関してはクラックだけでは説明できない。何か別の原因があるのかもしれないが……」
自分達の知らないところでそのような事が起きていた。そして何よりそんな事をする相手が許せないのか、憤りを見せるリンだが、残念ながら相手も上手なようで現象は把握していても解決には至っていない。そして他にも問題はある。それは先程の異常な性能を見せたガンプラだ。しかしこれに関してはまだ詳しい内容までは把握しきれていないようだ。
「犯人の目的も、どこから仕掛けてくるのかも分からない以上、今は手の出しようがない……。だが必ず突き止めて見せる。多くの人々が楽しんでいるGBBBBの世界を脅かすような真似をする犯人を決して許しはしない……。それが私が今、ここにいる理由だ」
普段、余裕のある振舞を見せることが多いマイスターが明確に怒りを見せる。純粋にGBBBBを、ガンプラを愛しているからこその怒りだ。その鋭い刃のような怒気を感じて、ツムギとリンは思わず身震いしてしまう。
「……すまない。らしくもなく熱くなってしまった。君達も些細な事でも異常を発見したらすぐに運営に報告してほしい」
「勿論です!」
「ありがとう。では、また会おう」
ツムギとリンの様子に我に返ったマイスターは感情制御がまだ十分ではない事に自嘲しながらも2人へ運営への報告を頼むと、ツムギもリンも快く頷いてくれる。その姿に満足そうに笑みを見せながら、マイスターは創痍とマントを翻して2人の元から去っていくのであった。
「マイスター、凄いプレッシャーだったね」
「それだけガンプラを……。それを活かせるこの場所が好きなんだろうね」
「それにしてもクラックかぁ……。あのノイズの原因がそんな大事だったなんて」
マイスターの後ろ姿を見送りながら改めて先程のマイスターの怒りを思い出すリン。マイスターもまたガンプラを心から愛する者なのだろう。マイスターの怒りを肌で感じた時は驚いたが、それでもその怒りは共感出来る。
「……それはそうと今日は全然ダメだった。ずっと足を引っ張ってたし、アンタには助けられるし……」
「普段のミッションの難易度とは違うわけだし仕方ないよ」
リンは先程のミッションを振り返って明らかに落ち込んで項垂れている。咄嗟にフォローするツムギだが、その言葉は励ますのに至っていないのか、リンの表情は暗いままだ。
「ねぇ、何でアンタの方が強いの……?」
そんなリンから放たれたあまりにか細く弱々しい言葉。ツムギが言葉を迷っていると自分が発した言葉に気付いたのだろう。たちまちリンは目を丸くして慌てる。
「今のなし! なんでもない! アンタなんかに負けないから!」
捲し立てるように言い放って最後は鼻を鳴らしてツムギから去ってしまうリン。ツムギはリンの様子が理解できず、ただその後ろ姿を見送るのであった。
「──やはり付け焼き刃ではあの程度ですか」
そんなツムギ達を遠巻きから見ていたのはゼノギアだった。先程のミッションも見ていたのだろう。その声色には落胆の色が見え、それが向けられたのは異常な性能を見せたガンプラを操るプレイヤー達に向けてのものだった。
「ルーク。その意味は光を運び、導く者……。気取った名前だ。この世には光も闇もないというのに」
ふとゼノギアはガンダムルークの立像を見上げる。マスク越しとはいえ、決して友好的ではない視線がガンダムルークへ向けられ、どこか忌々しそうに呟く。やがて自分の感情をコントロールするように咳払いをすると不敵な笑みを見せながら背中に手を回して歩き出し、ゼノギアはGBBBBのプレイヤー達の中に姿を消すのであった。
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