ガンダムビルドブレイカーズ ReBreak 作:ウルトラゼロNEO
バトルステージとなったのは火山地帯。どれだけ手が込んだガンプラでもマグマに落ちればひとたまりもない。そんな灼熱の地にクラン・ブレイカーズとファイヤー&ウォーターチームがぶつかり合う。
「この時を待ち侘びていたぞ。我らか、貴様らか……。どちらが強いのか、正々堂々と決めようではないか!」
クロカンテが操るのはマスターガンダムをベースにカスタマイズし、その火炎の二つ名に相応しく深紅に染め上げられたガンダムフレイムスペリオルだ。勇ましい物言いと共に刺突に特化した形状のビームサーベルで襲いかかってくる。
「まあ、勝つのはアタシ達だけどね!」
そしてカルパッチョが駆るのはアビスガンダムをカスタマイズしたガンダムドローレス。より深い蒼に染められたそのガンプラはビームランスを構えて突撃してくる。
「……」
人数不利をものともせずにクラン・ブレイカーズと渡り合うクロカンテとカルパッチョ。激しい戦闘の中、リリンは何やらドローレスを、いや、カルパッチョに気を取られているような印象を受ける。
「どうした、リリンちゃん。あの娘が気になるのか?」
「……ううん。何でもない」
気を取られて撃墜されたら溜まったものではない。それとなくリリンに声をかけるマシマだが、一瞬、視線を彷徨わせた後に首を横に振る。
「それなら良いんだが……。お嬢も言ってたが相手は何をしてくるか分からねぇ。ツムギも油断するなよ!」
「勿論です!」
これ以上、追求しても無駄だろう。せめて注意を飛ばしながらツムギも気にするマシマ。折角の舞台でつまらないことで負けたくはない。全例を持ってぶつかるまでだ。
・・・
「流石、有名配信者。トレンド入りしてるね」
ロビー広場で観戦するクラン・ブレイカーズとナギサとソフィー。激しさを増す戦闘を見ながらSNSを見てみれば、大いに盛り上がっていた。
「何か違和感あるなぁ……。あの2人組、本気で戦うって言うより何か魅せ方の方を意識してる感じがする」
「でも、これ準決勝だよ? そんな舐めプして負けたらそれこそ炎上しそうだけど」
感覚的なものなのだろうか? ファイヤー&ウォーターチームの動きを見て、首を傾げるナギサ。どうにも全力でのバトル、というよりはパフォーマンスに見えてしまうのだ。あまりそういったものを感じなかったのか、にわかには信じ難いような様子のリンの言葉に反論は出来ず、違和感を払拭できないままナギサは戦闘を見守る。
・・・
「──ほらほら、もっと本気出さなきゃ!」
ビームランスによる執拗なまでの刺突がクレールを襲う。まるで何かを待って刺激を与えているかのようにドローレスは執拗にクレールを狙い、腕の立つリリンも防戦一方に追い込まれてしまう。
「リリンちゃん!」
「行かせんよ!」
窮地に追いやられたリリンにすぐさま援護に向かおうとするマシマだが、その行く手をフレイムスペリオルが放ったビームライフルの一撃が遮る。その戦艦の主砲と見間違うような威力にマシマも思うような動きが出来ずにいた。
「くっ……なんて火力だ!」
「だとしても!」
その威力に戦慄するマシマ。フレイムスペリオルの完成度は素晴らしいと言えるがあれ程の火力はどこから出ているのか。しかし考えていても仕方ない。ツムギはまずは狙いをフレイムスペリオルに絞り、マシマと共に戦闘を続ける。
「これで仲間は助けに来られない……」
四天王リーダーを自称するだけあってクロカンテは強い。ツムギとマシマが援護に向かえないのを横目にカルパッチョは舌で上唇を撫でながらクレールを見据える。
「それじゃあ、トドメ……いっくよー!」
ビームランスを構えてクレール目掛けて突撃するドローレス。このままではクレールが撃破されてしまう。
誰もがそう思った瞬間だった。
「──これは……?」
クレールのツインアイが輝き、何やら紫色のオーラを纏ったではないか。思わぬ現象にリリンは戸惑った様子を見せる。
「そこっ!」
だがすぐさまシールドを払い、ドローレスを弾くとビームライフルを構える。ドローレスへの追撃か? 否、放たれたビームはフレイムスペリオルに直撃したのだ。
「この距離で当てられるとは!」
「へぇ……調子、出てきたじゃん」
思わず膝をつくフレイムスペリオル。クロカンテの言うようにクレールとフレイムスペリオルまではかなりの距離がある。にも関わらず正確無比な射撃だったのだ。クレールと距離を取ったドローレスはフレイムスペリオルと合流しながら不敵な笑みを見せる。
