ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak   作:ウルトラゼロNEO

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崩壊の序曲

 

「シーナ、いつもより気合入ってる?」

 

 バトルトーナメント三回戦目。そして二度目のフリーダムフリートとのバトル。出撃準備が進められるなか、強く引き締まった表情を見せるシーナにリリンが通信越しに尋ねる。

 

「はい。あの時の恩をお返し出来るのですから」

「あの時の恩……?」

 

 何やら嬉しそうに声を弾ませるシーナだが、リリンもツムギも何かしただろうかと首を傾げる。

 

「私が生きる道を悩んでいた時、おふたりは私に自由に生きる道を示してくれました。今こそその恩を返す時です。ツムギさんの自由を守るために私は戦います!」

「うん……。私も頑張る」

 

 かつてクラン戦の時期にシーナがリアルでの家柄と趣味の間で思い悩んでいた。その時、確かにツムギもリリンも自分なりの言葉を送ったが、そこまで大それた事をした覚えはなかったのだろう。そこまでシーナが思っていてくれた事に驚きつつも、リリンもツムギの自由を守るため、改めて戦意を固める。

 

「俺も自分の道を切り開いてみせる。行こう、ブレイザー!」

 

 2人の想いに感謝しつつ、決意を胸にツムギはストライクブレイザーと共に出撃していくのであった。

 

 ・・・

 

 クラン・ブレイカーズとフリーダムフリートのバトルの舞台に選ばれたのは大峡谷。切り立った岩々に囲まれたステージだ。

 

「私は今、久しぶりに心が燃えているよ。勝てば君が仲間になるのだからね」

 

 早速、カオス率いるフリーダムフリートと接敵する。大剣アロンダイトを構えて突撃してきたカオスのブラックロータスに対してストライクブレイザーも真っ向からビームサーベルを引き抜き、立ち向かう。周囲にスパークが発生する中、通信越しにカオスはバトル後の事を考えているのか、玩具を与えられようとしている子供のように楽しそうだ。

 

「今回ばかりはこちらも容赦しない! 必ず勝利し、君を手に入れて見せよう!」

「一度でも情けを頼んだ覚えはありません。そこまで思っていただけるのは光栄ですけど……!」

 

 ツムギへの執着を表すように激しい攻撃がストライクブレイザーに襲い掛かる。しかしツムギとて今日まで多くの出来事を経験して裏打ちされた自信がある。現にブラックロータスの攻撃の中の隙を見つけ出して、反撃している。

 

「ふふふ……!」

 

 対してガンダムレギルスがベースかと思いきや、その背中にある生物的な翼を背負うウイングガンダムゼロカスタムをベースにカスタマイズしたドーラのガンダムファムファタルがアンカータイプのヒートロッドをさながら鞭のようにしならせ、かまいたちのように襲い掛かって来る。

 

「……」

 

 不敵に笑うドーラとは対照的にその粗暴な外見とは裏腹に物静かに戦闘を進めるのはグスタフだ。彼の扱うガンプラはボルトガンダムをベースにカスタマイズしたボルトガンダムゴリアテだ。ボルトガンダムをベースにしているだけあって重量級の印象を受け、装備している大型ヒートホークの一撃を受ければただでは済まないだろう。

 

「……皆様、気を付けてください。あの方たち……何かあるかもしれません」

 

 フリーダムフリートからはなにか不自然なまでの自信と余裕を感じる。それが強烈な違和感となって思わずシーナはツムギとリリンに注意を飛ばす。

 

「なにかって、なに?」

「すみません……。確証はないのですが、そんな気がするのです」

「分かった……。ツムギも気を付けて」

 

 注意をしようにも何に注意を払うべきなのか。だがいざ聞かれても、具体的なものまでは掴みきれていないのか歯切れの悪い返答が返って来る。しかしシーナが警戒の必要性を感じる程だ。無下には出来ないだろう。リリンはツムギに注意を飛ばす。

 

(……何か違和感はある。前に戦った時に比べて機体出力がダンチだ)

 

 戦闘が激しさを増す中、ツムギは一連の話を受けて目の前のブラックロータスに疑念を抱く。一度は戦った事があるガンプラであるブラックロータス。目の前で振るわれているアロンダイトの出力が明らかに以前と違う。ブラックロータスの完成度にその出力が見合っていないように感じるのだ。

 

「それでもッ!」

 

 ストライクブレイザーは覚醒を果たす。例えカオス達にどんな裏があろうと自分がやるべきことは一つだ。その想いと共にストライクブレイザーはブラックロータスを圧していく。

 

「あれが覚醒かい。確かにカオスが執着する気持ちも分かるねぇ」

 

 ストライクブレイザーとブラックロータスの一騎打ちを横目にドーラは覚醒の光を見て愉快そうに笑う。覚醒を発現したストライクブレイザーは徐々にブラックロータスを損傷を与えているのだ。

