ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
GBBBBからログアウトしたツムギ。GBBBBゴーグルを外して一息ついていると、不意に自室の扉がノックされる。
「ツムギ、ごめん。お母さん、仕事に出なきゃいけなくなったの!」
応対してみれば慌てた様子の母がいた。どうやら仕事でトラブルでもあったのか、今から出勤しなければならないらしい。
「良いよ、気にしないで。家事の類はやっておくから」
「本当にごめんなさい……。夜ご飯なんだけど一緒に食べるつもりだったから、まだ作ってなくて……」
世間一般には休日。時刻は夕方になろうかという時間。普段、仕事がある時は作り置きを用意しているのだが、突発的な出来事だった為、それもままならないようだ。
「それなら何とかするよ。俺のことは気にしないで良いから」
「そうはいかないわ……。昔から苦労かけてるのに……。お父さんがいれば良いんだけど単身赴任中だし……」
気にしないで良いと言われても目の前にはいるのは大事な一人息子だ。そんな事出来るはずがない。家計を支える為の仕事の板挟みにあるのだろう。母親としての葛藤が伺え、ツムギとしても節々から愛情を感じる為、だからこそ寂しいとは思いつつも両親を大切に思えた。
その後、夕飯代にとお金を渡され、母親は最後まで慌ただしく仕事へ向かっていくのだった。
・・・
洗濯物をたたみ終え、一通り自分が出来る家事を済ませたツムギ。気が付けばもう日が暮れようとしている。夕飯は自分で決めて良い訳だが、生憎、特段食べたいものもない。とはいえ少し空腹を感じるのも事実。何かしらは腹に入れておきたい。
「……そうだ」
どうしようかと悩んでいたツムギだが、やがて何か思い浮かんだのか、身支度を整えると出かけるのであった。
・・・
「……ここ、だよな」
スマートフォンの地図アプリを頼りにツムギがやって来たのは歩いて数十分の距離にある喫茶店だった。店舗名はセレクトM。初めてマトイ3兄妹に出会った際、タツヤが口にしていた喫茶店の名だ。
早速、小気味の良いドアベルの音共に入店してみれば店内に流れる穏やかなBGMや暖色系の照明、木製のインテリアなど和やかで落ち着いた空間がそこにはあった。
「いらっしゃいませっ……ってツムギ!?」
「親が急遽仕事になってしまって……。夜ご飯何食べようかなって思ってたらタツヤさんの喫茶店が浮かんだんです」
「それで来てくれたのか……。ありがとう、嬉しいよ」
来客を対応したのはエプロン姿のタツヤであった。初めて出会った際も言っていたが、店の手伝いをしているのは本当の事のようだ。とはいえ、タツヤも宣伝したとはいえ実際に足を運んでくるとは思っていなかったようで驚いてしまっている。簡単に事情を説明しつつ、タツヤも納得したように笑みを見せていると……。
「あれ、ツムギ君?」
テーブル席の方からツムギへ向けた声が聞こえてくる、聞き馴染みのある声に誘われてみればユウヒとショウの姿があった。
「ユウヒさん! それにキサラギさんも、お2人ともどうしたんですか?」
「ユウヒと食事の約束をしていてね。折角だからタツヤ君達の店に来たわけだ」
まさかユウヒとショウに会うとは思っていなかったが、それはユウヒ達も同じだ。促されるまま空いているユウヒの隣に座りながら、理由を聞いてみれば、2人がここにいる理由は大体、ツムギと同じのようだ。
「……って、ユウヒさん。その赤ん坊は……?」
見慣れているユウヒの姿の中で強烈な違和感があった。それはユウヒが抱きかかえている赤子だ。頭髪こそ赤紫色だがその顔立ちはどことなくユウヒに似ている。だがユウヒとの長い付き合いの中で子供がいるなど聞いた事はなかった。
「僕の姪っ子だよ。2、3時間預かる事になっててね。ヒメカワ・カノンちゃんって言うんだ」
「姪っ子ちゃんなんですか……。道理でどことなく似てるな……って」