「リリン、それは……」
「何かが溢れ出してる……。これ、私の力……?」
クレールの変化にツムギは困惑した様子を見せる。淡い輝きを纏うその姿は覚醒やブレイザーのような神秘的な輝きとは違い、どこか毒々しさを感じるのだ。リリンも力を感じるものの違和感があるようだ。
「あのプレイヤー、先程までと動きが違うな……。こうなれば、左右から挟んで仕留めるぞ!」
「命令しないでよ! アタシひとりで十分だって!」
リリンを警戒し、素早く指示を出すクロカンテ。しかし波長が合わないだけあってすぐに噛みつくも、クロカンテの指示自体は適切だと思ったのか、すぐにクレールを挟んで襲いかかる。
「我らの挟撃、躱せるものか!」
援護しようにもストライクブレイザーにもクレインクインにも対応できない加速力を持ってクレールに襲いかかる。
今度こそダメなのか。そう思った矢先、クレールは真上に飛び上がり、続けざまにビームライフルの引き金を引き、正確にフレイムスペリオルとドローレスのコックピットを撃ち抜いたのだ。
「……アハハ、やるじゃん!」
敗れたというのに悔しさを一切見せずに爆散するフレイムスペリオル達。特にカルパッチョの性格ならば何かしら悔しがりそうなものだが、そんな素振りすらなかった。
(あのカルパッチョって人……。ツムギの友達って言ってたけど、全然そんな感じじゃなかった。なんであの人は私にあんな嘘を吐いたんだろう……?)
カルパッチョは初めて出会った際、ツムギの友達だと言っていた。しかしいざツムギと対面してみれば、お互い何の反応もない。流石にツムギと友達であるというのは出任せだったのだろうとは思うが、だとしても何のために……。疑問は残るなか、リリンはツムギ達とロビー広場に戻るのであった。
・・・
「やったー! これで決勝戦進出だよ!」
ロビー広場に戻ってきたツムギ達。晴れて決勝戦に駒を進めたことでリンは飛び跳ねて全身で喜びを露にしていた。
「ホンマ……みんなとクラン組めて良かったわ……」
「おいおい、泣くなら優勝してからしてくれよ?」
「……せやね! 折角優勝に出られるんやし、勝って号泣するわ!」
まさか新米クランがGBBBBの頂点を決める舞台に立てるとは……。感極まって泣き出しそうになってしまっているタオにその嬉しさは理解できるのか、気さくに笑うマシマにタオもうんうんと頷きながら晴れやか笑みを見せる。
「それにしてもリリンちゃん。まさかあそこから逆転するなんてよ! 今までで一番イイ動きだったぜ!」
「それは……」
「まっ、今まで頑張ってきた結果だよな!」
今回のMVPはリリンだろう。手放しに褒めるマシマにいまだ引っかかるものを感じるのか、賞賛の言葉に対して複雑そうに目を伏せる。
「……シーナは嬉しくないの?」
しかしここにきて、シーナは一切、何の反応もしていないのだ。それどころかずっと考え込むように腕を組んでしまっている。流石に気になったリンが声を掛けると……。
「い、いえ! そんなことはありません。ただ……」
「フリーダムフリートのことが気になるのか? 俺も少し気になってたんだよな。アイツら、やけに火力が高かったしよ」
思考の海から戻ってきたようだが、どうにも歯切れが悪い。そんなシーナの考え事がフリーダムフリートであることを察したのか、マシマはバトルでの違和感を交えて話す。
「前のフリーダムフリート戦から、私も気になって調べてみたのですが……。“GBV”……。それこそが彼らの常軌を逸した強さの理由だったのではないでしょうか」
マシマの読みは当たっていたようだ。今回のバトル前も注意を促してくれたが、それには当然ながら警戒すべき理由があったようだが、聞きなれぬ単語に一同、首を傾げる。
「私もネットで見ただけなので詳しい事は分かりませんが、コンピュータウイルスの一種だそうです。その名は“ガンプラ洗脳ウイルス”。Gunpla Brainwashing Virus……。英語での頭文字でGBVと呼ばれているそうですが、噂によれば各線する事でガンプラのデータ量が異常に増大し、システムに悪影響を与えて様々な不具合を引き起こすそうなんです。それに、感染したガンプラはプレイヤーの操作を受け付けなくなることもあるんだとか……。まるで誰かに乗っ取られたかのように」
