ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
今回、ツムギ達が行うミッションはHLV護衛ミッションだ。フィールド上に配置されるHLVが発射するまで護衛し、HLVを狙う敵機体を全て撃破できれば、HLVが発射され、ミッションクリアとなる内容だ。
「行こう、ブレイz──」
HLVの前で壁になるように出現したストライクブレイザー達。意気揚々にミッションを始めようとするツムギであったが、モニターにノイズが走り、耳障りな電子音が耳に届き、思わず顔を顰める。
「……今、一瞬画面乱れんかった? なんかバグでも起こったんかな?」
「まだβテストだからじゃないの? 気にすることでもないでしょ」
どうやら先程の現象はツムギだけではなく、タオやリンも同じ現象に見舞われたらしい。とはいえ今のGBBBBはβテストの段階の為、仮にあれがバグだとしてもそういう事もあるだろうとリンは深く考えることはなく答えると、ツムギとタオも深堀するような内容ではないかと思考を切り替えてクラン・ブレイカーズはミッションを開始する。
HLVに接近してくるのは連邦軍製を中心とした機体群であった。HLVの破壊だけを目的にプログラミングされているからか、特に連携などを意識したような動きはなく、我先にとばかりにHLVに銃口を向ける。
「させへんっ!」
しかしそれを黙って見ているクラン・ブレイカーズではない。タオSDカスタムの暗視スコープ付き2WAYライフルの銃口がキラリと輝くと放たれたビームは接近中のジムに直撃し、爆散する。
「いけ、ガンバレル達!」
負けじとストライクブレイザーもガンバレルを全て解き放つと獰猛な獣のように敵NPC機達を撃ち抜いていく。しかしそれでも撃破し損ねた機体に関しては350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルによって残さず撃ち貫いていく。
「流石やね、ツムギ!」
「タオこそ調子良いみたいだね!」
PGガンダム戦でも先陣を切って戦っていたこともあってか、ツムギはいつの間にクラン・ブレイカーズのリーダーとしての役目を果たすようになっていた。それは単純な実力と行動力、何より普段から周囲を気遣うような発言が多いからだろう。今もタオとツムギはお互いに賞賛と微笑を交わす。ミッションが始まって数分が経ったがまだHLVは無傷だ。
「──ほらほら、ぼさっとしてるとアタシが全部倒しちゃうよ!」
そんな二人に勢いに乗ったリンからの通信が入る。見てみればフレールが怒涛の勢いで一機、また一機とビームサーベルで撃破している。勢いづいた事もあって無我夢中に目の前の敵を撃破しているようだ。
「危ない!」
「──ッ」
しかしそれが仇になったのだろう。リンにとっては視覚から敵NPC機が近接装備を用いて今まさにフレールに襲い掛かろうとしていたのだ。タオが危険を知らせるのと同時にツムギのストライクブレイザーは反射的に動き出し、フレールと敵NPC機の間に割り込む。
フレールとの間に割り込んだのまでは良いものの咄嗟の行動だったのだろう。次の行動をどうするべきか一瞬の迷いが生じるが、すぐさまマニュピレーターが装備する二挺の高エネルギービームライフルの一つを銃口ごと敵NPC機に突き刺すとそのまま引き金を引いて撃ち抜き、爆散させる。
「た、助かった……」
今のでビームライフルを一つ失ってしまったがフレールが撃破されるよりはマシだろう。安堵しながら振り返れば、通信越しにそっと胸をなでおろすリンの姿が見える。
「……じゃなくて! べ、別に助けてもらわくても平気だったし!」
「はは、素直やないなぁ」
だがやはり素直な性格ではないのか、気恥ずかしそうにそっぽを向きながら憎まれ口を叩くリンに遅れて合流したタオは既にリンの性格は理解しているのだろう。優しく笑うのみだ。
「このままだとリンに全部持っていかれちゃうからね。今回の撃墜スコアは俺がもらうよ」
「じょ、上等じゃない! その勝負買ってやるわよ!」