赤子であるカノンはそれこそユウヒの隣にいるショウが抱いているラグナと同じ年齢だろうか。無邪気な表情を見せるカノンを見て、ツムギはユウヒの面影を感じる。
「さっ、ツムギ君。好きなもの頼みなよ。お金はショウさんが出してくれるよ」
「いやいやいや、ユウヒさん!?」
メニューをツムギに渡しながら悪戯っぽい笑みを浮かべるユウヒ。さり気なくショウにツムギの会計を擦り付ける言動にすかさずツムギは突っ込む。
「まあ、これも何かの縁だ。遠慮する必要はない。それにここの料理はどれも美味しい」
「やったね。じゃあ僕の分のお会計もお願いしたいなぁ、社長」
「謹んでお断りする」
ショウとしてもツムギに奢るのはやぶさかではないのだろう。とはいえ、そのツムギの隣で甘く媚びるユウヒの頼みはキッパリと突っぱね、冗談だと分かっているからか途端に笑みが零れる。
「お待たせしました。セレクトM特製ブレンドコーヒーとミックスサンドですっ!」
注文から程なくして手伝いをしているのだろう。エプロン姿のヒマリが香ばしい香りのコーヒーとハムやレタス、タマゴペーストなど具がぎっしり詰め込まれたサンドイッチが運んできてくれた。
「えへへー、やっぱり知ってる人が来てくれると嬉しいなぁ。タツ兄も張り切ってたよ」
トレーを抱えながらツムギ達が座っているテーブルの面々も見て、心底嬉しそうな笑顔を見せるヒマリ。元々人懐っこくて天真爛漫なヒマリはこの店の看板娘のようだ。
「美味しいっ!」
「でしょでしょ! うちのメニューはお父さんとお母さんが考案した拘りの数々だからね!」
早速、サンドイッチを口に運ぶ。ボリュームたっぷりなだけではない。食べてみればからしマヨネーズがアクセントとなって中々癖になる美味しさだ。偽りのない感想にヒマリは自慢げにカウンターの方で仕事している両親を見やる。セレクトMは拘りのコーヒーだけではなくパンやサラダを中心にした軽食やケーキやアイスクリームなど豊富なデザートなどのメニューの数々は好評で開店から今日に至るまで地元の人々に愛されている店なのだ。
「ヒマリ、お疲れ様。助かったよ。そろそろ休んでいいぞ。明日は学校だからな」
「──そんな事言うならタツ兄だってそうでしょ」
すると作業に一区切りがついたのか、タツヤがツムギ達のテーブルにやってきながら談笑しているヒマリを労いながら声をかける。だがタツヤはまだ手伝いをするつもりのようで、それを見かねたのか、店の奥からアヤトがやって来る。エプロン姿、という訳ではないので店の手伝いをしていた訳ではないようだ。
「タツ兄はそうやって誰かの為に時間を使うんだから、そろそろ自分の為だけに時間を使いなよ」
「俺なりにそうしているつもりだよ」
普段、気だるげなアヤトも内心ではタツヤを心配しているのだろう。気にするなとばかりに笑みを見せるタツヤにどこか複雑そうな顔を見せる。
「そういえば3人はどこの学校に通ってるんだっけ?」
「近くにある奏海高校っていうところです」
話題を変えるようにユウヒがタツヤ達に話を振ると、代表してタツヤが答える。
「奏海高校……。聞いた事があるな。ガンプラバトルの大会で活躍していた記憶がある」
「俺達の先輩達が特に凄かったですよ。ガンダムブレイカーエストレーモもそんな先輩の1人のガンプラに刺激を受けて作ったんです」
タツヤ達が通っている高校の名に覚えがあるのか、ショウが記憶を遡っているとアヤトがどこか誇らしそうに答える。圧倒的な完成度を誇るガンダムブレイカーエストレーモ。奏海高校で所属していたガンプラファイターからインスパイアを受けて制作したようだ。
「それよりアヤト。イベント用のガンプラは作り終わったのか」
「終わってはいないけど、一区切りはついたよ」
ふとタツヤは気になった事をアヤトに尋ねる。店の手伝いをしているタツヤとヒマリを他所に1人だけいなかったアヤト。元々、模型紙でもガンプラを掲載するだけの技術力を持つ彼だが、どうやらイベント用にガンプラを制作しているらしい。