 

「……っ! 通常攻撃でも致命傷になりかねない……!」

 

 よそ見をしていてもバトルがおざなりにならない実力があるのか、刃のような鋭さを持った鞭のようにヒートロッドが襲う。範囲の広い攻撃にリリンは回避しながらその威力を分析し、表情を苦ませる。

 

「ですが……ッ!」

 

 ビームライフルを構えたチクラミーノは何度か引き金を引く。狙撃のような正確無比な攻撃はファムファタルに迫るが……。

 

「……!」

 

 ボルトガンダムゴリアテがファムファタルの前に躍り出て、その攻撃を庇ったのだ。まさにドーラを守るナイトだ。そんなボルトガンダムゴリアテにビームサーベルを引き抜いてクレールが迫る。一閃。しかしこれも回避されてしまう。すぐにボルトガンダムゴリアテは大型ヒートホークを横薙ぎに振るう。

 

「……絶対に負けられない!」

 

 だがクレールは飛び退く訳でもなく仰向けに地面に倒れるように回避したではないか。一見、隙だらけの行動だろう。しかしリリンは次の手を考えていた。倒れると同時にカリドゥス複相ビーム砲とヴェスパーを展開しており、最大出力で放ち、ボルトガンダムゴリアテを胴体を貫いたのだ。

 

「それぐらいの根性は見せてもらわないとねぇ」

 

 グスタフが撃破されてもドーラに動揺はない。相も変わらず余裕綽々だ。だがヒートロッドを振るおうとした瞬間、チクラミーノの射撃がヒートロッドを装備するマニピュレータを貫く。

 

「こちらには負けられない理由があるのです!」

 

 おもちゃを壊されたようにドーラが不愉快に眉を顰めるなか、チクラミーノとクレールがビームサーベルを引き抜いて急接近する。

 

「……まっ、こんなところだろうさ」

 

 チクラミーノとクレールによる挟撃がファムファタルを撃破する。しかしドーラは一切、悔しそうな表情も見せず、まるで飽きが回ったかのように静かに敗北を受け入れ、撃破される。

 

「──素晴らしい! 君も、覚醒の力も諦められない! 絶対に手に入れて見せるさ!」

 

 一方、ツムギとカオスの戦いは激闘を極めていた。既にお互いの耐久値は危険域にまで突入しており、下手な行動が命取りとなるだろう。しかしそんな中で覚醒の力を使うツムギにカオスは興奮した様子を隠しきれずにいた。

 

「……カオスさんは強いですよ。心からそう思います」

 

 一方、ツムギは静かに呟く。しつこい勧誘は兎も角、カオスの実力は偽りがなく、本物だ。

 

「覚醒だけが俺の全てじゃない! それが誰にも分かってもらえなかったとして、だったら示し続けて見せる!」

 

 覚醒の使い手としての注目を浴びるツムギ。それが彼の全てではないとして強すぎる輝きは他のものさえ遮ってしまう。だがそれでも構わない。ならばツムギは示し続けるのだ。

 

「覚醒があるから勝てるんじゃない! 俺の……ッ……俺の全てを込めたガンプラとだから勝てるんだって!」

 

 例えトータルの完成度で劣ろうとも、それでもツムギは自分が手掛けたガンプラが最高なんだと叫びたい。それが子供のようでも構わない。自分の全力をぶつけたいから。

 

《──!》

 

 そしてそのツムギの真っ直ぐな想いにブレイザーが呼応し、蒼き炎のような光をストライクブレイザーの左顔に纏われる。

 

「だからカオスさんにも受けてもらいます! 俺の全力をッ!」

 

 ブラックロータスから放たれた高エネルギー長射程ビーム砲の一撃を四基のガンバレルを盾代わりに前方に展開して防いだストライクブレイザーは爆炎を飛び出し、そのまま覚醒とブレイザーの力を纏い極限の出力を発揮したビームサーベルでブラックロータスを貫く。

 

「……“とっておき”を使ったが、それすらも上回って来るというのか!」

 

 真っ二つに分かれたブラックロータス。カオスの言うとっておきとは何なのか、知る由もないが、少なくともカオスからすれば十分、驚きと賞賛に値する内容のようだ。

 

「ふふふふ……はははははははッ! 私達の負けだ、認めよう!」

 

 カオスは心底愉快そうに哄笑する。ここで見苦しく食い下がる訳でもなく、素直に負けを認めるある種の潔さを見せつつブラックロータスは爆散し、クラン・ブレイカーズは準決勝への道を開く。

 

「良かった。これで安心だね。……でも、今日の相手、強かった」

「確かに、強かったですね。……普通ではない位に」

 

 ツムギのフリーダムフリート入りを回避できた。一先ずは安心するリリンだが、改めて先程のバトルを振り返った感想を口にすると、シーナも同意しつつも彼女の中で違和感が強まっているのだろう。勝利をしたというのにその表情は厳しいものだった。