後腐れのないようになのかツムギなりに気遣った言葉を贈ると、言葉の内容とは裏腹に素直ではないリンでもその気遣いは理解出来るのだろう。あえてツムギの言葉に乗りながらクラン・ブレイカーズは再びミッションを再開するのであった。
・・・
「いやぁ、若いねぇ!」
そんなバトルの様子を見守っていたのはミスターとユウヒであった。ハラハラとさせる場面もあったが無事に切り抜けられなようでミスターは満足そうに笑う。
「良いクランになれそうだね。僕も色んなチームを見てきたけど、あぁいう子達は結構化けるもんだよ」
今のところクラン・ブレイカーズは心配いらないだろう。ユウヒもこれまで多くのチームを見ていたからこその観察眼なのか、資質を感じているようでこれからのツムギ達に期待感を見せる。
「……そういえばユウヒ君はかのガンダムブレイカー達とは今も交流を続けているのかい?」
「ショウさんは僕の上司みたいなもんだからね。連絡は取ってるよ。他の二人は全然だけど」
かつて6年前に起きたウイルス事件でも3人のガンダムブレイカーがチームを組み、そしてそこで誕生したユウヒのガンダムブレイカーはその3人の道を切り開くために戦った。あれから6年が経過したが、ユウヒは少なくともキサラギ・ショウとはまだ交流があるようだ。
「……アマミヤ・イチヤ君とは連絡が取れていないのかい?」
アマミヤ・イチヤ。その人物はかつてキサラギ・ショウから続く3人目のガンダムブレイカーとして活躍したガンプラファイター。彩渡商店街ガンプラチームにその名を連ね、かつて起きた二度の宇宙エレベーターのウイルス事件、そしてGBBBBの前身ともいえるシミュレータのαテストでのウイルス事件を解決した人物だ。
「うーん……。イチヤはねぇ……。何でか知らないけどGBBBBの話が出始めた辺りから連絡が取りにくくなって今は全くと言っても良い位なんだよね。大会に出てるなんて話も聞かないし、何してるんだろう」
「そうか……。やはり君でも知らないか」
アマミヤ・イチヤは歴代ガンダムブレイカーの中ではその経歴もあってかキサラギ・ショウに並ぶほどの知名度を持つ。だからこそ彼がガンプラバトルの大会に出れば話題にもなるのだが、最近はそのような話も聞かない。ユウヒとしても心配ではあるのだろう。憂い帯びた表情を見せるとミスターもどこか落胆しているようだ。
「もしかしてイチヤのファンなの?」
「ん……? あぁ、まあそうだね! 私は彼が大好きなんだ! だからこそここ最近、彼の名を聞かない事は寂しく思っているよ!」
しかし何故、わざわざイチヤに限定して聞いてきたのか。それこそユウヒを含んだ4人のガンダムブレイカーの中でもう1人、名前が出ていない人物もいるのに。そこから思い当たる事を問いかけてみれば、落胆している様子から一転して、ミスター特有の明るいエネルギッシュな言動でまるで誤魔化すように答える。
「そっか。僕もイチヤのファンなんだ。イチヤがいなかったら今の僕はないしね。だからこそ会いたいんだけどね」
「……そうだね」
同じガンダムブレイカーというだけではなく、これまでの間にアマミヤ・イチヤとユウヒの間では様々な出来事があったのだろう。ふと懐かしみながらも寂しげな表情を見せるユウヒにミスターも先程とは打って変わって、トーンを抑え、もの悲しげに同意する。
ユウヒとミスターの間に何とも言えない寂しい雰囲気が流れるなか、対照的にクラン・ブレイカーズの戦闘は激しさを増していく。そんな2人の背後ではガンプラ立像のガンダムルークの各部に備わったクリアパーツがその存在感を静かに放つように淡い光を放ち続けていた。
・・・
「やったね、ミッション達成!」
「みんな、見事なミッションだったね!」
それから数分後、無事にミッションを終えたクラン・ブレイカーズがロビー広場に戻ってきた。3人とも順調にミッションを成功させたのもあって清々しい様子でリンが強くガッツポーズをしているとミスターとユウヒが出迎える。
「アタシ、大活躍だったでしょ?」
「ああ、思い切りのいいプレイングだった」
ミッションでのバトルに自信があったのか、自慢げに話すリンにミスターも同意する。ここでリンが喜びを露にするように大きくガッツポーズを作ろうとするも、その前にと言わんばかりにミスターが手で制す。