「何かあるんですか?」
「今度、福岡でイベントがあるんだよ。そこそこ大きいイベントでね。ゲストに世界で活躍するファイターだけじゃなく僕達ガンダムブレイカーも御呼ばれしたんだ。アヤト君が作ってるのはそこで展示されるガンプラだね」
何のイベントなのかとツムギが聞いてみれば、どうやらこの場にいるガンダムブレイカー達がゲストとして参加するイベントがあることがユウヒの口から明かされる。
「……本当はイチヤやシュウジさんも来て欲しかったんだけどダメみたいだったんだ」
だがガンダムブレイカー全員が参加するイベントとはいかなかったようだ。珍しくどこか寂しそうな表情を見せるユウヒ。アマミヤ・イチヤ、そしてショウに続く2人目のガンダムブレイカーであるシュウジという人物は今やまともに連絡が取れなくなっており、音信不通となってしまっている。
「イチヤの中のガンプラバトルはどんどん苦いものに変わっていった。だから……少しでも楽しんでもらえるイベントがあれば来て欲しかったんだけどね」
「苦い……?」
ユウヒの言葉に意味が分からないと顔を顰めるツムギ。ツムギはガンプラバトルを愛している。だからこそ苦いものになったというアマミヤ・イチヤのガンプラバトルが理解できなかった。
「……かつて立て続けにウィルス事件が起きて、イチヤ君と当時、彼が所属していたチームはガンプラバトルでそれに対処していた」
「二度も起きた宇宙エレベーターの事件とかですよね。他にも色々ありましたけど……。当時はヒーローみたいな扱いでもありましたよね」
神妙な面持ちでかつてのアマミヤ・イチヤにまつわる出来事を話すショウ。世間でも大きなニュースになったのだろう。当時の記憶を遡りながらツムギは話す。
「……ヒーロー、ね。まあ上っ面だけ見ればそうかもしれないけど、“ガンプラバトル”が好きなのであって“ウイルス駆除”が好きな訳じゃない。意地や
「なまじガンプラを使ってのウイルス駆除をしていたのもあって余計に意識してしまったんだろうな。それでも彼は戦う事は止めなかった。自分にとっての大切なものを守るために」
世間でヒーローと持て囃されていた存在の裏の顔……。ユウヒとショウから明かされたアマミヤ・イチヤの側面にツムギは言葉を失ってしまう。
「……きっと今も彼は戦ってるはずだ。彼の大切なものを守るために」
ショウはどこか遠くを眺める。アマミヤ・イチヤに想いを馳せているのはすぐに分かった。
「……そうだ。ツムギ君、折角だ。君も福岡のイベントに来るか?」
どこかしんみりとした空気が流れ、誰も口を閉ざしてしまう。そんな空気を払しょくするようにショウは対面するツムギを見やる。
「君にとっても良い刺激となるイベントなる筈だ。どうだろう?」
「行ってみたいですけど……流石に旅費とかもありますし、そんなお金は……」
「旅費に関しては俺が出そう。GBBBBでの経験も良いが、リアルイベントの良さというものもある」
ショウとしてもツムギに期待している部分があるのだろう。とはいえツムギは学生の身の上。流石に提案されてすぐに福岡行きを決められる程の余裕はない。だが何と旅費までショウが出してくれるというのだ。
「なら僕も出そうかな。ツムギ君が行くならナギサちゃんもついて来そうだしね。聞いといてもらえる?」
「あっ、はいっ」
ツムギが福岡に行くという話を聞けば、ナギサも反応するだろう。ユウヒもツムギだけではなく、ナギサにも期待しているのだろう。ユウヒの言葉にツムギはコクコクと頷く。
「さて、食事を再開しよう。折角の料理だ。時間を置いてしまうのは気が引ける」
空気を切り替えるようにショウは食事を再開しようと促す。タツヤ達も「ごゆっくりどうぞっ」と言い残して去っていく中、ツムギはショウとユウヒ、そして彼らと一緒にいるラグナとカノンと共に和やかひと時を過ごすのであった……。
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