「あ……。なんか僕もそれ聞いた事あるわ。前にミッションでノイズが出たのも、それが原因やったんちゃうかなぁ、って」
GBV……。シーナの話を聞いているだけでも恐ろしい話だが、少なくともタオも聞いた事があるようで噂レベルで広がっているようだ。特にデータ量の異常な増大という話を聞けば、バグだと思っていた初期の不具合も合点がいく。恐らく以前、マイスターが調べていたのもGBVを含めてだろう。
「このGBVにはもう一つ特徴があって、やり方はまだハッキリとしていないみたいですが、感染したガンプラの性能を自由に変化させることが出来るそうです」
「なにそれ! そんなの出来たらチートじゃん!」
「ええ。ですが感染しても自覚症状はなくチートツールと言われるほどには自由に使いこなされてはいない様です」
自由に性能を弄れるともなればまさにリンが言うようにチートだろう。しかし自覚症状もないともなれば不正チートとして対処する事も難しいだろう。
「ふーん……。自覚症状がないなんて怖いウイルスだね。でもどうやってガンプラに感染するんだろう」
「これも憶測の域を出ていないようですが、ハグするとか握手とかアバター同士が密着する事で感染し、ガンプラに乗り込んだ際に発症するようです」
とはいえガンプラに感染するウイルスと言ってもどういった経路でそうなるのだろうか。明確な感染ルートは分かっていないようだが、凡そ導き出した原因としては密着レベルの接触によって齎されるようだ。
「──ッ!」
ハグや握手による感染……。その言葉にリリンは目を見開く。執拗に握手を求めてきたカルパッチョ。そもそもカルパッチョに握手を求められるまでGBBBBで握手などした事がない。もしもウイルスの感染が目当てならばツムギの友達と噓をついてでも握手を求めてきた理由なのだろう。
「なんや、バトルでの接触くらいでは感染せぇへんって事かな。それなら良かった……」
「そうですね。でも、そういうことなら迂闊に知らない人のアバターと接触するのは危険ですから、気を付けた方が良いですね」
少なくとも単純なバトル程度ならば感染する心配はないだろう。それこそ組み付いたりされなければ。とはいえ、アバター同士での接触で起こるのならば、不用意な接触は避けるべきだろう。
「うーん……まぁ、アイツらがそのウイルスを使ってガンプラのデータを改竄していたとしたら、あの強さも納得だな。あんなの普通のガンプラじゃ出来ねえよ」
「そんなウイルスを作った奴がいるなんて……。それに、そんなのをわざわざ使う奴がいるなんて! ホンットに許せない!」
噂レベルとはいえ、もしもGBVが実在しているのだとしたらマシマが感じたフリーダムフリートのあの強さへの違和感も合点がいく。純粋にGBBBBを楽しんでいる身としてそのようなウイルスや悪用する者は決して許せないのだろう。リンは激しく怒りを露にする。
「ね、リリン!」
「えっ……う、うん……」
そのまま同調を求めるようにリリンに顔を向けるも、リリンは頷きながらもカルパッチョの件があり、何より先程のバトルでの現象もあって胸を張る事も出来ないのだろう。頷きはしたもののすぐに顔を逸らしてしまった。
「いつの時代も変な事を考える奴はいるもんだね……」
「そうだね……。ウイルスとガンプラ……。6年前の宇宙エレベーターの時みたいだ」
リン程の怒りを露にしないものの不快感は示しているソフィー。そんなソフィーに頷きながらもツムギはアマミヤ・イチヤやユウヒが戦い抜いたかつてのウイルス事件を思い出すのであった。
・・・
「──それで、そちらの首尾は?」
一方、フリーダムフリートのクランルーム。何やら忙しなくコンソール画面を操作しているカオスとその背後で様子を見ているドーラ、グスタフ。そしてフリーダムフリートに所属していないものの近くのテーブルでは1人、ゼノギアがバウンド・ドッグのデータガンプラを変形させて時間を潰していた。そんな中、バトルを終えたクロカンテとカルパッチョが戻って来る。
「まだ調べている途中だよ。いつも以上に時間がかかってるみたいだけど」
「折角、アタシ等が負けてあげたんだから“当たり”じゃないと許さないし!」
カオスを横目にドーラが答える。しかしカルパッチョの負けてあげたという発言。バトルを見ていたナギサの違和感通り、やはり本気でバトルをしていた訳ではなかったのか。