 

 ・・・

 

「啖呵切って負けたんだ。アイツら、相当悔しがってるだろうぜ」

「これでスカウトされる心配もなくなったね!」

 

 ロビー広場に戻ってきたツムギ達。見事な勝利にマシマはしめしめと笑うなか、これでツムギがしつこい勧誘を受ける心配もなくなった事にリンは我が事のように喜んでくれている。

 

「……シーナ、どうかした?」

 

 ツムギとリン達がツムギのクラン・ブレイカーズ残留に盛り上がるなか、ふと先程から一言もなく考え事をしているシーナに気付いたリリンが声をかける。

 

「……少し先程の3人について考えておりました。作りこまれたガンプラも操作技術も素晴らしいものでしたが……それだけでは説明できないような何か異様な力を感じました」

「そう? 見てるこっちはあんまり分からなかったけど……あっちも必死だったからいつも以上のパワーが出たとか?」

 

 シーナが口にするフリーダムフリートへの違和感。それはバトル中にもツムギが感じたものと同じだった。とはいえそれは観戦している側からしたらあまり感じ取れなかったのか、リンは首を傾げてしまう。

 

「まっ、良いじゃねえか! 勝ったのは俺達なんだからよ!」

「せやせや。マシマの言う通りやで! 気にしててもしゃあないって!」

 

 ツムギもリリンもシーナの違和感を単純に切り捨てるには疑問があるが、ここでいくら言っても答えは出ないだろう。そんな会話は意味がないとマシマは目先の勝利に話題を移し、タオもそれに乗る。

 

「それよりも次は準決勝! 遂にここまで来たって感じや!」

「もう優勝は目の前なんだからね! 皆、絶対に勝とうね!」

 

 新米クランがもう優勝まで届こうとしている。その時を夢見て、期待を膨らませるタオとリンに頷きながら何やらまだ思考の中で彷徨っているシーナを他所にクラン・ブレイカーズは決意を露にするように拳を突き上げるのであった。

 

 ・・・

 

「──ねぇ、そこのアンタ。ちょっと良いかな」

 

 クラン・ブレイカーズは散り散りとなり、ログアウトしたり思い思いの時間を過ごすなか、リリンは1人、GBBBBをあてもなく歩いていた。そんなリリンを呼び止めたのは青いメッシュが入った水色のツインテールが特徴的な一人の少女だった。その纏う雰囲気と振舞はどこか自信の高さや気の強さを感じてしまう。

 

「アンタ、クラン・ブレイカーズのリリン選手でしょ? アタシ、アンタ達の大ファンなんだ。良かったら握手してくれない?」

「あくしゅ……ってなに?」

「なーにトボけちゃってんの! 握手だよ握手。シェイクハンド! そんな警戒しなくても良いって!」

 

 少女は一方的な勢いでリリンに握手を求める。しかしリリン自身は握手を知らないと首を傾げている。しかし握手を知らない人間などいないだろうと思った少女は警戒心から誤魔化そうとしていると思ったのか、その警戒を解こうとする。

 

「アタシはツムギの友達だから、純粋にアンタ達を応援したくてさ! 握手は親愛の証だから準決勝の相手はもっと強いだろうし、アンタ達には頑張って欲しいんだよね!」

「ツムギの友達……。そういうことなら、分かった」

 

 ツムギはリアルで交流のあるユウヒやナギサの他にもGBBBBでアオバやシゲなど多くのプレイヤーと交流をし、顔が広くなっている。であればリリン自身が知らないツムギの知り合いがいるだろうと握手を受け入れる。

 

「ニッシシシシシ~♪」

 

 そんなリリンにニヤリとどこか歪な笑みを見せた少女はリリンの両手を自身の両手で包み込みようにしっかりと握ると握手を交わす。

 

「──え?」

 

 だがその瞬間、強烈な違和感がリリンの身体全体を襲ったのだ。

 

「それじゃ、次の試合も楽しみにしてるから! 頑張ってね~!」

「……うん、ありがとう」

 

 果たして今の違和感は何なのか。その疑問には誰も答えることはない。用が済んだとばかりに少女は明るく笑みを見せながらリリンの横を通り過ぎていき、先程の違和感を気のせいと片づけたリリンも少女と別れ、再び歩き出す。

 

「ふふ……ホントに楽しみだね!」

 

 少女はふと足を止めながら、去っていくリリンの姿を横目に見る。その表情は先程までの明るく人当たりの良い雰囲気とは打って変わって、どこか禍々しささえ感じる程、邪悪な笑みを見せ、まるでリリンが獲物あるかのように舌なめずりをするのであった……。

8/21はバニーの日。小話にバニーイラストが見たいのは(7月末まで)

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