「ただもう少し守りも考えるべきかな。危ない場面もあったしね」
「ぐっ……わ、わかってるってば!」
とはいえ突っ走った結果、損傷の危険があった場面があったのも事実。諭すようなミスターの物言いにツムギにはあぁは言ったもののリンとしてもやはり自覚はあるのか苦々しく頷いている。
「まぁ、まだ始まったばかりだ。これからいくらでも成長していけるよ。だが一人で強くなるだけが成長じゃない。クランとして成長していくのが大切なんだ。これから出会うかもしれない新しい仲間達の為にもね」
後輩をサポートするのが趣味と言っていただけにミスターも様々な経験があるのだろう。優しくもどこか重みのある言葉はツムギ達新人プレイヤーの胸を打つものがあった。
「分かった! 肝に銘じとく!」
「では、さらばだ! 今後とも精進したまえ!」
ミスターの言葉に感銘を受けたタオはミスターの想いに応えるように力強く頷くと、その反応に満足した様子のミスターは軽く手をあげると、そのままツムギ達に背を向けて去って行ってしまう。
「改めて凄かったね、3人とも」
「ありがとうございます。でも、あのノイズは……」
「ノイズ?」
ミスターへの見送りも程々にユウヒは改めて自分の言葉で労いを伝えると、その言葉に感謝しつつもツムギは少し胸の中で引っかかっていた事を口にする。それはミッション開始と同時に流れたあのノイズの件だ。確かにGBBBBはβテストであり、バグが起きても不思議ではないが、それにしても妙な引っ掛かりを感じる。
とはいえそれは観戦していたユウヒには分からなかったことなのか、首を傾げているとツムギは改めてノイズについて軽く説明をする。
「あー、そんなこともあったっけ。まだ気にしてたの?」
「なんや意外と気にしいやねんや。なんか親近感湧くわ。まあでも確かに気になるな、アレ」
ユウヒへの説明を終えるとリンはすっかり忘れていたのか、あっけらかんとした様子を見せ、タオもツムギに親近感を覚えつつもタオも今まであのような事態に出くわしたことがなかったのか、ツムギ程でないにしろ気にした様子だ。
「ノイズ……か。流石に昔みたいにウイルスの類じゃないとは思うけど、一応βテストではある訳だし、運営に報告しておいた方がいいかもね」
自分が気にし過ぎるだけなのかと、どこか不安そうな顔のツムギをフォローするようにユウヒは提案をする。現時点でこれ以上の進展はなく、やれることとすれば運営への報告位だろう。
「けど、何でミスターは僕らに声かけてきたんやろ。初心者は他にもいっぱいおんのに」
「単に親切な人ってだけなんじゃない? 後輩の面倒をみるのが趣味って言ってたし」
「それだけなんかなぁ……。なんか謎な人やね、ミスターって」
ツムギもそれで納得したのか、表情を切り替えるとタオは話題を去っていったミスターへ移す。確かにタオの疑問通り、自分達以外にもGBBBBで初心者はいくらでも見かける。だがもしかしたら今回はたまたま自分達だけで他にも色んなプレイヤー達に声をかけているのではないかと話すリンだが、タオはその言葉だけでは釈然としないのか、うーんと唸ってしまっていた。
「……っとごめん。僕、そろそろログアウトしなきゃ」
「用事ですか?」
「ちょっとお店に顔を出さなきゃいけなくてね」
そこでユウヒは何かを思い出したかのようにログアウトの意思を伝えると、もっと一緒にいられると思ったのか、驚きつつも残念そうなツムギに苦笑しつつもやはり店長という身の上からユウヒも中々多忙なようだ。
「えぇーっ。折角だったらユウヒさんともバトルしたかったのになぁ」
「焦ることはないよ。今日で世界が終わる訳じゃないんだからまた会えるさ」
ガンダムブレイカーと呼ばれる存在がどのような実力なのか単純に気になるのだろう。露骨にガッカリした様子を見せるリンに苦笑しながら折角だしとユウヒはクラン・ブレイカーズとフレンド登録を交わし、ログアウトする。ユウヒとミスターがいなくなった事で潮時であるのを察したのか、ツムギ達もその後、少しの雑談の後、ログアウトするのであった。
「……」
《──》
しかしツムギ達は知らない。
このGBBBBに人知れず二つの存在がGBBBBの大地に立ったことを。