「ふふふふふ……。ふははははははははははッ!」
そんな中、カオスが心底愉快そうに高笑いする。相変わらずガチャガチャとバウンド・ドッグの変形再現に意識を向けているゼノギア以外の者がカオスを見やると……。
「そういうことだったのか……。それなら、今までの全てに合点がいく」
「もしかして、“当たり”が出たの!?」
「ああ。よもや、こんな成果が得られるとはな。本当に彼らは“奇跡のチーム”だったよ」
目当ての結果が出たのだろうか。やけに上機嫌なカオスに結果を教えろとばかりにカルパッチョが身を乗り出すと、四天王に振り返りながら不敵ながら満足げに話す。
「時が来た……。これで漸く終わらせられる。我々はGBBBBの真の解放を掴み取るのだ。我が正義の剣によって……! フッ……フハハハハハハハ……!」
フリーダムフリートに不穏な空気が流れる。良からぬ事を考えているのは確かだろう。カオスの哄笑に続くようにゼノギアとグスタフ以外のメンバーが高笑いを上げるのであった。
「ふむ……」
笑い声をバックに1人、バウンド・ドッグのデータガンプラをMA形態に変形させ終えたゼノギアは様々な角度から観賞し、満足すると立ち上がり、人知れず後ろに手を組んでフリーダムフリートのクランルームから立ち去る。
「──ちょっとアンタ!」
そんなゼノギアを追いかけてきたのはカルパッチョだった。足を止め、身を反らして反応するゼノギアにカルパッチョはバタバタと駆け寄って来る。
「アンタもそろそろ動くんでしょ。しくじらないでよ?」
「おやおや。まぁ、やってみるさ……と言っておこうか」
どこか挑発気味に笑うカルパッチョ。今まで表立って何かする訳ではなかったゼノギアも動き出すようだ。
「アンタ、何か胡散臭いんだよねぇ。変な仮面なんか付けちゃってさ。本当にうまくやれんの?」
「随分な物言いだ。あのリリンとかいう子でなければ、君の握手だって成功したかも怪しいだろうに」
ツカツカとゼノギアに歩みを進めるカルパッチョの物言いにカルパッチョとリリンの握手のやり取りを傍から眺めていたのだろう。後先考えずにツムギの友達だと言ったりとカルパッチョの行動には粗が目立つ。
「でも成功させたし! 細かい事言わないでよね!」
ゼノギアの物言いが気に食わないのだろう。ゼノギアの眼前に迫るとせめてもの嫌がらせか、ゼノギアの仮面を強引にふんだくる。
「──まったく」
フリーダムフリートとの協力関係にあるゼノギアだが、その素顔は知らない。果たしてどんな顔なのか、少しでもブサイクだったら笑ってやろうとゼノギアを見やるカルパッチョ。対してゼノギアは呆れたようにため息をつきながらゆっくりと顔をカルパッチョに向ける。
──カルパッチョは鼓動が跳ね上がった気がした。
男性慣れしていない訳ではない。何だったら自分に言い寄るような輩なんて山のようにいた。しかしゼノギアの素顔を、その琥珀色の瞳を見た瞬間、吸い込まれるように視線が外せなかった。
「イケない子だ」
アバターとはいえ、あまりに整った顔立ちとスッと心に入って来るような蠱惑的な声。目の前で妖しく笑いながらカルパッチョの頬に手を添えるゼノギアの姿は酔ってしまったと錯覚するような色気があった。
「とはいえ結果で示さねばならないのも事実だ。まずは君という観客を満足させよう」
頬を紅潮させ、ゼノギアの素顔に見惚れるカルパッチョから仮面を取り返すと、そのまま装着しながらログアウトし、カルパッチョの前から姿を消すのであった。
8/21はバニーの日。小話にバニーイラストが見たいのは(7月末まで)
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ナギサ
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ソフィー
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ユカ
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アオバ
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シオン
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